一つ目少女と探し物   作:◇u

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00 -【プロローグ】
0話 過去から翔び立つ前に


 

 

「―――おはよう。よく眠れた、という訳ではなさそうだね」

 

 

 

 気が付けば、知らない天井と他人の顔が見えていた。

 

 

 

「大丈夫かい?」

 

 少女は随分と心配そうにこちらを覗き込んでいるが、いったいどうしたというのだろう。訊ねてみようと体を起こすも、突如として頭痛が襲い掛かってきた。

 

「ゔ…ッ?!」

 

 もはや質問どころではない激しい痛み。目の裏側を削られているような、そんな悍ましい鈍痛だ。

 (虫歯だろうか?)と呑気に考えてみたけれど、どうも違う。アレごときではない…ハズ。

 

「こーら、無理に動くのは止めといた方がいいっての。今の君さぁ、まじに大変な事になってんだからね」

 

「…大変な、こと?」

「鏡みる?」

「………うん、見る」

 

 恐る恐る鏡に映った自分を見ると、片方の目を覆う形があった。

 所謂、包帯。白いソレのちょうど右目あたりの部分に、ひどく醜い赤色の華が咲いている。

 

 「あっ」と声が漏れ、同時に少しばかり記憶が蘇った。

 

 

「誘拐事件の子。あの()、無事だった?」

 

 

「そうそう、おかげさまでね。尊い犠牲はあったけど、君が頑張ってくれたからこそ、しっかりこの学校に戻ってきてくれたよ」

「それは素晴らしい。あ、犠牲っていうのはやっぱり……」

「うん、それ」

 

 目の前の少女がだした右手の人差指。間違いなく()()()()()()を指しており、つまり――

 

「本っ当にごめんなさい……!」

「いいよ別に、こっちの落ち度さ」

 

 

「違う。できれば、できれば "そのまま" でいさせてあげたかったの!」

 

 

 普通、そこは『ごめんなさい』じゃなくて『残念だったね』とかでしょ。とは、さすがに口に出さなかった。

 

「不思議だなあ」

 

「え?」

「ん?」

 

「…不思議って、なにが?」

「わからないけど。でも、なんか不思議だなーって」

 

 代わりに「不思議だ」と言いながら、近くの机に置かれていた自分のスマホを取る。

 

「久しぶりだしさ、一緒に写真撮ろっか」

「なんで急に!?」

「いいから、ほら」

 

 

 ―パシャリ!

 

 

 やっぱり操作が下手になっている。

 …左目だけが頼りとなると、人ってこうなっちゃうんだな。

 

 上澄みの全力を相手にして優位に立てる程の己の技量は衰退し、いずれ嘗てのものとなっていくのだろうか。

 

 突きつけられた現実に若干がっかりしつつ、それでもなにくそと気持ちを切り替えた。

 

 切り替えたついでに銃は何処(いずこ)や。

 

「銃はいま修理中。弾切れ起こして鈍器扱いなんだから当然だ。君も銃も、なおるまでに相応の時間がかかると思ってろよ!」

「チッ、反省してま~す」

「嘘つけェ!!!」

 

 よっぽど気に障ったのか、毎度おなじみ説明会が始まってしまった。

 こうなった彼女はジェットエンジンよりも喧しい。

 

 「だから他人のフリしときたかったんだよ!」といった具合に、おもわず愚痴をこぼしてしまいそう。意地でも零さないけど。

 

「いい?! まずここ、背骨が激やば、オーケー!?」

「ウッス!」

「んでこっち、右腕ぇー…どうなっとんじゃい、どう、なっとんじゃい!!」

「ハイッス、ナンモワカリマセン!!」

「おバカッ!! あとこれだけは事前にやったけど、この前ケガしてた奥歯のとこ!」

「ウス!」

「膿がやばかった!! このまま気付かずに放置してたら、カンブリア爆発ならぬバクテリア爆発起きてたかんね!?!?」

 

「ハイ……ええええええええええええ?!?!?!?!」

「ようやく理解したか事の重大さを――」

 

「カンブリア爆発ならぬバクテリア爆発って、何スか?」

 

「……すごいぼかすけど、菌が入っちゃダメな場所でパラディソス」

 

「うっっわ、鳥肌ァ!!!!」

 

 文句云わずに聞いておいて良かった。

 

 目覚める前の私は、どうにも大変な状態にあったらしく。

 その証拠に、目の前の人物の顔が蒼褪めている瞬間は……

 

「いや本当にまじで、目の方の心配もあったけど!! 頬が変だなあって口の中確認したら『袋』があったとき、よく生きてられたな、って!!」

「そんなに!?」

「もうさ、あれね? 今日から君も学校と寮に戻ってきてもらうから!」

「…そんな…くうーん。この可愛い顔に免じて、ブラマ生活の継続を許ちて♡」

「許すわきゃ無エだろうが、こンのおたんこナス!! 無害の障壁作戦すっぞ!!」

 

 ……出会った日から今日に至るまで、一度たりとも目にした覚えがない光景だ。

 

 いや、やっぱり数回くらいは見た気がする。二桁な気もする。

 なんだか、こう、毎日のように見ているような感じもある。

 

 たぶんだけど、激闘の末に寝ちゃって気が付いたら『またお前か』って表情と御対面……ってパターンが日課になってる。

 

 だからそんな複雑な感情が混ざり合った面しないでよ、もう♡

 

「お願い♡」

「わあったから語尾やめんしゃい。そのイントネーション、頭にくる」

「無害の障壁はぁ?♡」

「するよ、逃げられたら困るもん」

「畜生めが言いよるわ。……ちなみに、メンバーは?」

 

 

 

「モモミド、反省室の歩くスパコン*1、セミナーず、ほか沢山」

 

「わあ……最強の布陣だぁ……」

 

 

 

 

 こうして数週間以上は自由がなくなったってわけ。

 

 

 

 

*1
コユキ




【主人公】
 ミレニアム学園のよく動く銃。信用厳禁、破損注意。
 訳あってミレニアムを自主退学した少女。次回以降の基本時間軸では、ブラックマーケットの一角で便利屋『Diamond Slug』を経営している。

【親友】
 びっくり人間専門家。技術者兼医療担当。
 主人公ちゃんの無茶苦茶にはもう慣れた、K.O状態の甘美ネル程度ならどんと来い。でも君は二度と来ないで健康に暮らしてね!

 いつもの倍ひどい姿で来とるやないか?!


【無害の障壁作戦】
・主人公は完璧に平和な状況では捨てがまりをしない。
・主人公は無害な対象だけの状況だと殆ど攻撃を実行しない。
・主人公は無害な対象の至近距離に害意のある者がいた場合、巻き込みを考慮せず任務を遂行し続ける。

じゃあ、無害を無害で挟んで、更に無害で包囲してかんぺき~な安全圏に置いておけば必要以上動かれねーよなァー!?

 という、根拠のない分析と安易な発想を元に考案された、しかしながら最も効果が約束されているトンチキ監視体制。
 結構あっさりと大人しくなるので、実験史上初めて "パターンに入った" 場面に遭遇したユウカは困惑。

誰だって心配されたら大人しくなるよ! __■■■■
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