「やあ、待たせたかな」
「ああ、20分ぐらいだがな」
映画館のベンチに座り、スポーツニュースを眺めて、時間を潰していると頭の上から声をかけられる。
パンツスタイルに、ボレロを合わせた着こなしのイケメンが目の前にいた。
「・・・・・・・・んだよ?」
「君はデートの待ち合わせで、今来たところとか言う訳でもなく、彼女の服を褒める訳でもない。なんというか、甘やかし過ぎて随分残念彼氏になってしまったのかもね」
立ち上がって、無言で立ち尽くしいるエレナに首を傾げていると、ドギツイ一撃を叩き込まれる。
いや、似合ってるなとかコイツ面良すぎるなぁと思うが、なんかムカつくんだよな。
「いやー死ぬほど似合ってるなー。凄い似合いすぎて一瞬誰わからなかったなー」
「君は昔から照れ隠しに憎まれ口を叩く癖がある。きっと、ボクが似合いすぎて内心ちょっとムカついてるぐらいだろう、違うかい?」
「・・・・・ッチ似合ってるよ。本当綺麗だなって思うし、正直好きな女だから何着てても良いなって思ってる。満足か?」
彼女の方に目をやると、少し唖然とした表情を浮かべている。
どうやらコチラの発言にやや面食らったようだ。
「すまない。少々君の事をみくびっていたようだ・・・・・ありがとう」
はにかみながらそう言う彼女に無言で手を差し出すと絡めてくる。
何がとは言わないが普段とは違うデートという環境のせいなのか心臓が早鐘を打つように鼓動する。
なんか恥ずかしい。
いつもならどうって事無いはずだが
「飲み物どうする?俺はコーラにするけど」
「なら、同じものを。映画に集中したいから小さいジュニアサイズの物にしようかな」
「ポップコーンの無料クーポンあるけど、塩でいいか?」
「ああ、ありがとう」
手早く会計を済ませて飲み物とポップコーンを受け取ると指定されている番号のシアターに向かう。
道中となりで彼女が映画のポスターに目をやり、止まるのでそれに合わせて止まって彼女を見つめる。
どこか寂しげに見える背中に自分最近なんかやらかしたか?と思案することしか出来ない。
「・・・・・観たかったこの映画ね。次の演劇部の舞台でやる事が決まったんだ」
「あれだろ、人間とエルフの恋愛を描いた小説が映画したやつだ」
「この作品はね、リアナ先生のお母さんが書いた小説なんだってさ」
ああ、確か現国のリアナ先生はハーフエルフ、つまり人間とエルフのハーフだ。
成程、彼女の母と父の物語が小説化された際に、知らされていたのだろう。
不老長寿のエルフと人間。
まあ、そりゃあ最後は死に別れるだろうさ。
「お前の言わんとすることは分かるよ」
無言で手を握り、安心させるようそう呟く。
コイツは昔から感受性豊かだから重ねているのだろう。自分と俺の事を
「さあ、時間だぜ。お嬢様もう始っちゃうよ」
手を引いて、指定された席に向かう。
なんだか映画始まる前から湿っぽい感じになってしまった気がする。
無言で隣に腰掛けるのエレナにポップコーンを渡して、二人で分け合う。
流れる映画予告に何本か気になる作品を見出していると、本編が始まった。
映画が始まってどれぐらい経っただろうか。
ポップコーンは食べ終え、喉を潤すようにコーラを流し込む。
ふと隣の彼女に目を向けると、静かにただ静かに涙を流していた。
目元をハンカチで吹き、ながら目を腫らしている。
「・・・・・綺麗だな、泣いてても」
小さく、ただ小さく溢した。
映画に目をやり、こちらも内容に集中する。
愛する者ととの出会い、そして大切な時間。
そして老いて逝く者と残される者。
過ごした歳月はきっと忘れられない物になるだろう。
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「ん〜泣いた泣いた。気分よく泣けた」
「お前泣き腫らしすぎてんな」
「アハハッやっぱ分かっちゃうか。ちょっとお手洗い行ってくるね」
「ああ、待っとくよ」
そう言って、歩いて行く彼女の背中を眺める。
思い出は、きっと失った分だけ酷く残る。
死に別れれば、それは酷く膿んで残る傷跡のようなモノだ。
そう思ってしまった。こんな大切な時間はやはり君に深い傷を残すのかもしれない。
あぁ、嫌な物を見てしまった。
これから先この作品は良い意味でも悪い意味でも心に残る棘だ。
「お待たせ、すまないね。ん?どうしたんだい考え事かい?」
「ああ、いや。なんでもない、なんでもないんだ」
何を思ったか、彼女がコチラの手を取ると先導し始める。
どこに向かうのか問うても帰ってくるのはついてこれば分かるの一点張りだ。
屋上に向かうエスカレーターを登り、何かと噂になる駅前の大きな観覧車に辿り着いた。
「学生2枚で」
「お二人で1200円になります」
「すみませんこれでちょうどで」
彼女がお金を払い終え無言でチケットを渡してくる。
それを受けると一言だけ尋ねる。
「なぁ、ここの噂知らねーのか?」
