『ディーラー』   作:栄養分

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第8話 『スロット』

 

 『ディーラー』のゲームの中で一番人気のものは?と聞かれたらそれはやはりルーレットと答えるもの9割を超える。しかしこれはこの1:30の男女比の世界だからこそ『ルーレット』という少年が生み出した付加価値によるものが大きく、事実として1ゲームにチップが最低100枚必要という馬鹿げた掛け金でも客が群がるのは『ルーレット』がいてこそだろう。

 

 では、あくまで『ゲームを楽しむ』という点で『ディーラー』を見た場合には?

 

 これについては客は口々にこう言うだろう。

 

 

 スロットだと―

 

 

「あぁぁぁ!くそ!今押したじゃねぇか!!!何でっ…!せっかく7が揃うとこだったのに…!」

 

「今日は渋いかなぁ…でもほんのちょっとだけは勝ててるんだよね…きょうはここでやめとこうかな…」

 

「うっわ!?もうチップが無い!?50枚あったのに全部飲まれたの…!?」

 

「…!や、やりましたわ!!逆転の大当たり!!一気に1500チップでしてよ!!」

 

 希望と絶望が織りなすスロットコーナー。ここではスロット台でチップ1枚につき3ラインで3ゲームを遊ぶことが出来る。丁半と比べると出来るゲーム数は多いのだが、中々に当たりがシビアである。が、当たれば一発逆転。懐が一気に温かくなるのだ。

 

「ふぅん…wあそこのお姉さん、当たってるみたいねぇwにひひ…!」

 

 そんな光景を眺める緑髪で肩にかかるくらいのショートヘアのメスガ……少女が一人。

 彼女は『スロット』。ここ『ディーラー』において唯一の魔法使いである。

 

「ふふん…♡そぉんなラッキーなお姉さんにはぁ…w『スロット』特製のスペシャルコース!」

 

 『スロット』が魔法で管理する全てのスロット台では客に勝たせつつも『ディーラー』側の利益が出るようにしっかりと調整がされているのだ。

 先ほど貴族令嬢が1500枚ものチップを当てたが、この日のスロット全体の売り上げで言えば痛くない範囲ではある…が。

 

「やりましたわ…!これで『ルーレット』様のゲームが出来る…!お、お化粧崩れてないかしら…お会いする前に化粧室に…ってあら?」

 

 席から立とうとした貴族令嬢は、先ほどまで遊んでいたスロット台の異変に気付く…なんとリールや装飾の色が豪華になり、台の上に書かれている当たった時に支払われるチップの倍率がぐんと上がっているのだ。

 

「なっ!!?こ、これはいったい…!?」

 

 貴族令嬢が驚いていると、その後ろからここのスロットをよく知る女たちが「おぉ…!」と感嘆の声を上げて近寄ってくる。

 

「すげぇ…!スーパーチャンスじゃん…!」

「私はじめてみた…!」

「!?スーパーチャンス…?」

「あぁ…!当たった時に低確率で移行するモードの事だ…!だが…1ゲームにチップ10枚使わないといけないが…アンタ運がいいな!」

「な、なんですってぇ!?そ、それはやらなくては…!!」

 

 そんな会話に『スロット』は一人、「ぷーくすくすw」と見えない位置で笑う。

 

「ぴゃははwおっ馬鹿さぁん!そんな甘いワケないじゃぁんwwwその1500枚…そうねぇ…1499枚は『スロット』に返してよねぇwww」

 

 『スロット』のその言葉の通り、貴族令嬢は負けに負け続けた。時々小当たりは引けるのだが肝心の大当たりが出ない。

 

「くうぅぅぅぅ…!!スーパーチャンスなのに…!どうして…!」

「ちょこちょこ惜しいのは来てるんだけどな…!」

 

 ハズレ、ハズレ、またハズレ。そんな散々なゲームの中、スーパーチャンスはついに終わりを迎えようとしていた。

 

「え…!?だ、台の装飾がどんどん元に…!?」

「ま、まずい!!スーパーチャンスが終わる!!おそらく…これが最後のチャンスだ!」

「そんな!くっ…!この1回に全部を賭けますわ…!!」

 

 貴族令嬢は震える指でボタンを1つ押す…すると

 

「!!きたッ!ど真ん中に7!!」

「喜ぶのはまだ早い!あと2つ止めないと…!」

「~~~~ッ!!」

 

