IS 〈レプリカでも人生楽しみたいじゃん?〉   作:紅露雨

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第四話――黒桜、始動。

「火神起きろー朝だぞ」

 

 ゆっさゆっさと体を揺さぶられて目が覚める。

 

「ふぁ~ぁ……おはよう」

 

 手を上げて挨拶をすると一夏の顔が赤くなる

 

「……はやく制服に着替えてくれないか、見てるこっちが恥ずかしいぞ?」

「別にいいだろ。男なんだし」

 

 昨晩、寝る前に着た服は猫耳の生えたパーカーだ。正直着るか迷ったが(なぜか部屋に有った)俺の荷物の中には寝巻きっぽいのがこれしかなかった。制服で寝るわけにもいかないししかたないだろ。

 

 ま、朝飯もさっさと食べたいし制服に着替えるとしますかね。

 息を止める。時門の発動条件はこれでクリアだ。

 

「いきなり息すってどうs」

 

 ──時門発動。

 

 時門の発動。それを願った時、世界に変化が起きる。

 

 俺を中心に一瞬で色が灰色に変わり全ての運動がとまった。視界に入っていない場所も、おそらく同様の変化が起きているはずだ。

 能力(スキル)発動の引き金は、発動するという明確な意思と考えてよさそうだ。

 条件さえ揃っていれば思っただけで発動してしまう。これはメリットで、ある意味デメリットかもしれないな。

 

 さて、息が続くうちに着替えますかね……

 

 

 ◇

 

 

 ──時門解除。

 

「したっ……っていつの間に着替えたんだ?」

「どうよ俺のはや着替えは……ふぅ……」

 

 死ぬかと思った。意外に着替えって時間かかるんだな。

 

「さ、朝飯食おうぜ」

「お、おう……早着替えの仕方あとで教えてくれよ」

「禁則事項です」

 

 能力(スキル)の事なんて言えますか? いや、言えない。

 にしても制服が白いのはどうにも慣れんな……

 

「ま、いいけどさ」

 

 一夏と部屋を出るとちょうどののののが隣の部屋から出てきた。……隣なのかよ。

 

「おはよう箒」

 

 普通に挨拶する一夏……昨日ハプニングあったんじゃないのかおい。

 まあ黙っててもあれだし俺も挨拶しますかね。

 

「あ、ああ……おはよう一夏、と火神」

 

 先を越されてしまった。

 

「おはよう、篠ノ之箒」

 

 無視して一夏と行くかののののも連れて行くか、それとも二人にさせるか、どうするべきかねぇ……

 

「……」

 

 二人にさせてくれと目で訴えかけてくるのののの。まあそうだろうな。

 

「箒どうかしたのか? まいっか、早く行こうぜ火神」

 

 一夏……うーんこの。仕方ない、三人で行くか。

 

「ついでだ、篠ノ之箒も誘ったらどうだ? お前と食べたそうだが」

「いや! 私は別に一緒に食べたくなんて!」

 

 ののののの顔が赤くなった……図星か。まああれだけ目で訴えかけてくるんだしこれで違ったら逆にあれ? ってなるんだけれども。

 

「ほら、箒もこういってるんだし行グッ!?」

 

 無言の左ストレートが見事に一夏の鳩尾を捉える。あれか左を制する者は世界を制すってか。

 

「……ふんっ」

 

 スタスタと歩いていってしまった。

 

「あーらら……いくぞ一夏」

「っつつ……ちょっとは心配してくれてもいいじゃんか」

「自業自得だろ」

 

 

 ◇

 

 

「やっぱ美味いな」

 

 朝食はシンプルに味噌汁と焼き鮭。ほどよく塩が効いていて美味い。

 

「なーなんで箒は怒ってんだ?」

「知るか……自分で考えろ」

「だから考えたって」

「じゃあ直接聞いたらどうだ」

 

 さっきからずっとこの調子である。

 少し味噌汁をすすってみたがやはりこちらも美味しかった。

 

「隣いい?」

 

 女子三人が歩いてきたなーとか思ったていら一人が声をかけてきた。

 そして驚く(?)ことに三人のうちの一人は昨日ののほほんとした人だった。

 

「ああ、別に俺達は構わん」

 

「「「よっしゃ!」」」

 

 女子三人が俺達の……一夏の横に座る。すると周りから「自分も早く行けばよかった」とか「まだ慌てる段階じゃない」とか聞こえてきた。

 俺達は見せ物じゃないってのにったく。

 

