IS 〈レプリカでも人生楽しみたいじゃん?〉   作:紅露雨

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長かったので二つに分けました。


第三話――話題と木刀は花だった。

 まあなんだかんだで転生(?)初日の学園生活はさくっと終わった。

 

 今は学生寮に向かっている最中なのだが、如何せん女子が多くてなんかな……女子を(はべ)らせてるみたいだ。

 

「初日からこれじゃ先が思いやられるぞ……」

「まあ初日だからだろ。じきに慣れるさ……いや慣れるといいな。うん、きっと慣れる」

 

 途中から願望だった気がするが気のせいだろ……うん気のせい!

 

「だといいな……ハァ……」

「溜息とか嫌味か」

「お前が言える言葉ではないよな」

 

 ……さてと何号室だったかな。1025か。なんも違和感なくこいつと歩いているがそういえばこいつは何号室なんだろ?

 

「織斑一夏、部屋は何号室だ?」

「一夏でいい。えっとたしか1025だったはず……ちょっと確認」

 

 記憶違いはないな、うん。

 

「いや、合ってるはずだ。俺が1025号室だから」

 

 まず、授業から察する――というか説明にあったが――ISを動かせるのはなぜか女性だけだ。

 そうなると、必然的にこの学校は女子高になる。だが、今年は例外的に男が入った。

 しかし幸いなことに、男は一夏一人や俺一人ではなく偶数の二人。

 つまり相部屋になる確率はほぼ100%

 

「ということだから俺とお前は相部屋だ」

「どういうことだ? ……ああなんとなく理解はできた」

 

 他愛のない話をしていてふと部屋を見ると1027号室だった。ちょっと通り過ぎてたみたいだな

 

「さて、一夏ベッドの割り当てだが」

 

 1025号室まで戻り玄関を開けると、ベッドが奥と手前に2つ設置してあった。

 俺はどちらかといえば手前がいい。有事の際逃げやすいからな。

 

「俺は奥のほうがいい……かな? なんて」

 

 ありがたいことに一夏は奥の方がいいらしい。争いなく決まるって素晴らしいことだね、うん。

 

「よかった、俺は手前の方が良かったからな。さて改めて……」

「あぁ……」

「「よろしくな!」」

 

 互いの拳同士がコツンとあたる。どうでもいいスキンシップだが初めての友人だからな。すごく嬉しい。

 

 ――コンコン。

 ノック音が二回、部屋に響く。

 

「あ、どうぞ」

 

 ドアのノック音に上がれと声を掛ける一夏。敵だったらどうする。

 

「失礼する」

 

 開いたドアから顔を出したのは、ガン見乙女だった。

 

「それ何?」

 

 なぜか木刀を持っていたので聞いてみると「護身用の武器」らしい。

 どう考えても俺、めっちゃ警戒されてますやん……

 

「俺、ちょっと風あたってくる」

 

 こういう時は気をきかせて出ていくのがいいやつってもんだ。きっとそうだ。

 

「あ、あぁ……まぁその悪いな……」

「いやなに、休み時間の時に言っていたじゃないか幼馴染なんだろ? 6年ぶりって言うんだこれで水差す方がどうかしてるさ」

 

 ガン見乙女の名前が篠ノ之箒でIS開発者の実の妹で幼馴染ってのはすでに休み時間に聞いている。

 だから、ガン見乙女が怖いんじゃなくて一夏に気をきかせてるんだからね!

 

 ドアを締めちょっと離れて聞き耳をたててみる。

 するとまあ、昔話に花が咲いたようで本格的に干渉は無粋だろう。

 本気で風にでもあたってこようか……そう思った時――

 

 ズガン!!