 続いて2つ目、回るリールを読みタイミングを見計らい、意を決してボタンに力を込める…。

 なんと、2つ目のリールも中央に7が止まっていた。

 

「ッ!!!!7!ど真ん中に7!!」

「熱ゥいッ!!!!」

「いける!いけますよ!!あと1つ!!!」

「ここまで来たら当たれ当たれ当たれ!!」

 

 いつしか台の周りには人だかりが出来ていて、皆最後の7を揃えるのを待っていた。

 

「…っ、大丈夫…大丈夫ですわ…!ここまで来たら…!!」

 

 固唾を飲み込み最後のボタンに手を伸ばす。「あと1つ!あと1つ!」と」いうコールが場の緊張感をかえって上昇させる。

 冷静にリールの回転を見極め、タイミングを見計らう貴族令嬢は無の境地に達しようとしていた…!

 

「…!ここッ!」

 

 狙いすました一手はボタンを打ち、リールの回転を止める…ッ!!

 最後の一回、奇跡を手にするために…ッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 が…ッ!!

 

「あ、あぁぁぁぁ…!」

 

 駄目…ッ!真ん中では無く1つ上にズれた7…ッ!!1秒にも満たない一手がこの結果…ッ!!

 

「そ、そんな…!!あぁ!スーパーチャンスが…」

 

 終わるスーパーチャンス…ッ!落胆…ッ!!

 

「どぉしてですのよぉぉぉォッ!!!」

 

 貴族令嬢…完全敗北…ッ!

 

 

 

 周囲にいた客たちは同じく落胆する者、自身のゲームに戻る者など、様々であった。

 そして先ほどと同じように見えない位置で笑う『スロット』がいた…。

 

 そう、すべてはこのメスガ……『スロット』の魔法によって仕組まれていたのだ。

 性格の悪い『スロット』は人々の一喜一憂する姿が大好きなのである。だからと言って絶対に勝たせないわけではないのだが、『ある事』が絡むと絶対にその客を勝たせないようにするのだ。

 

「ぴーっひゃひゃひゃひゃ!!ざまぁ♡『ルーレット』のとこに行くなんて言わなきゃもうちょっと勝たしてあげたのにさぁwwww…ほんっと…馬鹿じゃんね!ぴゃはははwww」

 

 そう、スロットという自分の領域で勝ったチップを持って『ルーレット』のところに行かれるのが『スロット』は大嫌いなのだ。

 

「ゲームに本気になっちゃってさぁwww大人のくせになっさけなぁ~いwさぁて…次のエモノはぁ…♡」

 

 そう言って『スロット』はその日の就業時間まで様々な客を苛め抜いたのだった。

 時には天に登るが如く大きく勝たせ、時にはどん底まで叩きつけるように無様に大敗させる…それがディーラー『スロット』のやり方だった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 翌日の昼。

 

「…ぅ…まぶし…ってうわ…もうお昼…?」

 

 薬を作る大鍋や、魔法の触媒、魔法が閉じ込めてある石…魔石が各所に並べられてある『スロット』専用の部屋にあるモコモコとしたソファで『スロット』は目覚めた。

 『スロット』は中々朝起きられない体質でこのように昼間まで寝ることがしょっちゅうであるのだ。皆分かり切っていることだし、咎める者もいない。特に急ぐようなことが無ければ何時まででも寝てていい。それが『ディーラー』の決まりである。

 

「え……お昼!!?ウソ…!やば!!」

 

 が、この日は違った。

 

「やばいやばい!!せっかくの日なのに…!」

 

 バタバタと急いで身支度をする。『スロット』はまだ12歳であるので、化粧は軽く、ポイントとして少し淡いピンクのリップはこだわってみた。

 

「っ…せっかくのデートだし…いつものじゃなくて…ちょっと大人っぽい服の方がいいかな…」

 

 服装は余所行きの少しおしゃれなグレーのリブニットのシャツに魔法の糸で縫われた黒のフィッシュテールのスカート、ボタンに魔石を使用している魔法使い用の高級なライトブラウンのカーディガン…靴は革製のポイントチャームの可愛らしいサンダルそして頭には白いカチューシャ。

 

「あっ!もう!シワになってる…!えい!」

 

 置かれている姿見の前でスカートのシワを魔法で整え、もう一度全身を…そして寝ぐせなどが無いかを確認した後、白い小さなバッグを手に急いで大広間に向かう。するとそこには…

