貞操逆転世界ならコミュ症でもクール系病弱美少年でいけるらしい 〜あっ!隠してやってた裏垢のエロ自撮りがバレたぁ!?〜   作:こみゅ

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12話

「やっぱり可愛い格好してるね。志穂ちゃん」

 

 ベッドの上、彼女の部屋で肩を寄せ合って座りながら、僕は口を開く。

 妹ちゃんとの邂逅の後、イチャイチャするという約束は果たすべく、僕は彼女の隣に座っていた。

 

「に、似合ってない?」

「似合ってるよ。超絶キュートでプリティーだよ。惚れちゃうよ」

 

「……うへへ」

 

 少しふやけた笑い声をあげる志穂ちゃんの姿は見てて楽しい。

 こういういじりがいのある子が好きなんだろうな、僕は。

 

 ……さて、イチャイチャするとは言ったけど一体なにをしよう。

 こういう経験がろくにないせいで分からない。

 

 たぶん、志穂ちゃんの方もないんだろう。

 

 さっきから緊張しているようで、僕の手に触れたり、触れなかったりを繰り返している。

 どっちかが勇気を出さないと、このまま指をつんつんするだけで終わってしまう。

 

「触れたい?」

「――うん」

 

 僕は彼女と手を重ねる。

 小さい手だ。だけど、微かに温もりを感じる、安心する手だ。

 

「……やっぱ、ひーくんの手だ」

 

 ふと、僕の手を見つめた志穂ちゃんが口に出す。

 

「ひーくん?

 ……あ、裏垢のこと?」

「え、あ、べつに、なんでもない。

 ただ、その、実感、しただけだから」

 

 実感。

 その言葉には、いくつかの意味がこもっているように思えた。

 

 そのとき、志穂ちゃんが僕の方を向きなおす。

 

 突然なんだ、と思ったけど、彼女の顔は少し、真剣に見えた。

 

 志穂ちゃんが言葉を放つ。

 

「渚は、なんで、あんなことしてるの?」

「……あんなことって?」

 

「――写真、ネットに、あげてること」

 

 彼女は僕の裏垢のことを知っている。

 

 でも、そのことに対して突っ込んで聞いてきたことはない。

 

 僕自身、それでいいと思っていた。

 あまり触れられたいものではないし、彼女自身、あれを楽しみたいなら、触れない方が得策なんだろう。

 そう、思っていた。

 

 

 考える。

 

 ――なんで、僕はこんなことをやっているんだろう。

 

 いや、答えは単純だ。

 褒められたいから、チヤホヤされたいから、そんな馬鹿みたいな承認欲求が、僕を動かしている。

 

 じゃあ、なんでそんなものを欲しているのか。

 

 考える。

 

 頭に浮かぶのは過去の思い出、学校に馴染めず、家に引きこもって、死んだように生きていた毎日。

 真っ暗な部屋で、布団に籠って、姉にすら、声をかけられなくなった、あのとき。

 

 なんども、消えたいと思っていたけど。

 でも、ときどき、閉め切ったカーテンを開けることがあった。

 そのたびに、太陽がまぶしくて、すぐに閉じては布団に隠れていた。

 

 あぁ、そうか、僕は。

 

「たぶん、見つけて、欲しかったんだと思う」

 

 

「嫌なことばっかの人生で、逃げてばっかの自分が大嫌いだったけど、でも、そんな自分を、誰かに見つけて、肯定してほしかった」

 

 結局のところ、僕は変わりたかったのだ。

 でも、そのために必要な勇気が、けほどもなかったから、ただ、背中を押してほしかったんだ。

 

 ……こんなこと、志穂ちゃんに言っても意味がない。

 

「ごめん、変なこと言っちゃったね。

 なんか、他の話しようか」

 

 僕は、話を変えようと、彼女の方を振り向く。

 

 ――その、瞬間。

 

「……大丈夫」

 

 僕は彼女に抱かれていた。

 頭が肩に乗って、肌の感触が頬に残る。

 

「渚は、良い子だから」

 

 志穂ちゃんの手が僕の頭に乗った。

 やっぱり小さな手だ。

 

 でも、安心する。

 伊達に、十数年お姉ちゃんをやっているのじゃないんだろう。

 

 正直、彼女が僕の話を完全に理解しているとは思えない。

 だけど、その表情は真剣で、僕のことを、想ってくれている。

 

「もっと、くっついて、いい? 志穂ちゃん」

「……うん」

 

 ベッドに転がって、彼女の肌に触れる。

 少し恥ずかしそうな声が聞こえた後、呟かれる。

 

「渚のこと、すきだよ」

 

 彼女の言葉を聞いて、

 

「僕たち、付き合っちゃおうか」

 

 自然と言葉が出ていた。

 

「――へ?」

 

 志穂ちゃんの顔は固まっている。

 ……なんだ、自分で言っときながら。

 

 僕は彼女の頬に触れる。

 

「ふふっ、惚れちゃった、志穂ちゃんに。

 あ、ちょろいとか言わないでよ」

 

 こういうことを、自分から言い出すとは思わなかった。

 学校に通う前の僕では考えられないことだ。

 

「……もちろん、志穂ちゃんが嫌なら大丈――」

「い、いやじゃないっ!」

 

 少しトーンを落として言ってみると、志穂ちゃんは慌てて声を荒げる。

 

「で、でも、いいの?