 

 ――ドアから木刀が咲いた。

 

「何やらかしたんだあの馬鹿は……」

 

 今の音を聞き、気になったのか周りの部屋から女子がでてくる。

 

「あぅ~なにかあったの~?」

 

 のほほんとした女子が声をかけてくる。あ、同じクラスの女子か。

 

「詳しくは知らんが一夏とののののさんが喧嘩してるらしい」

「篠ノ之さんだよ~」

 

 素でまちがえた。これはもうガン見乙女からののののにクラスチェンジするしかないな、うん。それ以外ありえん。

 

「ま、そろそろ部屋にもどるね。友人のピンチを間近で観察もとい救出したいし」

「あは~頑張ってね~」

 

 ドアをあけ中を覗くと剣道着がはだけて少々色っぽいののののと、ののののが握っている木刀を白羽取りしてる一夏がいた。

 これはあれだ、話してる最中になんやかんやあって覆いかぶさったとかそういう類のアクシデントだ。きっとそうに違いない。

 

「のののの……ゲフンゲフン。篠ノ之箒! 一体何があったんだ! 凄い音がしたしドアに穴があいていたぞ!」

 

 できるだけ音を聞いて急いで駆けつけたふりをする。

 

「へっ? あ、いや、なんでも「いまだ!」待て一夏!」

 

 一瞬手の力が弱まったんだろう。その隙に一夏は抜け出す。

 

「助かった……」

「いや、原因はどうせお前だろ一夏。詳しく話せ」

 

 剣創――バンブーソード

 

 俺は自身の能力(スキル)を使い右手に竹刀を創造し、一夏の喉元にそれを当てる。

 

「原因つってもなぁ……いや、デリカシーがなさすぎたか。箒、さっきはすまんかった」

 

 両手を合わせて謝る一夏。詳しく話せっつったんだが……まあいいか。というか少しは動揺しろよ、竹刀向けてる意味がないじゃないか。

 

「い、いや、分かればいいのだ分かれば。えっと……」

 

 ののののも自己紹介のとき上の空だったのか……まあ一夏のこと考えてたんだろうけど。

 

「えっと、俺は火神真由よろしく」

「火神君かよろしく……、ドアは……すまない」

 

 あれくらいなら言い訳なんていくらでもできるからな。全部一夏せいにしてしまえばいいしね(黒笑)

 

「あー……別に気にしなくていいよ、うん。でさ、一夏とはどういった関係で?」

 

 ドアが一つ貸しなら、これで貸し借りなしにしておいてやろう。王様は寛大だからな、うん……王様? まあいいか。

 

()()の幼馴染だよ。ってか休み時間に話しただろ? てか口調気持ち悪いぞ?」

 

 だめだ、俺はそういうことを聞いているんじゃなくて……まあ、ののののがこいつに恋心を持っているのはなんとなくわかった。

 

「……帰る。邪魔したな」

 

 視線だけで人を殺せそうな目をしている彼女がこいつの隣に来ることは……きっとないんだろうな。

 

 

 ◇

 

 

「でさ火神」

「なに? お、これ美味しい」

 

 あのあと、竹刀について聞かれたので、暇だったから剣道部に見に行っていたという体でごまかしておいた。

 その時にちょうど一夏の腹の虫が鳴いたので、現在、食堂で飯を食べているのだ。

 

「いや、周り」

「別に、気にするようなもんでもないだろ。……にしても美味しいなこれ」

 

 周囲には俺らと同じく、少し遅めに晩飯を食べている女子たちがいてだ、俺らが座っている机の周りに集まってきている。

 まあ近くに来てる奴らからは悪意や殺気を感じないから放置でいいだろ、多分。

 

「……あんまいい気はしないぜ?」

「お前は仕方ないだろ。なんたって、()()織斑千冬の弟なんだからさ」

 

 耳をすませば今朝聞いたような「千冬様の弟だって」とかその類のセリフばっかり。

 大なり小なりコンプレックス感じてんだろうな……とは思う。強く育て一夏よ。

 まあ、確かに女性至上主義の女子も、少なからずはいるようだ。少し離れた所にまで意識を伸ばすと「男のくせに」とかそういう類の言も聞こえてくる。

 

 ……はぁ、今朝の()()()()()()()()の意味を身にしみて感じたね。

 

「そりゃそうだけどさ……ん、これうまいな!」

 

 納得行ってなさそうな顔だったが飯はうまい。一瞬で不満そうな顔が笑顔に変わる……殴りたい衝動に駆られるがいまはぐっと堪えるとしよう。

 

