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王は国内の犯罪組織に数年かけて念入りに網を張り、そのすべてを一斉摘発した。組織の幹部を投獄、その構成員たちにもそれぞれ彼らの罪に応じて処罰を命じた。随分と優しい処置のようにも思えるが、これは犯罪組織が国内で大きくなりすぎていたためだ。父から王位を継いだ時にはすでに国内の3割の人間が何かしらの形で組織にかかわっていた。その規模は、先代から王を支えてきた賢臣アキレスも組織の幹部であったほどだ。当然、全員を処罰すれば国は成り立たない。そこで、罪の軽いものは数日で釈放するとともに、混乱を伏せくため、一時的な緘口令を敷いた。
しかし、これにより何も知らぬ7割の国民は黙っていない。次々と身近な人間が連行されていくことに不安を感じ、この国は揺らいでいた。腐り落ち、根元から折れかけていた状況を考えればかなりの改善なのだが、多くの民はその事実を知らない。王は大規模な計画がついに完遂されたことに安堵するとともに、この混乱への穏便な対処について、頭を悩ませていた、そんな時だった。
「呆れた王だ。生かしておけぬ」
ーーーメロスが乗り込んできたのは。
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セリヌンティウスは、ただの石工である。
石を切り出し、紋様を掘り、建築の土台や装飾を作る。その美しい彫刻は貴族にもひそかに人気がある程には有名な石工である、・・・表向きは。
セリヌンティウスは、その彫刻の才を買われ、貴族に取り入った。そこで数々の不正の証拠と、組織幹部の名簿を発見し、王へと申告したのだ。
そう、今回の一斉摘発の陰の立役者セリヌンティウスは国王直下の機密部隊の一員だったのである。
セリヌンティウスは頭を抱えていた。
ーーー国王へ刃を向け、どうやっても「国家反逆」の罪を免れないであろう友人について。
そもそも、王城へ刃を持って侵入してきた男が王と謁見できるだろうか。
王へ伝わるのは「武器を持った侵入を捕まえた」という事実程度である。
ことの発端は、今日の朝のことである。大仕事も終わり、久方ぶりに会おうと、果物屋の前で待ち合わせていたメロスという友人が、やけに遅い。正義感が強く、これまで一度たりとも時間を破ったことのないその友人が、である。
日は登り切り、不気味なほどに雲一つない空に、何か嫌な予感がしていたその時だった。
「外から来た大柄な男が王宮に侵入し、捕まった」と噂する主婦たちの会話が耳に入る。
こめかみから、いやな汗が噴き出る。
友人の性格を考えれば、もしやという疑念は確信に変わる。
ーーーセリヌンティウスは走った。
必ず、あの無知蒙昧の友を助けねばならぬと決意した。メロスには政治がわからぬ。メロスは、村の牧人である。笛を吹き、羊と遊んで暮らしてきた。ゆえに、謀に関しては、人一倍に鈍感であった。
不安が募るこの国で、反逆を企てるものが一人でも現れること。
これの意味するところを理解していたセリヌンティウスは、全速力で走った。
酸素が足りない脳に浮かぶのは最悪の事態。
反逆の罪は何よりも重い、だが、いまのこの国でメロスを処刑すれば民の不満は最高潮に達し、彼に続くように多くの反逆者が現れるだろう。
そして何より、セリヌンティウスの任務外での初めての友人。かなり頭は悪いが、まっすぐで、策略渦巻く政界での任務で進むべき方向がわからなくなっていたとき、いつだって光の方向を教えてくれた太陽のような男。メロスを失うのはどうしても避けたかった。
今代の王は、頭のいい王だ。
本来であれば即刻処刑すべき罪ではあるが、混乱の世の今、どう処罰すべきか慎重に判断してくださるだろう。
セリヌンティウスは何とか王城裏の酒蔵庫に到着し、地下の秘密の通路から謁見の間へと歩く。
息を整え、頭を整理しながらセリヌンティウスは考える。