 わたし、バカだし、えっちだし、あと、えっちだけど」

「なんでえっち二回言ったの。

 ……いやまあ、それを言ったら僕の方も大概やばい奴だしね」

 

 少し、恥ずかしさを感じつつも、僕は彼女の耳元に近づく、

 

「僕は志穂ちゃんのそういうとこ、結構好きだから」

 

 そして、囁くように声をあげる。

 

 瞬間、頭を沸騰させている志穂ちゃんに追い打ちをかけるため。

 僕は言葉を続ける。

 

「よろしくね、志穂ちゃん。

 ――あ、志穂って呼んだ方がいいのかな?」

 

「し、しほ、うへ、うへへ」

 

 彼女は、相変わらず、だらしない笑みをしている。

 でも、その表情を愛おしく感じるのは、僕が変わったことの証明になる……気がした。

 

 ――正直、そんな大層なことは、考えてないんだ。

 

 ただ、こうして志穂ちゃんの隣に座れていること。

 そして、こんな時間が少しでも、長く続けば良い。

 

 そう、思っただけだ。

 

 

 

「うへへ、もっとなでてぇ、なぎさ」

 

「ん、しょうがないなぁ」

 

 さて、色々あったけど、今日ここに来た目的を忘れたわけではない。

 

 関係も、変わったことだし。ということで、僕らはこれでもかとイチャイチャしていた。

 

 途中で妹ちゃんに目撃されたり、お母さまにバレたりはあったけど、それもそれで楽しい時間だった。

 

 志穂ちゃんは別のようだけど。

 

「うぅ、みられたぁ、おかあさんにぃ」

「……大変だったね、志穂ちゃん」

 

 お兄ちゃんプレイを母親に見られたのがだいぶショックなようだ。

 

 僕は志穂ちゃんの頭を撫でる。

 さっきまで、あんなに頼りになる顔をしていたのに、今は完全に溶け切っている。

 

 だけど、この時間もあと少しで終わりだ。

 もう日も落ち切っているし、さっきからスマホが鳴っては止まらない。

 

「――ん、そろそろ帰ろっかな」

「……もう、そんな時間」

 

 志穂ちゃんは露骨に落ち込んでいる。

 まぁ、僕が帰ったら家族から色々追及されるだろうし、仕方ないか。

 

「次は僕の家であそぼっか」

「……! うんうんうん! あそぶっ!」

 

 はしゃぐ彼女の顔を見て、つい揶揄いたくなった僕は。

 

「――次は、家に誰もいない日にしよっか」

 

 こっそりと耳打ちする。

 

 一瞬、意味を理解できずに、ハテナを浮かべた志穂ちゃんだけど、でも、すぐに。

 

「――ひゃっ!?」

 

 声にならない絶叫を、部屋中に響かせた。

 

 

 

「じゃ、また学校でね、志穂ちゃん」

 

「う、うん。またね、渚」

 

 ということで、現在は僕の家の前。

 あの後、放心状態になった志穂ちゃんで遊んでいると、かなり遅くなってしまった。

 

 見送りに来てくれた志穂ちゃんは少し疲れているように見える。

 そりゃそうか、色々あったしな。

 

 ――そのとき、僕の頭にある行為が浮かんだ。

 

「あ、志穂ちゃん、ちょっと、目瞑ってみて」

 

 僕は自然体を装って、口を開く。

 すると志穂ちゃんは、疲れもあるのだろう、僕の言う通りに目を閉じる。

 

 そして、僕は。

 

 彼女の口元に、そっと、口づけをした。

 

「ありがとね。

 ……志穂」

 

 そのまま、ドアを開けて、家に入る。

 彼女の顔は、見れなかった。

 

 「……恥ずかし、すぎ」

 

 壁にもたれた僕に、床に座り込む。

 今までは、ああいうことに抵抗はなかったのに、なんでだろ。

 

 幸い、姉は家にいないようで、僕はしばらく玄関に座り込んでいた。

 

 にしても、背中の方からきゃっきゃっ騒ぐ声が聞こえる。

 志穂ちゃん、ちゃんと帰れるのかな。

 

 ……改めて考えると、ずいぶんと濃い一日だった。

 志穂ちゃんと、その、付き合うとか、そういうことになるとは思わなかった。

 

 後悔はしていない。

 彼女のことは好きだし、こういう感情を抱けるようになったのは、僕自身の成長でもあると思う。

 

 だけど、こうなってしまった以上、やらないといけないことがある。

 

 僕はポケットに手を突っ込む。

 

 ……忘れずにやっておかない、と。

 

 スマホを取り出して、アプリを開く。

 

 最近は写真もあまり上げてなかったけど、これは僕にとって大事なものだ。

 

 正直な話、続けてもいいと思ってる。志穂ちゃんはそういうのを気にするタイプではないだろうし、僕自身もかなり思い入れがある。

 

 ――でも、本当の意味で信頼できる人が出来た今。

 これに頼り続けるのは良くないだろう。

 

 僕は震える指先で一個ずつ文字を打ち込んでいく。

 頭に浮かぶのは、このアカウントで関わってきた人たちとの思い出。

 

 ……玲衣との、思い出。

 

 そして、全ての文字を打ち終わったことを確認した僕は、

 未練を断ち切るように、ツイートをタップした。

 

《日陰@__hikage214》

 彼女できたので投稿やめます

 いままでありがとうございました

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《玲衣@__rei》

 @hikage214への返信

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