囚人No.14 ラヴクラフト   作:黒プー

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いただいた感想をちょいちょい眺めていたのですがバッサリカットでも行けるんじゃないかというお声がありましたので、本当に必要なさそうなところは様子見つつバッサリカットしてみようかなと思います。感想ありがとうございます。
それから毎度のことですが誤字報告ありがとうございます。いくら確認しても減らないので皆様のお力添え大変助かっております。


14話

3階は鉄工会という組織が管轄している階だった。エピさんがいうにはすさまじい悪口によって精神攻撃をしてくることが有名な組織らしい。正直なんでそんな変な技術で組織を存続できているのか全く分からないけれど。

実際にそれを聞く機会もあった。けど正直...なんというか、彼らの表現はあまりすさまじくなかった。神父様の悪趣味と言わざるを得ない語りのほうがよほどおぞましかったし血みどろだっただろう。

 

「うるさいです、どうでもいい話してる暇あったら戦ったほうがいいと思います。」

「んぎゃ!?」

「こ、こいつ、俺たちの攻撃が効かんぞ!?」

「攻撃って...もっとえげつない話を何度も聞いたことあるので意味ないです。」

【...懐かしいな、あの薄ら笑いから飛び出るとんでもない話。正気が削れているような感覚がするんだ...ああ、話も顔も思い出したくもない。】

 

何やら恐れおののいている鉄工会の人たちの頭を容赦なく粉砕しながら(よく回る口以外の戦闘は意外とお粗末な人たちだ)、どんどん上に上がるための道を切り開く。

 

 

「な、なあ。なんであいつあんな平気なんだよ?」

「わ、わかんないです。むしろラヴクラフトさんこそシンクレアさんみたいに一番ダメそうなのに。」

「......お、い。*1はっ、今度教えてやるか。」

「...いや、いくら耐性あっても良秀さんのはだめだと思いますけど。」

 

何やら後ろの人たちがしゃべっているような気がするけど、きっと気にするべきことではないだろう。

何人かの頭を割っていたら鉄工会の人たちは自然と私に道を開いてくれるようになった。

そうして私たちは、意外と簡単にカジノの最上階への階段を上ることができたのである。

 

 

 

 

『...ってか、最上階まで勢いで上がってきちゃったけど...肝心の願望力はどうしよう...』

 

ダンテさんが自分の失敗を思い出したのかそういうと、ロージャさんが言った。

 

「あ~、それについては心配しないで。実はさっき質屋でくすねた願望力があるの。量はちょっと少ないけど、これくらいなら十分でしょ?」

 

そういったロージャさんの手元には端切れだけの願望シールがあった。

いつの間にくすねたんだろう...私が見たときには空いた形跡はなさそうだったのに。

 

「そういうわけだからダンテ~、隊長役、譲ってもらえない?」

『......モチロンデス。』

 

すでに隊長役を担うことに苦痛を感じていそうだったダンテさんがそう言ったことで、ギャンブルに参加するのはロージャさんになった。

 

 

ロージャさんがプライベートルームでカジノをしている間、私たちは当然そこに入れないので近くの別室で待たされることになった。

私たち以外には誰もいない。鉄工会の人たちもマリアッチの人たちも自分の階を持っているからだろうか。

 

【...ふむ。あとはロージャたちがうまくやるだけというわけか。どうやら小休止くらいは入れることができそうだな。】

「さ、さすがに疲れました...3階はなんか楽でしたけど、それでもあれほど長く戦い続けたのは初めてです...」

【......まあ、そうだな。休めるうちに休んでおきなさい。黄金の枝を得る道のりが楽だとは限らないだろうしな。】

「...はい。」

 

ドンキホーテさんたちが何やら騒いでいるのをぼんやりと眺める。

本来ここはぽんぽん派の人たちのために用意された場所だ。だからふかふかのソファーやら備え付けのお菓子やらがある。ドンキホーテさんが騒いでるのもそれに対してなのだろう。

まあ、さすがにあれが原因で人が死ぬことはないだろう。,.....ないよね?いや、ないと信じよう。

 

