囚人No.14 ラヴクラフト   作:黒プー

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今更ですが高評価、コメントのほういつもありがとうございます。結局目に見えて増えていく数字と温かいコメントが一番モチベーションになります。


11話

潜入のプロというだけあって、エピさんとソードさんが練ってきた作戦というものは書かれたものをなぞるように実行するだけで簡単に成功しそうな、完璧といってもいい内容だった。

作戦内容はこうだ。

もうすぐカジノで行われるギャンブル大会の優勝賞品のうちの一つに黄金の枝がある。そのためカジノに共同入札をした4つの組織のうちの一つである"ぽんぽん派"のボスに身分偽装し、ギャンブルゲームで勝者となり、あとは流れで黄金の枝を確保する。

ギャンブルゲームにはカジノディーラーに変装したエピさんとソードさんの手を借りて勝てばいいし、ぽんぽん派のボスに関してはカジノで提供される食事に睡眠薬を混ぜてすり替われる。

 

「なんだか思ったよりもうまくいきそうですね?」

【......本当にプロフェッショナルらしいな。】

 

神様からも言うことなしな作戦らしく、泥船ではなかったらしいとつぶやいているのが聞こえる。今回こそはちゃんと黄金の枝を手に入れることができそうだ。

 

「店主さーん、ここの陳列棚、ちょっと拝見しますね?」

「も、もちろんでございますぇ!ど、どうぞご自由に見ていってくだされ!」

「じゃぁ皆さん、ここから適切な物品を持って行ってくださいね。

 

ソードさんのその言葉に、封筒の存在を思い出す。

とりあえず包装を破いて中身を見てみれば、数枚の紙にいろいろなことが書いてあった。

 

「えっと...いろいろ書いてありますが、とりあえず一般客として変装すればよいのでしょうか...?」

【......そうだろうな。まあ一般客ならば特に問題あるまい。適当に服を選べばいい。】

 

質屋に並べてある服をいくつか見てみる。17万眼、21万眼、37万眼。...うん、なんだかこの値段は少し高いのではないだろうか。とても私がお給料としてもらっているお金では足りない気がする。

 

「...おい、そういえば支払いはどうするつもりなんだ?」

 

グレゴールさんも同じことを思ったのかそういうと、エピさんが言った。

 

「はしたないなぁ、なんで予算の心配をするんだよ?このブラックカードで買えないものはないだろ?」

 

そういってエピさんがリンバス・カンパニーのマークが刻まれたカードを掲げる。

するとその言葉を聞いたロージャさんが叫んだ。

 

「ダンテ!どういうこと!?A5の肉は足が出るから食べれないって言ってたでしょ!?」

「......基準以上の成果を上げる部署には会社から限度額のないカードを与えられるという噂は本当なようですね。」

「......まさかお前ら持ってないのか?」

 

エピさんはそう本当に底辺の存在を見るかのように見下した表情であきれたように言った。

そんな風にブラックカードの存在に多くの人が(主にロージャさん)憤りを禁じえずにいた時だった。

突然外から雄たけびが聞こえてきた。

 

「おいじじい!今日までにみかじめ料をださにゃぁならんの、覚えてただろうなぁ?」

 

そして声の主であろう、一目で粗暴な組織に身を置いているように見える人が、質屋の中に入ってきた。

その姿を見た店主がおびえたように言った。

 

「い、一度だけ見逃してくだせぇ!次は必ず納めますから!」

「一度だぁ?くそじじいめ、老いぼれて足し算もできなくなっちまったんか?この前も同じこと言ってたろ!おらがジジババの勉強見て兄貴にボコられろってことかぁ?」

「わ、わしみたいに力ものぉて体もボロボロの老人から何を搾り取れると思っとるのさ...!」

 

そういいながら店主がちらちらとこっちを見てくる。まるで助けてほしそうに。

 

「ああ?今度は大声出しちょるのぉ?そのまま怒鳴れ怒鳴れ、そいたらおらも罪悪感ちゅうもんが減りそうやからな!」

 

