鑑定スキル特化TS女子は異世界でもオタクを満喫する 作:アナライザー
私の人生は、実はあんまり順風満帆というほどではなかったりする。
幼い頃は片田舎の何も無い村で村娘として育った。
冬を超えるのも精一杯というような貧しい村ではあったけど、両親は優しかったし村人もいい人ばかり。
決して悪い環境ではなかったと思う。
そんな村が賊に襲われて、見た目の良かった私も商品として売られそうになったのは、八歳の頃。
当時の私には鑑定スキル以外の特別な力なんてなかったから、抵抗なんてできるわけもない。
売り物だからということで、傷になるようなことはされなかったけど。
当時の恐怖を、私は今も忘れてはいない。
ただ、そんな状況でも救いの手は差し伸べられた。
売り物として私が放り込まれたのは、賊の戦利品が詰め込まれた荷台の中。
賊は私のことをただの村娘だと思って、手足を縛るだけで荷台に転がしたものだから、私は鑑定が仕放題。
賊の手から逃げるのは簡単だった。
――その時に出会ったのが、私の終生の相棒にして”推し”。
守護宝剣エイギスだった。
それからは大変だ。
何度騙されたり、殺されかけたかわからない。
そもそも私には戦闘の心得すらないのだ。
孤児の私が生きていくには冒険者になる他なかったけど、最初のうちはまともに魔物も殺せず大変だった。
それでも鑑定スキルと魔道具のお陰で、何とか生活を安定させることができたのである。
その頃には、私は魔道具の魅力に取り憑かれていた。
鑑定スキルのお陰で魔道具を手に入れる機会には事欠かなかったし、何より魔道具っていうのは
時には想像もしない効果で敵をやっつけたり、あんまり役に立たないけどユニークな効果を発揮したり。
大変なことばかりの異世界で、魔道具は私にとって癒やしの存在になっていった。
やろうと思えば、魔道具で無双したり成り上がったりすることもできるだろう。
実際、一部では私のことを蒐集姫なんて呼ぶ人もいる。
だけど、可能な限り私は自分の正体を隠すことにしていた。
目立ったら、変な連中に魔道具を狙われかねない。
何より、魔道具を集めることが私の人生の意義なのに、変に立場を手に入れてそれを阻害されたくないのだ。
だから冒険者として食うに困らない立場を手に入れたら、私の生活はずいぶんとのんびりしたものになった。
魔道具があって、それを愛でれたら十分。
女として見られたいわけでもないし、英雄扱いもされたくない。
だけど、たまに、たまーには、冒険者らしく活動することもある。
まぁ、それも――魔道具に関わることに限るんだけど。
+
「サーチャさん、ダンジョンの回収依頼、今回も参加でいいですよね?」
「もちろん! これが私に月に一度の楽しみなんだから!」
冒険者ギルドの受付にて、いつも私の受付を担当してくれるアイナちゃんから声をかけられる。
ダンジョンの回収依頼。
なんだか不思議な言い回しだけど、話は簡単だ。
この世界において、ダンジョンとは資源である。
まずそもそもこの世界のダンジョンは、魔道具が宝箱から出土したり、魔物を倒すと素材をドロップするのだ。
しかも定期的にダンジョンは中身がリセットされ、宝箱等が補充される。
これを回収することでこの世界の人類は発展を遂げたといっても過言ではない。
だからダンジョンの定期的なリセットに合わせて、冒険者は各階層に残った宝箱を回収することになるわけ。
これが回収依頼。
「本当に回収依頼がお好きですよね、サーチャさん」
「まあねえ、普段は私の等級が高いせいで、あんまり宝箱の回収ってできないし」
私は魔道具が好きだから、当然ダンジョンの中から出土する魔道具も漁りたい。
なんなら独り占めしたい。
だけどそれをすると他の冒険者の生活が成り立たなくなるし、私は二級冒険者だから今いるギルドでは上位の冒険者。
本当に独占できてしまうから、泣く泣く自重しているわけ。
まあね、オタ活の仕方は集めるだけじゃなくてね、布教もありますからね!
