東方三界録   作:肩幅ひろし

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第2話:異変よりも面倒なのは性格差

 魔理沙が先に飛び出してから数分後。

霊夢と麟は、境界の揺らぎが強い森の入口に到着した。

 

「……で、魔理沙はどこ行ったのよ」

 

「さあ。僕の計測では、この先に“異常値”があるはずなんだけど……」

 

麟が羅針盤を覗き込むと、針がぐるぐると高速回転し始めた。

 

「ちょ、ちょっと待って。回りすぎて読めないんだけど」

 

「壊れたんじゃないの?」

 

「壊れてないよ! これは……魔理沙が原因で乱れてるだけ!」

 

「え、魔理沙が?」

 

その瞬間、森の奥から爆音が響いた。

 

ドォォォォン!

 

「おーい! 霊夢ー! 麟ー! なんか変なの倒したぜー!」

 

魔理沙が煙まみれで飛んでくる。

 

「倒したって……何を?」

 

「知らん! なんか光ってたから撃った!」

 

「理由が雑すぎるよ!?」

 

麟が頭を抱える。

霊夢は呆れた顔で魔理沙を指さした。

 

「ほら見なさい。あんたのせいで羅針盤が壊れたって」

 

「いや、壊れてないってば! ただ……魔理沙の行動が予測不能すぎて、計測不能になってるだけ!」

 

「つまり壊れてるんじゃないか」

 

「違うよ!」

 

魔理沙は胸を張って笑う。

 

「まあまあ、細けぇことはいいじゃん。結果的に敵は倒したんだし」

 

「敵かどうかもわからないでしょ!」

 

「光ってたら大体敵だろ?」

 

「その発想で幻想郷を歩くのやめて……」

 

霊夢がため息をつきながら、麟の肩をぽんと叩く。

 

「麟、あんた苦労するわねぇ。

魔理沙と組むと、計画なんて全部吹っ飛ぶわよ」

 

「……知ってる。だから僕は後方支援に徹したいのに……」

 

「おいおい、後ろに下がるなよ。三人主人公なんだろ?

だったら前に出てなんぼだぜ!」

 

「いや、僕は分析担当で……」

 

「はいはい、麟は頭脳派、魔理沙は突撃隊、私はまとめ役。

役割分担はできてるでしょ」

 

「霊夢がまとめ役っていうのもどうかと思うけど」

 

「何よそれ」

 

「いや、霊夢って……まとめるというより“流される側”じゃない?」

 

「……否定できないのが悔しいわね」

 

魔理沙がケラケラ笑う。

 

「じゃあ決まりだな!

私は突っ込む!

霊夢はなんとかする!

麟は文句言いながらついてくる!」

 

「最後の雑すぎない!?」

 

「合ってるけどな」

 

「霊夢まで!?」

 

三人の声が森に響く。

境界異変の緊張感はどこへやら、

幻想郷の“いつもの空気”が戻ってきていた。

 

 

 

 森の奥へ進む三人。

境界の揺らぎは強く、空気が微妙に歪んで見える。

 

「……この揺らぎ、通常の三倍以上だね。

魔理沙、絶対に触らないでよ。絶対に」

 

「触らねぇよ。私はそんな無鉄砲じゃ――」

 

魔理沙が言い終わる前に、光るキノコをむんずと掴んだ。

 

「触ってるじゃないのよ!!」

 

霊夢のツッコミが森に響く。

麟は額に手を当て、深いため息をついた。

 

「魔理沙、それ、境界エネルギーを吸ってる“危険物”だよ。

下手したら爆発する」

 

「えっ、爆発すんの!? じゃあ投げるぜ!」

 

「投げるなぁぁぁ!!」

 

霊夢が全力で止めに入る。

麟も慌てて魔理沙の腕を掴んだ。

 

「魔理沙、お願いだから僕の心臓に優しくして……」

 

「いや、だって爆発するって言うからさ」

 

「だからって投げる選択肢はおかしいでしょ!」

 

霊夢が即座にツッコむ。

魔理沙は悪びれもせず笑った。

 

「まあまあ、結果的に爆発しなかったし、セーフだろ」

 

「結果論で生きるのやめなさい!」

 

霊夢のツッコミが二発目。

麟はキノコを慎重に回収しながら呟く。

 

「……魔理沙の行動パターン、解析不能すぎる。

僕の計測器がまた狂ったよ」

 

「ほら見なさい。あんたのせいでしょ」

 

「え、私のせいなのか?」

 

「当然でしょ!」

 

霊夢が即答する。

魔理沙は首をかしげた。

 

「でもよ、麟の機械って、ちょっと触ったくらいで壊れるのか?」

 

「壊れてないよ! ただ……魔理沙の行動が想定外すぎて、

“正常値”の基準が吹き飛んでるだけ!」

 

「つまり壊れてるのね」

 

「霊夢まで!?」

 

霊夢は肩をすくめる。

 

「だってあんた、魔理沙と組むなら“壊れる前提”で作りなさいよ」

 

「そんな前提、普通ないよ!」

 

「幻想郷では普通よ!」

 

魔理沙がケラケラ笑う。

 

「ほらな、麟。幻想郷の常識に合わせろよ」

 

「いや、合わせたら僕の理性が死ぬんだけど……」

 

「大丈夫よ。私も半分死んでるから」

 

「霊夢!?」

 

霊夢は真顔で言い放つ。

 

「ツッコミ役ってね、寿命削られるのよ」

 

「ごめん霊夢、僕も気をつける……」

 

「私は気をつけないぜ!」

 

「気をつけなさいよ!!」

 

三人の声が森に響き、

境界異変の緊張感はどこかへ吹き飛んでいった。

 

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