魔理沙が先に飛び出してから数分後。
霊夢と麟は、境界の揺らぎが強い森の入口に到着した。
「……で、魔理沙はどこ行ったのよ」
「さあ。僕の計測では、この先に“異常値”があるはずなんだけど……」
麟が羅針盤を覗き込むと、針がぐるぐると高速回転し始めた。
「ちょ、ちょっと待って。回りすぎて読めないんだけど」
「壊れたんじゃないの?」
「壊れてないよ! これは……魔理沙が原因で乱れてるだけ!」
「え、魔理沙が?」
その瞬間、森の奥から爆音が響いた。
ドォォォォン!
「おーい! 霊夢ー! 麟ー! なんか変なの倒したぜー!」
魔理沙が煙まみれで飛んでくる。
「倒したって……何を?」
「知らん! なんか光ってたから撃った!」
「理由が雑すぎるよ!?」
麟が頭を抱える。
霊夢は呆れた顔で魔理沙を指さした。
「ほら見なさい。あんたのせいで羅針盤が壊れたって」
「いや、壊れてないってば! ただ……魔理沙の行動が予測不能すぎて、計測不能になってるだけ!」
「つまり壊れてるんじゃないか」
「違うよ!」
魔理沙は胸を張って笑う。
「まあまあ、細けぇことはいいじゃん。結果的に敵は倒したんだし」
「敵かどうかもわからないでしょ!」
「光ってたら大体敵だろ?」
「その発想で幻想郷を歩くのやめて……」
霊夢がため息をつきながら、麟の肩をぽんと叩く。
「麟、あんた苦労するわねぇ。
魔理沙と組むと、計画なんて全部吹っ飛ぶわよ」
「……知ってる。だから僕は後方支援に徹したいのに……」
「おいおい、後ろに下がるなよ。三人主人公なんだろ?
だったら前に出てなんぼだぜ!」
「いや、僕は分析担当で……」
「はいはい、麟は頭脳派、魔理沙は突撃隊、私はまとめ役。
役割分担はできてるでしょ」
「霊夢がまとめ役っていうのもどうかと思うけど」
「何よそれ」
「いや、霊夢って……まとめるというより“流される側”じゃない?」
「……否定できないのが悔しいわね」
魔理沙がケラケラ笑う。
「じゃあ決まりだな!
私は突っ込む!
霊夢はなんとかする!
麟は文句言いながらついてくる!」
「最後の雑すぎない!?」
「合ってるけどな」
「霊夢まで!?」
三人の声が森に響く。
境界異変の緊張感はどこへやら、
幻想郷の“いつもの空気”が戻ってきていた。
森の奥へ進む三人。
境界の揺らぎは強く、空気が微妙に歪んで見える。
「……この揺らぎ、通常の三倍以上だね。
魔理沙、絶対に触らないでよ。絶対に」
「触らねぇよ。私はそんな無鉄砲じゃ――」
魔理沙が言い終わる前に、光るキノコをむんずと掴んだ。
「触ってるじゃないのよ!!」
霊夢のツッコミが森に響く。
麟は額に手を当て、深いため息をついた。
「魔理沙、それ、境界エネルギーを吸ってる“危険物”だよ。
下手したら爆発する」
「えっ、爆発すんの!? じゃあ投げるぜ!」
「投げるなぁぁぁ!!」
霊夢が全力で止めに入る。
麟も慌てて魔理沙の腕を掴んだ。
「魔理沙、お願いだから僕の心臓に優しくして……」
「いや、だって爆発するって言うからさ」
「だからって投げる選択肢はおかしいでしょ!」
霊夢が即座にツッコむ。
魔理沙は悪びれもせず笑った。
「まあまあ、結果的に爆発しなかったし、セーフだろ」
「結果論で生きるのやめなさい!」
霊夢のツッコミが二発目。
麟はキノコを慎重に回収しながら呟く。
「……魔理沙の行動パターン、解析不能すぎる。
僕の計測器がまた狂ったよ」
「ほら見なさい。あんたのせいでしょ」
「え、私のせいなのか?」
「当然でしょ!」
霊夢が即答する。
魔理沙は首をかしげた。
「でもよ、麟の機械って、ちょっと触ったくらいで壊れるのか?」
「壊れてないよ! ただ……魔理沙の行動が想定外すぎて、
“正常値”の基準が吹き飛んでるだけ!」
「つまり壊れてるのね」
「霊夢まで!?」
霊夢は肩をすくめる。
「だってあんた、魔理沙と組むなら“壊れる前提”で作りなさいよ」
「そんな前提、普通ないよ!」
「幻想郷では普通よ!」
魔理沙がケラケラ笑う。
「ほらな、麟。幻想郷の常識に合わせろよ」
「いや、合わせたら僕の理性が死ぬんだけど……」
「大丈夫よ。私も半分死んでるから」
「霊夢!?」
霊夢は真顔で言い放つ。
「ツッコミ役ってね、寿命削られるのよ」
「ごめん霊夢、僕も気をつける……」
「私は気をつけないぜ!」
「気をつけなさいよ!!」
三人の声が森に響き、
境界異変の緊張感はどこかへ吹き飛んでいった。