バカみたいに笑い合っていた「あの夏」に話をちょっと戻そう。
あなたは夜のイベントの目玉である「打ち上げ花火」を成功させるため、一人離れた作業小屋に籠もって火薬と格闘していた。
残りの9人は、その間ビーチで羽根を伸ばしていたのだ。
1. ビーチの惨劇:禁断の言葉と「スイカ割り棒」の処刑人
砂浜では、サキがじーっとミサの水着姿を見つめていた。
そして、穏やかな波音を切り裂くような無機質な声で、特大の爆弾を投下したのだ。
「ねぇミサ。その水着、デザインは可愛いけど……少し隙間が目立たない?」
サキは、悪気のない(しかし致命的な)純粋な瞳でミサの胸元を指差した。
「……は?」
「あ、ごめん。……いわゆる、『ペチャパイ』というカテゴリーなのかなって」
ミサの動きが凍りついた直後、隣でジュースを飲んでいたアカネ、ギンジ、親友の3人が「ブフォォッ!!」と、まるで噴水のように盛大にジュースを吹き出した。
「ゲホッ、ゲホッ! アハハハハ! サキ、お前……直球すぎるだろ!」
「ペチャ……っ、おなか痛ぇ!! 確かにまな板……いや、なんでもねぇ!!」
男たちが砂浜に転げ回って爆笑する中、一人だけ冷静なアオトが、不思議そうに首を傾げた。
「……ねぇ。さっきから言っている『ペチャパイ』って何? 新しいスイーツ?」
そのあまりに無垢で冷静な問いかけに、親友が笑い転げながら最悪の追い打ちをかける。
「バカ、アオト! それはな、ミサの胸が平らで、前と後ろの区別がつかねぇって意味だよ!」
「…………」
ミサの背後から、噴火寸前の火山のようなドス黒いオーラが立ち昇った。
「……あんたたち……。一人残らず、そのふざけた頭をスイカにしてやるわぁぁぁッ!!」
ミサは近くに落ちていた「スイカ割り用の木の棒」をひっ掴むと、般若の形相で野郎どもを追い回し始めた。
「ぎゃあああッ! 待てミサ! 俺は説明しただけだ!」「痛い! 棒がしなってる! 本気だあいつ!!」
「ぎゃあああッ! 待って! 冗談だって!」「痛い! 尻を叩くな尻を!!」
夏の静かなビーチに、逃げ惑う男たちの悲鳴と、ミサの怒号が響き渡った。
2. ビーチバレー:サキ、驚異の身体能力
騒ぎが一段落した後(男たちの頭には立派なコブができていた)、チーム分けをしてビーチバレー大会が開催された。
チームA:アカネ、ユカリ、ギンジ、親友、ミサ
チームB:アオト、ヒカリ、サキ、ミドリ
人数不利なチームBだったが、試合が始まると一人の少女がコートを完全に支配した。サキである。
彼女は砂浜という足場の悪さを全く感じさせない俊敏な動きで、全方位を一人でカバーしてみせた。
「……くるよ」
ギンジの放った渾身の剛速スパイクを、サキは無表情のまま完璧なレシーブで拾い上げ、そのまま自ら驚異的な跳躍力で空中へ舞い上がる。
「えっ、高っ!?」
「滞空時間がおかしいだろ、フェネクスかよ!?」
敵チームが驚愕する中、サキは空中で静止したかのようなフォームから、砂を巻き上げる鋭いスパイクを叩き込んだ。
結果はサキの超人的な活躍によりチームBの圧勝。
運動神経が良すぎるサキに対し、ミサは「あんた、機体に乗ってなくてもエースなのね……」と呆れ顔で呟いていた。
3. 伝説の超サ〇ヤ人と、師匠の教え
その頃、あなたは制作小屋で導火線の調整の合間に休憩をとっていた。
扇風機の風に当たりながら、スマホで懐かしの「ブ〇リーMAD」を眺めていた。
『カカロットォ……! 10円……!
岩盤におしまいだぁッ!!』
「ヒィーッ! アハハハ!! やっぱりこれ腹筋崩壊するわ! 10円で何ができるんだよ!」
一人で画面に向かって爆笑していると、背後に大きな影が落ち、首筋を太い指でギュッと摘み上げられた。
「小僧。……何をそんなに笑っている。……ほう、伝説の超サイヤ人か」
「げっ!? 師匠! いえ、これは……その、ニコニコの……」
あなたが慌ててスマホを隠すと、花火師の師匠は腕を組み、沈みゆく夕日を見つめながら静かに語り始めた。
「少年よ。お前が笑っているその『圧倒的な力』を、ただの娯楽で終わらせるな。……火薬も、そしてお前がいずれ扱うであろう巨大な力も、扱い次第で『光』にも『絶望』にもなる」
「……え?」
「画面の巨漢がどれだけ暴れようが、それは空虚な力だ。だが、お前がこれから打ち上げる花火はどうだ? 一瞬の輝きで、見た者の心に消えない希望を刻むだろう」
師匠はあなたの肩を力強く叩いた。
「笑うのはいい。だが、力に呑まれて自分を見失うな。巨大な力を持つ者こそ、誰よりも謙虚にその使い道を考えろ。お前が打ち上げるのは、絶望の炎か? それとも、仲間を照らす光か?」
「……はい、師匠!!」
あなたはスマホをポケットにしまい、大切な教えを深く胸に刻んだ。