Divine Gate2.0+   作:観測神ミンスキー

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【作品に関する注意書き】

・本作品は『ディバインゲート』および『機動戦士ガンダム』シリーズの二次創作小説です。 権利は GungHo Online Entertainment, Inc. および 創通・サンライズに帰属します。

・本作品は、文章の校正・添削にAIを使用しています。


第6話:オペレーション・ゲート・ブレイカー

「……よし。宇宙(そら)に上がるのは、[あなたの名前]とミサ、それにアオトとユカリの四人だ」

 

親友が地図を指し示し、作戦の要となる選抜メンバーを告げた。

その声には、冷徹なまでの判断力と、友を危険な場所へと送り出す苦渋が混在していた。

 

今回の作戦において、大気圏を突破し、真空の戦場を縦横無尽に駆け抜ける機動力を持つのは、間違いなくモビルスーツ(MS)という鋼の巨人だ。

しかし、標的である衛星を護る未知の防壁を打ち破るには、

物理的な火力を越えた「適合者」たちの理外の力が不可欠だった。

 

あなたとアオトが担うのは、最前線を切り裂く「槍」の役割だった。

機体の外部ラッチにアオトが同乗し、彼が操る『水』の力によって、

大気圏突入時の焦熱や衛星の熱線攻撃を強制冷却する。

熱力学を無視した絶対零度の盾を纏い、最短距離で標的へと肉薄する決死の突撃。

 

一方で、ミサとユカリは死角なき「目」を欺く「影」となる。

ミサのパワフルな機体を、ユカリが紡ぐ『闇』の幕が覆い隠し、

敵の電子的・光学的な監視をことごとく欺瞞する。

それは、星々の瞬きに紛れる、実体のない幽霊船のような隠密行となるはずだった。

 

「宇宙かぁ……。また行っちゃうか!」

 

ミサは微かに指先を震わせながらも、いつもの快活さを失わずに機体を起動させていく。

その震えは恐怖ではなく武者震いであると、力強い駆動音が物語っていた。

 

「……冷たい静寂の世界。僕の力も、少しは役に立つはずだ」

 

アオトが静かに、しかし揺るぎない決意を込めて呟いた。その隣で、ユカリもまた深い闇をその身に纏わせ、静かに頷く。

 

「闇が、あなたたちの道を照らすわ」

 

MSと、異能を宿した適合者。二つの世界の力が一つに重なり、星の海へと続く道が今、開かれようとしていた。

 

衛星へと昇る四人の背後で、残されたメンバーにもまた、

作戦の命運を左右する極めて重要な任務が課せられた。

地上からの情報攪乱、そして衛星破壊を成し遂げた四人が帰還するための「路」を死守することだ。

 

「通信基地の制圧とハッキングの維持……。分かってる、こっちはあたしたちに任せなよ」

 

サキはモニターに映し出された基地の構造図を鋭い眼差しで見据え、隣に立つあなたの親友へと短く視線を送った。彼らが駆るMSは、この作戦における電子戦の要。天の眼を封じ、虚偽の情報を流し続けるための鋭利な牙として、衛星中枢へと深く突き刺さることになる。

 

一方、アカネ、ミドリ、ヒカリ、ギンジの四人は、衛星から降り注ぐだろう

熱線を弾き返し、仲間たちが帰還すべきこの世界を文字通り「死守」すべく、防衛ラインへと展開した。

 

「上からのレーザーだろうが何だろうが、俺たちが全部弾き返してやる。……ここから先は、一歩も通さないぜ!」

 

アカネの力強い宣言に、三人がそれぞれの決意を宿した瞳で頷く。

愛する「イマ」を、そして空へ向かう仲間たちを信じる者だけが持つ、揺るぎない覚悟の輝きだった。

 

二つのチームが地上と空、それぞれの場所で死力を尽くす。

そのすべての歯車が噛み合った時、初めて閉ざされた未来への扉が抉じ開けられる。

サキが冷静に指示を飛ばした。

 

