亜人種と俺   作:iw

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甘酸っぱい恋いいですよね



5話

「さて、5教科帰ってきた訳だ。ショーダウンといこうじゃねぇか」

 

「望む所だよ。主要5科目の国数英理社の順番で勝負と行こうじゃないか?」

 

「まず、国語は俺から92点」

 

「94点」

 

「数学96点」

 

「90点」

 

「英語91点」

 

「100点」

 

「化学98点」

 

「94点」

 

「最後世界史だ。・・・・92点」

 

「くっ、90点」

 

「総合点は・・・俺が469点」

 

「私が・・・468点」

 

ガッツポーズをして大喜びだ。

勝利の美酒なんぞ無くても、酔いしれることなんて朝飯前だ。

 

「クッソ・・・・」

 

「お嬢様がそんな汚い言葉を使うなんてはしたないでございますわよ」

 

「煽るなってか、変なお嬢様言葉使うのやめてよね」

 

彼女の前で大喜びしているとかなり不機嫌になる。

 

「負けたらどうするんだっけ?なぁなぁ?」

 

彼女が怒りなのかフルフルと震え出すがそれでも煽る手は止めない。敗者には今この瞬間だけは人権は存在しない。

 

「・・・言うことを一つ聞くでしょ?バニーガールでもなんでも着てやるよ」

 

ステップを踏んで彼女の席の周りをグルグル周り、喜び勇む。

まるでクリスマスプレゼントをもらった子供のような喜びようである。

 

「んーどうしようかな、コスプレさせるのもいいがもう少し面白み持たせるのもなぁ」

 

悩みながら自分の席に座ると、前の席から笑い声が上がる。

その方向を向くと前の席サテュロスの種族の生徒がこちらのやりとりを微笑ましく笑っていた。

 

「サニーさんそんな面白いか?」

 

「いや、ごめんね?なんか弟と妹の喧嘩観てるみたいでさ。面白くて笑っちゃった」

 

「まあ、ボクらは幼馴染だからね。兄弟喧嘩ぐらいしょうもない喧嘩は昔からだよ」

 

「ああ、そっか。サニーさん確か高校からこっち入学したもんな、中高一貫組からしたらよく見るもんだったと思うよ」

 

確か彼女は、珍しく高校入学組だ。

ウチの学校は偏差値が高く、高校入試組の数少ない枠からの入学ということだから確かにこんな馬鹿騒ぎも見る事がなかったのだろう。

 

「悪いね、俺らの席が近いばっかりに。鬱陶しくなったら言ってくれ。俺らもじゃれて遊んでるだけだからさ」

 

「大丈夫だよ。二人見てるの楽しいから・・・・・聞きたかったんだけどさ。二人に聞いてもいいかな?」

 

「おや、ボクに質問かい?良いとも聞いてくれ」

 

「ボクにじゃなくて、俺らな」

 

そう訂正すると何やら顔を赤らめながら言い淀む彼女。

なにやら、恥ずかしくなるような質問飛んできてしまうのではないかと、やや緊張してしまう。

 

「あのね・・・・・二人ってやっぱりお付き合いしてるのかな?とっても恋人同士って感じの距離感だからさ・・・どうなんだろうって高校入学組の子とも話になってて」

 

おっと、気不味い質問が飛んできてしまった。いきなり飛び出した質問に空気が固まる。

というかテスト返却で騒いでたクラスも気付けば静まり返りこちらを見つめている。

 

「・・・・・さあ?サニーさんはどう考えているんだい?」

 

意地悪な顔をしたエレナがそう言うのを聞いて、思わず顔を顰める。

 

「えっと私は取ってもお似合いな二人だし・・・たまにそのキッ、キスとかもしてたりするし・・・・・吸血鬼の種族って確か直接血を吸う行為はそういった相手にしないって噂だから・・・・・やっぱりそうなのかなって思ってるけど」

 

顔から湯気が噴き出んばかりに顔を真っ赤にする彼女が気恥ずかしそうにそう言うと、更に意地悪な顔をしながらこちらを向くエレナに何も言わず素知らぬ顔をして、窓の方向を向く。

