「若者の全て」などと誰がよんだのかな?
by Dr Nantoka Nox
終わりの予感、そして。
太陽が完全に水平線の向こうへと沈み、夏の一日が終わりを告げようとしていた。
火照った肌に夜風が心地よく、けれどどこか寂しい。
水着を脱ぎ捨て、それぞれの私服に着替え終えた9人の間には、自然と沈黙が流れていた。
「……楽しかったね」「ああ、そうだな」
ぽつりぽつりと交わされる言葉。駅へ向かう足取りは重く、誰もが「もう、行かなくちゃ」という現実に、胸を締め付けられていた。
平和になったはずのこの世界でも、楽しい時間は永遠ではない。
だがその時――。
――シュゥゥゥゥゥッ……ドォォォォォォォンッ!!
静まり返った夜空を切り裂くように、巨大な炸裂音が鳴り響いた。
驚いて空を見上げる9人の瞳に映ったのは、闇を鮮やかに塗りつぶす、大輪の光の花。
それは、カードゲームに夢中になっているはずのあなたが、ハロと共にみんなのために用意した、最高に贅沢な「贈り物」の始まりだった。
ヒュルルル……ドンッ!!
夜空を震わせる轟音と共に、視界いっぱいに広がる極彩色の光。
驚いて空を見上げる9人の瞳に映ったのは、闇を鮮やかに塗りつぶす、大輪の光の花だった。
「うわぁ……っ!」
「すっげぇ……!」
一方、その光の真下。
火薬と焦げた匂いが充満する打ち上げ現場で、あなたはススだらけの顔をぬぐいながら、空を見上げているハロに声をかけた。
「……なぁ、ハロ。みんなどんな顔してるかな? ここからじゃ見えないけど……楽しんでくれてるかな?」
あなたの肩に乗ったハロが、パタパタと耳を動かし、カメラアイを明滅させる。
「観測、終了! ズーム、解析! ……報告、報告!
全員、空ヲ見テル! 口、開イテル!
アカネ、大笑イ! ミサ、感動中! サキ、ビックリ顔!
作戦、大成功! 大成功! (あなたの名前)、カッコイイ!!」
「そっか……。よかった……」
ハロの報告に、あなたは安堵の息を吐き、へらりと口元を緩めた。
自分がみんなの所にいられなくても、彼らが笑ってくれているなら、それだけで泥だらけになった甲斐があるというものだ。
しかし、その感傷的な空気は、背後からの怒号によって一瞬で吹き飛ばされた。
「おい若造ォォッ!! 何をボサッとしてやがるッ!!」
「ひぃっ!?」
頭にねじり鉢巻を巻いた花火師の師匠が、真っ赤な顔で怒鳴り込んできた。
「感傷に浸る暇があったら手を動かせ! 次の連発(スターマイン)の装填がまだだろうが! お前が言い出したことなんだ、一発のズレも許さねえぞッ!!」
「は、はいっ! すみません! すぐやります!!」
「ハロ、手伝ウ! 導火線、セット! 急ゲ、急ゲ!」
あなたは慌てて軍手をはめ直し、再び熱気と火薬の匂いが渦巻く作業へと戻っていった。
夜空で咲き誇る美しい光。その影には、みんなの笑顔のために走り回る、あなたの必死な汗と努力があったのだ。