東方三界録   作:肩幅ひろし

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第20話:虚境、“真の姿”を現す

 空白界の中心が、

ゆっくりと、しかし確実に“開いていく”。

 

白でも黒でもない、

“色の概念そのものが欠けた光”が漏れ出し、

霊夢たちの存在を揺らす。

 

「……なんだよこれ……

空気が……冷たいとかじゃなくて……“ない”……」

魔理沙が震える。

 

「霊夢……気をつけて……

虚境が……来る……」

麟が測定器を握りしめる。

 

その瞬間――

空白界の中心から、虚境が姿を現した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これまでの虚境は、

黒と紫の衣をまとった少女の姿だった。

 

しかし今、霊夢たちの前に立つ虚境は――

 

人の形をしているようで、していない

 

・輪郭が揺らぎ

・髪は色を持たず

・瞳は“空白”そのもの

・身体の一部が時折“欠けて”見える

・存在しているのに、存在していないような違和感

 

「……あれ……本当に人間なのか……?」

魔理沙が息を呑む。

 

「違う……

あれは“虚境という概念”が形をとっただけ……

人の姿は仮のものだったんだ……」

麟が震える声で言う。

 

虚境はゆっくりと霊夢に視線を向けた。

 

「……博麗霊夢。

あなたの感情……

怒りも、悲しみも、孤独も……

すべて観測したわ」

 

「観測すんなぁぁぁ!!」

霊夢が叫ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「私は……境界の裏側に溜まった“空白”。

存在の隙間に生まれた、

世界の“余白”そのもの」

 

「余白って言った!?

私、余白に狙われてたの!?」

 

「霊夢、落ち着け!!

余白って言っても、ただの余白じゃない!!」

魔理沙が慌てる。

 

麟が説明する。

 

「虚境は……

境界が長い年月で“削れた部分”に生まれた存在なんだよ。

世界の“欠け”が集まって、

意思を持ってしまった……」

 

「欠けが……意思を……?」

霊夢が息を呑む。

 

「だから虚境は、

“完全な空白”を求めてるんだ……

世界を白紙に戻すことで、

自分の存在を“完全な形”にしようとしてる……!」

 

「白紙にすんなぁぁぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 虚境は静かに手を伸ばす。

 

「博麗霊夢。

あなたの感情は……

私にとって“欠けを埋める素材”。

怒りも、悲しみも、孤独も……

あなたの核心は、私を完全にするための“最後の欠片”。」

 

「欠片って言った!?

私、パズルのピースじゃないわよ!!」

 

「霊夢!!

虚境は“霊夢の核心”を奪うつもりだ!!

奪われたら……霊夢は霊夢じゃなくなる!!」

麟が叫ぶ。

 

「奪わせるかよ!!」

魔理沙が前に出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 虚境が指を鳴らすと――

空白界全体が“波打った”。

 

霊夢の足元が揺れ、

魔理沙のミニ八卦炉が“透明”になりかけ、

麟の測定器が“音を失う”。

 

「なっ……!?

私の魔法が……消えて……!」

魔理沙が叫ぶ。

 

「麟!!

測定器が……反応しない!!」

霊夢が焦る。

 

「虚境の力だ……

“存在の意味”を奪ってる……!!

この世界では……

虚境が絶対的に有利なんだ……!!」

 

虚境の声が響く。

 

「さあ、霊夢。

あなたの核心を……

私に渡しなさい」

 

「渡すわけないでしょ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 霊夢が浄化の光を放とうとするが――

 

「……あ……

光が……弱い……?」

 

「霊夢!!

空白界では“感情の密度”が薄まる!!

怒りも悲しみも……

全部、奪われていく!!」

麟が叫ぶ。

 

「奪われるって言った!?

私の感情返しなさいよ!!」

 

「返せるかよ!!

ここ虚境のホームだぞ!!」

魔理沙が叫ぶ。

 

虚境が霊夢に近づく。

 

「あなたの核心……

“存在の意味”……

それを奪えば……

私は完全になる」

 

「来るなぁぁぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 虚境の手が霊夢に触れかけた瞬間――

霊夢の胸の奥が“ズキッ”と痛む。

 

「……っ……!」

 

「霊夢!!」

「霊夢!!」

 

霊夢の視界が白く染まり、

心の奥に“何か”が浮かび上がる。

 

怒りでも、悲しみでも、孤独でもない。

 

もっと深い、

もっと大切で、

もっと壊れやすい感情。

 

虚境が囁く。

 

「……見せてあげる。

あなたが一番隠してきた“核心”を」

 

霊夢の心が――

ついに開かれようとしていた。

 

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