「(あなたの名前)、ミサ。あなたたちの背中は、私たちが守るから。……必ず戻ってきて」

 

格納庫の重厚なハッチがゆっくりと開き、静寂に包まれたユナイティリアの夜空がその全貌を現した。並び立つ二機のモビルスーツは、これから始まる決戦の予感に身を震わせているかのようだった。

 

機体が放つナイトロの燐光は、依然として不気味な青白さを湛え、周囲の闇を浸食していた。

それと呼応するように、サイコミュは宇宙の彼方から届く「観測衛星」の不穏な拍動を、あなたの意識へと直接叩き込んでくる。

それは、物理的な距離を超越した、逃れようのない宿命の呼び声だった。

 

「ハロ、準備はいいか?」

 

「準備完了! 宇宙、行こう! 宇宙、行こう!」

 

直後、機体を載せたシャトルのブースターが猛烈な火炎を噴き上げ、発射場の空気を一瞬にして焼き尽くした。

 

「アオト、……しっかり捕まってろ。……行くぞ!」

 

あなたの、魂を沸騰させるような一喝と共に、二機のMSを載せたシャトルは夜の帳を鋭く切り裂いた。重力の鎖を力ずくで振り切り、遥か高みへと、光の尾を引いて苛烈に駆け上がっていく。

 

地上ではアカネたちがその一筋の光跡を黙然と見上げ、アーサーは祈りにも似た静謐な眼差しを空へと向けていた。

 

聖なる扉が消え去り、このかけがえのない「イマ」を繋ぎ止めるために。

 

今、ガンダムと適合者たちは、運命が渦巻く深淵なる星の海へと旅立った。

 

重力の枷を振り切り、薄い大気の層を突き抜けたその先に待っていたのは、すべてを飲み込むような絶対的な静寂だった。

しかし、その静寂は安らぎではなく、剥き出しの殺意を孕んだ「防衛網」によって支配されていた。

 

漆黒の宇宙を背景に、冷徹に浮かび上がる巨大な「観測衛星」。その周囲には、無数の不気味な光点が意志を持つ病原菌のように蠢いていた。

 

「……来たぼん! 衛星の自動防衛システム、『無人迎撃ドライバ群』だぼん!」

 

めたぼんの警告が緊張を叩き込んだ。直後、無機質な機械の軍勢が一斉に加速し、牙を剥いて襲いかかってくる。

 

ドライバ群の中から一際異彩を放つ機体が姿を現した。四つのセンサーが不気味に赤く発光し、瞬時にあなたたちの機体をその焦点へと捉えた。

 

「あれは……わたしたちの世界の機体!? なんでGN-X(ジンクス)がこんなところにいるの!」

 

ミサの驚愕に満ちた叫びが響く。本来ならばあなたのいた世界に存在するはずの高性能量産機。しかしそのコクピットにパイロットの鼓動はなく、衛星を守護するためだけに再構成された冷たい操り人形と化していた。

 

異界の技術と既存の兵器が混ざり合い、歪んだ進化を遂げた最悪の迎撃部隊。星々の海を舞台にした、絶望的な防衛突破戦の幕が切って落とされた。

 

「僕に任せて。……真空の海も、僕にとっては庭のようなものだ」

 

アオトが精神を研ぎ澄ませると、機体を包み込むように巨大な氷の結晶が結実した。GN-Xが放つ苛烈なGNビームが接触した瞬間、物理法則を無視して複雑に屈折し、虹色の粒子となって霧散していく。絶対零度の防壁は、熱線をことごとく無効化していた。

 

「助かる、アオト! この隙に懐に潜り込む!」

 

ナイトロの不気味な輝きを限界まで高め、シールドのビーム・サーベルを抜き放った。アオトが作り出した「氷の道」を滑るように加速し、ビームの雨を潜り抜ける。一気に距離を詰めたあなたは、回避行動すら許さぬ一撃でGN-Xを真っ二つに切り裂いた。