 

「あー!やっと来たぁ!」

 

 白のリボンブラウスにダークブルーのプリーツミニスカートで、白いタイツを穿いて、靴は茶色のヒールの高いショートブーツで肩からは黒のミニショルダーバッグをかけ、頭には緑のカチューシャを身につけた『ルーレット』が片頬をぷくっと膨らませながら待っていた。

 

「…っ…!は…?なにあれ…かわい…っ」

 

 ぼそっと声を漏らしながら立ち尽くす『スロット』とは対称に『ルーレット』は抗議の声を上げ始める。

 

「もー!遅いよ!すっぽかされたのかと思っちゃった!!」

「あ、え……ご、ごめん!ちょっと…寝坊した…」

「むー!!ちょっとじゃないよぉ…30分はヒマしてたんだからね!」

「う…ホントゴメン…今日のカフェ代は『スロット』が奢るから…!」

「…ならよし!さ、行こ!」

「ひゃっ…!あ、ま、待ってよ!」

 

 輝くような笑顔の『ルーレット』に手を引かれて、駆け出していく『スロット』を畑仕事をする作務衣を来た『チョウハン』と野菜を受け取りに来た『バカラ』が手を振って見送った。

 

「いやぁ…青春でござるなぁ…のぅ?『バカラ』殿」

「それを言う『チョウハン』さん一体何歳なんですか…」

「ピチピチの19歳(処女)でござるが?」

「…ではまだ青春出来るのでは?」

「滅相もない!拙者は青春よりも『性春』をしたいお年頃でござるからなぁ!」

「……あぁ、はい…(諦め)」

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 『ディーラー』のある王都の商業地区には様々な店が建ち並んでいて、その中にはキラキラ輝くアクセサリーを取り扱うショップや国内でチェーン展開するようなモダンでおしゃれなカフェも存在する。

 のだが、この世界の人口比てきに道行く人のほとんどは女性で、男性が歩いていようものなら皆後を追うようにガン見するのだ。『ルーレット』に関しては完璧と言わざるを得ないほどの華奢な身体や服の着こなしのおかげで少女にしか見えないのだが、きめ細やかな白き肌や艶やかな白く長い髪はそれはそれで羨望の眼差しを向けられるのだ。これが男だと知られようものならたちまち街の女に囲まれることだろう。

 

「そーいえばこの間くれたハンドクリームあるじゃん?」

「えっ、あ、あー…うん…き、気に入らなかった…?」

「え?なんで?そんなわけないじゃん!僕、さすが『スロット』だなぁって思ったよ?」

「ふえっ!?」

 

 手を繋ぎながら歩く2人だが、このように『ルーレット』に褒められると、『スロット』はどきまきして上手く歩けなくなる。そんな時は近くのベンチに座ったり、カフェでお茶をするのだ。

 

「リンゴのいい香りがするし、何より指が前よりぷにぷにになったんだから!あとなんか爪も綺麗になってる気がするんだよね」

「…!そ、そう!魔石から抽出した魔力で原料を練ってそこに月の雫や妖精樹の若葉なんかを配合したの!あと、うん…リンゴも…す、好きかなって……『スロット』も…リンゴ、好きで…その…」

 

 後半につれて声が小さくなっていく『スロット』に『ルーレット』は正面から笑顔で笑いかける。

 

「そうなんだ!ありがと!えへへ…『スロット』って僕と好きな物が一緒なの多いよね」

「そ、そう?」

「うん!甘いものも一緒なのが好きだし、アクセサリーだってホラ、好きなデザインでお揃いの色違いのカチューシャだし…それにリンゴも大好き!」

「そ、そう…!ふふん!『ルーレット』のセンスも『スロット』に似て良くなってきたってことじゃない?」

「うん!ふふっ、そーゆーのうれしいかも!」

「!…くゅうぅ…!」

 

 胸を張ってちょっと大人ぶってみたつもりの『スロット』だったのだが、逆に一切悪意のない太陽のような明るい笑顔に焼かれ、きゅうきゅうと胸が締め付けられるのだった。

 

 その後2人はカフェに入り、せっかくだからとアップルティーとアップルパイを注文し、午後のひと時に花を咲かせた。

 ゆったりと、しかしながら確実に過ぎていく時間に『スロット』は少しずつ無常さとある種の寂しさを感じていた。

 

