虚境が消えてから数時間後。
霊夢・魔理沙・麟の三人は、森の奥で次の空白域の調査をしていた。
「……静かすぎるな」
魔理沙が周囲を見回す。
「うん。虚境の気配はないけど……
“何か”が近づいてる……」
麟が測定器を握りしめる。
「何かって何よ」
霊夢が眉をひそめた、その瞬間――
森の奥から、霊夢が歩いてきた。
「……え?」
「……え?」
「……え?」
三人が同時に固まる。
◆
森から現れた“霊夢”は、
本物とまったく同じ姿、同じ歩き方。
ただひとつ違うのは――
表情が、完全に無表情だった。
「……あなたたち、何してるの?」
声も霊夢そのもの。
しかし温度がない。
「お、おい霊夢……あれ……お前だよな?」
魔理沙が震える声で言う。
「私じゃないわよ!!
私、ここにいるでしょ!!」
「じゃああれは……」
麟が測定器を見て青ざめる。
「虚境の……“コピー”だ……!」
「コピーって言った!?」
霊夢が叫ぶ。
◆
コピー霊夢は無表情のまま、
本物の霊夢をじっと見つめた。
「博麗霊夢。
あなたの力を渡しなさい」
「渡すわけないでしょ!!」
「渡さないなら……奪うだけ」
コピー霊夢の周囲に、
黒い蝶が舞い始めた。
「麟!! あれ……虚境の空白エネルギーだ!!」
「うん……しかも霊夢の“浄化の波動”も混ざってる……!」
「混ざってるってどういうことよ!!」
「虚境が霊夢の力を“模倣”してるんだよ!!」
「模倣すんなぁぁぁ!!」
◆
コピー霊夢が手をかざすと、
金色の光が黒に反転し、
周囲の草木が“色を失って”いく。
「うわっ……!」
魔理沙が後ずさる。
「霊夢の浄化の力を……
“逆方向”に使ってる……!」
麟が叫ぶ。
「逆方向って何よ!!」
「霊夢が癒やすなら、コピーは“消す”んだよ!!」
「消すなぁぁぁ!!」
◆
コピー霊夢が無表情のまま言う。
「あなたの力は……私が使うべきもの」
「使わせないわよ!!
私の力は……私が選んで使うの!!」
霊夢の周囲に金色の光が灯る。
「霊夢!! 怒りを浄化して!!
“本物の波動”を見せてやれ!!」
魔理沙が叫ぶ。
「霊夢!!
コピーは“感情がない”から、
怒りの浄化には絶対に勝てない!!」
麟が続ける。
「……そうね」
霊夢は深呼吸し、
胸の奥にある怒りを静かに受け入れた。
「怒りも、苛立ちも、全部……
私の力よ!!」
金色の光が爆発し、
コピー霊夢の黒い光とぶつかり合う。
――森が震えた。
そして、霊夢の光がコピー霊夢を包み――
黒い蝶が一斉に散った。
コピー霊夢は、
虚境の残滓となって消えていった。
◆
「……ふぅ……」
霊夢が肩で息をする。
「霊夢!! 大丈夫か!!」
魔理沙が駆け寄る。
「うん……なんとかね……」
麟が測定器を見ながら呟く。
「虚境……本気で霊夢の力を奪いに来てる……
次はもっと強いコピーを作ってくるかもしれない……」
「コピーなんて何体来ても、
私が本物よ」
霊夢は強く言い切った。
「……でも、ちょっと怖かったわね」
「怖いって言うなよ霊夢」
「怖かったのよ!!」
三人の声が森に響く。
――虚境との戦いは、さらに深まっていく。