東方三界録   作:肩幅ひろし

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第19話:虚境の本拠地“空白界”へ突入する

 霊夢の“孤独の受容”によって虚境の揺らぎが大きく乱れた翌日。

麟の測定器は、これまでにないほど強烈な反応を示していた。

 

「……霊夢、魔理沙。

虚境の本拠地が……“開いた”よ」

 

「開いたって……どこに?」

霊夢が眉をひそめる。

 

「ここだよ」

麟が指差したのは――

博麗神社の真上の空

 

空間が“音もなく”裂け、

黒と白の境界が渦を巻いている。

 

「……あれが……空白界……?」

魔理沙が息を呑む。

 

「虚境が作った“境界の裏側”。

存在のない世界……

色も音も、意味もない……

ただの“無”の領域だよ」

麟が震える声で言う。

 

「無って言った!?

そんなとこ行きたくないんだけど!!」

 

「霊夢、行くしかないぜ。

あいつを止められるのは……お前だけだ」

魔理沙が肩を叩く。

 

「……わかってるわよ」

 

霊夢は深呼吸し、

空に開いた裂け目を見上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「行くよ、霊夢」

「行こう、霊夢」

二人の声が重なる。

 

「……ありがとう。

あんたたちがいるなら……大丈夫よ」

 

三人は同時に跳び上がり、

空間の裂け目へと飛び込んだ。

 

――瞬間。

 

世界が“無音”になった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 霊夢たちが足を踏み入れたのは、

白でも黒でもない、

“色の概念そのものが欠けた空間”。

 

地面はあるようでなく、

空はあるようでない。

 

魔理沙が声を出す。

 

「……おい、霊夢……麟……

声、聞こえるか……?」

 

声は確かに出ているのに、

音として届くまでに“遅れ”がある

 

「……ここ……

存在の密度が薄いんだ……」

麟が測定器を見ながら呟く。

 

「薄いって何よ……」

霊夢が眉をひそめる。

 

「僕たちの“存在”そのものが……

この世界に馴染めてないんだよ……

長くいると……消える……」

 

「消えるって言った!?

帰るわよ!!」

 

「霊夢、落ち着け!!

虚境を倒さないと帰れない!!」

 

「倒すわよ!!

今すぐ倒すわよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その時――

空間の奥から、

黒い蝶がゆっくりと舞い降りてきた。

 

「……また蝶かよ……」

魔理沙が構える。

 

「違う……

これは……虚境の“分身”だ……!」

麟が叫ぶ。

 

蝶が集まり、

人の形を作り始める。

 

現れたのは――

虚境に似ているが、

顔のない少女

 

「……なにあれ……」

霊夢が息を呑む。

 

「虚境の“空白の守護者”……

存在のない存在……

名前も、感情も、意味もない……」

麟が震える声で言う。

 

「名前もないって……

かわいそうじゃない……」

霊夢が呟く。

 

その瞬間、

顔のない少女が霊夢に向かって手を伸ばした。

 

空気が“ズルッ”と沈む

 

「霊夢!!

触れたら存在が削られる!!」

麟が叫ぶ。

 

「削られるって言った!?

絶対触れないわよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 霊夢が浄化の光を放つが――

 

「……え……?」

光が“薄い”。

 

「霊夢!!

ここでは“感情の密度”が下がる!!

怒りも悲しみも……

全部、薄まっていく!!」

 

「薄まるって何よ!!

私の感情返しなさいよ!!」

 

「返せるかよ!!

ここ空白界だぞ!!」

魔理沙が叫ぶ。

 

顔のない少女が再び手を伸ばす。

 

「霊夢!!

怒りを……悲しみを……

“思い出して”!!

ここでは感情が奪われる!!

奪われたら……霊夢が霊夢じゃなくなる!!」

麟が叫ぶ。

 

「思い出すって……

そんな簡単に……!」

 

霊夢の胸の奥が、

“すうっ”と冷たくなる。

 

「……あ……

私……なんで戦ってるんだっけ……?」

 

「霊夢!!

ダメだ!!

空白界に飲まれてる!!」

魔理沙が叫ぶ。

 

「霊夢!!

僕たちを見て!!

霊夢は……ひとりじゃない!!

怒りも悲しみも……

全部、僕たちが支える!!」

麟が手を伸ばす。

 

霊夢は震える声で呟いた。

 

「……魔理沙……麟……

あんたたち……

ここに……いるの……?」

 

「いるに決まってるだろ!!」

「霊夢を置いていくわけないよ!!」

 

霊夢の胸に、

白金色の光が再び灯った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 霊夢の光が広がり、

顔のない少女が後退する。

 

「……霊夢の“核心の光”……

空白界でも……消えない……!」

麟が驚く。

 

「当然よ!!

私の感情は……

空白なんかに負けない!!」

 

霊夢が叫ぶと、

空白界の奥から――

 

虚境の声が響いた

 

「……来たのね、博麗霊夢。

あなたの“核心”……

ここで奪わせてもらうわ」

 

空白界の中心が、

ゆっくりと開き始める。

 

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