東方三界録   作:肩幅ひろし

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第12話:霊夢の力を狙う敵、ついに姿を現す

 空白域が閉じ、森に色と音が戻った――

その直後だった。

 

空気が“コツン”と鳴った

 

「……今の音、何?」

霊夢が眉をひそめる。

 

「境界の揺らぎじゃない……

これは“外部からの干渉”だよ……」

麟が測定器を構える。

 

「外部って……どこからよ?」

「わからない。けど……

“霊夢の力”を狙ってる反応がある……!」

 

「狙ってるって言った!?」

霊夢が叫ぶ。

 

その瞬間――

 

森の奥から、黒い蝶がふわりと舞い出た

 

「蝶……?」

魔理沙が目を細める。

 

蝶は一匹、二匹、三匹……

やがて数十匹の群れとなり、

空中で“人の形”を作り始めた。

 

蝶がほどけるように散り、

その中心に――

 

黒と紫の衣をまとった少女が立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……やっと見つけたわ、博麗の巫女」

 

少女の声は静かで、

しかし底に冷たいものが潜んでいた。

 

「誰よ、あんた」

霊夢が構える。

 

「私は“虚境(きょきょう)”。

境界の“空白”を司る者よ」

 

「空白って……さっきのアレか?」

魔理沙が眉をひそめる。

 

「ええ。あなたが閉じた“空白域”。

本来なら誰にも触れられない領域。

……それを、あなたは癒やしてしまった」

 

虚境は霊夢をじっと見つめる。

 

「その力――

私が欲しいわ。」

 

「欲しいって言った!?」

霊夢が一歩後ずさる。

 

「霊夢の力は渡さねぇよ!」

魔理沙が前に出る。

 

「そうよ。

私、そんな簡単に力あげないわよ」

霊夢が腕を組む。

 

「簡単じゃないわ。

あなたの力は“奪う”ものだから」

 

虚境が指を鳴らすと、

空間が“ズルッ”と沈み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「麟!! 空間が溶けてるぞ!!」

「違うよ……“消えてる”んだ……!」

 

虚境の足元から広がる黒い波紋は、

触れたものの“存在そのもの”を薄くしていく。

 

「これが……空白の力……?」

霊夢が息を呑む。

 

「ええ。

境界を癒やすあなたの力とは対極。

私は“境界を消す”。

存在を、意味を、記憶を――

すべて空白に還す」

 

「物騒すぎるわよ!!」

 

霊夢が叫ぶが、虚境は微笑むだけ。

 

「だからこそ、あなたの力が必要なの。

“癒やし”と“空白”が揃えば――

境界そのものを再構築できる」

 

「再構築って……何する気よ」

霊夢が睨む。

 

「幻想郷を“白紙”に戻すのよ。

すべての境界を消し、

すべての存在を等しく“無”に還す」

 

「白紙って言った!?」

「無に還すって言った!?」

「やめろぉぉぉ!!」

 

三人が同時に叫ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あなたの力は、境界を癒やす。

つまり“存在を肯定する力”。

それがあれば、私は――

世界を好きな形に書き換えられる。」

 

「書き換えるなぁぁぁ!!」

霊夢が叫ぶ。

 

「霊夢、あいつ……本気でやばいぞ……」

魔理沙が低く呟く。

 

「麟、どうすればいいのよ!!」

「霊夢の力は“鍵”なんだよ……

虚境は霊夢の力を奪えば、

境界を自由に操作できる……!」

 

「つまりどういうことよ!!」

「霊夢が狙われてる!!」

 

「最初からそうでしょ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 虚境は一歩前へ進み、

黒い蝶を一匹、霊夢の前に飛ばす。

 

「博麗霊夢。

あなたの力、必ずいただくわ。

次に会う時――

あなたは“空白の巫女”になる」

 

「ならないわよ!!」

 

霊夢が叫ぶと、

虚境はふっと微笑み――

 

蝶となって霧散した

 

残されたのは、

黒い空白の残滓だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……霊夢、完全に狙われてるな」

魔理沙が腕を組む。

 

「うん……霊夢の力は“虚境の計画の鍵”なんだよ……」

麟が真剣な顔で言う。

 

「ちょっと待って。

私、また鍵なの!?

鍵多くない!?」

 

「霊夢は万能だからな」

「褒めてるの?」

「褒めてるぜ」

「褒めてるよ」

「……ならいいわ」

 

霊夢はため息をつきながらも、

どこか覚悟を決めたように空を見上げた。

 

「……来るなら来なさい。

空白だろうが何だろうが、

私は“幻想郷を守る巫女”よ」

 

その言葉に、

麟と魔理沙も静かに頷いた。

 

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