森の奥へ進むにつれ、境界の揺らぎはさらに強くなっていた。
麟は慎重に計測器を構え、魔理沙はキラキラした目で周囲を見回し、霊夢は……もう疲れていた。
「……ねぇ、二人とも。ちょっとは慎重に――」
「おっ、見ろよ麟! また光ってるキノコだ!」
「魔理沙、それ絶対触らないで。絶対にだよ?」
「わかったわかった。触らねぇって」
魔理沙は言いながら、光るキノコを“全力で踏みつけた”。
ぐしゃっ。
「踏んでるじゃないのよぉぉぉぉ!!」
霊夢の絶叫が森に響く。
麟は顔を青くし、魔理沙は「お?」と首をかしげた。
「いや、触ってないぜ? 踏んだだけだし」
「触るより悪いわよ!!」
霊夢のツッコミが炸裂する。
麟は慌てて計測器を確認するが、針がぐるぐると逆回転していた。
「……魔理沙のせいで、また計測不能になった……」
「おいおい、私のせいにすんなよ。キノコが弱いのが悪いんだぜ」
「弱いとか強いとかの問題じゃないでしょ!!」
霊夢のツッコミ二連発。
しかし魔理沙はまったく気にしていない。
「まあまあ、細けぇことはいいじゃん。
ほら、次はあっちに光ってるのが――」
「行くなぁぁぁぁ!!」
霊夢が魔理沙の襟首を掴んで引き戻す。
麟は冷静に言う。
「魔理沙、お願いだから僕の計画を五秒以上保たせて……」
「五秒って短くないか?」
「魔理沙基準だと長い方だよ」
「麟まで!?」
霊夢は頭を抱えた。
その瞬間、背後で“境界の裂け目”がバチバチと音を立てる。
「ちょっと! 異変の中心が近いんだから、真面目に――」
「おっ、裂け目だ! 撃ってみるか!」
「撃つなぁぁぁぁぁぁ!!」
霊夢の絶叫が三度響く。
麟は慌てて魔理沙の腕を押さえた。
「魔理沙、お願いだから! 境界にレーザー撃つとか、
それもう“異変を解決する”じゃなくて“異変を増やす”行為だから!」
「だって気になるじゃん」
「気になるで撃つな!!」
霊夢のツッコミ四連発。
そして――ついに限界が来た。
霊夢のこめかみに青筋が浮かび、空気がピリッと震える。
「……あんたたち。
私がどれだけツッコミ入れてると思ってんの?」
「え、数えてないけど」
「僕は計測してるけど、もうデータが壊れたよ」
「壊すなぁぁぁぁ!!」
霊夢がついにキレた。
博麗の巫女としての威厳が、怒りと共に爆発する。
「いい!?
私は異変を解決しに来てるの!
保護者じゃないの!
ツッコミ係でもないの!
なんで二人の暴走を止めながら進まなきゃいけないのよ!!」
「霊夢、落ち着いて――」
「落ち着けるかぁぁぁ!!」
麟が珍しくビクッと肩を震わせる。
魔理沙はというと――
「……霊夢、怒ると怖ぇな」
「今気づいたの!?」
霊夢の怒号が森を揺らす。
境界の裂け目すら、びくっと震えた気がした。