「カップルが乗ると破局するって噂のことかい?」
「知ってるのに乗るの流石にイカれてるか、イカしてるのかで言えばイカれてる部類だから」
そう悪態をつくが、回ってきたゴンドラに流れるように乗り込むと、彼女の隣に座る。
徐々に高くなる視界に、光り輝く街の夜景。
「綺麗なもんだ」
「おや、ありがとう」
「お前じゃねぇよ。・・・・・いや、お前も本当綺麗だけどよ」
「なんか今日の君はやや調子狂うな。悪い物でも食べたのかい?」
「別に、ただな・・・・・・」
「ただ?」
「今日観た映画は心に棘として残る気がする。やっぱ恋愛映画はなんか向いてないんだろうな」
まあ、主に向いてないのはこういった異種族恋愛を取り扱っている映画だ。
この街の住民は、人種と亜人種に分かれている。亜人種なんて言い方はあまり良い言葉ではないが、何百年前かに繋がったこの世界では異世界からの住民を分ける言葉がなかったのだ。
そんな亜人種とは人間種は今や交わり、ハーフと呼ばれる子供も増えてきている。
恋仲になるのも家族を成すのも大いに結構。
寿命という枠組みがなければの話だ。
今回の映画は、寿命について深く考えさせられた。残して逝く者と、残される者との隔たり。
人間はやはりモロいのだ。
定命の命なればこそ、長命種との時間感覚の差を感じる。
「いや、違うな・・・・・今回の勝負はお前の負けなんだからさ・・・・・・諦めろよ」
「・・・・・眷属になれば、またバスケだって出来るよ。もっと丈夫な身体で、またみんなと試合だってできるんだよ」
「・・・・・・・」
「眷属になれば悠久の時を老いもせず過ごせる。私と一緒にこの先ずっと居れるのにかい?」
「・・・・・・・・・・・・」
「君の家族だってそうだろう・・・・・妖狼族の獣人で不老長寿の一族だ。君より長く生きて、老いずに過ごせる。この先君は独りだけ先に進んでしまうんだよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「だから、頼むよ。ボクと一緒に生きてくれ・・・・・ボクだって幼稚園で君に出会った頃からずっとずっと大好きなんだ。だからお願いだ」
彼女がそう説いてくるが視線を合わせず景色を眺める。
無言の時間が堪らなく苦しいと感じたのはいつ以来だろうか。
ゴンドラが1周を終え、2周目に差し掛かる。
待機列には、ジンクスを覆そうと並ぶカップル達の姿が映り、目に止まる。
獣人同士、獣人や鬼人、鳥人や人間、鬼人や人間。
様々な種族のカップルだ。
「俺はな人間で居ることに執着してんだよ。死んだ家族との最後の繋がりこれを失えば本当何も残らないよ」
「・・・・・・でも、長く生きれば思い出せる時間は増える」
「長く生きることに意味を見出すには俺はまだ、足りないね」
隣に座る彼女の手をそっと握り、微笑む。
「だから、まあ気長に待ってくれ・・・・いつかは答えを出すからさ」
寂しそうな彼女に言い聞かせるようにそう言って、唇を重ねる。
この瞬間で時が止まってしまえばいいのに。
ゴンドラが開き、降りるよう催促され彼女と二人で降りる。
湿っぽい感じに最後してしまったのを悔やんでしまう。
階段に差し掛かり、何段か降りた所で彼女がついてこない為振り返る。
「・・・・・人生は舞台、人は皆役者」
彼女がそう口にする。
顔には影が差し、顔色を窺えない。
「・・・・・俺はエレナにとっての"お気に召すまま"は無理だよ」
「それでもだ。ボクは宣言しよう・・・・・レン。君を幸せにするのはこのボクだ。だから、余所見なんてするな。ボクだけを見て、ボクだけを感じて、ボクにだけ尽くすんだ」
彼女が階段の上で高らかに言い放つ
「そして、最後にはボクと共に生きてもらうよ」
そうウィンクして言う彼女に驚いて声が出なくなる。
彼女が演じるは、恋愛喜劇。
舞台は始まっている。
The show must go on だったかな。
この舞台は最後までやり続けるという意思を感じる。
「なら、最高のエンドになることに期待しようかなお嬢様」
無言で手を差し出すと、その手を重ねていつもの彼女の笑顔に戻り、こちらも釣られて笑顔になる。
まあ、今回のデートはこれで及第点と言ったところだろう。
「・・・・・でも俺絶対他の女に言い寄られるからお前とのエンドにならねぇかもよ」
「フム、ならやはり家に監禁するべきかもな」
彼女が考え込む動作をしたかと思えばとんでもない提案をしてくる。
しまった失言だ。ふざけた事を言わなければ良かった。
「嫌だなぁ、冗談だよ冗談」
「ボクは本気だよ。キミは中学に入ったあたりからボクを煽って誘う癖があるそろそろ分からせなきゃと思っていたところだ」
目が笑ってない。
慌てて、言い繕い誤魔化しどうにかその場を回避する。
今後は、アホなこと言うのはやめようと思う一日だった。
最近アズレンの小説書きたい欲あります。
気分乗ったらかくかも