霊夢の怒号が森を震わせた瞬間だった。
――バチッ!
背後の“境界の裂け目”が、まるでビビったように震えた。
「……え? 今、裂け目が後ずさりした?」
麟が目を瞬かせる。
魔理沙もぽかんと口を開けた。
「おい霊夢、今の怒鳴り声……境界に効いてないか?」
「効くわけないでしょ!!」
霊夢がさらに怒鳴る。
――バチバチバチィッ!!
裂け目がさらに縮んだ。
「効いてるぅぅぅ!!」
麟と魔理沙が同時に叫ぶ。
霊夢は一瞬固まり、ゆっくりと裂け目を見る。
「……ちょっと待って。
私、怒ると境界が縮むの?」
「どうやらそのようだね……」
麟は冷静に分析モードに入る。
「霊夢の怒りによって、境界の波動が逆位相で――」
「難しい説明はいいから!!」
霊夢が怒鳴る。
――バチィィィン!!
裂け目がさらに縮む。
「霊夢が怒鳴るたびに裂け目が閉じてる!」
「つまり霊夢の怒りは“境界修復効果”があるってことだな!」
「そんな効果いらないわよ!!」
霊夢が叫ぶ。
――バチバチバチバチィィィ!!
裂け目がほぼ閉じかける。
「霊夢、お願いだから一回落ち着いて!
このままだと裂け目が“怒りで強制修復”されて、
本来の原因がわからなくなる!」
「なんで私の感情が異変を解決しようとしてんのよ!!」
霊夢が叫ぶ。
――バチィィィン!!
裂け目が完全に閉じた。
「閉じたぁぁぁぁ!!」
三人の声が森に響く。
麟は頭を抱え、魔理沙は腹を抱えて笑っている。
「霊夢、すげぇな! 怒りで異変解決とか新しいぜ!」
「新しくていいことじゃないわよ!!」
霊夢は真っ赤な顔で叫ぶ。
――バチッ。
今度は、閉じた裂け目の“跡地”が震えた。
「……え、まだ反応するの?」
「霊夢の怒り、境界に刻まれたんじゃないか?」
「刻まれてたまるかぁぁぁ!!」
霊夢の怒号が森に響き、
境界の跡地が“ぺこっ”と凹んだ。
「……霊夢、怒りの波動、強すぎない?」
「麟、あんたも魔理沙も!
もうちょっと私を怒らせないようにしなさいよ!!」
「いや、霊夢が怒ると異変が解決するなら、
むしろ怒らせた方が――」
「言うんじゃない!!」
霊夢の怒りが炸裂し、
森の木々が一斉に“ザワッ”と揺れた。
――境界異変は収束した。
だが、霊夢の怒りはまだ収束していない。
境界の裂け目は霊夢の怒りで完全に閉じた。
しかし、問題はここからだった。
「……はぁ。もう疲れたわ。なんで私の怒りで異変が解決するのよ」
霊夢が肩で息をしていると、麟が静かに一歩前へ出た。
「霊夢、ちょっといい?
さっきの現象、僕なりに分析してみたんだけど――」
「嫌な予感しかしないんだけど」
霊夢の眉がピクリと動く。
しかし麟は気にせず、淡々と説明を始めた。
「霊夢の怒りは、境界波動に対して“逆位相の干渉”を起こしてるみたいなんだ。
つまり霊夢の怒りの周波数が境界の乱れと――」
「周波数って言った!?」
霊夢の声が一段階低くなる。
麟は気づかず続ける。
「うん。怒りの強度と声量が比例して、境界の歪みが――」
「声量って言ったわね!?」
霊夢のこめかみに青筋が浮かぶ。
魔理沙は後ろでニヤニヤしている。
「さらに、霊夢の怒りには“結界修復効果”が付随していて、
これはおそらく霊夢の精神エネルギーが――」
「精神エネルギーって言ったわねぇぇぇ!?」
霊夢の怒りが爆発した。
――バチバチバチバチィィィ!!
閉じたはずの境界の跡地が、再び震え始める。
「麟! あんたねぇ!
人の怒りを科学的に分析してんじゃないわよ!!」
「えっ、だって現象として興味深くて……」
「興味深くてじゃない!!」
霊夢の怒号が森を揺らす。
麟は珍しく後ずさった。
「霊夢、落ち着いて。これは純粋な研究で――」
「研究対象にすんなぁぁぁ!!」
怒りの波動が爆発し、境界の跡地が“ぺこっ”と凹む。
「麟、お前……霊夢の怒りを数値化しようとしてるだろ?」
「してないよ! いや、ちょっとはしてるけど!」
「してるじゃないのよ!!」
霊夢の怒りがさらに跳ね上がる。
「だって霊夢の怒り、明らかに“異常値”なんだよ。
普通の人間の怒りじゃ境界は反応しないし――」
「普通じゃないって言ったわね!?」
「いや、霊夢は普通じゃないよ。
だって博麗の巫女だし、境界に干渉できるし――」
「褒めてるのかバカにしてるのかはっきりしなさい!!」
「両方かな」
「両方なのねぇぇぇぇ!!」
霊夢の怒りが最高潮に達し、森全体が震える。
魔理沙は腹を抱えて笑っている。
「麟、お前ほんと霊夢の扱い下手だな!」
「魔理沙、笑ってないで助けてよ!!」
「無理だぜ。霊夢、今“怒りの巫女モード”に入ってるからな」
「そんなモードいらないわよ!!」
霊夢の怒号が炸裂し、
境界の跡地が完全に“消滅”した。
「……霊夢、怒りで空間消したよ」
「麟、黙りなさい」
「はい」
麟は背筋を伸ばして黙った。
魔理沙はまだ笑っている。
「……あんたたち、ほんとに私の寿命縮める気?」
「霊夢、怒りで異変解決できるんだから、むしろ寿命伸びてるんじゃ――」
「言うんじゃない!!」
霊夢の怒りが再び爆発し、
森の木々が一斉に“ザワッ”と揺れた。