真恋姫的一刀転生譚 魏伝   作:minmin

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前の二つを結合したので今度こそ幕間です。
がっつりメインヒロインのわた、桂花さん回。
少しずつ桂花も自覚していきます。


幕間 思いと想い

 

「公台殿から連絡が入りました。

 先発した霞の部隊に自らと護衛の兵、斥候のみを連れて合流。董承殿を追っていた袁術軍一万に二千の騎馬隊で突撃し、敵の指揮官を討ち取り敗走させたとのことです。

 尚、逃走した敵兵に対して追撃は行わず、投降した者を受け入れ既に本隊、董承殿の部隊とともに帰還中とのこと。

 同行していた陛下にお怪我はありません」

 

 一刀の報告に居並ぶ文武諸官がおお、と声を漏らす。

 今回の用兵は陳宮に一任されていた。曹操軍に加入して初めての、一軍の軍師としての戦。その戦で五倍の敵を打ち破ったのだ。本隊が後詰として控えていたとはいえ、これだけの戦果は感歎に値する。

 いけ好かない奴ではある。

 春蘭とは反りが合わないが、主への忠誠心は真っ直ぐで混じりけがない。その点は認めていた。細かい戦術を無視して感覚で動く時があるが、武将としての能力も申し分ない。

 一方陳宮には忠誠心というものがまるでない。頭の中にあるのは呂布のこと、軍略のこと、それだけだ。

 

 それは、危うい。

 

 呂布に忠誠を誓っているというわけではない。

 あれはただ単に、呂布のことが好きなだけだ。袁術と張勲の関係に近いだろうか。呂布のためなら周りをいとわずに行動する。そういうところがある。

 それがいつか味方を、曹操軍を傷つける結果になりはしないだろうか。

 

「見事ね。

 先の張遼、今回の陳宮。ともに素晴らしい勲功をあげたわ。

 桂花に聞いていたけれど、貴方の人を見る目は確かなようね」

 

 華琳の声は満足気だ。

 確かに、一刀の人の才を見抜く目は確かだ。そこには予想というものがない。この人物はこういう才を持っている、と断言するのだ。一度も逢ったことがない人物でさえ。そしてそれは、一度もはずれたことがない。

 そもそも自分が華琳に仕えることになった要因のひとつも一刀だった。

 名士は名士と繋がりを持つ。その繋がりを通じて人材を登用し、それが繰り替えさえることでやがて巨大な人脈、派閥が築かれるのだ。荀家とて例外ではない。

 当初、荀家にもたらされた登用の話は袁紹からのものだった。袁家といえば、四世三公を排出した名家の代表だ。出仕先としてはこの上ない。家族も大いに喜んだ。

 そんな時、当時はまだ心を開かずに引きこもりがちだった一刀がぽつりとこぼしたのだ。

 

 袁紹は愚物だ。出仕するだけ時間の無駄。最後は馬鹿を見ることになる。

 

 あの時の一刀の言葉に従っておいて本当によかったと思う。実際に目の当たりにして良くわかった。あんなのに仕えるのはごめんだ。

 

「遅れて出発した本隊は輜重隊も兼ねていますので、補給の心配はないでしょう。

 陛下には多少粗末な食事を取ってもらうことになりますが、不敬罪に問われたりはしないはずです」

 

 冗談めかして言った最後の言葉に部屋が笑い声に包まれる。

 自分の思考をよそに、一刀の報告は続いていく。

 

「間もなく天子をお迎えすることになります。

 今後の両袁家の動向によっては、仮の都を定める必要が出てくるかもしれません。

 いずれにせよ、準備が必要でしょう」

 

 一同に静かな緊張が走る。

 いくら衰えつつあるといっても、皇帝を迎えるといくことは多くの人間にとって一大事なのだ。

 勿論例外もいる。その筆頭が主である華琳だ。

 

「そうね。そうなればそれなりの用意をしないと。

 皇帝陛下がおわすにはふさわしくない場所だ、とかそこらの儒者が騒ぎ出すかもしれないわ」

 

 華琳が鷹揚にうなずく。うんざりするといった表情だ。

 

「桂花!

 貴女が考える新たな都にふさわしい場所は?」

 

「開発、防衛、軍事拠点。そのた諸々の条件を加味しますと、許がよろしいかと。

 いずれ陛下が洛陽へお戻りになる御意志を示されるとしても、新たな中核都市として発展させる価値は十二分にあります」

 

 すぐさま答える。

 袁術軍侵攻の知らせがあった時から、事前に一刀と検討していた。

 

「ならばそのように手配を始めなさい。

 この件についての責任者は桂花、貴女よ。相手が了承してくれれば、一人か二人補佐を付けるかもしれないわね」

 

 華琳の決断も迅速だ。あるいは、自らもまた事前に事前に検討して同じ結論に達していたのかもしれない。時折、自分の考えを述べているはずなのにいつの間にか華琳の考えを代弁しているような気持ちになる。

 

「では、文和殿に?」

 

「ええ。正式に勧誘するつもりよ」

 

 賈文和。洛陽では人質を取られる失態を犯したが、宦官を一掃し民政を清浄化させ、瞬く間に治安を回復させた手腕はかなりのものであると聞いている。袁術から逃走し、真っ直ぐこちらを目指した決断力もある。彼女が手が借りられるのならば、政務はかなり楽になるだろう。

 

「よろしいですか?

 張遼将軍、陳宮殿に青洲兵。このところ敵方の取り込みが続いています。

 またぞろ批判が湧き出しそうですが」

 

 末席に並ぶ文官の一人が声を上げる。ざわざわと同意する囁きが聞こえてきた。確かに周囲の印象は良くはない。

 暫く頬杖をつき黙していた華琳が突然立ち上がった。

 

「元董卓軍?元賊徒?