 

クッソ嫌な流れだ。

女のこういう所死ぬ程嫌いだよ全く。

 

「さあ、じゃあ答えをどうぞ・・・・・レン。」

 

底冷えするような冷め切った声。

背中に冷たい物が走り、振り向くと深紅の眼がコチラを覗き込む。

有無を言わせぬ眼。

答えは決まっているだろうと分かり切った自信満々の面構え。

ムカつく程にこの女の事を意識させられる。

彼女のファンクラブからしたら待望の情報だし、有り体に言えば中学からのメンツとして付き合ってない方がおかしいというレベルの話だが公言したことなどこれまでなかったのだ。

 

 

 

というか、俺は今の今までこの女の事を好きだと付き合ってくれなどど甘ったるい言葉で彼女の前で口にした事などはない。

言って終えば、幼馴染で昔からの大好きだと人前で公言する彼女の言葉に甘えていたのだ。

言わなくても態度では示していた。

なんて言えば、甘えであろう。

彼女はずっと待っているのだ。

なんて健気な事だろう。俺はその言葉を口にする勇気はないというのに。

愛してるだとか、好きだとか

言えずにいると言うのに。

 

「んにゃ、一度も付き合うなんて話はしたことはないよ・・・・ただ、まあ昔からずっと一緒にいるからな・・・・・今更離れたいとは思わないよ」

 

絞り出した安っぽい言葉。

山門芝居でももう少しまともな言葉を吐けると心中で思ってしまった。

 

「0点‼︎」

 

そう勢い良く言い放つ彼女に目をやると、目のハイライトが消えていた。

公開処刑どころか俺はこれから市中引き回しの上打首獄門までついてきてもお釣りが来るのではないかというレベルの処罰を受けるのだろう。

というか、ガヤから凄いブーイングの嵐だ。

てか、シャナとリツまでブーイングしてやがる。アイツら後でぶっ殺してやる。

 

「・・・・・なんて言ったら許されますか?」

 

彼女が少し考え込む動作をすると、突然ネクタイを掴まれ顔を無理矢理上げられる。

 

「この先もずっと一生側にいてくれ・・・・・愛してる」

 

チュッ

唇に柔らかい感触に目を見開き、驚く。

歓声に湧く教室内と赤面して顔を隠すサニーさん。

もうどうにでもなってくれと思うしかない。

 

「コラッ皆席に座りなさい。次の授業始めるわよー」

 

「先生今良い所だったんだから待ってくださーい」

 

「そうですよ・・・エレレンのカップリングの良い所だったんですから」

 

「そうですよー」

 

その声と同時にチャイムが鳴り、授業開始を知らせる。

救われた今回ばかりはかなり救われた。

入ってきた国語教師であるハーフエルフのリアナ先生に拝むと、彼女はなんの事だとコチラを見て首を傾げる。

 

「コラッエレナちゃんも席に座りなさい。授業始められないでしょ?」

 

「ほら、言われてんぞ」

 

「・・・・・すみません。先生」

 

彼女の握り締めるネクタイはしわくちゃになっていた。最後に合った目は何故か悲しそうに見えたのは気のせいだと信じたい。

その日はそれ以来の会話はなかった。

メッセージを入れても既読すら付かず、気不味いったらありゃしない。

全面的に悪いのは、残念ながら俺でしかない。

 

 

「それで、今日はちょっと元気がない訳だ」

 

「レン君・・・・・女の子は言葉にして欲しいものなのよ。レン君はその子のこと好きなんでしょ・・・・なら言葉にしなきゃ」

 

バイト先のタクさんとサキさんには、普段の様子との違いで、仕事終わりに声をかけられてしまうぐらいには取り繕えていない。

やはり、自分自身思う所はあるのだ。

 

「でも、まあ俺は人間でアイツは吸血鬼ですよ?寿命違いすぎますし、異種族恋愛なんて悲しい話になるのが小説の鉄板ですからね」

 