 

一方、ミサの機体「アザレア」もまた驚異的な戦闘を展開していた。

 

「ユカリちゃん、準備はいい? 商店街直伝の、目くらまし作戦で行くよ!」

 

「ええ。……闇に溶けて、堕ちなさい」

 

ユカリが手をかざすと、アザレアの巨躯は瞬時に漆黒の霧に包まれ、宇宙の闇そのものへと同化する。目標を喪失したGN-Xは、狼狽するように銃口を虚空へと彷徨わせた。

 

「そこだぁ! 必殺・アザレアバーストーッ!!」

 

突如姿を現したアザレアが零距離で火力を叩き込む。ユカリの放つ闇の波動が敵機の内部回路を音もなく侵食し、無人の操り人形を塵へと変えていった。

 

「やるじゃない、二人とも!」

 

サキの凛とした声が通信越しに届く。だが地上もまた、宇宙に劣らぬ苛烈さを極めていた。

 

「ちっ……上から次々と、キリがねえな!」

 

燃え盛る街角でアカネが叫んだ。降り注ぐ熱線の雨を、自身の限界を超える熱量で焼き尽くしていく。傍らでは、ミドリが烈風を操って爆風を逸らし、ヒカリの光が防衛線を繋ぎ、ギンジの虚無の刃が無機質な兵器を消滅させていた。

 

サキと親友もまた電子攻撃の包囲網に晒されていたが、親友のMSが基地の入り口で仁王立ちとなり、サキを死守していた。

 

「敵の第一波、消滅を確認。でも、衛星のメインコアがチャージを始めてる……急いで!」

 

サキの通信が響く中、四人はついに衛星の巨大なハッチを目前に捉えた。しかし、そこから溢れ出していたのは不気味で苛烈なプレッシャーだった。

 

それは「聖なる扉(ディバインゲート)」の消滅を執拗に憎悪する、粘りつくような波動。あなたは操縦桿を強く握り直し、深淵の中へと機体を滑り込ませた。

 

衛星の最深部、制御の中枢へと足を踏み入れた刹那、物理法則を越えた「異形」の深淵に飲み込まれた。視界を埋め尽くすのは底無しの漆黒。空気が存在しないはずの空間に、数万もの人々の絶叫が魂を直接抉るように響き渡る。

 

それはかつて「聖暦」という絶望に打ちひしがれ、扉に拒絶された者たちの、凄まじい憎悪の残滓。負の感情は物理的質量となってMSを締め上げ、内側から無慈悲に軋ませる。

 

「……何これ……これ全部、人の声なの……!?」

 

ミサの悲鳴が混じる。一点に集束した怨念の渦は、かつて世界を分断した

「聖なる扉(ディバインゲート)」を、おぞましい憎悪の形骸として再構築(リメイク)し始めていた。

 

「これは以前僕たちが経験した時よりも更に強い...」

 

「この闇は知ってる……。でも、これはもうただの憎悪や悪意なんかじゃない。

……あの日、私たちが『イマ』を選び、扉を消滅させたことへの……復讐よ」

 

 

その時、怨念の渦から、禍々しいオーラを纏ったGN-Xが姿を現した。

疑似太陽炉からは、粒子とは呼べぬ泥のような闇が噴き出している。

機体の頭部には、無数の「顔」が苦悶に歪みながら浮き上がっては消え、

意志を持たないはずの機械が、絶叫するかのように四つのセンサーを赤く発光させた。

 

異形は黒い火花を散らすビーム・サーベルを抜き放ち、迫ってきた。

 

「クソッ!」

 

叫びと共に、機体を強引に旋回させ、

同時に事前に用意されていたドライバをシールドから射出させた。

自らもビーム・サーベルを抜き放ち、異形を迎え撃つ。

 

その間にドライバが衛星のメインコンソールへ辿り着き、地上へのデータ送信を開始した。

 