 

 一向にかまわない!!

 

 才があるのならば、いかに非情であろうと邪であろうとかまわない!!

 

 どんな不逞の輩であろうと、どれほど不仁不孝であろうとまるで問題ない!!」

 

 大声で語りながら真っ直ぐ前へ進む。

 

「唯才!!」

 

 その覇気に、文官たちが怯えている。

 

「唯才があれば用いる!!!」

 

 止まる。部屋の中央で、ぐるりと周りを見渡した。

 

「以上が私の思い描く国の形よ」

 

 今までにない、新たな国の形。新たな時代の始まり。

 それを感じ取り、皆がそろって膝を付いた。

 

 

 

 

 

 部屋を出て、一刀と並んで自室までの道を歩く。

 自分が何かに悩んでいる時、一刀は声を掛けたりはしない。ただ無言で傍にいるだけだ。そういう気遣いが嬉しくもあり、同時に少し煩わしくもある。

 考えるのは、先程の朝議での華琳の発言だ。

 

 唯才。

 

 それは、明確な儒への宣戦布告だ。

 わかってはいる。見せかけだけの徳や善行で地位を得、民草から重税、賄賂を搾り取る地方役人の数々。漢に深く根差した儒の腐敗が、国そのものを腐らせている。

 

 しかし、自分もまた儒の者だ。

 

 漢の大地に生まれ、儒によって育まれた。

 儒によって鍛えられたという自負もある。

 男は今でも大嫌いだが、真の儒者の中には敬うべき者もいる。儒がなければ、一生偏った価値観で生きていたかもしれない。

 自分は華琳の臣だ。あの覇気に、あの生き様に見せられ忠誠を誓った。

 その華琳が、儒を明確な敵とみなした。

 一生華琳に付いて往く。それは間違いない。

 しかし、親族はそうはいかないだろう。自分は裏切り者と呼ばれるかもしれない。

 

「――桂花」

 

 一刀が袖を掴んで引っ張った。

 いつの間にか部屋の前に着いていた。気づかず通り過ぎようとしていたようだ。

 

「ねえ、一刀」

 

 一刀の眉がぴくりと上がる。

 ここ最近はずっとあんたと呼んでいた。真名で呼ぶのは久しぶりだ。

 

「なんだ?」

 

「華琳様は、皇帝への道を歩むつもりはないのかしら」

 

 腕を組んでうーんと唸る。

 

「……どうだろうな。今は、そのつもりはないように見えるけど」

 

 今は。それは、いずれそうするつもりということか。

 そう問うと、そうじゃない、と返された。

 

「ご主君の目的は、腐敗し、疲弊しきったこの国を立て直し発展させることだろう。覇を唱えるというのはその手段に過ぎない。

 極論すれば、ご主君よりそうするにふさわしい者がいるならばご主君は躊躇わずその者に席を譲るだろう。勿論、自分よりふさわしい者などいないと確信しているだろうけどな。

 皇帝の地位も同じだ。自らが皇帝になる必要がないからならない。逆に言えば、必要があるならなる。ご主君にとっては、その程度の飾りだよ」

 

「そう、ね……」

 

 その通りだ。曹孟徳とはそういう人だ。

 

「入ったばかりの一刀に言われるなんてね。

 割と、混乱しちゃってたみたい」

 

 自嘲する。本当に、情けない。

 

「桂花」

 

 何?と目だけで問う。

 その目を、一刀はしっかりと見つめてきた。

 

「俺は、桂花の、味方だ」

 

 一刀が語る。ゆっくりと、確かめるように。

 

「何があっても。もし世界中が敵に回ったとしても、俺だけは桂花の味方だ。

 つらいなら逃げたっていい。俺はずっとついて行く。

 だから、一人で無理するな」

 

「一刀……」

 

 近づいてくる。

 そのまま、抱きしめられた。

 自分とは違う、男の身体。嫌悪感はない。

 その温もりと鼓動に、安心した。

 

「生意気ね。

 昔は私がやってたのに、立場が逆になっちゃった」

 

 目を閉じる。悩みは尽きないが、今だけは全て忘れられそうだった。

 

 そのまま暫くして身体を離す。

 

「ん。もう大丈夫」

 

「それならよかった」

 

 顔を見合わせて笑いあう。この感じも久しぶりだ。

 

「私は部屋に戻って政務の続きをするわ。一刀は?」

 

「食堂にいって昼食かな。それから調練を視察してくる」

 

「そう。それじゃあ、また後でね」

 

「おう。桂花もしっかり食べないと、色々育たないぞ?」

 

「余計なお世話よ!」

 

 最後の最後でなんてことを言うのか、この男は。

 自分は怒っている。そのはずだが、何故だか顔は笑顔のままだった。

 

 

 

 

 

 




如何でしたでしょうか?
この外史の桂花は原作ほど男嫌いではありません。その原因は本文にもあるように儒の影響です。
目上の人、敬うべき人は男でも敬意を払います。
劉協陛下は勿論ですし、他には王允殿みたいに年長でしっかりと仕事で結果を出す人。
曹休君は親族といくこともあって華琳に近いので若干嫉妬込みで嫌われてます。
まともな儒者は素晴らしい人格者が多いので、その反動で全身性欲男は原作より嫌われてる感じです。
恋する女の子の気持ちを書くのは男の自分には難しいことですが、これからも精進していきます。まずは参考資料としてD.Cシリーズを最初からやり直してこよう!(自分がやりたいだけ)
感想お待ちしております。
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