「でも、小説が全てじゃないでしょう?」

 

「まあ、そうですけど・・・・・タクさんだって面と向かって言うの恥ずいでしょ?そんな愛してるだとか、大好きだとか歯の浮くようなこと言うの」

 

「いや、僕は言えるさ・・・・・サキこれからもずっと愛してるよ」

 

「あら、私もよタク」

 

うわぁイチャイチャが始まった。

あまりに甘ったるい空間に空きテーブルで勉強してたリナちゃんがそそくさと逃げるように自室に帰っていく。

仮にも亡き家族の友人である夫妻のイチャイチャしてるのを目の前で見るのは少々気不味い。

逃げるように荷物を持って出口へと向かう事にした。

 

「レン・・・・・愛を伝えることは決して恥ずかしいことではないよ・・・・・君の両親や妹さんだって君の事を愛していたんだからね」

 

「ん、分かってますよ・・・・・お疲れ様でした」

 

足早に店を去る。

ポケットから取り出したイヤホンを耳に突っ込み、接続音が流れるがなかなか聴きたい音楽が見つからず思わず舌打ちをする。

 

「分かってる・・・・・分かってるよ」

 

脳内をリセットする為に深く深呼吸をする。

いつもならどうて事ない習慣だが、やたらと画面をタップする指が震える。

イヤホンの接続を切り、ポケットに仕舞い込み耳にスマホを当てる。

長い通知音、なかなか出てこない相手にイライラしてしまう。

 

「チッ、コイツ取る気ねぇのかよ」

 

2度、3度通話を取らないこの女に開口一番なんて言うか頭の中がこんがらがう。

 

プツッ

 

「いつまで取らねぇ気だよ」

 

「・・・・・五月蝿いな。黙れよ」

 

「10分後だ・・・・・お前の家の前に出て来い、来なきゃ朝まで待つからな」

 

「はぁ?どういう」

 

プツッ

彼女の返答が返ってくる前に通話を切ると駆け出した。

久々に全速力で走った。

息が切れる、足がついてこない。たまに脚がもつれ転びそうになるが持ち前の体幹で堪えて、体勢を立て直す。

クソックソっクソっ

心の中で何回も悪態をつく。

しょうもない事でアイツを怒らせしまったことへ。

素直になれない自分へ。

不安にさせてしまったことへの自己嫌悪で。

 

「ハァ、ハァハァッ・・・・・昔より体力落ちてるなぁ」

 

昔ならもっと速く走れただろうに。

靭帯やってからは、サボりにサボってきたがツケが今更に回って来た気がする。

後もう少し、あの角を曲がればアイツの家が見える。

角を曲がった先、立派な門の前の灯りに照らされる人影が見える。

 

「んだよ・・・・・もう来てんのかよ」

 

最後の全速力で走り寄ると、少しギョッとした顔の彼女の目の前で両膝をつき、呼吸が止まる。

 

荒れた息、鼓動が速くなりすぎて心臓が爆発しそうな感じがする。

 

「ハァハァ・・・・・ごめん一旦ジョグして来ていい?苦しくてさ」

 

「・・・・・レン・・・君の開口一番がそれか?・・・・・ハァ、緊張して損した。いいよ散歩しながら話そう」

 

「悪ぃ、すまん」

 

私服姿の彼女に呆れられながらそう言われ、互いに歩きだす。

今は亡き両親と共に住んでいた場所。彼女との思い出に溢れた場所は歩き、昔よく遊んでいた公園に辿り着く。

 

「なぁ、なんか飲むか?」

 

「・・・・・アイスコーヒー」

 

無言で自販機にお金を入れて目当ての品を彼女に手渡す。

自分は疲れたからコーラを選び、二人でブランコに座り込む。

 

「・・・・・・懐かしいな。二人でよくどっちがより高くまで漕げるか勝負したもんだ」

 

「・・・・・思い出話をしに来たの?」

 

「ごめん、会話の糸口が分からんくなった」

 

