囚人No.14 ラヴクラフト   作:黒プー

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リンバス展に行ってまいりました。めっちゃよかったです、グッズもそこそこ買っちゃいました。
ヴァルプルギスは無事に70連でピックアップ全確保できたので撤退しました。
...さて、そろそろ尊厳破壊人格の時期がやってまいりましたね。


10話

「計画をご説明しますね。」

 

ファウストさんが歩きながらそう言う。

 

「黄金の枝に到達するための最優先事項は、全員カジノへ無事に侵入することです。私たちが調べ上げた情報によると、入り口は合計で3つ存在します。一般のゲストが出入りする扉とVIPだけが利用可能な専用通路。そして職員たちが利用する裏口。我々はそれぞれの入り口に一組ずつ......4名はカジノディーラー、5名は一般客、4名はVIPゲストに変装し、別れてから侵入することになります。だれがどんな役割を担当するかは、お渡しした封筒を開けて確認してください。」

 

「なんだかスパイ映画のようですね...ちょっぴり緊張します。」

【......真面目な話かと思ったが、一気に馬鹿らしく思えてきたな。】

 

神様の言葉に、私は思わず苦笑いする。確かにロボトミー支部での一件とは違って変装して潜入するというのは、どこか現実というより創作の世界のように思えてしまう。

それでも真面目に話しているファウストさんの姿を見て、神様はさらにため息をついて言った。

 

【というか今のメンバーでこの作戦が成功すると考えるのは...なかなか、難しい気がするが。】

 

神様に言われて想像する。客を無理やり追い出そうとするカジノの用心棒たちの姿に怒りを覚えて槍を振るうドンキホーテさんの姿。一発当てようとして負けに負けてバットを振り上げるヒースクリフさんの姿。...少し偏見が混じっているからか、ありありと想像してしまう自分が恥ずかしい。

 

「...さすがにその辺は考慮されてるのではないでしょうか。」

【...どうだかな。なんとなく嫌な予感がするんだよ、こんな馬鹿馬鹿しいことの先を読む気にはならんから、詳しいことは知らんが。】

「...そして今回の作戦でも黄金の枝の奪還に失敗した場合、これからの計画に大きな支障が出る、と上層部が憂慮していました。だから今回は合同作戦で行きます。」

『合同作戦?』

「より専門的で熟練したメンバーで構成されたリンバス・カンパニーの特殊部隊...いまはLCC、クリア部署と呼ばれている部隊です。侵入作戦においては、私たちより優秀だといえましょう。」

 

ファウストさんの言葉に少しホッとする。どうやらちゃんと配慮されていたらしい。

 

【...いや、裏を返せば私たちはやはり信頼されていないということになるが。それでいいのか。】

「...で、でも失敗するよりはいいんじゃないでしょうか。」

【......それもそうか。】

 

考えるのを放棄し、質屋通りと呼ばれる大量の質屋が集合した道を、ファウストさんの案内によってどんどん進んでいく。どうやら私たちを待つ他部署の人たちはこのたくさんの質屋のうちの一つで待っているらしい。

 

「...あの店が合流地点です、入りましょう。」

 

ファウストさんに従って質屋の中に入れば、質屋の主人であろう人と並べられた品物たちが出迎えてくれる。

 

「おやぁ、どんさか入りすぎじゃないのかぇ?ただでさえ狭い店だってのに...それで?

トランプでやりますかぇ、それとも麻雀で?」

「あん?何言ってんだおっさん?」

 

突然の遊戯の提案にヒースクリフさんが困惑したようにそういうと、イシュメールさんがため息をついて答える。

 

「J社の案内冊子読んできたの私だけですか?ヴェルギリウスさんが出発する前に一度読んでみろって言ってたじゃないですか。」

 

イシュメールさんの言葉に、冊子の内容を思い返してみる。

 

「...あ、もしかして、運で支払金を決めるってそういうことでしょうか?」

「......一応読んでる人もいるみたいですね。そうです、ここではその日の運によって受け取る支払金が変わります。大吉なら上乗せしてくれるでしょうけど、大凶に近づくほど元手も回収できなくなるってことです。」

