東方三界録   作:肩幅ひろし

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第12話:霊夢の力を狙う敵、ついに姿を現す

 空白域が閉じ、森に色と音が戻った――

その直後だった。

 

空気が“コツン”と鳴った。

 

「……今の音、何?」

霊夢が眉をひそめる。

 

「境界の揺らぎじゃない……

これは“外部からの干渉”だよ……」

麟が測定器を構える。

 

「外部って……どこからよ?」

「わからない。けど……

“霊夢の力”を狙ってる反応がある……!」

 

「狙ってるって言った!?」

霊夢が叫ぶ。

 

その瞬間――

 

森の奥から、黒い蝶がふわりと舞い出た。

 

「蝶……?」

魔理沙が目を細める。

 

蝶は一匹、二匹、三匹……

やがて数十匹の群れとなり、

空中で“人の形”を作り始めた。

 

蝶がほどけるように散り、

その中心に――

 

黒と紫の衣をまとった少女が立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆

 

 「……やっと見つけたわ、博麗の巫女」

 

少女の声は静かで、

しかし底に冷たいものが潜んでいた。

 

「誰よ、あんた」

霊夢が構える。

 

「私は“虚境(きょきょう)”。

境界の“空白”を司る者よ」

 

「空白って……さっきのアレか?」

魔理沙が眉をひそめる。

 

「ええ。あなたが閉じた“空白域”。

本来なら誰にも触れられない領域。

……それを、あなたは癒やしてしまった」

 

虚境は霊夢をじっと見つめる。

 

「その力――

私が欲しいわ。」

 

「欲しいって言った!?」

霊夢が一歩後ずさる。

 

「霊夢の力は渡さねぇよ!」

魔理沙が前に出る。

 

「そうよ。

私、そんな簡単に力あげないわよ」

霊夢が腕を組む。

 

「簡単じゃないわ。

あなたの力は“奪う”ものだから」

 

虚境が指を鳴らすと、

空間が“ズルッ”と沈み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆

 

 「麟!! 空間が溶けてるぞ!!」

「違うよ……“消えてる”んだ……!」

 

虚境の足元から広がる黒い波紋は、

触れたものの“存在そのもの”を薄くしていく。

 

「これが……空白の力……?」

霊夢が息を呑む。

 

「ええ。

境界を癒やすあなたの力とは対極。

私は“境界を消す”。

存在を、意味を、記憶を――

すべて空白に還す」

 

「物騒すぎるわよ!!」

 

霊夢が叫ぶが、虚境は微笑むだけ。

 

「だからこそ、あなたの力が必要なの。

“癒やし”と“空白”が揃えば――

境界そのものを再構築できる」

 

「再構築って……何する気よ」

霊夢が睨む。

 

「幻想郷を“白紙”に戻すのよ。

すべての境界を消し、

すべての存在を等しく“無”に還す」

 

「白紙って言った!?」

「無に還すって言った!?」

「やめろぉぉぉ!!」

 

三人が同時に叫ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆

 

 「あなたの力は、境界を癒やす。

つまり“存在を肯定する力”。

それがあれば、私は――

世界を好きな形に書き換えられる。」

 

「書き換えるなぁぁぁ!!」

霊夢が叫ぶ。

 

「霊夢、あいつ……本気でやばいぞ……」

魔理沙が低く呟く。

 

「麟、どうすればいいのよ!!」

「霊夢の力は“鍵”なんだよ……

虚境は霊夢の力を奪えば、

境界を自由に操作できる……!」

 

「つまりどういうことよ!!」

「霊夢が狙われてる!!」

 

「最初からそうでしょ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆

 

 虚境は一歩前へ進み、

黒い蝶を一匹、霊夢の前に飛ばす。

 

「博麗霊夢。

あなたの力、必ずいただくわ。

次に会う時――

あなたは“空白の巫女”になる」

 

「ならないわよ!!」

 

霊夢が叫ぶと、

虚境はふっと微笑み――

 

蝶となって霧散した。

 

残されたのは、

黒い空白の残滓だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆

 

 「……霊夢、完全に狙われてるな」

魔理沙が腕を組む。

 

「うん……霊夢の力は“虚境の計画の鍵”なんだよ……」

麟が真剣な顔で言う。

 

「ちょっと待って。

私、また鍵なの!?

鍵多くない!?」

 

「霊夢は万能だからな」

「褒めてるの?」

「褒めてるぜ」

「褒めてるよ」

「……ならいいわ」

 

霊夢はため息をつきながらも、

どこか覚悟を決めたように空を見上げた。

 

「……来るなら来なさい。

空白だろうが何だろうが、

私は“幻想郷を守る巫女”よ」

 

その言葉に、

麟と魔理沙も静かに頷いた。

 

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