囚人No.14 ラヴクラフト   作:黒プー

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赤評価をいただきました。まだ上げ始めてから二日しかたっていないのに、とてもありがたいことです。感想も見させていただいております。
...感想を眺めていると早くラヴクラフトちゃん章を書きたいなという気持ちに襲われてしまいますが、必死にこらえております。


3話

正直言って、私は戦いというものがあまり好きではない。

大半の場合、他人と剣を交えるということは、その他人か、あるいは私がその戦いで命を落とすことになるからだ。私は神様のおかげで生き残ってきたからいいものの、私が生きてしまったがために命を落とす相手を見送るというのは、あまり気持ちのいいことではなかった。

まだ幼かったころの私は、相手の命を踏み越えなければいけないということが恐ろしくて、剣を振るうことを恐れたものだ。

けれど神父様はそんな私におっしゃった。

 

「剣を振るう理由を、自分のためではなく仲間のためと考えてみなさい」

 

そう考えながら振るう剣は、以前よりも軽かった。

だから私は、この剣を振るうときは、仲間や家族を守るときだけだと決めている。

 

【6時に3歩、9時に1歩、1時に5歩踏み込んだのち刺せ。】

「はいっ...!」

 

神様の声に従い、目の前のネズミたちに剣を突き刺す。

神様の声はとても的確で、相手がどんな行動をとってきても、恐れず声に従えばすべて避けたうえで反撃できる。村の中で私が最も強かったのも、神様のおかげだ。

けれど。

 

「っ、ぐ!?」

「はっ!ちょろちょろとすばしっこいガキが、やっと動きを止めたなぁ!」

 

足に痛みが走って、倒れこんでしまうと同時に、相手をしていたネズミが右手に持った斧を振り上げる。

避けきれない。また時計かと目をつむった時だった。

 

「がっ!?」

「はぁ...まったく、私は言ったはずだ、お前は後ろにおられる管理人様を守っておけと。誰が前線に出ろといった!」

 

銃剣が振るわれ、ネズミが倒れる音とともに、そんな少し厳しそうな声が響く。

声の主はまだまだ頼りないダンテさんに代わって私たちを指揮していたウーティスさんのものだった。

 

「おい、大丈夫か。」

「敵に攻撃を受けた様子はない、大丈夫だと思うが...見せてみろ。」

「えっと、はい。」

 

近くにいた良秀さんと話すウーティスさんに、痛みの走る足を見せる。

しゃがんで私の足の状態を見たり、軽くたたいたりしたあと、ウーティスさんは少しため息をついて立ち上がる。

 

「お前の無茶な動きに体が耐え切れず悲鳴を上げたというところか。ただの捻挫だ。...やはりお前は前線に出す兵士としては不安定すぎる。とっとと持ち場に戻れ。負傷兵など前線の邪魔でしかないからな。」

「...ほら。バスのところまで戻るぞ。」

「あ、はい...。」

 

自然と良秀さんに背負われることになり、私は良秀さんに背負われつつ戦いながら来た道を戻っていく。

 

「横目で見ていたが...お前の戦い方、ずいぶんと無茶だな。敵の大半を請け負って、傷を作りながら確実に敵を殺す。...相手は殺せてもお前が死にかねん。どこで覚えた。」

「...戦いながら自然と、です。町には私しか戦える人がいませんでしたし、神様が手助けしてくれれば、死ぬこともなかったので。」

「...ここじゃお前は一人じゃない、少しは周りを頼って戦え。見ていられん。」

「...はい、ありがとうございます。」

 

頼る。町では考えもしなかった言葉だった。そう言ってくれる人も、そうできる人も、私の周りにはいなかったから。

その新鮮な言葉に、私は少しうれしくなった。

 

 

 

 

バスの前に戻って、ダンテさんとほかの人たちが戦っている様子をぼんやりと眺めていると、ヴェルギリウスさんがバスの中から顔を出していった。

 

「お前たち、その辺にしておけ。そろそろ客人が来るぞ。」

『客人って、誰が?』

「初めていくダンジョンですから、案内人が必要かと思いまして。」

 

そういったファウストさんの目線をたどっていくと、そこには赤い髪の、私より少し年上

くらいの女性が立っていた。

 

「あの、もしかして、リンバスカンパニーから来た方であってます?」

 

その人はダンテさんの姿を見て確信したようで、ほっとしたように少し笑っていった。

 