 

それを聞いたホンルさんが思い出したように言う。

 

「あ~、そういえば、ぼくの家でも占い師を正式雇用していましたね。家を出る直前に引いた運勢が大吉だったんですけど、こういう風にみんなに会える運命を暗示してたみたいですね~。」

「わぁ、裕福な家で悠々自適な生活を送るのがあなたの運命だったなんて。私も次はその運命で生まれ変わることを願わないとですねー。」

「俺はごめんだね。ああいうやつらのほうが意外と汚い遊び方をするんだよ。」

「そうかもしれませんね~、僕も子供のころから弟弟と一緒に遊ぶのが嫌だった気がします。毎日反則技を使って意地悪したからですね~。」

「いや俺が言ったのはそういうことじゃねぇ!」

「お、落ち着いてください!店の中で暴れたら危ないです!」

 

バットを振り上げて苛立ちを全身で表すヒースクリフさんを慌てて止めていると、店主がいら立ったように言う。

 

「みんな占うのかい、それともやらんのかい?...ところでアンタら、カタにするもんは持ってるんかぇ?なんか身なりが...。」

 

店主さんの視線が私たちを嘗め回したかと思うと、ダンテさんの頭のところで止まる。

 

「ほほぉ、あの時計は言い値が付きそうかのぉ。」

「見積もるとどのくらいになりそう?」

「ロージャさん躊躇ないですけどそれはあんまりよくないと思います...!」

「しょーがないじゃない、ここにきてからお金足りなくて満足にお菓子も買えないんだから。」

「自分の心臓を質屋に出してるのと同じだと思うんですけど...!」

 

今にもホンルさんでいら立ちを解消しようとしているヒースクリフさんを必死に抑えつつ、ロージャさんの言葉に思わずそう突っ込む。

ただの質屋の中でもこんな状況になってしまうことに、やっぱり若干不安を覚えてしまうのはきっと間違っていないのではないだろうか。

 

そんな中ファウストさんが質屋の店主に何やら話しかけようとするが、実に残念なことに彼にはファウストさんの言葉を聞く余裕はないだろう。なぜなら質屋は私たちの声であふれかえってしまっているからだ。

 

「ほほ、お主そのハンカチをよく見せてくれんかぇ?」

「ああ...このハンカチは家から出るときに持ってきたものなんですけど...。」

「ほほほぉ、絹に龍の刺繡が入れてあるのぉ、ステッチが細かいが、これはやはり700万眼は下らんの。」

「たったそれだけの布切れがそんなたけぇのかよ!?目が腐ってんじゃねえのか!?」

「は?こんな高級品がわからんのかぇ?はぁ、そんながらくたの指輪なんてはめとるからのぉ...」

「.........てめぇ、今なんつった?」

「わ、わわ、だ、だめですから!店主さんはほんとに死んじゃいますから!...なんか全然止まらない!ほんとにダメですヒースクリフさん!」

「もううるさーーーい!ダンテ~、こいつら静かにさせて~!」

 

そんな騒音だらけの質屋の中に、聞いたことない声が響き渡る。

 

「心配したじゃないですか、ファウスト。会うのは4時だったんですが、15分も過ぎてしまって。あなたが時計を見る方法を忘れたはずがないでしょうし。そうですよね?」

 

まだ怒りが収まらない様子のヒースクリフさんを必死になだめながらちらりと見てみれば、カジノのディーラーらしい恰好をした二人の男女がそこにはいた、どうやらあの二人が私たちの目的の人たちらしい。

 

「...はい。バスを運転したのは私ではありませんから。」

「あはぁ、だからこんな時計人間まで連れて歩いてるのか?...だがアラーム機能はなかったみたいだな?」

『おい、ひどいじゃないか。初対面だっていうのに...』

 

ダンテさんがそうつぶやく。囚人にしか聞こえないとわかっているはずなので、よっぽど不満だったのだろう。

当然ダンテさんの言葉は通じてないので、男の人はダンテさんに一瞥もくれずにそのまま話す。

 