「きた!データの受信を確認!受信率、上昇中!」

 

データが地上に送られていく。

 

しかしナイトロを通じて機体と直結しているあなたの脳内に、耐え難い猛毒が流れ込んでくる。

 

【DATA TRANSFER: 10%... 14%】

 

剥き出しの憎悪が意識を塗りつぶそうとする。

ナイトロの炎は赤黒く濁り、神経を侵食する冷たさが理性を削り取る。

 

機体出力が低下し、手にしていたサーベルの光が明滅した――

その決定的な隙を、異形は見逃さなかった。

GN-Xの黒い刃が肉薄し、ガンダムの頭部アンテナを焼き切る。

火花がコックピットを舞い、視界がノイズで激しく歪んだ。

 

「この野郎!!」

 

もう一つのサーベルを無理やり抜き放ち、GN-Xの頭部を叩き割る。

 

だが、両断された異形は火花を散らすことなく、悍ましい「靄(もや)」へと変貌し、

逃げ場のない空間を、覆い尽くしていった。

 

「……苦しい……。消してやる……。こんな世界、終わらせてやる……!」

 

アオトとユカリも心を握りつぶされるような苦痛と戦っていた。

 

アオトの水の力は澄んだ輝きを失い激しく震え、

 

【DATA TRANSFER:..20%...29%】

 

ユカリは深淵から伸びる無数の影に、精神を貪り抉られていた。

 

【DATA TRANSFER: 51...55 %......61%】

 

地上では、アカネが祈るように空を見上げていた。

 

「やめて……。せっかく、ここまできたのに。こんなの……みんな、全部消えちゃうよ……」

 

彼女は操縦桿を握る手を激しく震わせ、止めどなく溢れる涙がバイザーの内側を濡らしていた。

その純粋な魂ゆえに、この場に渦巻くドス黒い悪意は、毒のように彼女の心を深く震わせていたのだった。

 

【DATA TRANSFER: 93%...100%】

「全データの受信を確認!衛星から脱出して!崩壊プログラムを作動させる!」

 

サキの鋭い声が響き、地上の司令部に一瞬の歓声が上がった。

だが、アーサーは厳しい表情を崩さなかった。衛星を包むあの禍々しい憎悪が、これほど容易く屈するとは思えなかったからだ。

 

「……嘘でしょ!? プログラムが拒絶(リジェクト)された!? 作動しない!」

 

その懸念は、最悪の形で的中する。

 

サキの悲鳴が指令室を凍りつかせた。

 

その時だった。 衛星内のあらゆるスピーカーから、ノイズに塗れた不気味な合成音声が、まるで引き裂かれた喉で叫ぶかのように響き渡った。

 

「自……シ……クエンス……サドウ……。モクヒョウ……トウゴウセカイ……ユナイティリア……」

 

それはもはや機械の響きではなく、渦巻く数万の怨念が無理やり回路を繋ぎ合わせ、言葉を紡ぎ出したかのような悍ましい絶叫だった。

 

次の瞬間、巨大な衛星の機殻が、断末魔のような激しい震動を上げた。

姿勢制御用のスラスターが狂ったように火を噴き、軌道を強制的に変更する。

円軌道を外れた数百万トンの鋼鉄の塊は、重力の鎖に引き寄せられるまま、統合世界<ユナイティリア>を消滅させる死の流星となって地上への降下を開始したのだ。

 

「衛星の高度が急降下している! このままじゃ墜ちるぞ!」

 

通信越しに親友の焦燥が混じった叫びが届く。

憎悪という名のウイルスが、衛星のすべてを支配し、暴走を加速させていたのだ。

アーサーは立ち上がり、隣のトリスタンを鋭く見据える。

 

「彼に通信を繋げ。今すぐにだ! 彼らの精神が、呑み込まれる前に!」

 

――衛星の最深部。 あなたの意識は、猛烈な憎悪の奔流に押し潰されようとしていた。扉から放たれる負のエネルギーがMSの出力を奪い、コックピットの灯が消えゆく。

 