「だろ? でさ、シャワーどうする?」

 

 時間を気にせず入りたいから俺は後のほうがいいのだが。

 

「どうって?」

「時間。どっちが先に使うかってこと」

 

 いちいち説明しないといけないのかこいつ

 

「あー……俺は先のほうがいいんだけど」

 

 ベッドの時もそうだが争いなく決まるっていいな、うん。

 

「了解、にしてもうまいなこれ」

 

 食べ終わるまでとくに会話はなく俺たちは黙々と食べた。

 

「「ご馳走様でした」」

 

 

 ◇

 

 

「先使うな」

「おう」

 

 シャワーの順番は食堂で決めた通り一夏が先に使うことになった。

 

「初めて飯食ったなぁ……」

 

 記憶に無い新しいもの、今日一日は俺にとって新鮮で、尚且つ何処か懐かしいものだった。(オリジナル)もこうして友人と仲良く生活していたのだろうか。

 (レプリカ)は一体何なんだろうか。意思のない聖杯の暴走……そんなことが本当にあるのだろうか。もし本当ならなぜ俺の記憶がないのか……思うところはいくらでもある。

 いや、これ以上はやめておこう。自己嫌悪で毛根が死ぬ。

 

 過去じゃない今なんだよ、うん。というわけで今日あったことをまとめてみるとしよう。

 

 気がついたら教室にいた。

 ……まあこれは転生のせいということでひとまず置いておこう、次。

 

 男尊女卑、ISの存在を知る。

 授業もあったが正直意味不明だった。篠ノ之束は天才、次。

 

 セシリア・オルコットに絡まれる。

 お嬢様系のうざい人。少なくとも1年は同じクラスのはずなので仲良くしたい所なんだが、十中八九嫌われたな、次。

 

 通常授業。

 普通だった。……飽きた、次。

 

「ふぅ……火神? 空いたぞー」

「あ、すまんな」

 

 結構上がるのが早かったな。気を使わせたのなら申し訳ない。

 

「いや、結構時間かかったから待ってたと思ったんだけど、そうでもなかったみたいだな」

 

 ふと時計を見ると21:42分だった。

 帰ってきてから何分たったっけ? ……いや、帰ってきた時の時間知らんから何分考え込んでたかなんてわからんよ。

 

「まあ行ってくる。あ、電気消しててもいいから」

「助かるぜ。今日は疲れた……おやすみ」

 

 主に精神的に疲れていたのだろう。まぁ俺は寝んがな能力(スキル)の確認もしたいしさ。

 

 ドアを開け、シャワールームに入る。

 目に入ったシャワーの蛇口を戸惑い無くひねる。

 知らないのに識ってるのはやっぱ怖いな……一人だと特に。

 勢いよく飛び出たお湯はいい加減の熱さで今日の疲れを溶かし流してくれる。そんな感じがした。

 時間は無限じゃないのでさっさと能力(スキル)の確認を済ませてしまおうか。

 

「ふぅ……とりあえず、武創」

 

 右手にレイピアを創造する……問題ないな、次。

 

 

 ◇

 

 

 いろいろもらった能力(スキル)があるようだがほとんどが解らないものだった。

 

 (オリジナル)の剣創はもちろん使える。しかしそのほかの能力(スキル)は2つしか解らない……いや、あれは実質ひとつか。

 一つは銃創――そのまんま銃を創る能力だな――これと(オリジナル)の剣創が合わさっていまは武創というスキルになっている……というか今した。

 もう一つは時門……時を止める能力か。

 別に思考内で確認するだけならシャワーじゃなくてもいいじゃないかと思うかもしれない。

 しかし、どういうわけか能力(スキル)について思い出そうと(?)するとメニューみたいなのが開いて思考の海に放り投げられてしまう。

 つまり、確実に一人になれて長時間何もしなくていい時じゃないとダメなんだ。

 

 まあ今回は、ほとんどの能力(スキル)にモザイク処理っぽいことがされてたからさくっと終わったが。

 

「ま、俺も寝るか」

 

 独り言をつぶやきながら俺は自分のベッドに戻り俺の鞄に入っていた服を着て眠りについた。

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