「へ~織斑君達朝すっごい食べるんだ~」

 

 そういう彼女のお盆にはオレンジジュースとトーストのみ。

 

「まあな……っていうか女子はそれだけで足りるのか?」

「一夏……踏み込んでいいことといけないことがあるぞ? それに男性と女性では一日に必要とするカロリーが違ってだな……まあ、正直それじゃ動けなさそうだが」

「あはは……私たちは……」

「ねぇ?」

 

 バツの悪そうな顔をする少女ら。まあ少女らの前で遠回しにダイエットのことを言ってるんだから当然と言えば当然か。いやまあ、ダイエットかどうかは知らんが。

 

「大丈夫だよ~お菓子よく食べるし!」

 

 のほほんとした人の格好が今になって気になる。おそらくは寝巻きであろう着ぐるみについては不本意とは言え俺も着ていたから何も言うまい。だが、袖から手が出ていないのはなぜだ……

 

「それは大丈夫と言えるのか?」

 

 俺の問いにただ笑顔で誤魔化すしかない少女ら。ま、自分たちでもわかっているならそれこそ何も言うまい。

 

「そ、それよりもさ! 織斑君って篠ノ之さんと仲いいの? 本音から聞いたんだけど昨日部屋に招いてたんでしょ?」

 

 のほほんとした人の名前は本音というらしい。もしかしたら、苗字と合わせれば“のほほん”と略せなくはないのかもしれない。あくまで可能性だが。

 それと、“招いた”ではなく、“勝手に来た”が正しいのだが……部屋に入れたのは一夏だしあながち間違いでもないのかもしれない。

 

「仲いいっていうかただの幼馴染ってだけで……」

 

 あぁ、一夏は視界に入れてないみたいだが食堂の端の方にいるんだぞのののの。

 

「「「えぇ! 幼馴染!?」」」

「あぁ、小学校1年の時に剣道場に通う事になってから4年生まで同じクラスだったんだ……」

 

 あまり昔のことは覚えていない。そう一夏は呟いた、彼女らには聞こえていないみたいだけど。

 

 パンパン! と手をならしジャージ姿で現れたのは関羽もとい織斑千冬だった。こんな朝早く――といってもすぐ学校が始まるのだが――いったい何用だろうか。にしてもジャージ姿だと教員と言うより教官といった感じがするな。さすがは世界最強(ブリュンヒルデ)、貫禄がちがう。

 

「いつまで食べてる、食事は迅速に効率よく取れ」

「おはようございます。織斑千冬先生」

「聞こえなかったのか? 迅速に、と言ったのだが」

 

 挨拶は基本ですよ~とは緑色の言。っつうことで挨拶をしたんだが一蹴されてしまった。

 

「……すいませんでした」

 

 まあ噛み付いたところで仕方ないし、できるだけ早く食事を済ますか……

 

「私は一年の寮長だ。遅刻したらグラウンド10週させるぞ」

 

 はぇ……と漏らした一夏を見るとその目は寮長や先生に向けるようなものではなく、仲のいい家族をみるようなものだった。

 にしても朝食後すぐに10週は辛いな……俺も急いで食べるか。

 

 

 ◇

 

 

「これより、再来週に行われるクラス対抗戦にでる代表者を決める。クラス代表者とは、対抗戦だけではなく生徒会の会議や委員会への出席など……まあ、クラス長と考えてもらっていい。自薦他薦は問わない、誰かいないか?」

 

 これは……流石に俺の出る幕じゃないだろうな。流石にISについて知ら無さ過ぎる。

 

「はい! 織斑君を推薦します!」

 

 隣の席の女子が手を挙げ一夏を推薦する。それに「私もそれがいいと思います」と別の人が便乗していた。

 

「お、俺!?」

 

 一夏が挙げられた理由はブリュンヒルデこと織斑千冬の弟だからだろうか……それとも単に男だからだろうか。

 もし後者なら俺もあg――

 

「私は火神君を推薦します!」

 

 ――後者だったか、はぁ。

 

「私も火神君がいいと思います!」

 

 ……本人の意思を無視しないでくれ。と声を大にして言ったところで、きゃいきゃいしている連中は聞く耳持たずだろうな……きっと。

 

 こう意識を飛ばしてる間も、一夏か俺か、どっちがクラス代表がいいか言い合ってる。まだ半分も意見は出ていないんだろうが、だが自薦他薦を問わないということは、自薦してくるやつがいるはずだ。少なくとも一人はしてくれる……よな?