「オキタ! [あなたの名前]、マケルナッ!」

 

機体内でハロが狂ったように叫ぶ。その必死の呼びかけが、かろうじて理性の火を灯し続けていた。

 

しかしゲートの負のエネルギーに、MSの出力は見る間に低下していく。心が崩壊する絶望的な静寂の中で、ゲートは冷酷に開口を広げ続けていた。

 

意識が白く染まり、底無しの闇に沈み込もうとしたその時。

 

漆黒のモニターを切り裂き、青白い光と共に**「EXTERNAL DIMENSIONAL TRANSFER」**の文字が強引に割り込んだ。

 

『……聞こえるか。君一人の力で抱え込む必要はない』

 

脳内に直接響く、この統合世界を越えた研ぎ澄まされた白刃(しらは)のような

低く、深く、それでいてどこか浮世離れした声が、蝕まれていたあなたの理性を鮮烈に呼び覚ます。

 

『その執念を、世界の理ごと撃ち抜け。私の世界から、最高最強の「禁じ手」を送る!』

 

依頼主の宣告と共に、空間が真っ白に裂けた。

 

それは神々しくも禍々しいまでの破壊を象徴する。

舞い散る羽根のような光の粒子の中から姿を現したのは、

ウイングガンダムゼロ(EW版)のツインバスターライフルだった。

 

「これは......。ただの兵器じゃない。神々しいまでの威圧感(プレッシャー)を感じるわ......!」

 

ユカリが慄くような声を上げ、ハロが「ターゲットロック! ターゲットロック!」と激しくセンサーを点滅させた。

 

あなたは吸い寄せられるように、機体のマニピュレーターでその巨大な銃身を掴んだ。

掌を伝う圧倒的な重圧。

それは一撃でスペースコロニーを塵に変える「絶対的な破壊」の感触だった。

 

ライフルの莫大なエネルギーが怨念を物理的に弾き飛ばした。

 

しかしこれを使えば機体もただでは済まないだろう。

生きて帰れなくなるかもしれない。

 

だが、一秒後にはここも摩擦熱に焼かれる地獄の領域となる。

 

あなたは即座に決断した。

 

「ミサ! 二人を連れて、先に離脱するんだ!」

 

「えっ、ちょっと待って! あんたはどうするのよ!?」

 

「いいから行け!……アザレアなら、大気圏を突破できるはずだ!」

 

あなたは半ば強引にアオトの身をミサの駆るアザレアへと託した。

 

「……信じているよ。君が、この宇宙(イマ)を繋ぎ止めることを」

 

アオトが静かに告げ、ユカリも祈るような瞳であなたを見つめた。

 

ミサは悔しそうに唇を噛みながらも、最大出力でブースターを点火した。

 

「絶対に……絶対に戻ってきなさいよ! このバカッ!!」

アザレアは漆黒の宇宙へ向かって、光跡を引いて離脱していった。

 

一人残ったあなたはライフルの銃身を合体させ、死の淵へと向かう。

眼下には、赤熱しながら大気圏へと突き刺さり始めた「観測衛星」の巨躯。

内部では偽りのゲートが世界を呪う咆哮を上げていた。

 

「逃がすかよ……亡霊どもが!!」

 

スロットルを限界まで押し込み、自らも赤熱する大気の壁へと飛び込んだ。

外装の耐熱タイルが剥がれ飛び、フレームが剥き出しになる断末魔のような音が響く。

 

だが、サイコミュとナイトロが、あなたの知覚を物理限界を超えた領域まで研ぎ澄ませた。

 

歪む視界の中で、衛星の核――「歪み」の源流だけを焼き付くように鮮明に捉える。

 

衝撃波の影に張り付き、機体の崩壊をコンマ数秒遅らせる神業じみた制御で、

あなたは衛星の直下へと潜り込んだ。

 

「持てよ、ガンダム!」

 