(あぁ…この時間がもっと続けばいいのに…『スロット』は、こんなにも『ルーレット』のことが…)

 

 アップルパイを食べた後のフォークをぎゅっと握り締め、目の前で美味しそうにアップルパイの上のリンゴをサクサクと食べる白い髪の少女のような少年に淡い恋心を燻ぶらせる。だが…

 

(『スロット』は…みんなみたいに積極的になれないよ…『ルーレット』の前だと顔が熱くなって上手く喋れないし……ヘンな奴って思われたくないよぉ…)

 

 同時にもどかしい思いを『スロット』は抱えているのだ。

 他のディーラーや客、または赤の他人には「ぴゃははwww」と人を小馬鹿にするようなメスガキムーブがデフォで出来るのだが、『ルーレット』にはそれが出来ない。それが『ルーレット』が男だからなのかと思っていたのだが、他の男には普通にメスガキムーブで煽り散らかせたのでやはり好意を寄せている『ルーレット』のみの限定的なものだと分かった。

 

「あっ、『スロット』口の端にカスタードついてるよ?」

「ふぇ!?ホ、ホント…?はずかし…」

「あーそっちじゃなくて逆…うーんちょい下…!ってそうじゃなくて…!あぁもう!ちょっと動かないで…」

「っ!」

 

 『ルーレット』の白く細い指が『スロット』の顔に伸び、指の腹でカスタードを優しくすくい取る。

 

「はい、取れた!あむっ」

「みぇっ!??!?」

 

 それをそのままぱくりと口にした『ルーレット』に『スロット』は顔が熱くなり、思わず口をパクパクとさせる。そんな顔を見た『ルーレット』は蠱惑に笑って見せる。

 

「なぁに?もしかしてカスタード舐めたかったぁ?」

「なっ!ななな!何言ってんの!?そ、そんなワケ!ないじゃん!絶対!!」

「ふふっ、そう?」

「っ…!くうぅぅ…!」

 

 『ルーレット』の手の上で遊ばれているような感覚で、悔しくも恥ずかしくもあるが、それよりも『スロット』の心の中ではドキドキがそれらを上回っていた。

 

(……っ…!ドキドキが止まらない…!『ルーレット』…!『スロット』は…!)

 

「っ、『ルーレット』、あのね…その、聞いて欲しいことがあって…!」

「?なぁに?」

「『スロット』は、『スロット』は…『ルーレット』が…!」

 

 「好きだ」とその言葉を紡ごうとしたその時だった。

 

「………」

「………」

 

 2人はピタリと動きを止めたかと思えば、少しだけ残っていたアップルパイとアップルティーを完食し、店員を呼んで会計を済ませた。そのまま商業区の奥の方に歩いていくと、急に路地裏へと…そしてさらにその奥へと消える。

 

 そんな2人を追う者が5人…いずれの女も町人や冒険者に紛れるような服装で『ルーレット』達が消えた路地裏の奥へと走り込むが、行き止まりの場所に2人の姿は無かった。

 

「くっ…!撒かれたか!」

「まだ近くにいるはずだ…探すぞ」

「あぁ……って、何ィ!?」

 

 そう言って引き返そうと5人が振り向くとそこにはにっこりと笑う『ルーレット』が立っていた。

 

「お姉さんたち、僕たちに何か御用?」

「っ…!お前は…『ルーレット』だな?男だというのに度胸があるようだな」

「わぁ!僕の事知ってるの?うれしいな!でもダメだよ?遊びたいならちゃんと営業時間にお店に来てよね!」

 

 腰に手を当ててプンプンと怒る『ルーレット』に追ってきたはずの5人が頬を少し赤らめる。

 

「かわい………じゃなくて…フン、あいにくと遊びに来たのではなくてな…!貴様ら『ディーラー』を我らの『組織』の傘下に―」

「えぇ~…違うの…?お姉さんカッコいいから…僕サービスしてあげたかったのにな…」

 

 「僕悲しい…」と言いながら冒険者風の女にぴったりと甘えるようにくっつきながら肩を人差し指でくりくりとしながらいじける『ルーレット』に女は明らかに動揺する。

 

「ふへぇ!?え、あ、いや…えっと…ご、ごめん…ね?」

「リ、リーダー羨まし……じゃなくて、しっかりしてください!!」

 

 わたわたとするリーダーと呼ばれた女は何とか煩悩に打ち勝ち、名残惜しそうにしながらも『ルーレット』から離れて後退り、腰に付けていた剣を向ける。

 

