・本作品は『ディバインゲート』および『機動戦士ガンダム』シリーズの二次創作小説です。 権利は GungHo Online Entertainment, Inc. および 創通・サンライズに帰属します。
・本作品は、文章の校正・添削にAIを使用しています。
峻険なヒマラヤの稜線に、十月の冷たい夕闇が降りてきた。
本日の回収作業では、ミサの駆るMS「アザレア」が空から主攻を務め、地上のアカネとユカリの二人は、適合者ならではの機動力を活かしてその死角を完璧に補うサポートに徹していた。
作業が一段落し、アカネとユカリは切り立った岩場の影、鎮座する『アザレア』の足元で束の間の休息に入る。
静寂が支配するなか、機体の外部スピーカー越しに届くミサの声に、ふとした疑問をぶつけたのはアカネだった。
「なあ、ミサ。前から思ってたんだが……お前、なんでわざわざあんなデカい鉄の塊に乗って戦ってるんだ? 戦い慣れちゃいるが、俺たちみたいな『適合者』とは、醸し出してる空気が明らかに違うだろ」
焚き火の代わりに、二人を見下ろす巨大なセンサーが放つ微かな光が、冷えた岩肌を青白く照らす。コックピット内のミサは少し意外そうに目を瞬かせたが、やがて懐かしむように語り始めた。
「……私の実家、模型店なんだ。地元の彩渡(あやと)商店街を盛り上げたくてさ。それで、ゲーセンで出会ったタクマっていう凄い奴とチームを組んで、ガンプラバトルにのめり込んだんだよね」
ミサの言葉は、戦場の重苦しさとは無縁の、どこか輝かしい熱を帯びていた。
「二人でどんどん勝ち進んで、最後には世界大会で優勝しちゃったんだ。おかげで商店街も有名になって、万々歳……のはずだったんだけどね」
そこでミサの声が、わずかに翳(かげ)った。
「タクマは、もっと広い世界が見たいって言って、旅に出ちゃった。……置いてけぼりにされた私は、一人でずっと悶々としていたんだ。自分には何ができるんだろう、ガンプラ以外に何かあるんだろうって」
地上で静かに耳を傾けるユカリをよそに、ミサは続ける。
「そんな時に、あいつとサキに声をかけられたんだ。ガンプラじゃなくて、本物の、MSのパイロットにならないかって。……あの時は驚いたけど、今はこの力でみんなを守れることが、私の誇りだよ」
ミサの真っ直ぐな独白を聞き、アカネは鼻を鳴らして小さく笑った。
「……ふん、ガンプラで世界一か。どおりで妙な動きをすると思ったぜ。
理屈じゃねえ、『遊び』の中で培った執念ってやつか」
「ふふ、最高の褒め言葉として受け取っておくよ、アカネくん!」
ミサの明るい声がスピーカーから響き、氷点下の高地に漂う張り詰めた空気を、わずかに和らげた。
「ミサの作ったプラモデル、見てみたいかも……。さぞ作り込まれているんでしょうね」
ユカリの呟きに、機体がわずかに振動し、ミサが身を乗り出すような気配が伝わってきた。
「今度うちに来なよ! 作り方も教えてあげる! ユカリとアカネにぴったりのガンプラ、私がおすすめしてあげるから!!」
「プラモ制作か……。細かい作業は苦手なんだよな、俺」
「大丈夫だって! 最初はEG(エントリーグレード)から始めて、次は……」
それからもしばらく、ミサの熱のこもった講釈が続いた。
模型店の一人娘が、ファイターを経て、今や世界の命運を担う本物の「パイロット」となっている。
その数奇な運命を噛み締めながら、二人の適合者はガンダムの脚に寄り添うようにして、静かに夜の深まりを待っていた。