「ああ、もしかしてお前たちか?この前の黄金の枝の奪還作戦をぶち壊しにしたやつらって。都市でも屈指の天才が属するチームだって話だったから、周りからもかなり期待されてたんだけどな?」

「...最初の任務はそもそも失敗を念頭に置いた計画でした。各自の潜在能力を確認する必要があったからです。」

「...そうだったのか?」

 

ファウストさんの言葉にグレゴールさんがそういう。

...失敗を念頭に置いていたにしては、ずいぶん嫌な記憶と思い出を刻み込まれた気がするけれど。初めから失敗が想定されていたのなら、もう少しどうにかならなかったのだろうか。...ユーリさんのこととか。

そんな私の気持ちも知らず、女の人のほうが言う。

 

「ヴェルギリウスさんはどこに行きました?私はあの方に会えるかと思って作戦に合流するといったんですが。」

「あの方もはずかしかっただろうな。こんなひよっこたちと一緒だって考えてみろよ?」

「クッ...あの野郎、わざと遠いところで降ろしやがったのか!?俺らが恥ずかしいから!」

「...どうしてだれも私たちを卑下する発言には反論しないんですか。というか自己紹介でもしたほうが自慢するよりよっぽど建設的だってことはご存じないんですか?」

 

イシュメールさんの言葉に、ファウストさんが言う。

 

「今回共同作戦をすることになった方々です。リンバス・カンパニークリア部署、LCCからいらっしゃいました。」

「ビフォーチームまでつけてくださいよ。...ああ、私はソードといいます。こっちはエピです。」

 

「...合流記念に拍手でもしたほうが...。」

ヒースクリフさんがため息をつきながらそう言おうとした時。

 

「わぁ!お会いできてうれしいです!」

ホンルさんが心の底から嬉しそうにそういった。拍手もセットでである。

当然その拍手は一人分のみであった。

 

「.........。」

 

さすがのヒースクリフさんでも何か言う気すら失せたのか、あきれたように頭を抱えて首を振るのみだ。

私も思わず苦笑いをこぼす。

 

「や、やっぱりホンルさんはとってもフレンドリーな方ですね...?」

【能天気の間違いじゃないか。】

 

そんなことを考えていると、ふと視線を感じた。

その方向を見てみれば、エピと呼ばれた人と目が合った。

エピさんは私と目が合ったとわかるや否や、彼がまっすぐ私の目の前まで来たかと思えば私に言った。

 

「ヴェルギリウスさんと会えなかったことは実に残念ですが、あなたと会えたことには感謝しなければなりませんね、『怪物狩り』殿。どうかヴェルギリウスさんには()()()()伝えていただけますか?」

 

思わずまたかと思いながら、私はエピさんに言う。

 

「...えっと、丁寧に挨拶していただいて申し訳ないのですが、その『怪物狩り』さんは私ではなく神様なのです。ヴェルギリウスさんもそのことはご存じですから......申し訳ありませんが私がよろしくと伝えてもあまり意味がないのです。」

「......うん?つまりあなたは『怪物狩り』ではないと?」

「えっと、その通りです。」

 

 

質問をしてきたソードさんにそう答えると、ソードさんが今度はファウストさんに視線を向ける。

視線を向けられたファウストさんはうなずきながら答える。

 

「......彼女はあなたの言う1級フィクサーとは別人といっても過言ではないでしょう。」

「......チッ、ご丁寧に挨拶してやったってのに、損したな。」

 

ファウストさんの言葉を聞いたエピさんはさっきまでの丁寧な言葉遣いはどこへやら、舌打ちをしながら立ち上がってソードさんの横へと戻っていった。

 

「...勘違いだと分かったのはいいのですが、なんだかもやっとします。」

【あんな若造のことは気にするな。媚びを打って出世したいだけだろう。】

 

勘違いだと分かった瞬間のあんまりな態度に、そうつぶやく。

少しいやな気分になりながらも、私はソードさんの言う作戦にとりあえず耳を傾けてみることにした。

 

 

 

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