東方三界録   作:肩幅ひろし

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第17話:虚境、“霊夢の悲しみ”をコピーして送り込む

 純怒霊夢を倒した翌日。

霊夢は神社の縁側で、静かに空を見上げていた。

 

「……怒りだけじゃなくて、悲しみまで狙われるのかしらね」

 

魔理沙と麟は、霊夢の横顔を心配そうに見つめる。

 

「霊夢……無理すんなよ」

「霊夢の“感情の揺らぎ”が、虚境の狙いなんだ……」

 

「わかってるわよ……でも――」

 

霊夢が言いかけた瞬間。

 

神社の裏の森から、すすり泣く声が聞こえた

 

「……え?」

「泣き声……?」

「霊夢の揺らぎと……同じ波形……!」

 

麟が測定器を握りしめる。

 

「同じって言った!?

私、泣いてないわよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 森の奥にいたのは――霊夢

 

 ただし、悲しみだけを抽出した“哀哭霊夢”

 

 肩を震わせ、

目は涙で濡れ、

周囲の空間が“沈んだ波動”で揺れている。

 

「……あれ……私……?」

霊夢が息を呑む。

 

「いや、霊夢……あれは……」

魔理沙が言葉を失う。

 

「霊夢の“悲しみだけ”を抽出して、

虚境が実体化させた存在だ……」

麟が震える声で言う。

 

「悲しみだけって……そんなの……」

 

哀哭霊夢は、涙を流しながら霊夢を見つめた。

 

「……どうして……

どうして……私を……見ないの……?」

 

「見てるわよ!!

私、ちゃんと自分の感情見てるわよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 哀哭霊夢が手を伸ばすと、

霊夢の胸の奥が“ぎゅっ”と締め付けられた。

 

「っ……!?」

霊夢が膝をつく。

 

「霊夢!!」

魔理沙が駆け寄ろうとするが――

 

哀哭霊夢の涙が地面に落ちた瞬間

周囲の色が“灰色”に変わった

 

「なっ……!?

色が……消えていく……!」

魔理沙が後ずさる。

 

「麟!! どうなってんだよ!!」

「哀哭霊夢は……

“悲しみの揺らぎ”で存在を薄くしてる……!

怒りのコピーより厄介だ……!」

 

「厄介すぎるわよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 哀哭霊夢は、涙を流しながら霊夢に近づく。

 

「……どうして……

どうして……私を……抱きしめてくれなかったの……?」

 

「抱きしめる!?

私、自分の悲しみを抱きしめるの!?」

 

「霊夢!!

悲しみは“受け入れないと”増幅する!!

怒りと同じだよ!!」

麟が叫ぶ。

 

「でも……悲しみなんて……

受け入れたら……立てなくなるじゃない……!」

 

霊夢の声が震える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 哀哭霊夢は、霊夢の頬に触れた。

「……あなたは……

いつも強がって……

誰にも頼らなくて……

ひとりで全部抱えて……

だから……私が生まれたの……」

 

「やめてよ……

そんなこと言わないでよ……」

 

霊夢の目に涙が浮かぶ。

 

「霊夢!!

泣いていいんだよ!!

悲しみを否定すると……あいつが強くなる!!」

麟が叫ぶ。

 

「霊夢!!

私たちがいるだろ!!

ひとりで抱えんなよ!!」

魔理沙が叫ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 霊夢は震える手で胸に触れ、

深く息を吸った。

 

「……悲しいわよ……

怖いし……

不安だし……

全部……全部あるわよ……!」

 

霊夢の涙が一粒、地面に落ちる。

 

その瞬間――

金色の光が、霊夢の涙から溢れた

 

「……これ……怒りの浄化と……違う……」

麟が息を呑む。

 

「霊夢の“悲しみの受容”だ……!」

 

霊夢は涙を拭い、哀哭霊夢を見つめた。

 

「……あんたは私の悲しみよ。

捨ててない。

ちゃんとここにある。

でも――

私を壊すための悲しみじゃない!!」

 

霊夢の金色の光が哀哭霊夢を包み――

 

哀哭霊夢は、静かに微笑んで消えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……はぁ……はぁ……」

霊夢が涙を拭う。

 

「霊夢……大丈夫か……?」

魔理沙がそっと肩に触れる。

 

「うん……

でも……悲しみって……

怒りよりキツいわね……」

 

麟が静かに言う。

「霊夢……

虚境は“君の心の奥”を狙ってる……

次は……もっと深い感情かもしれない……」

 

「もっと深いって……何よ……」

 

「例えば……

“孤独”とか……

“恐れ”とか……」

 

「やめてぇぇぇ!!」

 

――虚境との戦いは、

霊夢の“心の核心”へと迫っていく。

 

 

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