 

「私は織斑君を――『納得いきませんわ!』」

 

 力強く机を叩き立ち上がったのは、青いカチューシャ……セシリア・オルコットだった。

 

「このような選出認められません! 男がクラス代表だなんていい恥晒しですわ」

 

 完全に見下した瞳。俺は嫌いじゃない、だが、自薦をしてくれ頼むから。文句だけじゃ意味ないぞ。

 

「そもそも! 実力でいけばわたくしが選ばれるのが必然。それを物珍しいというだけで決めるなんて認められませんわ!」

 

 だから自薦してくれ。

 

「わたくしにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?」

 

 自薦しろと何度(ry)

 

「実力からいけばわたくしがクラス代表になるのが必然。それを物珍しいからなどという理由で決められては困ります! イギリス代表候補生で専用機持ちである私がなるべきで――」

「ではオルコットは自薦すると?」

「まあ、そうなりますわね」

 

 よく言った! ……いやまて、多数決になったら絶対こいつに票入らないじゃん。なんとかして、多数決以外の方法にしなければ……

 

「クラス代表は専用機持ちであり、試験で教官を倒した私がなるべきですわ!」

「だから俺も倒したって」

「ですが、ほとんどISに乗ったことのない素人なのは確かなはずです!」

 

 倒してないのに倒したと言いはる一夏も一夏だが素人に噛み付くカチューシャもカチューシャだな。まあ俺に飛び火がなけりゃいいか。

 

「まあ、そりゃなぁ……」

「ほらご覧なさい! 大体、文化としても後進的な国にくらさなくてはいけないこと自体わたくしにとっては耐え難い苦痛で─」

「イギリスだって大したお国自慢無いだろ。世界一不味い料理で何年連続覇者だよ」

 

 流石に頭にきたのか、怒りをあらわにして反論する一夏。

 俺的には世界一不味い料理のほうが気になるが……いまはひとまずおいておこう。

 

「んなっ! おいしい料理はたくさんありますわ! あなた、私の祖国を侮辱しますの?」

「おいおい先に日本を侮辱したのはそちらだろう……」

 

 言い返すかと思ったが一夏が急に黙り込んだので、代わりに俺が言ってやった。まあカチューシャをみる目はさらに鋭くなっていたが。

 

「いいでしょう、決闘ですわ!」

「いいぜ、四の五のいうよりよっぽどわかりやすい。火神もそう思うだろ?」

「まあそうだな」

 

 たしかに力で決めたほうが早い。だが男織斑一夏よ、それでいいのか?

 まあぶっちゃけ、多数決にしたら多分大人しい俺の方に票が入るだろうからありがたいっちゃありがたいか。

 

「貴方……もしもわざと負ける、などということがありましたら一生わたくしの小間使い――いえ、奴隷にしますわよ」

「俺も火神もそこまで腐っちゃいないぜ」

 

 ……は?

 

「いやいや、俺もやるのか?」

「「当然でしょう(だろう)!」」

 

 まあ負ければいい……いや良くないし。奴隷っておまえ……

 

 俺の気持ちは露知らず、一夏はより挑戦的な目になる。

 

「ハンデはどのくらい付ける」

 

 ……彼は馬鹿なのだろうか? いや聞くまでもなく馬鹿だ。

 どう考えても専用機と訓練機では性能に差がありすぎるだろ。

 

「あら、早速お願いかしら?」

 

 まあ普通はそう捉えるだろうな……性能差など考えてない一夏のことだ、生身のパワーバランスで考えているのだろう。

 

「違う、俺がどれくらいハンデをつければいいのかなーと思って」

 

 一夏が言い終えて一瞬の間を経てクラスは爆笑の渦に包まれる。

 だが一夏本人はなぜ笑われているのかわからないようだ。

 

「お、織斑君本気で言ってる?」

「男が女より強かったのなんてISのできる前の話だよ?」

「もし男と女で戦争が起きたら男は三日持たないって言われてるよ?」

 