そういわれた店主がまたこちらを見る。...なんだか助けもせずに何をしてるんだという表情にも見える気がする。

そんな風に何となく騒ぎのほうを見ていれば、男が今度は私たちのほうをにらめつけていった。

 

「なに見とる、見せもんちゃうぞ!」

「...なんというか、典型的すぎるセリフで返事する気も失せますね。もうちょっとくらいクリエイティブな因縁のつけ方はできないんですか?」

「......えっと、さすがに助けてあげたほうがいいんじゃ?」

 

今にも引きずられていきそうな店主の姿にわたしが思わずそういうと、ソードさんが言う。

 

「どうしようもありません、裏路地は裏路地なりの規律が存在し、それらがぐちゃぐちゃに絡まりつつ回っていく構造ですからね。私たちみたいな外側の人間が中途半端にかかわっても、目を付けられるだけです。」

「そう、なのですか...。」

 

そういわれて何もできずにいると、動けなかったことに満足した男が自分の業務を再開する。

 

「ふん、金がねぇならそいつを渡せばいいだろぅ?何度もいっちょるに。」

「そ、それだけはいけませぬ、後生ですから...。」

「...あれとは何でしょうか?」

 

そう私がつぶやくと、神様が答える。

 

【...願望力、だったか。J社の巣では貨幣代わりに使われていると以前聞いたことがある。あの金庫もそれを保管するためのものらしいな。】

「概念っぽいものを保管できるって、都市の技術はやっぱりすごいのですね...。」

 

そう感心している間に、ソードさんが言った。

 

「さ、それじゃあ私たちは陳列台にある適切な物品を各自ピックアップして、ここから離脱しましょうか。私たちは一回の会社員であって、正義のために前に出る「ヒーロー」ではないですから。」

『ま、まった!その単語は...!』

 

ダンテさんがそういったと同時に、私は後ろを振り返っていた。私と同じくらいの金髪がぴょこぴょこ動いているのが見える。そしてその先には引きずられていった店の主人とさっきの男がいたはずで。つまりどうなるかは...もうわかるだろう。

 

「他人の貴重品をむやみに略奪しようとは!まさに悪人の行動としか言いようがない!」

 

そんな向上とともに振るわれたランスの側面が見事に男の脳天に直撃する。

愉快な打撃音とともに地面に崩れ落ちた組織員を、誰もが見つめていた。

 

「...ああ。ちなみに囚人たちを統制する役割は私に課せられた業務ではありません。それはこちらの方の仕事です。」

『...無駄だよ。私にはあいつの手綱は握れない。』

 

いつもの無表情のファウストさん、もはや何も言うことはないといった感じのダンテさん、そしてすさまじい頭痛に襲われてそうなソードさんと、呆然とドンキホーテさんのほうを眺めるエピさん。

 

「おおお!あんやぁ、いい気味ですなぁ。でももう一度くらい強くたたいても罰は当たらないでしょうなぁ?」

 

この状況を喜んでいるのは店主くらいのものだった。

 

「ヴェルギリウスが「悪人を処断するのはどうでもいいが、作戦外の人間まで巻き込むと厄介なことになるだろう」と申していたので!力を調節したのである!」

 

得意げにそういうドンキホーテさんの姿に、ダンテさんがため息の代わりと言わんばかりにカチコチと時計を鳴らす。

 

『その言葉を覚えていたのに飛び出していったのかよ...?』

「信念を守らんが故にどうしようもなかったのだ、どうかわかってくれ!」

【...作戦がプロフェッショナルでも、実行役がズブの素人ではやはりだめみたいだな?】

「素人というか......ひ、人には向き不向きがあるわけですし、仕方ないのではないでしょうか...多分...。」

 

面倒なことになりそうな予感がしながらドンキホーテさんを何とか擁護できないかと考えていると、店主が言った。

 