「くっ…!お、お前を人質にして、『ディーラー』にいう事を聞かせるようにしてやろうか…!ククク…!それともお前自身に―」

「ん~?僕にどんなひどい事してくれるの?でも最初はお姉さんだけにいっぱい可愛がって欲しいなぁ…♡」

 

 と、すぐに距離を詰めて今度は女の耳元で優しく囁いてやると持っていた剣をあっけなく地面に落とす。

 

「あぇ……!ち、ちかい…こえが…!ふえぇ…いいにおいもすりゅ…」

「万年処女のリーダーがやられた!あんなの耐えれない!」

「ちょっ、そこ変われ!!クソリーダー!!アンタだけいい思いしやがって!」

 

 

 そのままするりとリーダーから離れると、『ルーレット』は「じゃ、あとよろしく~」と路地裏の空へと声を掛ける。

 5人が空を見上げた先には―

 

「…ピャハハ☆お姉さんたちぃ、なっさけなぁいwww」

 

 銀色の魔法陣を空に描く『スロット』の姿があった。

 

「なっ、あいつは『スロット』!?」

「しまった、ハメられたんだ!」

「えぇへへぇ…『ルーレット』きゅぅん…♡」

「リーダーッ!おい!バカしっかりしろ!!」

「そんなんだから処女なんだよリーダー…」

 

「ふんっ!もう遅いんだからぁwくらえっ!」

 

 完成した魔法陣に魔力を流し、『スロット』は魔法を解き放つ。

 周囲一帯が瞬時に凍り付き、女5人を氷の檻に閉じ込めた後、動きを封じる氷像へと変えさせた。

 

「っぷ、ピャハハハハハハ!だっさださぁ♡『スロット』達みたいな子供に負けて恥ずかしくないのぉ?どんな気持ちかお・し・え・て?あっ、そっかぁwww今喋れないかぁwww」

 

 くすくすとその様子を笑う『スロット』に『ルーレット』は足元に気を付けながら近寄り、「やったね!」と声を掛ける。

 

「ありがと『スロット』!」

「ぴゃはっ……う、うん…!ふふん!『スロット』にかかればこんなの楽勝なんだから!」

「…でも、この人たちどうする?」

 

 コンコンッ!と『ルーレット』が氷像を小突いてみても砕けることはなく、冷たい冷気が辺りに広がる。

 

「そうね…でもさっき気になること言ってたし…『支配人』にどうするか聞くわ。一応捕縛しただけでまだ殺してないし」

「そうだね…『組織』…かぁ」

「なーんか嫌なことになりそうね…」

「でも大丈夫じゃない?『ディーラー』の皆がいれば……あ、ところでさ」

「?なに?」

「さっき『スロット』何か僕に言おうとしてたよね?あれなぁに???」

「にゃっっ!!???」

 

 思い出したかのように顔をボッと赤くした『スロット』は『ルーレット』から目をそらし、ごにょごにょと声にならない声でつぶやく。

 

「そ、そんなの…あの時みたいな勢いでしか言えないし…もう…!」

「?????どうしたの?」

「みっ!!?も、もう!絶対教えない!!」

「えーっ!ひどい!言いかけて言わないのは一番駄目なんだからね!」

「で、でもぉ…!もう…!こんな奴らに邪魔されなければ…!覚えてなさいよ…『組織』とかいう雑魚ォ…!!デートの邪魔までしてくれちゃって…!」

「ねぇー『スロット』ぉ!言うまでは逃がさないんだからね!!」

 

 中々に煮え切らない態度の『スロット』に対し、『ルーレット』は路地裏の壁までにじり寄って『スロット』の頭を挟むように両手を壁につく。

 

「ぴゃっ…!?壁ドンッ…!?ち、ちかっ…ふにゃ……」

 

 壁ドンにより、本日のドキドキが臨界点に達した『スロット』はふにゃりと力が抜け落ち、鼻から一筋の血を垂らしながらぐったりと気を失ってしまった。

 

「え?う、うわー!?『スロット』大丈夫!?え、ちょ、だ、だれかぁ!!」

 

 

 その後偶々路地裏の怪しい店に教会ご禁制の少年にゃんにゃん18禁本を購入に来ていた『支配人』によって発見されるまで、『ルーレット』は何とか『スロット』を支え続けたのだった…。

 

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