虚境との戦いが続く中、
霊夢・魔理沙・麟の三人は、森の奥で異様な気配を感じ取った。
「……なんか、嫌な感じがするわね」
霊夢が眉をひそめる。
「嫌な感じってレベルじゃねぇぞ……」
魔理沙がミニ八卦炉を構える。
「霊夢……“君の揺らぎ”と同じ波形が……
複数……いや、大量に近づいてる……!」
麟が測定器を見て青ざめる。
「大量って言った!?」
霊夢が叫んだ瞬間――
森の奥から、霊夢が歩いてきた。
一人。
二人。
三人。
十人。
百人。
そして――
森一面が“霊夢”で埋め尽くされた。
◆
全員、霊夢。
でも、全員“無表情”。
「……ちょっと待って。
私、こんなにいたら怖いんだけど」
霊夢が後ずさる。
「いや、怖いのは私たちだぜ……」
魔理沙が震える。
「霊夢の揺らぎ……全部“感情ゼロ”……
怒りも喜びも、何もない……
完全な“空白の霊夢”だ……!」
麟が呟く。
「空白にすんなぁぁぁ!!」
霊夢軍団は一斉に顔を上げ、
無機質な声で呟いた。
「……博麗霊夢。
あなたの力を……渡しなさい……」
「全員同じこと言うなぁぁぁ!!」
◆
空間が揺れ、虚境の声が森に満ちた。
「あなたの力は特別。
だからこそ、“量”で奪うのが最も効率的なのよ」
「効率的って言った!?
私、そんな家電みたいな扱いなの!?」
霊夢が叫ぶと、
霊夢軍団が一斉に反応し、
金色の浄化エネルギーを“黒く反転”させて放ってきた。
「うわっ!?
霊夢の浄化が……逆方向に!?」
魔理沙が飛び退く。
「麟!! どうなってんだよ!!」
「虚境が霊夢の力を“模倣”して、
感情だけ抜き取って量産してるんだよ!!」
「量産すんなぁぁぁ!!」
◆
霊夢軍団が一斉に飛びかかってくる。
「霊夢!!
あいつらは“怒りの浄化”が使えない!!
感情がないから!!」
麟が叫ぶ。
「つまりどうすればいいのよ!!」
「霊夢は“怒りを受け入れて”戦うんだ!!
感情の揺らぎはコピーできない!!」
「了解!!」
霊夢は深呼吸し、
胸の奥の怒りを静かに掴む。
「……怒りは……私の力よ……!」
金色の光が霊夢の周囲に広がり、
霊夢軍団の黒い光を押し返す。
「すげぇ……
本物の霊夢の光は、あいつらの反転浄化を上回ってる……!」
魔理沙が呟く。
「霊夢!!
“感情の揺らぎ”をぶつけて!!
あいつらは揺らぎを再現できない!!」
麟が叫ぶ。
「任せなさい!!」
霊夢は拳を握りしめ、
怒りを金色の波動へと変換し――
霊夢軍団の中心へ突っ込んだ。
◆
霊夢の金色の波動が触れた瞬間、
霊夢軍団は“黒い蝶”となって次々に崩れ落ちていく。
「……やっぱり……
感情のない私なんて……私じゃないわね」
霊夢が静かに呟く。
「霊夢……かっこいいぜ……」
魔理沙が感動する。
「霊夢の“怒りの浄化”は、
虚境の空白に対する“唯一の対抗手段”なんだよ……」
麟が言う。
最後の一体が崩れ落ち、
森に静けさが戻った。
◆
虚境の声が再び響く。
「……さすがね、博麗霊夢。
でも、あなたの感情は“有限”。
私は無限にコピーを作れる」
「無限って言った!?
やめなさいよ!!」
「次は……
“あなたの怒りそのもの”をコピーしてあげる」
「怒りコピーすんなぁぁぁ!!」
虚境の気配が消え、
霊夢たちは顔を見合わせた。
「……霊夢、次はもっとヤバいぞ」
「わかってるわよ……
でも、負ける気はしないわ」
霊夢は拳を握り、
空を見上げた。