 女が男より絶対的に強いのはISに乗れればの話だが。といらない突っ込みはやめておこう。

 おそらく、いや、絶対に彼女らはISを動かせない状況を考えたことがない。世界にISコアがたったの467個しかないのに、だ。

 それに、ISの性能があればたとえ男がISに乗ったって力が同等、もしくは女性の方が有利だと思っているのだろう。

 ISが生身より強いのであって、女が男より強いというのとはまた違うだろ。……まあ織斑千冬とかそういった例外も多々あるだろうが。

 

「……だったら、ハンデはいい」

 

 言ってから自分の失態に気づいたのか顔に焦りの色が見える。絶対こいつ、男女の力差について考えてない。まあ男女の力差に気づいたところで、またISの性能差で焦るんだろうけど。

 

「ええ、そうでしょうね。本来私がハンデを付けるべきか検討する状況ですのに。ふふ、日本の男はジョークのセンスはあるのですね」

 

 このクラスがジョークセンスがあるのではないか? いや原作の作者(弓弦イズル)に、か……

 

「ねー織斑君、今からでも遅くないよ? ハンデ付けてもらったら?」

「男が一度言ったこと覆せるか。なくていい」

 

 俺は時と場合によっては言ったことを覆せる自信があるが。

 

「それは流石にオルコットさんのこと舐めすぎだよ……本当にいいの?」

「しつこい、いいって言ってるだろ?」

「さて、話はまとまったな? それでは三人には次の月曜の放課後、アリーナにて模擬戦をしてもらう。オルコット、織斑、火神はそれぞれ準備をしておけ。……ああ言い忘れていたが、織斑のISだが準備に時間がかかるぞ」

「えっ?」

「予備の機体がない。だから、学園で専用機を用意するそうだ」

 

 ふーむ……まてよ? 予備機がない。で、一夏は専用機を学園で用意してくれるそうだ。……俺のISは?

 

「織斑千冬先生、俺の機体はどうなるんでしょうか? 予備機がないそうですが」

 

 これは不戦敗になるのか、日を改めるのか、どちらにしろ決闘できなさそうだが。

 

「心配するな火神の機体は既に届いている」

 

 ふむ、なら決闘参加については問題はないな……えっ?

 

「一年のこの時期に専用機がもらえるなんて……」

 

 周囲の女生徒らがざわめく。……俺もはっきりいって驚いた。専用機は国か企業に属してないと基本的に貰えないし、企業に属していても代表レベルじゃないと貰えない代物だ。一夏はISの開発者の妹の幼馴染で、ブリュンヒルデの実弟……まあおかしくはない。

 で、俺はどうだ。経歴はどうなってるかよくわからないが、おそらくどこにでもいる普通の子供だろう。少なくとも専用機がもらえるような経歴はないはずだし……教会か? もしそうだったら、まあ助かるがあんまり出しゃばられても困るんだが。

 仮に教会だとして、ISコアの所属はどうなるんだか。仮に467のうちの一つを使っていたとしたら俺はどこかの国に属すことになる。違ったら違ったで大問題だ……まじやめろし。

 

「それはいったいどういうことですか?」

「詳しい話は放課後だ。さ、山田先生授業を」

 

 緑色の名前は山田先生か……文字数的にもこれからは緑色じゃなくて山田先生で行こう。そうしよう。

 

「アッハイ。では昨日の続きから……」

 

 

 ◇

 

 

 昼食の時にのほほんとした人のフルネームを教えてもらったりとかはあったが、それ以外に特にイベントはなかった。

 ISの専用科目の授業に――初日ほどとまではいかないが――ついていけてないまま放課後が訪れる。

 

「話とはなんでしょう? 織斑千冬先生」

 

 STが終わり織斑千冬に連れて来られた場所はISの格納庫だった。

 なんか黒色の物体が多数収納してあった。これがおそらくISなのだろう。

 見た目はスーツっていうよりはアーマー? 武者鎧とかそんな感じ。

 

「ISのコアが467個しかないのはお前も知っているだろう」

「はい、教科書にはそう書いてありましたので一応は」

 

 「前日の授業でも触れられていましたしね」と付け足す。まあほとんど俺と一夏の為の復習なのだから当然か。

 その規定数のコアを世界で割り振って運用しているのも授業で聞いた。

 だが、ここに有るだけで数十機、それに専用機持ちの教員もいるだろうから……少なくとも十分の一はここで使っているのか。

 

「でだ、お前宛に送られてきたISに使われているコアはNo.-1。存在するはずのない……いや、存在しなかったはずのコアが使われている」

「……はあ」

 

 まあ予想の範疇か、存在しないはずの468個めのコアで造られてるのは。

 いやまあ、マイナスは予想外だったが。いや、篠ノ之束がまた製造する可能性を考慮したら必然なのか……?

