「――ここは幻想郷です」
言い切った瞬間、空気が止まった。
木々の葉一枚、揺れなかった。
「……おいおい」
低く唸るような声でカーズが口を開く。黄金の瞳が、射命丸を真っ直ぐに捉えていた。
「まだこのカーズをおちょくるつもりか?」
「嘘じゃないです!」
射命丸は即座に否定する。
「ここは幻想郷。外の世界から隔離された場所なんです!」
「そんな場所、聞いたこともねぇぜ」
ジョセフが肩をすくめる。足元の草を、ブーツの爪先でつつきながら。
「俺は世界中回ってきたんだ。だがそんなトンデモねぇ場所は知らねぇ」
「それは当然です」
射命丸は当然のように言い放った。
「外界からは認識できないようになっていますから」
疑念は、むしろ深まる。
「信用できるか、そんな話」
カーズの瞳が細まる。
射命丸はため息まじりに、自分の背を指した。
「じゃあ、この羽はどう説明するんですか?」
「……確かに」
ジョセフがぽつりと呟く。現実として、目の前にある。反論できなかった。
カーズは話を切り替えた。
「元の世界へ戻る方法はあるのか」
「たぶん……霊夢さんなら」
「霊夢? 誰だそれは」
「博麗神社の巫女です」
「ミコ?」
ジョセフが眉をひそめる。
カーズは鼻で笑った。
「日本の神に仕える者だ。その程度も知らんのか」
「なんだとォ……?」
ジョセフの拳に力がこもる。
「また波紋を食らいてぇのか?」
「ちょ、ちょっとやめてください!」
射命丸が慌てて割って入る。二人の間で、小柄な身体が右往左往した。
「……で、その神社はどこだ」
カーズが短く問う。
「説明するより早いです。ついてきてください」
その言葉を聞いた瞬間――
カーズの身体が、鳥へと変わった。黒い翼が空気を叩き、木の葉が舞い散る。
「行くぞ」
「お、おい待て!」
ジョセフだけが地面に取り残される。落ち葉が、その足元でくるりと舞った。
「俺は飛べねぇぞ!!」
カーズは口元を歪めた。
「ではな、ジョジョ」
「置いてっていいんですか!?」
射命丸が戸惑う。
「構わん」
――次の瞬間だった。
「なにッ!?」
カーズの足に、何かが巻き付く。
振り向いた先――
空の青を背負いながら、ジョセフが弧を描いて飛んでいた。まるでターザンのように。その手には紫の蔦――ハーミットパープル。カーズの足にしっかりと絡みついていた。
「へへっ!」
「おいカーズ! テメーだけで行くなんて許さねぇぞ!」
「おのれジョジョ……!」
カーズは露骨に顔をしかめた。
その隣で――
カシャカシャカシャッ!!
射命丸が夢中でシャッターを切っている。目が輝いていた。
「なんなんですかその移動方法!?」
「人間なんですよね!?」
「スタンドって言うんだぜ」
ジョセフが得意げに笑う。髪が、風に流れた。
「すたんど……?」
「そばに現れ立つというところからその像を名付けてスタンドと呼んでいる」
「……何も見えませんけど」
「スタンド使いにしか見えねぇんだよ」
「ええー、見たかったです……」
そのやり取りを遮るように、カーズが口を開く。
「幻想郷とやら……他にはどんな存在がいる」
「人間、妖怪、神様……いろんな種族が――」
その時だった。
雲が――異常な速度で流れ始める。影が地面を走った。鳥たちが、一斉に鳴き止んだ。
「なんだこれは……!」
カーズの声が低くなる。
「おいジョセフ!」
「これもスタンドか!?」
「いや、俺もわかんねぇ!」
「だが……少なくとも"スタンド攻撃"だッ!!」
「ちょっと待ってくださいよ!」
射命丸が悲鳴を上げる。
「今日はなんなんですか!? 変な人に会ったと思ったら今度は空が――」
その瞬間、二人の声が重なった。
「「誰が変な人だ!!」」
――次の瞬間。
ピタリ、と。
何事もなかったかのように、雲の動きは止まった。
沈黙。
鳥の声が、一羽、また一羽と戻ってくる。
風だけが、静かに吹き抜ける。
「……本当になんて世界だ」
ジョセフが呟いた。
どうだったでしょうか面白かったらコメントなどお願いしますm(_ _)mジョジョ7部アニメ化しましたね!