囚人No.14 ラヴクラフト   作:黒プー

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遅れて申し訳ありません。三日坊主どころか二日坊主になってしまいました。
言い訳させていただきますと、ちょっとスランプ気味でした。多分治ったと思うので今週からまた投稿を頑張らせていただきます。



12話

そこから先はまぁ...大変だった。

ぽんぽん派のボスがいるという車の塔と呼ばれる場所に向かうことになったはいいものの、すでにぽんぽん派には目をつけられているから、何度も何度も戦う羽目になったからだ。

相手はそこまで強くないとはいえ、さすがに連戦は大変なのだ。

 

「さ、さすがに疲れました...大丈夫ですか、ダンテさん...。」

『おかげさまで大丈夫だよ...』

 

一息ついて前方を見上げると、そこには廃車になったであろう車が大量に積まれた塔がたくさんある場所だった。車の塔という呼び名は言いえて妙なのかもしれない。

 

「...何ですか、ここ?」

「車たちがあたかも塔のごとく積りたり。」

「陰鬱な景色だ。」

「おお、ここに何やら手紙のようなものが書かれているぞ!家族にあてたもののようだ!」

 

ドンキホーテさんにそう言われてまだかろうじて原形を保っている車に近づいてみれば、様々な筆跡でいろいろなことが書かれている。「あいたい」だとか「死にたくない」だとか。

 

「...この人たちは、帰れたんですかね?」

「さあね。でももしカジノから帰れたとしても、少なくとも家族のもとへ何事もなく戻れるような状態じゃないと思うけどね。」

 

ロージャさんがシンクレアさんにそう言う。

積み上げられた車たちをよく見てみれば、高級そうな車も安そうな車もみんなまとめてつぶされて塔になっている。

まるでここにたどり着いた人たちが、身分に関係なくたどった末路を暗示しているような感じだ。

積み上げられ、持ち主が帰らないでいる車たちの姿に、なんとなくやりきれない気持ちになった私は、せめて今はまだ生きているかもしれない人たちが帰れるようにと祈りをささげる。...どこにいるかもわからないこの人たちを私では救うことはできない。ならばせめて、無事であることを祈ることが、いま私がするべきことであるような気がしたのだ。

 

「...そんなことしても意味ないんじゃない、ラヴちゃん。どうせ賭け事に金を突っ込んで死んだだけの奴らだし。」

「......確かにこの車の持ち主の人たちは悪いことをしたのかもしれません。...でもやっぱり、私は悪いことをした人たちも悲しい最期を迎えるべきではないと思うんです。...この人たちを救うことはできませんが、せめて、祈れたらいいなと思うんです。」

「......そ。勝手にしたらいいんじゃない。」

 

そう言って去っていったロージャさんの後姿は少しいらだちつつも、どこか見えた。

 

 

 

車の塔の先にいたぽんぽん派のボスはあまり強くはなかった。もちろん大人数を相手にしなければいけなかったから何度か死んでしまったけど...結果的に倒すことができたから大丈夫だろう。

そういうわけで、作戦とはだいぶ違ったけれど、予定通りぽんぽん派のボスを眠らせて、ぽんぽん派の服を手に入れることができた。

 

「でもほんとにこの服着なきゃダメなの...?汗の匂いに血の匂いに、あとかび臭い匂いがして気持ち悪いんだけど。」

 

ロージャさんが倒れているぽんぽん派の人から引っぺがしたシャツを指でつまみながら言った。

...確かにこの服は...あまり洗濯されていないような気がする。それになんだか、汚れもついているし。

なんだかあんまり着たくなくなる服を前に躊躇していると、いつの間にか近づいてきていた良秀さんが私からシャツを取り上げる。

 

「り、良秀さん?」

「こっちにしろ。」

 

そういって良秀さんが別のシャツを渡してくる。見てみれば、さっきまで私が持っていたものよりもずいぶんきれいだ。

 

「あ、ありがとうございます。」

「ああ。」

 

良秀さんが持ってきてくれたそのシャツを身に着けて、ふと良秀さんはどうするんだろうと思って見れば、エピさんからディーラー服をゆすっているのが見えた。

 

