亜人種と俺   作:iw

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1話

 

「あぁぁーーーしんど」

 

朝の開口一番から欠伸をしながら独り言を呟く。

カーテンを開き、ベッドの上のシーツを畳んで、充電器に差しっぱなしのスマホを確認すると時計は6:54の文字を指し示す。

壁のハンガーラックに掛けてある制服に着替えようと姿見に目をやると、自分の首に残る噛み跡ととは、別に二の腕にも噛み跡が付いていた。

 

「アイツまた跡付けたな・・・全くコンシーラー使う身にもなれっての」

 

 

そうつぶやきながら政府から支給された小瓶を手に取り吹きかける。

この香水は、自分の匂いを誤魔化すものでありこれで匂いを消しとかなければ、周りに迷惑を掛けてしまうだろう。

昔、幼馴染はそれが原因で酷く興奮してしまい

警察沙汰になりかけ、自分は病院に緊急搬送されて以来頑なに香水を忘れることは無かった。

鞄の中に香水や、学習用具を詰め込み階段を降りると、リビングには朝食の用意がされていおり、母が鼻歌混じりに洗濯機を回す準備をしていた。

 

「レン早く準備しなさい!間に合わないわよ」

 

「大丈夫だよ、母さん。もう朝練だってないんだしさ。それより、父さんは?ニナは朝練でしょ」

 

身支度を整えながら、洗濯機に自分のパジャマを入れて洗面台から取り出した洗剤を後ろに手渡していく。

受け取った母を鏡台越しに確認しながら歯を磨くと呆れながら母が答えた。

 

「あの人ったら今日は朝早くに会議の準備をするって出て行ったのよ。一応会社の役員なんだから多少は部下に任せるということをしないんだから全く」

 

「すふぉいね、とうふぁん(凄いね、父さん)」

 

歯磨きを咥えながら答え、急いで身支度を整える。どうにも父さんの勤勉さには頭が下がる思いだ、面倒見も良く、よく働き、人望に厚いなんとも良くできた父親だ。

身支度を整えて、リビングに座るとさらにはホカホカのチキンサンドが乗っていた。

ただ一つ付け加えるならそのチキンのサイズが200g程あるだろう。

そして、一口で噛み切るにはおおよそ人間の顎に厳しいサイズである。

それをどうにか口の中に押し込み牛乳で流し込む。

母よ、このサイズは今の俺にはちと多いよ

そう思いながら食器を洗い通学の準備を整える。

置いてあった弁当を片手に玄関に向かいスニーカーを履いて出ようとすると呼び止められる。

 

「バッシュと着替え忘れてるわよ。これないと部活行けないでしょ」

 

「いや、母さん俺高校上がってから部活辞めるって言ってるじゃん。もう、使わないっての」

 

「いいから、持って行きなさい。急にやりたくなるかもでしょ。ホラ、いってらっしゃい!」

 

「・・・行ってきます」

 

強引に渡された鞄には、バッシュと着替えが入ってる。

中学のインターハイの時に膝を怪我して以来バスケをやるつもりはなかった。

手を振る母の腰には同じように揺れる尻尾が目に付く。

ドア閉めて晴れた空に眩しさを感じながら家を出て行った。

近所の馴染みの人々には、それぞれ人と違う個性がある。

猫人、犬人、鳥人などの動物の特徴を持つ獣人。鬼、エルフや吸血鬼、そして人魚。

何百年も前にこの世界と別の異世界が繋がったらしい。その影響でこの世界には多くの亜人種と呼ばれる人類が増えて、俺のような純粋な人間種というのも珍しくなった。

ハーフなんてのも増えるぐらいにはこの世界には異人種同士の家族が増えるぐらいには世の中は平和で満ち溢れている。

ウチの家族達だってそうだ。

幼い頃に実の家族を事故で失って以来今の家族に迎え入れてもらってからも愛されている実感しかないのだから。

 

「眠いなぁ全く」

 

学校に付いてからも一日のやる気は出ない。

中高一貫校である学校の敷地面積はアホほど広く教室に向かうだけでも一苦労。

ましてや運動場に、体育館もいくつもあるなんて移動教室もバカにならんレベルである。

通り掛かりの体育館には朝練している部活の音が聞こえる。

バッシュで走る音、バスケットボールが弾む音、そして部員達の声。

どうやら今日はこの体育館での練習らしい。

 

「レン遅刻だよ。朝練終わっちゃうよー」

 

バレないよう逃げるように体育館の側を通り抜けようとしたところ声をかけられた。

 

「おはようございます。ハナ先輩・・・いやー今日もお美しいですね・・・じゃあ、俺はこれで失」

 

失礼しますと言い切らない内に首根っこを掴まれる。

流石は鬼族の怪力。

黒い髪から覗く2本角と人間である俺の力では振り解けないのがそれを物語る。

 