ふと足音が聞こえて振り返ると、ロージャさんがさっき入ったプライベートルームに向かって歩く()()()が見えた。

片方は銀髪で長身の男。もう一人は大きなスパナを背中に背負っている、()()()()()()()()()

二人はそれなりに関係が深いのか、談笑しながら中に入っていった。

 

「だれか入っていきましたね?」

【ああ...まだ全員揃っていなかったのだろうな。】

 

気にすることもあるまい、という神様の言葉に、なんとなく違和感を感じつつも納得する。

少し嫌な予感がしたけれど...きっと気のせいだろう。

...いや、気のせいではないかもしれない。

 

「それで...ダンテさんたちは...何をしてるんでしょうか?」

【......もしかすると本当に作戦を成功させる気がないのかもしれないな、彼らには。】

 

プライベートルームにつながる薄い障子。その前にはそれに耳を当てて中の様子を探ろうとしている人たちがいる。呆れたことに全員がリンバスカンパニー所属である。

 

【というかソードは本当に何をしてるんだ。ついに吹っ切れたのか?作戦の発案者だろうに。】

「あはは...心当たりは割とありますね...。」

 

ここに至るまでの多くのやらかしが思い浮かぶ。ソードさんの笑顔を保ちながらも必死さがにじみ出ているその形相に、なおさら申し訳なくなる。

その時、私の肩にポンと手が置かれる。

 

「あいつ、意外と周りに流されやすいんだよ。...お前たちのせいだからな?」

「...なんというか、申し訳ないです。」

 

手の主は死んだような眼をして障子の前の山を眺めるエピさんだった。割とこの人のほうも苦労しているのかもしれない。

そんなことを考えていると。

 

「うっぁああ!?」

 

シンクレアさんの情けない声とともに、障子の壁がついに決壊する。

...少なくとも5人ほどの体重がかかっていたわけだし、よく持っていたほうではないだろうか。

 

「な、なんだお前ら?」

『ロージャ!どうなった!?』

 

空いた扉から中を覗いてみれば、ロージャさんとマリアッチのボスらしき人、それからさっき入っていった男の人が中にいた。

 

「ロージャ、見ない間に新しい友達を作ったみたいだね。...ゲームは終わりだ。君の勝ちだ、ロジオン。異議申し立てはなしだ。...行こうか。」

 

そういってその男の人は中に入っていった()()()()とともに外へ出て行った。

そしてそれを埋めるように、空虚な拍手の音が響く。

 

「おお~!...いやぁ、いいゲームだったね?よーく楽しませてもらったよ。ところで...私はソーニャの奴ほどクールにはなれない。友達を連れてきてくれた記念に、私の友達も紹介してあげる。」

 

いつの間にか私の後ろにマリアッチの人たちが立っていた。...どうも簡単にはここを通してくれないらしい。

それを見てグレゴールさんが言った。

 

「...ギャンブルは楽しむためにやるものだっておたくらの組織で言ってた気がするんだが?」

「そうだとも。...結果をすぐ受け入れるよりかは、こっちのほうがもっと面白いだろ?」

「誰が買っても力で押すつもりだったんだ?」

「ぷっ...おいおい、よく考えてみろ。私は力もあって部下もいるのに、たった1セットのゲームで黄金の枝を差し出すと思うか?」

「ふ...そうね。ちょうどよかった。...私もさっきから体動かしたくてうずうずしてたから!」

 

開戦の合図はロージャさんがマリアッチのボスに振り下ろした斧の一撃だった。

ボスがひらりとそれを交わしたのを見て、マリアッチの人たちも次々と戦闘態勢に入る。

 

「ちょっと!もう今更ですけど、こんなの計画にないですよ!」

「そんなこと言っても意味ないのはわかってるだろ、ソード!戦いはお前らに任せる!」

「とりあえず、二人を逃がします!」

【ああ、それがいいだろうな。】

 

二人に襲い掛かるマリアッチたちの前に体を滑り込ませて邪魔をする。

その時ダンテさんが叫ぶ。

 

『みんな!人格つけるから頑張って!』

「っ、いつもながらいきなりですね!」

 

