昼食をいつもどおりに、といってもまだ三日目だが、昼食を頼みおばちゃんが出してくれるのを待っている。今日は知識にある中でも、特に美味しそうだった炒飯だ。
……にしても、待つ時間は昨日も思ったが暇だ。一夏はののののに持って行かれているので話し相手がいない。
そういえば俺のIS、黒桜は現行のISの中では異端らしい。なんとも昨日の打鉄の中の人によると、
背を指で突かれたので後ろを見ると、昨日の打鉄の中の人の顔がそこにあった。
「やあ奇遇だね」
「昨日はすまんな、それと近すぎる気がするんだが」
背伸びでもされれば唇が触れてしまうような距離。身長は山田先生くらいだろうか。まあ髪は赤色のセミロングだし、胸は並かそれ以下だからあの先生と間違えようもないのだけど。
「そう? にしても昨日は凄かったね、いきなり突っ込んで来るんだもん。その後も激しかったし」
「誤解を招くような言い方はよしてくださ……れないか?」
一歩後ろに下がるとき揺れる胸のリボン――胸は揺れていない――の色が1年とは違うことに言いながら気付いた。1年以外……つまり2年か3年ということだ。敬語に直そうと思ったが、昨日散々喋ってたし別にタメでもいいか。
「うん、くだされないよ。君をから――」
「ほい、お待ちどうさま」
からかうと言いたかったのだろう言葉は、おばちゃんがだした炒飯によって遮られた。
「……ありがとうございます」
「いえいえ」
思わずジュルリと舌舐りしてしまいそうな、黄金色の見た目も然るものながら、芳ばしいなんかの香り。共に申し分ないそれは、記憶にある炒飯よりも美味そうな……いや、我慢できないさっさと席について食べよう。
時門を何度か使ってこの食堂に来たためまだ他の生徒はあまり見られない。そう、どこでも座れるのだ。
折角だし海が見れる窓際の席に座ることにしよう。
向こうでなんか言ってる打鉄の先輩は放っておいてさっさと食べよう。冷めては元も子もないしな。
「いただきます。パク……うまい」
こうなんていうかあの、あれ……あれだよあれ。ああもう! うまく表現できない自分が恨めしいが口の中に広がる香りが一口、また一口と食べ進めてしまう。
自分の味覚に美味い、不味いしかないのは表現に困るな。いろいろ食べて覚えよう。
どうでもいい決意が終わったところで打鉄先輩が隣に座る。既に俺は半分食べ終わっているのだが、持ってきた料理とその量は大差ない。しかも彼女も野菜メイン……なのに一向に減らない体重……おかしのちからってすげー!
「見るたび思うんだが女子って間食抜いたら死ぬんじゃないか?」
「失礼しちゃうわ、私おやつはあまり食べないほうなのに」
「あまりって事はたべるんだろ?」
「むぅ……」
図星なのか頬を膨らませて食事を始める打鉄先輩。顔を背けるくらいなら場所ずらせよ……俺も残り食うか。にしても美味いなこの炒飯。
~~少年食事中~~
「ご馳走様でした。いや、ほんと冗談抜きでご馳走でした」
食べ終わった食器に深々と頭を下げる。傍から見たら変人に映るだろう。俺もそう思う。でも、それだけ炒飯が美味かったんだ。この程度の奇行なんざ普通だろう。
ある世界にはパンを食べただけで宇宙や時間を旅行できる猛者もいるらしいしな、俺は現実にいるから普通だ……よな?
