異変が終わって数日。
博麗神社には、ようやく“日常”と呼べる空気が戻っていた。
夕暮れの境内。
朱色に染まる空の下、霊夢・魔理沙・麟の三人が縁側に腰を下ろしていた。
「……ふぅ……
終わったわね……」
霊夢は空を見上げて深く息を吐いた。
「終わったなぁ……
今思い返しても、あれはマジでヤバかったぜ……」
「僕も……
測定器が壊れた時は本気で焦ったよ……」
「壊したのは虚境でしょ。
あんたじゃないわよ」
霊夢が苦笑する。
「いや、霊夢の怒りの波動で壊れた可能性も……」
「言うなぁぁぁ!!」
「ごめん!!」
◆
「でもさ霊夢……
“誰かに必要とされたい”って言った時、
ちょっと可愛かったぜ」
「言うなぁぁぁ!!
忘れなさい!!」
「いやいや、忘れられるかよ。
あれは名シーンだぜ。
私、ちょっと泣きそうになったし」
「泣いてないでしょ」
「泣いてないけど泣きそうにはなったんだよ!!」
◆
「霊夢……
本当にすごかったよ。
怒りも悲しみも孤独も……
全部受け入れて、
最後に“核心”まで……」
「……あんた、あれ見てたの?」
「見てたというか……
霊夢の揺らぎが全部伝わってきたんだよ」
「やめてよ……恥ずかしい……」
霊夢は顔を赤くしてそっぽを向く。
「恥ずかしがることじゃないよ。
霊夢の核心は……
とても強くて、優しい感情だった」
「……麟……
あんた、そういうこと言うとモテないわよ」
「なんで!?」
◆
「でもさ霊夢」
魔理沙が空を見上げながら言う。
「お前が“必要とされたい”って思ってるなら……
私はこれからも必要とするぜ。
ずっとな」
「……魔理沙……」
「僕もだよ霊夢。
霊夢がいるから、
僕は境界の研究を続けられる。
霊夢が必要なんだ」
「……あんたたち……
ほんと……バカね……」
霊夢は目を細め、
夕焼けの空を見上げた。
「でも……
ありがとう。
あんたたちが必要としてくれるなら……
私は何度だって立ち上がるわ」
◆
「……さて。
異変も終わったし……
お茶でも淹れようかしら」
「おっ、霊夢のお茶だ!」
「霊夢の淹れるお茶、好きだよ」
「……あんたたち……
そういうところよ。
私が必要とされる理由は」
霊夢は少し照れながら、
湯呑みを三つ並べた。
◆
三人はしばらく沈黙し、
夕暮れの空を眺めた。
その沈黙は、
気まずさではなく、
“戦いを乗り越えた者だけが共有できる静けさ”だった。
「……なぁ霊夢。
次の異変は、もうちょい軽いやつがいいな」
「そんなの、私に言われても困るわよ」
「でも……
もしまた何か起きても、
僕たちならきっと大丈夫だよ」
「……そうね。
あんたたちがいるなら、きっと」
――虚境との戦いは終わった。
でも、三人の日常はこれからも続いていく。
これにて東方三界録、完結です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。