「いやだ、離して。俺もう部活しないから」

 

「いや、人の顔見て逃げるとかありえないでしょ。一応私ただのマネージャーなんだから逃げなくても良いでしょ」

 

「ハナ先輩はそう言いますがね、俺としては今は非常に気不味いんですよっと」

 

一瞬手が緩んだ隙に逃げ出すと流石に追ってくる気はなかったららしい。

バスケ部のマネージャーである鬼族のハナ先輩。美人優しく人気も高いが鬼でありキレるとかなりおっかない先輩だ。

どうにか自分のクラスまでたどり着いたが朝一から既に精神的にだいぶ疲れた。

怪我をして以来だろうか部活のメンバーと会うのが非常に気不味さを覚えるようになった。

中学最後のインターハイの決勝で相手選手との接触からの膝の負傷。

これが原因で全国優勝を逃してしまった。

と正直思ってしまうぐらいには自分の責任を感じてしまう。

部活内でもトップの技術力を持ちながらも人間というこの世界の人種の中でかなり弱い存在である自分には高校に上がり身体が出来上がっていく亜人種と一緒にプレーをするということは、去年のように怪我が原因できっとチームメンバーにも迷惑を掛けてしまうだろう。

どこかで、諦めてしまった自分の心に蓋をしなければ正直好きなバスケを諦めることは出来ないのだから。

 

「おはよう、今日も美味しそうだね」

 

首筋を舐められ、身震いをすると同時に耳元に良い声でささやかれる。

振り返れば異性の俺から見てもイケメンと言っても差し支えない奴が立っていた。

 

「学園の王子様が朝から忍足で人の後ろに来て、味見かよ」

 

「大好きな君の血を飲むのが僕の日課だからね。ホラ、首筋出して」

 

コイツが教室に現れてからは教室の女性陣の黄色い悲鳴が飛び交う。

認めようコイツはかなり人気者だ。

顔の良さだけなら、俺も負けてないと思う。

モテるもん俺。

でも、悔しいが身長も2センチぐらい負けてるし、コイツみたいに王子様系じゃないから。

別に悔しくないからなと心の中で負け惜しみを吐く。

目の前のコイツは、俺の幼馴染で名はエレナ。

エレナ・デューク・ブラッド

純血種の珍しい吸血鬼の一族。

顔も良い、性格も良い、頭も良い。

スタイルはまあコイツの母親を知ってるから何故遺伝してないのか甚だ疑問ではあるがまあ、無いよりのある方って感じの王子様系美人である。

 

「おい、失礼なこと考えただろ」

 

「いや、まあなんつうか隔世遺伝なんかなって」

 

ニコっと笑う彼女の笑みには怒気しか感じられず、冷や汗をかく。

いきなり首筋を舐められた腹いせに煽ってみたが間違いなく失敗だったろう。

 

「我慢できないや・・・・今日は罰としていつもより多めに吸うね」

 

手慣れた手付きで制服のボタンを外され首元に牙を突き立てれる。

教室の喧騒が嘘かのように鎮まり、こちらに目線が向く。

後ろでは血を飲み込む音と、後ろから抱き締められ慎ましい彼女の柔らかさとひんやりとした体温を感じると共に、吸血時特有の痛みと快楽が押し寄せる。

我慢しようと握り閉めた手を彼女の手が包み強制的に手を繋いでくる。

なんというか弄らしく、愛らしい彼女の独占欲なんだろう。

まるで見せつけるかのように行われる吸血行為に時が止まったかのような錯覚を起こす。

 

「・・・んっ、ご馳走様」

 

「お粗末様でした」

 

「おいで、首筋にいつもの薬を塗ってあげよう」

 

そう言った彼女は優しく絹に触れるかのように傷口に薬を塗る。

そして、何を思ったか椅子から立ち上がらせたかと思うと口付けをされる。

あまりの行為に呆然としている、俺と騒ぎ出すクラス。

おい、こら女子共。捗るとか言ってんじゃねぇよ。

 

「さあ、ご褒美だよ。僕の王子様、君は僕の物だからね?やっぱり周りにもアピールしなきゃ」

 

「なんだ?俺は泥水で口洗った方がいいのか?」

 

キスの味は鉄分の味がする。

惚れた弱みといえばそうなのかもしれないが満更悪くもないが減らず口をたたいておかねば調子に乗られるような気がした。

幼い頃に男おんな呼ばわりされて泣かされいた過去を知っている身からすればこうも成長するものかと感慨深いものがある。

 

「さあ、今日も頑張ろうねレン」

 

いつにも増してニコニコな彼女が隣の席に座ると共に朝礼の鐘がなる。

上機嫌な彼女とは打って変わり、こっちはやや貧血気味である。

 

ただ、一つ言えるのは

 

「お前本当大きくなんねぇな」

 

胸元を見てそういうと頬には大きく紅葉が出来た

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