「ごちそうさまでした。……
なにやってんのって目はいいから。自分でもわかってるから。
そんなことより自己紹介だ。こちらの不注意とはいえ、名前がわからないと不便だしな。
「そういえば名乗ってなかった。1年1組の火神真由だ。あんたは?」
「私は2年1組の
「一夏じゃなくて残念だったな、美剣音羽先輩」
「本当、織斑君じゃなくて残念ね。あと名前でいいわよ」
笑顔を浮かべる音羽先輩、少なくとも残念がってはなさそうだ。いや、むしろ一夏じゃなくてよかったといった感じか。
「とても残念そうには見えないのだが音羽先輩」
「ふふっ♪ それよりも敬語使えないの? 一応私先輩だよ? ま、私はそっちのほうが楽でいいんだけどさ」
「敬語使えないのかって言われてもな、敬語で話すほど目上に見えないから当然だろう?」
「酷くない!? そりゃ昨日は結構格好悪かったとは思うけどさ、流石に私も傷付くよ?」
グサッ! と口で言いなだら胸に手を当て、わざとらしく悲しむ音羽先輩……やっぱこの学園は芸人育成学校だったのかもしれない。
冗談は置いておいて、常人なら傷ついても仕方がないセリフか……フォローしておくか。
「それは失礼したな……あんたが先輩ってのが信じられなくてな。その、可愛いからさ」
「……つまり幼いって言いたいんでしょー?」
「いや、そう言うわけじゃ」
「冗談♪ でも、あんまり可愛いとか気軽に言うと誤解されるよ?」
可愛いだけで誤解を招くとか、ここはあれか地獄か。
「変態に」
地獄だった。
「……以後気を付けようと善処しようとしよう」
「それ気をつける気無いじゃん」
そうともいう。
……そろそろ時間もいい頃だし教室に向かいますか、たしか次は美術だし急がないとな。
「……そろそろ時間だし俺は戻る。ついでだし、音羽先輩の分も片付けてこようか?」
「頼む前に自分から来るとは……こいつ、できる!」
「パシリの才能を察されても困るんだが……で、どうする?」
「ほぼ初対面の後輩に片付けさせるとか悪者じゃない。でもまあ好意には甘えさせて貰うわね」
音羽先輩のプレートを重ねる。まあ今回だけだぞきっと、皿が重ねられる時じゃないと危ない。
「では、俺は行きますね」
――時門発動。
音羽先輩が後ろを向いた隙に時門を発動し、食堂を後にした。
◇
放課後、俺はののののに呼ばれて剣道場にきた。
来週の決闘に向けての特訓だそうだ。
「おそいぞ火神」
「すまんな」
そこには防具を身に付けたののののと一夏がいた。残念なことに一夏は地に伏せているが……女に負けたのか。
「早速だが手合わせ願いたい」
「別に構わんが、俺は剣道のルールなんざ知らんがいいのか?」
「構わん」
「あっそ、武創」
右手に竹刀を創造する。防具? 必要ないよそんなもの。
「さ、試合開始と洒落こもう」
「待て火神! 流石に防具を着ないとは言わせんぞ!」
「そうだけど?」
防具を着ないことが逆鱗に触れたのか足元の一夏を蹴り飛ばし場を開けるのののの。
「……貴様、舐めているのか」
「いや、付けたことない物付けて動くとかそっちのほうが失礼だろ? だからさ、遠慮はしなくていい……来な」
左手を曲げ挑発すると竹刀を振り上げ向かってきた。3mほどの差は一瞬で詰められる。それでも遅いが。
「はぁっ!」
時門を発動すると周囲の時間が止まる。勿論、ののののも。
そのままののののの横に移動し解除する。
どうでもいいがののののの○○って見にくいな……。
「なっ!?」
「遅い」
振り下ろしてすぐの篭手に触れる……確かこれで勝利だよな?
「まだやるか?」
「……」
「そうか。一夏、防具を取ってきてくれ」
「はいはい」
防具の付け方を一夏に教わり装着する。その間もののののは呆然と立ち尽くしていた。
「こい、篠ノ之箒。正々堂々受けてやる」
「情けなど必要無い!」
「来ないのならこちらから行くぞ」
足運びの仕方は記憶にあるそれを真似し、できるかぎりスピードを出して突っ込む。
流石にやる気を出したのか、ののののは正面に剣を構えた。
先程の間合いと同じ3m。半分ほど進み面を打とうと少し竹刀をあげたとき、竹刀を弾かれる。
懐かしい感覚が体を駆け巡った、オリジナルもこうやって戦ったのか?
「……どれだけ私を侮辱するつもりだ」
「全力で向かってるんだがな……不満か?」
「先ほどの動きはどうした!」
「あんなズルして勝てても嬉しくないからな」
こうしてしゃべっている最中も打っては返され、打たれては返しを繰り返している。
勿論、素の実力じゃ勝てないから所々時門で時を止めてはいるが。
「ああ、そうだ。どこでもいいから一撃入った方が勝ちでどうだ? このままじゃキリがない」
「もとよりそのつもりだ!」
お互いに身を引く。ののののは俺の喉めがけて竹刀を突き出してきた。だが……遅い。
「闇時雨流――雷突」
向かってきた竹刀を竹刀で突く。それだけで両者の竹刀は粉々に砕け散った。ののののは吹っ飛び俺はその場で崩れる。見た感じ
――闇時雨流剣技、雷突。
どこの流派かしらないが記憶にあった剣技の一つで、突くのに必要のない部位に行く信号を腕を動かすのに使い、無理やり限界の力を超える技だ。簡単に言うと、腕だけ火事場の馬鹿力状態にするだけ。
倒れた原因はののののの突きじゃなくてこっちの生体電流を弄った代償。足に力入んねえ、あと肩痛え。
威力は凄まじいが、その分代償はでかい。たぶん翌日筋肉痛は免れないだろうな……てか、突きの勢いで肩が外れるって無理しすぎだろ……
てかやりすぎた?
「いっつつ……篠ノ之、大丈夫か?」
「あ、ああ……大丈夫だ」
吹っ飛んだののののを見ると一夏に支えてもらっていた。音がなかったのは一夏がキャッチしたからか。
それにしてもなんでガチになってんだ、俺……