霊夢の拳が境界本体の核を打ち抜き、
空間が光に溶けた――その直後。
「……はぁ……はぁ……」
霊夢は肩で息をしながら拳を握りしめていた。
「霊夢、大丈夫か?」
魔理沙が駆け寄る。
「うん……大丈夫……のはず……なんだけど……」
霊夢の周囲の空気が、
赤く揺らめいたまま消えない。
「麟、これ……霊夢の怒りの波動、まだ収まってないぞ」
「うん……むしろ……増えてる……?」
「増えてるって言った!?」
霊夢が振り返る。
その瞬間、怒りの波動が“ボッ”と膨れ上がった。
「ひっ」
魔理沙が一歩下がる。
「霊夢、落ち着いて!
怒りを制御してるんだよね!?」
「してるわよ!!
……してるつもりよ!!」
霊夢が叫ぶと、怒りの波動がさらに強くなる。
「麟、これどうなってんだよ!!」
「霊夢の怒り制御が……逆に“怒りの増幅回路”になってるんだよ!!」
「増幅すんなよ!!」
◆
霊夢の怒りが高まるたびに、
周囲の空間が“ビキビキッ”とひび割れた。
「ちょっと待って!
私、怒ってないわよ!?
なんで怒ってないのに空間が割れてるのよ!?」
「霊夢、それ怒ってる時のセリフだぜ」
「怒ってないって言ってるでしょ!!」
――バチィィィィン!!
霊夢の怒号に反応して、
空間が“さらに”割れた。
「麟!! 霊夢の怒り、どうにかしろ!!」
「無理だよ!!
怒りの波動が境界と共鳴して、
“怒り=エネルギー”になってるんだ!!」
「つまりどういうことだよ!!」
「霊夢が怒るほど世界が壊れる!!」
「壊すなぁぁぁ!!」
◆
「ちょっと!
私、怒ってないって言ってるでしょ!!
怒ってないのに!!」
霊夢が叫ぶたびに、
怒りの波動が“ボンッ”と膨れ上がる。
「霊夢、怒ってないって言うのが一番怒ってる証拠だぜ」
「魔理沙、黙りなさい!!」
――バチバチバチィィィ!!
怒りの波動が爆発し、
境界本体の残滓が“ビクッ”と震えた。
「麟、霊夢の怒り……境界本体の残りカスにまで効いてるぞ」
「うん……霊夢の怒り、もはや“概念攻撃”になってる……」
「概念攻撃って言った!?」
霊夢が振り返る。
怒りの波動がさらに強くなる。
「麟!! 霊夢の怒り止めろ!!」
「無理だよ!!
霊夢の怒りは霊夢にしか止められない!!」
「霊夢!! 落ち着け!!」
「落ち着いてるわよ!!」
――空間が“バキィィィン”と割れた。
「落ち着いてないぃぃぃ!!」
◆
霊夢の周囲の空気が赤から白へ、
そして“無色の光”へと変わり始めた。
「麟……これ……どういう状態だ……?」
「怒りが強すぎて……
色を失ってるんだよ……!!」
「怒りが色を失うなよ!!」
霊夢は震える声で呟く。
「……私……どうすればいいの……?」
麟は必死に答える。
「霊夢!
怒りを“抑える”んじゃなくて……
“手放す”んだ!!」
「手放す……?」
「怒りを握ってるから暴走するんだよ!!
怒りを“流す”んだ!!」
霊夢は目を閉じ、
深く息を吸い――
「……怒りを……流す……」
怒りの波動が、
ふっと弱まった。
「よし……その調子だ霊夢!!」
「霊夢、頑張れ!!」
しかし――
境界本体の残滓が、
霊夢の怒りの波動に反応して“再起動”し始めた。
「麟!! あれ動いてるぞ!!」
「霊夢の怒りが弱まったことで……
“今なら勝てる”って思ったんだよ!!」
「思うなぁぁぁ!!」
霊夢の怒り制御は、
まだ終わっていなかった。