フレームが軋み、火花がコックピット内を舞う。そして照準(サイト)を、

呪いへと定める。

 

両手に伝わるツインバスターライフルの重量感。

それはガンダムの世界から託された不屈の「願い」そのものだった。

 

「ターゲット、ロックオン! タイミング、ケイサンチュウ!」

 

ハロの電子音声が激しく明滅し、最適の射撃タイミングを算出し続ける。

猛烈な摩擦熱に視界が歪む中、照準(サイト)の最奥にその呪わしい「核」を捉えたとき

憎悪の塊である偽りのゲートが、世界を食い破ろうと最期の力を振り絞り、

ドス黒い衝撃波を放ち機体を飲み込んだ。

 

視界が真っ暗に染まった。

 

頭の中に、幾千もの記憶がなだれ込んでくる。 家族を亡くした痛み。

祖国に命を捧げた父と母。

あの日、見送る自分の視界から遠ざかっていった両親の後ろ姿が鮮明に蘇り、

激しく慟哭した。

 

「俺は…」

 

次に脳裏を過ったのは、燃えるような赤い髪の少年と、運命を共にする仲間たちの姿だった。彼らが自らの「心」とも呼べる光り輝く何かを差し出し、

『扉(ディバインゲート)』を消滅させる凄絶な光景。

 

理由は分からずとも、彼らの自己犠牲と言葉では表せないほどの激情が、

あなたの魂を震わせ、咆哮させた。

 

無意識のうちに、人生で一番強く奥歯を噛み締めていた。

 

「俺は……彼らが必死に作り上げた『イマ』を、終わらせない。

 絶対に俺が、死なせない……!」

 

ガンダムのパイロットであるという不屈の矜持が、

崩壊しかけた精神を辛うじて繋ぎ止める。

だが臨界点を超えた熱量に、脳は焼き切れる寸前の悲鳴を上げ、

意識が白濁し、精神が崩壊する目の前まで追い詰められた。

 

「俺は――」

 

その刹那、確かな温もりが背中に触れた。

 

息子を想い、未来を託した不器用な手が。 親友を案じ、笑顔を願った眼差しが。 愛する娘の光を守ろうとした、抱擁が。 バラバラになった兄弟の絆を繋ぎ止め、自らを捧げた静かな意志が。

 

目には見えず、名前も分からないその「温もり」たちが、折れかけた精神を力強く押し上げた。

 

「……っ!」

 

苦しい。けれど、もう痛くない。 数億の希望と絶望、宇宙の祈り、そして先立っていった者たちの想い。地上で待つ仲間たちの願い。その全てを、この命という器で受け止める。

 

「俺は……死なないーー!!」

 

叫びと共に、禍々しいナイトロの炎が変質した。絶望の黒は霧散し、あらゆる想いを束ねて暗黒を照らし出す希望の輝きへ。 すべての悲しみを、すべての命を未来へと連れて行くために。

心の光を物理的圧力へ変換するサイコミュが、純粋な祈りと沢山の想いに共鳴し、

狂気のシステム・ナイトロを根底から塗り替え(オーバーライト)していく。

 

呪いの黒炎は今、絶望を焼き払う虹の輝きへと昇華した。

 

思考が純化され、世界から雑音が消え去る。

融解し始めたマニピュレーターが、ライフルを「意志」で握り締めた。

大気圏突入の火柱を切り裂き、ウイングガンダムゼロの至宝が、

砲口に絶対的な破壊の光を凝縮させる。

プラズマの赤を強引に塗りつぶしていく、純白の閃光。

 

機体と、あなたの魂が一つに溶け合い、放熱を前にして限界を超えた共鳴に震えた。

 

――場面は、標的に向けあなたがトリガーを引く、その零コンマ一秒手前で静止する。

燃え盛る空の下、一筋の光がすべてを無に還そうとする、刹那の静寂の中で。

 




第7話 2月20日頃 更新予定
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