東方三界録   作:肩幅ひろし

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第7話:霊夢が落ち着いた瞬間、“本当の異変”が動き出す

 霊夢の説教が終わり、森にはようやく静けさが戻った。

麟と魔理沙は、まるで命拾いしたかのように肩を落とす。

 

「……はぁ。霊夢が落ち着いてくれてよかった……」

麟が胸を撫で下ろす。

 

「ほんとだぜ。あのまま怒りモード続いてたら、森ごと消えてたかもな」

魔理沙が苦笑する。

 

霊夢は深呼吸し、穏やかな声で言った。

「もう怒ってないわよ。

二人とも反省してるみたいだし、これで――」

 

その瞬間だった。

 

空気が“バキッ”と割れた

 

「……え?」

霊夢が振り返る。

 

さっき霊夢の怒りで閉じたはずの“境界の跡地”が、

まるで逆再生するように“ズズズッ”と開き始めた。

 

「ちょ、ちょっと待って! なんでまた開くのよ!?」

霊夢が叫ぶ。

 

麟は計測器を確認し、顔を青ざめさせた。

 

「霊夢の怒りが収束したことで……

境界の“抑圧エネルギー”が解放されたんだ……!」

 

「抑圧エネルギーって何よ!!」

「霊夢の怒りが強すぎて、境界が“怯えて閉じてただけ”なんだよ!!」

 

「怯えて閉じてたの!?」

「うん。で、霊夢が落ち着いたから……

“あ、もう大丈夫だ”って思って開き始めたんだよ!!」

 

「境界に気を遣われてるの私!?」

 

霊夢が叫ぶが、裂け目はどんどん広がっていく。

 

――そして。

 

裂け目の奥から、

紫色の光が“ゆらり”と漏れ出した

 

「おい麟……あれ、なんか出てきてないか?」

「うん……これは……本物の異変だよ……!」

 

霊夢が構える。

 

「ちょっと! じゃあさっきのは何だったのよ!?」

 

「霊夢の怒りで“仮の異変”が強制終了しただけだよ」

「本番はこれからだぜ!」

 

「本番って言うなぁぁぁ!!」

霊夢が叫ぶと同時に、

裂け目の奥から“何か”が姿を現した。

 

輪郭は曖昧で、境界そのものが形を取ったような存在。

声とも音ともつかない“ざわり”が空気を震わせる。

 

「……境界の化身……?」

麟が呟く。

 

「霊夢の怒りで閉じられたのが気に入らなかったみたいだな」

魔理沙がニヤリと笑う。

 

「気に入らなかったって何よ!!」

 

霊夢が叫ぶと、化身が“ビクッ”と震えた。

 

「……あ、怯えた」

「霊夢、怒りの残滓がまだ効いてるぜ」

 

「効かなくていいわよ!!」

 

しかし化身は、霊夢の怒りが完全に消えたのを察したのか、

ゆっくりと形を整え始める。

 

――本当の異変が、ようやく動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 裂け目の奥から現れた“境界の化身”は、

人型のようでいて、輪郭が常に揺らぎ、

まるで“存在そのものが曖昧”だった。

 

紫色の光がゆらりと揺れ、

空気がひとつ、二つ、ひび割れる。

 

「……来るよ、二人とも」

麟が低く呟く。

 

「おう! やっと戦闘らしくなってきたぜ!」

魔理沙がミニ八卦炉を構える。

 

「はぁ……怒りで閉じたのに、結局戦うのね……」

霊夢はため息をつきつつ、お札を構えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 化身が腕を振ると、

空間が“裏返る”ように歪んだ

 

「うわっ!? 地面が上で空が下!?」

魔理沙がひっくり返りそうになる。

 

「境界反転……!

空間の上下を一時的に入れ替えてるんだ!」

麟が即座に分析する。

 

「説明してる場合!?」

霊夢が叫ぶ。

 

「説明しないと僕が落ち着かないんだよ!!」

 

「落ち着くなぁぁぁ!!」

 

霊夢のツッコミが飛ぶが、

化身はさらに空間をねじり、

三人の位置を強制的に入れ替えた

 

「うわっ、霊夢の隣にワープした!?」

「私の隣に来ないで!!」

「僕だって来たくて来たんじゃないよ!!」

 

魔理沙だけは楽しそうだ。

 

「おもしれぇ! じゃあ私も撃つぜ!!

マスタースパーク!!

