世界の真理を解き明かした天才──に、憑依した地球人 作:刹那木ヤクモ
──お前の裏切り、そのおかげだ
かつて、天才が告げた言葉。彼の剣であった、または彼に救われたのかもしれないあたしの胸に、今でもぐっと刺さってる。神殺し。理への反逆。それを掲げて突き進んだ先にある未来。それを疑ってしまった、あたしの奥に。
天才をあたしが治める地の果てに封印してから200年経った。そして、かつての同胞があたしにも知らせてくれた。
《解明者》の訪れ。異なる世界、異なる思想を持った革命の者。あたしはそれを、たとえみんなを裏切ることになっても
──殺さなくてはならない。
◆◆◆◆
朝日が昇り、少し経った頃。監禁状態を脱する事ができる、と過去の天才の記録にあったので試みるのだが──
「⋯⋯本当に行けるのか? 」
私を弾いたあの鉄格子。何らかの識別で出入りを封じるそれに、恐る恐る触れる──と、
「うわっ!? 」
するりと向こう側へ通り抜け、体重の預け先がなくなった私は前に思い切り倒れてしまう。痛い。⋯⋯痛いが、そんなことは捨て置き、泥のついた顔をシャツで拭いながら朝日を全身で浴びる。
「ふぅ。⋯⋯ビバ! 大地! 」
鳥の群れが飛び立ち、青々とした葉が揺れる。うーん。生きてるって感じ。やはり牢は山にあったようで、辺りを一面を見渡す事ができる。都市、間が空いて都市、さらに都市⋯⋯まるで群生地だ。それにどれもが栄えているようで、すべての都市に少なくとも一つ、高く目立つ建造物が見える。
⋯⋯この広大さでは何をしていいかすら分からないな。ひとまず、ここは《アロンダイト》という都市の外れであるはず。最も近場の建造物目指して歩いていくとしよう。
道中では様々なものを見つけた。巨大なカマキリのような怪物や禁足地を示す看板、フードをかぶり、軽装鎧を着た骸骨。どうやらとてつもなく危険な場所に幽閉されていたらしい。情報と接続したときに言語は理解できるようになったので、骸骨の所持品であろうポーチを調べると、《治癒薬》の入った小瓶や《火炎理論・炎煙》と書かれた筒、さらには地図があった。申し訳なさを抱きつつそれらを拝借し、ひとまず最低限の身なりを整えたりした。
そうして地図を頼りに進んでいき、アロンダイトの検問所までたどり着くことができた。骸骨の彼の身分証があるので、フードを深くかぶりそれで突破しようという算段でいこう、と思っていたのだが──
「何故です! 僕は! 」
「はいはい、虚言癖もそこまでにしな。《レーヴァテイン》の筆頭騎士様なんてここに用はないだろうよ。わかったら身分証を用意して出直してきな」
「むむむ──む? あなたは、あなたは──! 」
確かな喜びの色を滲ませる青年。《聖剣レーヴァテイン》の使い手──スルト。私が初めて出会った聖剣使いは、彼であった。