「俺のと交換しろ。ほら。」

「お、オーダーメイドで作られた服だから無理だ。」

『...フリーサイズって書いてあるけど』

 

そのダンテさんの言葉を聞いたエピさんが急に怒り出す。

 

「そ、そもそもお前らが質屋であんな騒ぎさえ起こさなきゃ、ここまで苦労してなかっただろ!」

「大丈夫です。僕、一度くらいはこんな服絶対に来てみたかったんです。まるで映画の撮影みたいじゃないですか。」

「俺は気に食わんな。こんなのは臆病者がやることだ。」

「...すみません、だれかこの人の口をふさいでくれませんか??」

 

ソードさんの言葉を聞いたグレゴールさんが苦笑しながら言う。

 

「肋骨ごと切られる覚悟があるならやってみればいいんじゃないか?」

 

グレゴールさんの言葉に私は思わず笑ってしまう。

そんな私たちの様子を見てあきらめたのか、エピさんがボスが持っていた小さな箱を持ち上げてみせる。

 

「はぁ...まあ、作戦は台無しになりかけてるが願望の匣が代わりに手に入った。管理人、あなたに簡単な役割を与えよう。」

『へ?なんの?』

「何を言っているのかわからないという身振りなので、説明が必要そうですね。」

 

ダンテさんのカチコチ音から何かを読み取ったのかソードさんがそう言うとエピさんが言った。

 

 

「J社の特異点がこの匣の中に入っているっていえばいいかな。これは人々の「願望」を食べてエネルギーとして保存する装置だ。適当なところで願望を紙の形態で取り出せば、貼るだけで運がグーンと高くなる使い捨てタトゥーシールが現れるってわけだ。他人の運を引き集めて最上階のギャンブルで勝つつもりみたいだったな。一介のごろつきがこんなのを持ってるだなんて。」

 

そしてエピさんはそんな願望の匣をダンテさんに渡していった。

 

「管理人...ダンテといったな。カジノに入る前にあなたがこれを補完してろ。」

『...私にこんな大事な役目を任せてもいいのか?』

 

そういったダンテさんの様子に、エピさんは言った。

 

「自信なさそうな身振りだけど、あなたを指名した理由はある。一つ。ギャンブルの場で一番大事なのはポーカーフェイスだ。いくら表情を読むのが上手な奴でも、時計の表情までは読めない。二つ、あなたが管理人になったのにはそれなりの理由があると思っている。あの囚人たちよりかは使えそう、というのが俺の漠然とした直観だ。」

【......本当にそれだけの期待を寄せられるほどあの時計は使えるか...?】

「か、神様...!」

【別にいいだろう。聞こえてないのだから。】

 

誰にも聞こえていない神様の言葉をよそに、ダンテさんは静かにうなずいた。

 

「よし。これをあなたの腕につけろ。あなたはこれからしばらくの間世界で一番運のいい人になれる。」

「それじゃあ皆さんはぽんぽん派、私たちはディーラー。お互い役目をきちんと果たしましょうか。」

 

そうして準備がようやく整った私たちは、カジノの扉を開いた。

 

 

 

正直言って、私はカジノと呼ばれる場所がどのような場所か、あまりわかっていなかった。

ずっと町で過ごしていたから都市での生活についてほとんど知らなかったし、何より賭け事をするなんてありえないことだと思っていたから、知る機会がほとんどなかったのだ。

そんな私がこの巨大なカジノに入って最初に感じたのは、圧力だ。

あちこちから鳴り響くスロットマシンの効果音の音圧。そしてそれに札束を入れ、狂ったようにスロットの目を見つめ続ける客の精神的な圧力。そしてきらびやかな照明から発する光の圧力。

 

「き、きらびやかすぎて...なんだか、怖いです。」

【......まあ無理もない、君がこのような場所に訪れるのは初めてだろうからな。私も初めて来たときには同じことを思った。】

 

一方でドンキホーテさんはこのきらびやかな景色に魅入られているらしく、あたりを興奮しながら見まわしている。

 