「でも回収依頼は別! 自由に魔道具を集められる最高の機会なんだから!」
「といっても、回収したアイテムは全部一度ギルドが引き取ることになるんですけどねえ」
「そこはほら、自分が見つけたものには優先して買い取れる権利があるからいいんだよ」
回収依頼は、まず前金としての固定報酬に、拾った魔道具の数に応じて出来高報酬が出ることになっている。
拾った魔道具を自分のものにすることはできないし、魔道具の値段に応じての買取も行っていない。
そもそも回収依頼がかかるまでダンジョンの宝箱に残ってる魔道具なんて、大抵他の冒険者が見つけたけどいらないからって放置されたものが大半だからね。
回収する価値のあるもの、高値で買い取りされるものは回収されない。
それでも私はこの回収依頼が好きだし、何よりこの依頼こそ私が最も冒険者らしいことができる依頼なのだ。
「じゃあいつも通り、サーチャさんにはダンジョン下層全五回
「了解」
何せ、この世で最も鑑定が活躍する依頼なのだ、これは。
+
鑑定は、魔物や人のステータスから、罠の発見、そして言うまでもなく魔道具の鑑定にも使用できる。
これはつまり、私は冒険者として非常に万能な斥候ということだ。
若い頃はそうやって、斥候で他の冒険者に引っ付いて回ることで生活費を稼いだもんじゃよ……
エイギスの扱いも慣れてなかったせいで戦闘では役立たずだったから、腹いせと称して狙われることも多かったけど。
まぁ、それでも貞操の一つや二つくらいならエイギスは守ってくれるので、ここまで何とかやってこれたわけだ。
「”鑑定”」
そんなわけで、今日も今日とて鑑定で回収依頼をこなす。
私の鑑定スキルはあまりにも高性能だから、一人で残った数階層分の宝箱を回収可能。
結果、下層と呼ばれるダンジョンの中で一番魔物が強いエリアは、専ら私が担当することになっていた。
ベテランほどやりたがらないんだよねぇ、回収依頼。
逆に私は魔道具を鑑定できる上に、回収依頼の報酬を独り占めできるのでうっはうはだ。
ダンジョンのリセットは一月に一回なのだけど、その一回の回収依頼で1ヶ月分の生活費を賄える。
まぁ私は何かと出費の多い人間だから、それ以外にも稼ぎは必要なんだけどね。
と、そんな時。
「……ん」
私の鑑定スキルに、少し違和感。
こういう違和感は大抵――
「――やっぱり、隠し通路だ」
誰にも知られていない、隠し通路への入口をスキルが鑑定したのである。
「あちゃー、運がないねぇ」
こういう隠し通路の先には、大抵すごいお宝が眠っているものだ。
しかしこの隠し通路は、私の鑑定スキルですら普通に見ているだけだと違和感程度しか察知できない代物。
見つけるのは至難の業だろう。
「でもまぁ、その御蔭でこうして私が買取権を獲得できるわけだし、悪いことじゃないねぇ」
回収依頼前に見つけていれば全部自分のものなのだから、それはそれで運が悪いという意見もあるかもしれない。
でも私の場合は、逆に独り占めできてしまうほうが、困ったことになる場合が多いのだ。
なにせ――
「さーて、お宝ご開帳!」
鑑定スキルで、隠し通路へと進み。
鑑定スキルで、無数の罠を解除して。
ついに、私はお宝が入った宝箱の前にたどり着く。
そこには複数の宝箱が並んでいて、私じゃなくても目を輝かせることだろう。
しかし、中身は――
「――
持ってた。
開けた宝箱には、私が既にコレクションしている魔道具がずらり。
そりゃそうだ、だって私が普段活動しているダンジョンの宝箱なんだもの。
ダンジョンの宝箱の中身は、ある程度パターンがある。
ホームのダンジョンの宝箱の魔道具とか、全種類十個ずつコレクションしてるよ!
「よかったぁ、合法的に回収してくれる人がいて……私じゃいくら持ってても
そして、私が回収依頼をありがたがってる理由はただ一つ。
捨てられないのだ。
だって推しだぜ?
理由があって引き取ってくれるならともかく、自分から手に入れちゃったら捨てるなんてできないよ……!
というわけで回収任務は、私にとって非常にありがたい代物なのだ。
ああでも、見つけた魔道具の中に、一つ面白いものがあった。
これだけは、ちょっと買い取らせてもらうとしよう。
具体的に何が見つかったか。
それは一言で言うと――
そうなんです、私、料理チートもできるんです!