「ところでこいつ、まさか死んだわけじゃぁないでしょうねぇ?」

「じいさん、さっきまでは残念そうにしてなかったか?」

「それはそうじゃが、「ユロージヴィ」に目を付けられちまうといろいろややこしいじゃありませんか。」

「ユロージヴィ?どうしてあいつらがここに...って、それよりもなんであいつらの心配をするの?」

 

ローじゃさんの言葉に店主が言う。

 

「あんれぁ、うわさが回るのが遅いですなぁ。もう数か月も前からこの近くで暴れまわっておりますのに。」

「それらも悪党か!?」

「いんやぁ、我々にとっては悪党でしょうなぁ、金をかすめ取ってる売人をぶっ潰して貧しい人々に分け与えるとか言ってましたからのぉ。何とかの再分配って言っとりましたけど...。」

【......富の再分配か?】

 

ムルソーさんが神様と同じことを言うと、質屋の主人がうなずいた。

 

「ああ~そうですそれです!はぁ、私たちにそんなお金があるもんかって話ですよ。それに自分たちが来てやるわけでものぉて、このあたりのならずもんを遣わせて回ってるんです。...何はともあれ、正しいことやりますと意気揚々と出回ってて迷惑しとるんですぇ、最初は何かを探してたみたいですけど、今やお金ばっかしで...。」

「と、ところでさ!私たち逃げたほうがいいんじゃないかな?ぽんぽん派がもっと来るかもしれないし!」

 

少し挙動不審なロージャさんがそう言った。そんなロージャさんの様子が少し気になったが、それを気にする余裕も私たちにはもうないだろう。

ちょうど私たちが出ていこうとしたとき、ドンキホーテさんが倒した男と同じような服装をした人たちが中へ入ってきたからだ。

 

「おぉい爺さん、俺んとこの末っ子を見なかっ......ガリ!?いったいどうなってんだ!?」

「う...あの...赤い......時計頭が...」

 

そういわれたその男がダンテさんのほうをゆっくりとみる。

...これは、本格的にまずいんじゃないだろうか?

 

「老婆心でいうんですがわたくしには全くわかりませんのぉ、今ちょうど冷やして進ぜようと手拭いを持ってきたところでして。」

「んのクソジジイ...!」

「別に期待してませんでしたけど、風になびく蘆より芯が柔らかいですね?」

 

店主の態度には若干いら立つが、今はそんなことを気にしている場合じゃないだろう。

ここはさっさと逃げたほうがいいというのは未来が見えなくても明白だ。

 

「だ、ダンテさん、こんなところで戦ってもいいことないですし、さっさと逃げましょう!」

「...チッ。」

「なんで舌打ちするんですか良秀さん!?」

 

明らかに殺してしまおうと刀を鞘ごと持ち上げていた良秀さんが渋々とさやに刀を戻す。

が、他の人もやっぱり同じような考えだったらしく。

 

「もうこうなったら逃げるより殺したほうが早いです...よっ!」

「正義を執行せずに逃げるなど、フィクサーとしてあってはならぬ!」

 

ドンキホーテさんとイシュメールさんを筆頭に、店の中で大乱闘が始まってしまった。

 

「......お前らの中にまともな社員はちょっとしかいないのか?」

『...ああああああ!とりあえず全員表に出ろ!』

 

ダンテさんの叫び声がむなしく響き渡る。が、そこで響いているのは時計の針の音だけなのであった。

 

「ほ、本格的にまずいことになってきちゃってます...!」

【...もとから泥船だろうと思ってたが、沈む前に対岸にたどり着けることを祈るしかないな?】

 

とりあえず今はここを乗り越えて店を出ることから始めなければならないだろう。

背負っていた剣を抜きながら、私はとりあえずダンテさんを守ることにした。

 

 

 




原作通りに書くとマンネリだし、かと言って原作とは全く違う感じで書けるかと言われたら後の展開を考えると結構難しく。特に2章は変えられそうなことが一番ない章なので...しばらく原作と変わらない感じになってしまうかもしれませんが、最後までお付き合いいただけると幸いです...。
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