東方三界録   作:肩幅ひろし

13 / 23
第13話:霊夢、力を奪われかける

 虚境が霧散して消えたはずの森に、

再び黒い蝶が一匹だけ舞い戻ってきた

 

「……また来たわよ」

霊夢が眉をひそめる。

 

「いや、さっきの残りカスかもしれねぇぜ?」

魔理沙が軽口を叩く。

 

「残りカスがこんな不穏な気配出すわけないでしょ!!」

霊夢が叫んだ瞬間――

 

蝶が霊夢の胸元へ“スッ”と吸い込まれた。

 

「っ……!?」

 

「霊夢!!」

麟と魔理沙が同時に駆け寄る。

 

だが霊夢の身体が、

黒い光に包まれて動けなくなった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……やっぱり、あなたの中は美しいわね」

 

声は外からではなく、

霊夢の胸の奥から響いていた

 

「虚境……!?

あんた、私の中に……!」

 

「ええ。

あなたの“浄化の力”は、内側から奪うのが一番早いのよ」

 

霊夢の身体が震え、

金色の光が黒に染まり始める。

 

「やめなさいよ……!

私の力は……私のものよ……!」

 

「違うわ。

あなたの力は“境界そのもの”のもの。

あなたが持つには、強すぎる」

 

「強すぎるって……何よそれ……!」

 

「だから私が使うの。

あなたの代わりに、世界を“白紙”に戻すために」

 

「戻すなぁぁぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 虚境の黒い蝶が霊夢の胸から広がり、

金色の光を“吸い上げる”ように揺らめく。

 

「麟!! 霊夢の光が吸われてる!!」

魔理沙が叫ぶ。

 

「わかってる!!

霊夢の“境界浄化エネルギー”が……

虚境に引き抜かれてるんだ!!」

 

「つまりどういうことだよ!!」

「このままだと霊夢は“空白の巫女”にされる!!」

 

「されるなぁぁぁ!!」

 

魔理沙が霊夢に手を伸ばすが――

 

黒い空白が“バチッ”と弾いた

 

「うわっ!?」

 

「魔理沙、触っちゃダメ!!

虚境の空白は“存在を薄くする”……

触れたら魔理沙まで消える!!」

 

「消えるなぁぁぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……っ……」

霊夢の膝が崩れかける。

 

「霊夢!! しっかりしろ!!」

魔理沙が叫ぶ。

 

「……私……

怒りも……浄化も……

全部……吸われて……」

 

霊夢の声が震える。

 

「霊夢!!

あんたの力は……あんたが選んで掴んだんだろ!!

奪われていいわけねぇだろ!!」

 

「魔理沙……」

 

麟も叫ぶ。

 

「霊夢!!

怒りを抑えようとしないで!!

“怒りを受け入れて”!!

怒りは悪じゃない!!

君の力の源なんだ!!」

 

「怒りを……受け入れる……?」

 

霊夢の胸の奥で、

黒い蝶がさらに光を吸い上げる。

 

「そうよ、霊夢」

虚境の声が甘く響く。

 

「怒りなんて、手放してしまいなさい。

あなたには重すぎるわ。

私が代わりに――」

 

「黙りなさいよ……」

 

霊夢の声が震えた。

 

「……え?」

虚境が一瞬だけ戸惑う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「怒りは……重くなんかない……

私の中にある……大事な感情よ……!」

 

霊夢の胸の奥で、

金色の光が再び灯った

 

「なっ……!?」

虚境の声が揺らぐ。

 

「怒りも……苛立ちも……

全部、私の力になる……

あんたなんかに……渡すわけないでしょ!!」

 

霊夢の身体から、

金色と赤の混ざった光が爆発した

 

「霊夢!!」

「霊夢!!」

 

麟と魔理沙が叫ぶ。

 

黒い蝶が弾け飛び、

虚境の声が遠ざかる。

 

「……覚えておきなさい、博麗霊夢。

あなたの力は……必ず奪うわ」

 

虚境の気配が完全に消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……はぁ……はぁ……」

霊夢が膝をつく。

 

「霊夢!!」

魔理沙が支える。

 

「大丈夫……? 霊夢……」

麟が心配そうに覗き込む。

 

「……大丈夫よ……

でも……危なかったわね……」

 

霊夢は苦笑しながら、

胸に手を当てた。

 

「……あいつ……本気で私の力を狙ってる……」

 

「霊夢、守るからな」

「霊夢、僕も絶対に支えるよ」

 

「……ありがと」

 

霊夢は二人に支えられながら立ち上がった。

 

――虚境との戦いは、まだ始まったばかりだった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。