東方三界録   作:肩幅ひろし

20 / 23
第20話:虚境、“真の姿”を現す

 空白界の中心が、

ゆっくりと、しかし確実に“開いていく”。

 

白でも黒でもない、

“色の概念そのものが欠けた光”が漏れ出し、

霊夢たちの存在を揺らす。

 

「……なんだよこれ……

空気が……冷たいとかじゃなくて……“ない”……」

魔理沙が震える。

 

「霊夢……気をつけて……

虚境が……来る……」

麟が測定器を握りしめる。

 

その瞬間――

空白界の中心から、虚境が姿を現した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆

 

 これまでの虚境は、

黒と紫の衣をまとった少女の姿だった。

 

しかし今、霊夢たちの前に立つ虚境は――

 

人の形をしているようで、していない。

 

・輪郭が揺らぎ

・髪は色を持たず

・瞳は“空白”そのもの

・身体の一部が時折“欠けて”見える

・存在しているのに、存在していないような違和感

 

「……あれ……本当に人間なのか……?」

魔理沙が息を呑む。

 

「違う……

あれは“虚境という概念”が形をとっただけ……

人の姿は仮のものだったんだ……」

麟が震える声で言う。

 

虚境はゆっくりと霊夢に視線を向けた。

 

「……博麗霊夢。

あなたの感情……

怒りも、悲しみも、孤独も……

すべて観測したわ」

 

「観測すんなぁぁぁ!!」

霊夢が叫ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆

 

 「私は……境界の裏側に溜まった“空白”。

存在の隙間に生まれた、

世界の“余白”そのもの」

 

「余白って言った!?

私、余白に狙われてたの!?」

 

「霊夢、落ち着け!!

余白って言っても、ただの余白じゃない!!」

魔理沙が慌てる。

 

麟が説明する。

 

「虚境は……

境界が長い年月で“削れた部分”に生まれた存在なんだよ。

世界の“欠け”が集まって、

意思を持ってしまった……」

 

「欠けが……意思を……?」

霊夢が息を呑む。

 

「だから虚境は、

“完全な空白”を求めてるんだ……

世界を白紙に戻すことで、

自分の存在を“完全な形”にしようとしてる……!」

 

「白紙にすんなぁぁぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆

 

 虚境は静かに手を伸ばす。

 

「博麗霊夢。

あなたの感情は……

私にとって“欠けを埋める素材”。

怒りも、悲しみも、孤独も……

あなたの核心は、私を完全にするための“最後の欠片”。」

 

「欠片って言った!?

私、パズルのピースじゃないわよ!!」

 

「霊夢!!

虚境は“霊夢の核心”を奪うつもりだ!!

奪われたら……霊夢は霊夢じゃなくなる!!」

麟が叫ぶ。

 

「奪わせるかよ!!」

魔理沙が前に出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆

 

 虚境が指を鳴らすと――

空白界全体が“波打った”。

 

霊夢の足元が揺れ、

魔理沙のミニ八卦炉が“透明”になりかけ、

麟の測定器が“音を失う”。

 

「なっ……!?

私の魔法が……消えて……!」

魔理沙が叫ぶ。

 

「麟!!

測定器が……反応しない!!」

霊夢が焦る。

 

「虚境の力だ……

“存在の意味”を奪ってる……!!

この世界では……

虚境が絶対的に有利なんだ……!!」

 

虚境の声が響く。

 

「さあ、霊夢。

あなたの核心を……

私に渡しなさい」

 

「渡すわけないでしょ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆

 

 霊夢が浄化の光を放とうとするが――

 

「……あ……

光が……弱い……?」

 

「霊夢!!

空白界では“感情の密度”が薄まる!!

怒りも悲しみも……

全部、奪われていく!!」

麟が叫ぶ。

 

「奪われるって言った!?

私の感情返しなさいよ!!」

 

「返せるかよ!!

ここ虚境のホームだぞ!!」

魔理沙が叫ぶ。

 

虚境が霊夢に近づく。

 

「あなたの核心……

“存在の意味”……

それを奪えば……

私は完全になる」

 

「来るなぁぁぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆

 

 虚境の手が霊夢に触れかけた瞬間――

霊夢の胸の奥が“ズキッ”と痛む。

 

「……っ……!」

 

「霊夢!!」

「霊夢!!」

 

霊夢の視界が白く染まり、

心の奥に“何か”が浮かび上がる。

 

怒りでも、悲しみでも、孤独でもない。

 

もっと深い、

もっと大切で、

もっと壊れやすい感情。

 

虚境が囁く。

 

「……見せてあげる。

あなたが一番隠してきた“核心”を」

 

霊夢の心が――

ついに開かれようとしていた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。