彼女がその様子を見て、溜息をつくと飲んでいた缶コーヒーをゴミ箱に捨てて、立ち去ろうとする。

 

「・・・・・なんだい?」

 

無言で手を掴むと、不機嫌そうに彼女が尋ねる。

 

「いや、ただもうちょい一緒に居たいなって」

 

「・・・・・ボクらは恋人でもないのにかい?」

 

「俺が悪かったよ」

 

「何に対して謝ってるんだい」

 

「なんつうか、今日のこと」

 

「・・・・・ハァ、君はいつだってズルい奴だ。どんなに私が言葉にしても絶対返ってこない。ボクはいつまで待てばいい?・・・・・いつまで君に愛を伝えれば返してくれるの?教えてくれよ」

 

激重過ぎる彼女の言葉に返す言葉もない。

俺は彼女との時間に、彼女の優しさに甘え過ぎていたのは分かりきった話だ。

 

「態度で示すのは簡単だ。でも言葉にするのは俺には荷が重いんだ・・・・・だから、あまり毎回は言えないけどさ・・・・・俺はエレナ・デューク・ブラッドの事を本当に大切に思っているよ・・・・・君に出会った幼稚園の頃から今でも俺はお前のことが大好きだ」

 

言い切った。

産まれて初めてエレナに面と向かって、伝える事ができた。

 

「・・・・・50点。ずっと一緒にいるよがなかった」

 

「・・・・・手厳しいなお前」

 

「ボクからしたらそれぐらいは言ってもらえなきゃ足りないよ・・・・・でも、嬉しいよ」

 

「おう、やる時はやる男・・・・・それが俺よ」

 

「でも、君のその言葉を聞く事になるのが同衾したよりも後になるとは思ってもなかったよ」

 

「お前本当・・・・・いや、もういいや」

 

この女本当にもう終わってるよ。

無言で彼女が手を差し出すとコチラから指を絡めて握る。

恋人繋ぎなんて、今までもずっとやって来たが今になってしまえば小っ恥ずかしく感じる。

 

「送ってくれるんでしょ彼氏さん?」

 

「俺はお前よりシンプル弱いから守れないよ」

 

悪ふざけでそう返すが事実上、人間の強度的な意味でも、腕力で残念ながら吸血鬼の彼女には勝てない。

 

「なら、弱い君の事を守る為にも監禁してしまおうか?」

 

「ハッハッハッ面白いこと言うねー?」

 

あ、まずい目が笑ってない。

本気のヤツだコレ。

 

「おっと、もう着いてしまった。名残惜しいがそろそろお別れだ。じゃぁな?」

 

そう言って、無理矢理手を振り解こうとするが、外れず焦る。

ヤバイこの女本気か?

脳内がアラートを出し、逃げの一手の為に振り絞る。

 

「・・・・・何か忘れてない?」

 

「え?ごめんマジで分かんないし、監禁は本当嫌なんだけど」

 

「違う!・・・・・おやすみのキスしてよ」

 

はぁ?いや正気かコイツ。

家の前の門には監視カメラが付いてるし、何よりまだ人通りはポツポツあり。

ただでさえ注目されている。

やれってのか?ここで?今?

 

覚悟を決めて、彼女を抱き寄せると頬に唇を当てる。

いや、ものすごいそうじゃないって顔だが勘弁してほしい。

 

「クソ恥ずかしいから勘弁してくれ。じゃあな、また明日学校で・・・・・っと罰ゲーム決めたわ。今度の金曜の夕方駅前の映画館集合な?」

 

「へぇ・・・・・デート?」

 

「・・・・・そうだよ。お前の見たがってたやつ観に行こう」

 

「君から誘ってくれるなんてね。成長したのかもね」

 

そう言って、彼女が俺の頭を撫でると、門を開き名残惜しそうに戻っていく姿を見守る。

なんていうか、道行く人からしたら甘酸っぱい青春なんだろう。やけに生暖かい視線を向けられる。

だが言うことは言えたのだ。

今日はよく寝れそうだ。

 

 

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