「こ、このキラキラしている機械はいったい何なのだ?」

「そんな目を真ん丸にして歩き回るなよドンキホーテ、怪しまれるだろ...。」

「客の目がみんな死んでますね。...しかもぽんぽん派より臭いにおいが漂っている気がします...洗ってないのかな...。」

「そんな露骨に鼻をふさぐのもやめろ、イシュメール...」

「でも甲板員みたいな人たちから漂う凶悪なにおいじゃないですか...」

 

...確かにきらびやかな装飾にごまかされて一瞬気が付かなかったが、さすがに無視できないほどの腐臭のようなにおいがこの建物に充満しているような気がする。

 

【風呂にも入らず狂ったように賭け事とは。金に魅了されているか、あるいは命を守るため必死なのか...。】

「......せめて前者であってほしいですが...。」

【......ん?...ああ、面倒なことになりそうだな...やはり泥船...いや、まともな船でも穴が空けば沈むといったところか...。】

「神様?何をおっしゃって...。」

 

神様がそうおっしゃった瞬間だった。すぐ隣のほうから「じゃーっくぽーっと!!!!!」という爆音と何かが大量に床に転がり落ちる音が聞こえた。

何の音かと思いそちらを見てみれば、大量のコインにそれを見て興奮するドンキホーテさん、そしてその様子を見て呆然とするダンテさんがいた。

 

【どうも願望シールが暴発したらしいな、あれは。】

「だ、だ、ダンテさん!?!?!?!?」

 

常識的に考えればカジノに入ってすぐ大当たりだなんてありえない、それはつまりカジノの客や警備員から注目を集めるということで、作戦の失敗に一歩近づいたということになるだろう。そんなことはダンテさんだってわかっていたはずだ。

 

「だ、ダンテさん...さすがにその程度の誘惑に負けてしまう方だとは思っていなかったのですが...」

「彼女の言う通りです、管理人さん...少なくともあなたくらいは責任感があると思ったのに......失望しました。今度こそ前に経験した失敗の恥辱を拭い去ってくれると思ったのに。」

「あの、さすがにそこまで言わなくても。」

 

イシュメールさんによる過激すぎる言葉の追撃に思わずそう言ってしまう。

するとイシュメールさんはその鋭い眼光をこちらに向けていった。

 

「何ですか。何も間違ったことは言ってないはずですけど。庇うんですか。」

「.........イエ、ナンデモナイデス。」

【ずいぶん鋭い眼光だな。あれが赤い視線か?】

 

神様がそう言いながら笑うが、正直あの眼光にはそのくらいの圧があった気がする。

そう私がたじたじになっている時、グレゴールさんが何かに気づいて言った。

 

「...待て、どうも問題はそれだけじゃないみたいだ...いったい、いつから普段の服をそのまんま来てたんだ、良秀...?」

 

グレゴールさんの視線の先には、普段の制服をそのまま着た良秀さんが立っていた。

 

「俺は人が捨てた服なんか着ない。」

「良秀さん......じゃあ私に渡してくれた服を着ればよかったんじゃ...」

「ありゃぁお前が着たがってたから探した奴だ。俺が着たかったわけじゃない。」

「......管理人の旦那、どうにも俺たち...」

『うん......終わったみたい、本気で...。』

 

遠くで崩れ落ちた計画を前に頭を抱えるエピさんが見える。計画が完壁だっただけに...すごく、申し訳ない。

とはいえこうなった以上もう正面から行くしかないだろう。

 

「...ダンテさん。」

『うん...こうなった以上、もう関係ないよね。いつも通り、死んで殺しに行こう。』

 

どうしてこうなってしまったんだと思いつつ、そうしていつものように、私は剣を抜いたのだった。

 

 

 

 




投票数が50人超えました。気づかなかったのですがランキングに入っていたっぽくてそれの影響なんでしょうかね。ありがたい限りです。これからもモチベが続く限り頑張らせていただきます。

それから関係ないですが、ハーメルンの原作にLimbusが追加されたみたいです。界隈がにぎわっているようで界隈にちょびっとかかわっている身としてはとてもうれしいですね。というかいつ追加されてたんだろ。
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