 

「この事は今は私とあの変態しか知らん」

 

 変態……篠ノ之束のこと……でいいんだよな?

 

「あいつが言うことが本当ならば、特に今までのISと基本構造は変わらないらしい。絶対防御等の安全装置は特に問題ないそうだ」

「そうですか。で、そのISは?」

 

 これだ、と指を指す。その先を見ると周りのそれよりも黒く、見た目はまさに機械ですと言わんばかりのメカメカしい六対の翼……例えるならそう、漆黒の天使だろうか。

 

「名は黒桜(こくおう)、まあ第三世代機だな。折角だ、ここで初期化(フォーマット)最適化(フィッティング)を済ませてしまえ」

「了解です」

 

 制服をパージして(脱ぎ捨てて)胴の開いた黒桜に背中を合わせる。ウィーンだかガションだか音を立てて俺と合体する。うーん……これは着ると言うより、乗るの方が表現としては正しいのかもしれない。

 そしてすぐに視覚情報に黒桜の情報が映し出される。

 

「……ハイパーセンサーの調子はどうだ?」

「特に問題はないです」

 

 といったもののどこまでが正常なのかわからない。少なくとも今目視できる範囲外の情報が自然と脳に流れてくる……というかそのまま視野が360°になった感じか?

 まあ、薄暗い部屋の中でも織斑千冬の表情がしっかりと確認できるほどには視覚情報は研ぎ澄まされているし、その上には織斑千冬と表示されているので、たぶん正常なのだろう。

 

「試運転がてら、アリーナに出てみるといい。今ハッチを開けさせる」

 

 そう言って何処かに電話したあとしばらくすると十数m離れた壁が開き外へと繋がった。

 何番か忘れたが、この格納庫は第二アリーナの内部の壁側にあるため直接この格納庫からアリーナへと出れるのだ。

 

「では、火神……でる!」

 

 別に何か言う必要はないが、初起動時位は言ったっていいじゃないか。

 ……織斑千冬が苦笑いしていたが見なかったことにしておこう。事実、視界には入っていなかったのだし。

 

 開いたゲートからアリーナへ向かって飛んでみる。

 初回はベリーハードって相場が決まっているのでマニュアル操作で。しかし、浮くという動作で一杯一杯だったので翼のスラスターを使って直進しようとしたんだが……なんていうか失敗だった。

 

 対IS武装用に壁が厚くなっているとはいえ3m位しかない。そこで一気に加速すればどうなるか……まあ普通に飛び出しただけだが。ただ、タイミングが悪かった。飛び出したと同時に打鉄の機体情報が表示された。そして、その打鉄は俺の進行方向ど真ん中で……

 

「どいてくれぇぇぇぇ!!」

 

 ぶつかると気づいた時はもう止まれない。叫ぶしかなかった。

 

「きゃあぁぁぁ!」「ちょおぉぉぉ!」

 

 二つの悲鳴。一つは俺、もう一つは俺の声で気づいた打鉄の搭乗者だった。

 

 ――ガッシャーン!!!!

 

 結局避けきれずぶつかってしまった。

 

「いってて……」

「す、すまん! ISに乗るの初めてなんだ」

 

 ぶつかった衝撃で打鉄は墜落。高度があまりなかったためか搭乗者にも怪我はなさそうだった。

 

〈馬鹿者! 何をやっている!〉

 

 織斑千冬の声と同時にその顔が表示される。これが開放回線(オープンチャネル)か……

 

「すみません、思ったより速度出るんですねISって」

〈そのISが異常なんだ……まあいい、最適化(フィッティング)が完了しだい戻ってこい〉

「了解」

 

 最適化(フィッティング)が完了するまでその搭乗者と飛び回って遊んだ……まあエネルギー切れで打鉄の中の人は10分も一緒に飛んでないが。

 超乗車の名前は表示されていたが、記憶には残っていない。すまんな。

 

 とまあ無事、俺の専用機も最適化(フィッティング)が完了しこの日は終了。次の日の午後までは一夏の箒に対する愚痴を聞く以外何事もなく過ぎた。

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