最近仮面ライダーにハマりました。推しはビリビリしてるクローズチャージです。
ついに、待ちに待った「その日」がやってきた。
路面電車のガタゴトという揺れに身を任せ、九人の少年少女が降り立ったのは、潮風の香りが漂う小さな無人駅。ホームから足を踏み出した瞬間、じりじりと肌を焼くような太陽の熱気と、どこまでも高く澄み渡った青空が彼らを迎え入れた。
目の前に広がる、宝石のように透き通った海。その輝きに、誰からともなく歓声が上がった。 砂浜に荷物を放り投げると、そこからはまさに「夏」そのものの時間が始まった。
「もっと右! いや、左だって! ……おい、どっち向いてんだよ!」
アカネの苛立ち混じりの叫びが、砂浜に響き渡る。目隠しをされ、木製バットを握りしめたミサは、フラフラと覚束ない足取りで砂の上を彷徨っていた。
「もうっ、バラバラなこと言わないでよ! ……えいっ!!」
ミサが勘を頼りに振り下ろした一撃は、見事にスイカの真芯を捉えた。パカリと小気味よい音を立てて真っ赤な中身が弾けると、九人の笑い声が、穏やかな波音に溶けていった。
網の上では、脂の乗ったサバが焼かれ、香ばしい匂いと煙を盛大に漂わせていた。
「……やっぱりうめーな、焼き立てのサバは」
ギンジが満足げに呟く。
「アオト、めちゃくちゃ幸せそうな顔してるね」
サキのからかいに、普段はクールなアオトの頬が緩んだ。
「サバは僕の大好物なんだ……。って、ちょっとミサ! それ僕が狙ってたやつ!」
「早い者勝ちだよ! ……あ、ミドリ、食べるの早すぎ!」
「あー食った食った! みんな、次はビーチバレーしようぜ!」
アカネの号令に、女子メンバーもアオトも力強く頷いた。ギンジと親友も「負けないぜ!」と闘志を燃やす。
「んじゃ、グッとパーでわかれましょ……」
同じ場所で、同じ時間を、同じ笑顔で。 世界の違いも、過去の重荷も、この瞬間だけはすべてが夏の光の中に消えていた。 やがて、高くあった青空は、穏やかな橙色へと染まり始める。
その喧騒を、遠く離れた岸壁の影から双眼鏡でじっと覗き見ている人物がいた。
「……楽しそうだな、あいつら」
あなたがポツリと独り言を漏らした、その時。
「――おい、ぼさっとするな! 手を動かせと言っただろう!」
背後から声を荒らげたのは、共に作業をしていた誰か、あるいは呆れ顔のハロだった。
「カードの新弾」という口実で誘いを断ったあなたが、実はハロにも手伝わせて準備していた「何か」。あなたは慌てて双眼鏡を置き、汗を拭いながら、まだ完成していない装置の調整へと戻った。