 

光の奔流が化身に向かう――が。

 

化身は“境界をずらして”攻撃を避けた

 

「えっ、避けた!?」

「いや、避けたんじゃなくて……

“当たるはずの位置を別の場所にした”んだよ!」

麟が叫ぶ。

 

「つまりどういうことだよ!!」

「魔理沙の攻撃が“当たらない世界線”に移動したんだよ!!」

 

「世界線移動すんなよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 霊夢は空間の揺らぎをじっと見つめる。

 

「……あそこね」

 

霊夢はお札を一枚、

何の予備動作もなく投げた

 

お札は空中で軌道を変え、

化身の“存在の薄い部分”に突き刺さる。

 

――バチィッ!

化身の輪郭が大きく揺れた。

 

「霊夢、今のどうやって……?」

「勘よ」

 

「勘!?」

「勘よ」

 

麟が絶句する。

 

「僕の分析より早い……」

「霊夢の勘は世界線を超えるからな」

「超えないわよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 麟は羅針盤型の測定器を構え、

化身の揺らぎを読み取る。

 

「霊夢、魔理沙!

化身の“存在が濃くなる瞬間”がある!

そのタイミングなら攻撃が通る!」

 

「おっ、来たな分析タイム!」

「麟、早く言いなさいよ!」

 

「今だ!! 右側の揺らぎが収束する!!」

 

「了解!」

「任せろ!!」

 

霊夢のお札と、魔理沙のレーザーが同時に放たれ――

 

化身の胸部に直撃した

 

化身が大きく揺らぎ、

空間が“ビリビリ”と震える。

 

「よし、効いてる!」

麟が叫ぶ。

 

「へへっ、やっぱ三人でやれば余裕だな!」

魔理沙が笑う。

 

「……油断しないで。

まだ“本体”じゃないわよ」

霊夢が低く言う。

 

化身の輪郭が再び揺れ、

今度は“複数の影”が生まれ始めた。

 

「分裂……!?」

「境界の化身が“可能性の分岐”を実体化してるんだよ……!」

 

「つまりどういうことだよ!!」

「敵が増えるってことだよ!!」

 

「増やすなぁぁぁ!!」

 

霊夢の叫びが森に響く。

 

――本当の戦いは、まだ始まったばかりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 境界の化身が揺らぎ、

その輪郭から“影”が三つ、四つ、五つ……と生まれていく。

 

「ちょ、ちょっと待って! 増えすぎじゃない!?」

霊夢が叫ぶ。

 

「境界の“可能性分岐”を実体化してるんだよ……

つまり、あれ全部“あり得たかもしれない化身”だ……!」

麟が青ざめながら分析する。

 

分裂した化身たちが一斉に腕を振ると、

空間の裂け目が“無数の弾幕”として飛んできた

 

弾幕は直線ではなく、

“境界の揺らぎ”に沿って不規則に曲がり、

まるで意思を持つように三人を追尾する。

 

「うわっ、曲がるのかよ!?」

「境界弾幕だからね……物理法則に従わないんだよ……!」

「従わせなさいよ!!」

 

霊夢が怒鳴りながら弾幕を避ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 麟は羅針盤型の測定器を構え、

化身たちの揺らぎを読み取る。

 

「霊夢、魔理沙!

0.8秒ごとに揺らぎが収束する!

そのタイミングで攻撃して!

次は――今!!」

 

「了解!」

「任せろ!!」

 

霊夢のお札と魔理沙のレーザーが同時に放たれ、

化身の二体が一気に霧散した。

 

「よし、あと三体!」

麟が叫ぶ。

 

すると残った化身たちが、

急に動きを止めた

 

「……あれ? 止まった?」

「いや……違う……」

 

麟が測定器を見て、顔を青ざめさせる。

 

「三体の揺らぎが……“同期”してる……!」

 

「同期ってどういうことだよ!!」

「三体が“ひとつの存在”に戻ろうとしてるんだよ!!」

 

「戻すなぁぁぁ!!」

 

霊夢が叫ぶが――

 

化身たちは重なり合い、

より巨大で、より濃密な“境界の本体”へと変貌した。

 

空気が震え、森が軋む。

 

「……これが、本番ね」

霊夢が構える。

 

「麟、解析頼むぜ!」

「魔理沙、突撃はやめて! 死ぬよ!!」

 

「やめねぇよ!!」

 

「やめなさいよ!!」

 

三人の声が森に響く。

 

――境界の本体との戦いが、ついに始まった。

 

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