「よかった、そうみたいですね。」

 

ちょうどバスは食事を終えて、残った骨をバリバリと食らっていたころだった。

淡々とその風景を眺めていたその人は、戦っていた囚人たちがみんな戻ってきたところで、改めて挨拶をした。

 

「昔のL社に勤務していたユーリです。よろしくお願いします。」

『昔のL社ってことは...』

「あのロボトミーコーポレーションだろうな。」

「はい。私たちはロボトミーコーポレーション...旧L社の昔の支部へと向かいます。」

 

L社。名前だけは聞いたことがある。都市のあちこちに煙よりもクリーンなエネルギーを供給していた、それなりにすごい翼の企業だと神父様が言っていた。

 

「そういえば、なぜL社は没落してしまったんでしょう...神父様の言っていた通りなら、だれも没落させようなんて考えないと思うのですが。」

【自ら没落した、というところだろう。...光をばらまくだけばらまいて放置とは、まったく迷惑な話だがな。】

 

...珍しく神様がいら立っているような気がする。あまり触れるべきではない話題なのかもしれない。

そんなことを考えていれば、バスのエンジンがかかったようでそのままゆっくりと動き始める。どうやら私たちが頑張った分は無駄じゃなかったようで、それなりの量の燃料(エンケファリンというらしい)は貯まった様子だ。

...ふと新しく乗り込んできた彼女のことを思い出して、どこかに座ったのだろうかと見まわしてみる。前にはいないようだったので、後ろを見てみれば、私の後ろに座り、私のことをじっと見つめていたユーリさんと目が合う。

 

「...えっと、ユーリさん。どうしてそんなにじっと見つめてくるんですか?」

「あっ、その、...すみません。その、何というか...髪がとてもきれいだったので。」

 

...初対面の人に言うにしてはあまりにもあんまりな言葉が飛び出して、思わず硬直する。

ユーリさんも自分の言ったことの意味に気づいたようで、顔を髪の色くらい真っ赤にして、うつむきながら言った。

 

「......わ、忘れてください、なんで私こんなこと...。」

「だ、大丈夫です、口説き文句かなって思ってませんから、気にしてませんから...。」

 

思ってたんじゃないですか、とまだ恥ずかしさに悶えているユーリさん。

それを見ているのも気まずくて、そっぽを向いて窓に映る自分の姿を見る。

そこに映るのは、私の銀色の髪。神父様が言うには、神様とお話しするのにとても大事な、いうなれば鍵のようなものだとおっしゃっていた。

 

「だから、この髪だけは丁寧に扱いなさい。じゃないと、神様に嫌われてしまうからね。」

 

そう言っていた神父様のことを思い出し、神様に気になって尋ねてみる。

 

「...神様は私の髪のこと、どう思っているんですか?」

「え、神様?」

【髪だと?...まあきれいだとは思うが。それがどうした?】

 

どうやらまだ、神様は私のことが嫌いではないらしい。

少し安心して、思わず笑いがこぼれる。

 

「か、神様、って、どういうことですか...?」

「?神様は神様です。いつも私とお話ししてくださるんです。」

「...???」

 

どうやらユーリさんは神様のことが気になるらしい。これは布教をするチャンスなのではないだろうか。

そうおもって懐から本を取り出し、ユーリさんに見せる。

 

「神様のことを知るなら、神様の言葉を知ることが一番です。なのでこれをどうぞ。私が神様のお話を聞いて、まとめたものです。読んでみてください。」

「あ、えっと...ありがとうございます...?」

 

...少し困惑しているように見えるがきっと気のせいだろう。

本を開くユーリさんの姿を私はなるべくうれしさを隠しつつ眺める。

だがユーリさんは私の期待と裏腹に、すぐにその本を閉じてしまう。

 

「...えっと、面白かったです、...たぶん。」

「!そうですか!よかったです、良秀さん以外面白いと言ってくれる人がいなかったものですから。安心しました、やっぱりこの物語は素晴らしいものなのです。」

 

思わずユーリさんの手を握って、ぶんぶんと動かす。...ユーリさんからは何か、小さい子供をあやす時のような視線を感じるが、きっと気のせいだろう。

ともかく神様の布教に成功して、私はとてもうれしかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




リンバス二次創作界隈で有名なユーリちゃん生存ルートはこの作品ではあるのでしょうかね。
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