ほかの囚人たちにかぶせられたように、私にもかぶせられる。それと同時に、まったく別の私の記憶が流れ込んでくる。

T社の色が失われた裏路地、その空に絵を描くようにして塗られる墨の斬撃。そしてその斬撃で飛び散る血の雨。

 

「...ふふ。なるほど。では皆様に見せて差し上げましょうか。墨と血の舞う裏路地の夜を。」

 

大剣を抜き放ち、墨をまとわせ斬撃を放つ。斬撃は周りの雑兵をまとめて切り裂き、血の雨を降らせる。

ああ、なんと美しい情景だろうか。

 

「...ああ、やはりこの瞬間だけは、難しいことをすべて忘れられて楽しいです。...そうは思いませんか、良秀さん?」

「お・に。...傘でもさして後ろで見てろ。」

「お前には似合わない...ふふ、あなたでなければ切り殺してますよ、良秀さん。口には気を付けるようグレゴールさんに怒られていたでしょう?」

「......チッ。」

 

舌打ちをしながら敵を切りに離れて行ってしまった良秀さんを見送りながら、ホンルさんやロージャさんが切り開いた血の道を進む。

その先にはマリアッチのボスが座っていた。

 

「...こりゃどういう了見なんだ?私の目の前には黒雲会のお偉いさんが立ってるように見えるんだけど。さっきまで後ろでビビってたちびっこだっただろ?」

「さあ、残念ながら私にも知りかねます。ですが...とりあえず、邪魔なので斬られてくれませんか?」

「あっはっは!いうねえ、楽しくなってきた!あんたが本物じゃないってのはわかってるんだ、少しくらい私の遊びに付き合ってくれよっ~!」

 

マラカスによる連続の打撃が襲い掛かってくる。二刀流の、しかも熟練した使い手による打撃の連続。気を抜けば避けきれないだろう。

目を使いすぎず、見切れるか見切れないかのぎりぎりを攻め続ける。少し当たるくらいならいい、ただ楽しければ、それで。

避けて少し反撃し、また避けて。そうしていると、遊ばれているのが分かったのか、相手が連撃をふるう手を止めて下がる。

 

「おや...もうおしまいですか?」

「終わるわけないだろ?...とっておきのダンス、見せてあげるよ!」

 

花が舞うように回転し、その速度を上げた相手が、その速度を上げた重い一撃を私に振るう。

常人であれば避けられず、脳漿をその場にまき散らしていそうな一撃だ。

...ああだけど、やはり退屈だ。死合えるような相手ではないらしい。

 

「......楽しかったですよ。少しだけですけど。」

 

私の居合とその一撃が交差した時、すでに決着はついていた。

血を払い落とし、大剣をしまった時。彼女の首はその場に落ちていた。

周りを見渡してみれば、大半の雑兵が切り伏せられて血の海に沈んでいた。どうやら彼らもうまくやってくれたらしい。

ああでも、もう少しだけ遊んでいたい。これほど楽しかったのは久しぶりなのだから。

 

そう思った瞬間、何かに吸い取られていくように様々な感情が消えていく。

黒い雲があしらわれた服装も、元の囚人のものへといつの間にか変わっていた。

 

【聞こえるか。......どうやら、戻ってきたようだな?】

「...えっと、そうみたいです。」

 

血にまみれ、血をまき散らすことを喜びにするなんて。...あそこの私はどうしてそうなってしまったんだ...?

思わずため息をつくと、それを聞いた神様が言う。

 

【君が体験する人格というやつはどうも他の世界でありえた自分を投影する技術らしい。...あくまであり得るというだけで、君の将来ではない。あまり深く考えないことだ。】

「...はい。そう、ですね。」

 

若干気持ち悪い感覚を覚えつつ、ともかく先に進むことはできることを喜ぶべきだと考え、その感覚を忘れることにした。

 

 

 

*1
俺は教えてない




1日に大学に入学したのでそれの準備とかなれたりとかでいろいろ忙しく、執筆時間をあまりとれていませんでした。遅れて申し訳ない。
そういう理由もありますので、しばらくは週一投稿に変更して遅れないように頑張りたいなという感じです。
黒雲会ラヴクラフトちゃんの人格ストーリーもそのうち書こうと思っていますのでお楽しみに。
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