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セリヌンティウスにとって王は主君であると同時に恩人でもある。王がまだ王位を継承する前、孤児として生きるすべを持たなかったセリヌンティウスは、ごみをあさり、盗みを働いて生きていた。
しかし、盗みの才がなかったセリヌンティウスはいつも盗むところを見つかり、盗みに成功したことはなかった。
そんなある日、初めて盗みが成功した。相手はフードを目深にかぶり、汚れた大きなローブを着ている旅人のようだった。
後を追っていると、その腰からするりとひもが外れたようで布袋を落としたのである。
セリヌンティウスはその袋を拾った。
薄汚れたその袋に入っていた通貨は、オボロス通貨1枚と拾ってきたのだろう木の実が3つ。
かなり少ないがここ数日何も口にしていなかったセリヌンティウスにとっては、大きな成果であった。
しかし、袋からその中身を取り出そうとしたとき、あの汚れたローブが頭によぎる。
思い返せば、あのローブはとても大きく見えたが背丈はどうだっただろうか、自分と同じぐらいで
はなかったか。
ローブの下の姿はわからぬが、この木の実はあの者の唯一の食事だったのだろうか。
もちろんセリヌンティウス自身は、その唯一の食事にすらここ数日ありつけていなかったのだが、そんなことはとうに頭にない。
盗みに成功したことのなかったセリヌンティウスが、ついに成功して得たものは、人からものを奪うという感覚であった。
セリヌンティウスはやせ細ったその体で、街を探し回った。
服は捨てられた布切れで、足を守るものもない。その骨の浮かぶ手には小さな袋が握られている。悲鳴を上げる体を無理やり動かし、だれが見ても飢えた孤児でしかなかった。
ただその眼だけはまっすぐと前を向いており、強い意志がこもっていた。
ローブを纏った落とし主の正体は、少年の頃の国王であった。
国を憂い、孤児が盗むことで生きていることを知っていたため、罪悪感を持たない程度の銀貨を孤児が拾いやすい瞬間を狙って落とすことで、少しでも糧になればと考えていたのだ。
セリヌンティウスは、街で一番といってもいい程に劣悪な健康状態であった。しかし、セリヌンティウスだけがその「落とし物」を渡した。
それが、今の国王と、セリヌンティウスの出会いである。
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セリヌンティウスは国王に進言した。
「彼は私の友人で、もうすぐ妹の結婚式を控えています。私を人質として、彼に3日の日没までの猶予を与えてはいただけないか」と。
メロスには、セリヌンティウスとは違い家族がいるのだ。あの正義感の強い友人でも、本当に3日以内に帰ってくることはないだろう。そもそも、メロスの暮らす村には急いでも2日はかかるのだ。セリヌンティウスはもとより、処刑までの期間を延ばすことだけが目的であった。
5日後には諸々の根回しが終わり、此度の一斉摘発の件の詳細とその顛末が民に伝えられる予定なのだ。
それまではセリヌンティウスの命を使ってでも、民の反逆を抑える。そう考えての提案であった。
ともに育った忠臣、もはや友人ともいえるセリヌンティウスのその提言に王は初めこそ難色を示したが、民の命を預かる王にとって、もはや選択肢はないも同然であった。
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メロスはセリヌンティウスと入れ替わる形で釈放された。「必ず帰ってくる」という言葉を残して。
牢の中から去っていくメロスの背中を見送り、セリヌンティウスは安堵した。
それは、メロスが自分を見捨てなかったことに対してではない。
絶対に帰ってこれないように計算しておいたことに対する安堵である。
年齢は近くとも父のように尊敬している王の収めるこの国を、弟のように大切に思う友人メロスを守るためであれば、セリヌンティウス自身の命は捨てても構わないとそう考えていたのだ。
そして3日後。
民たちは処刑と知り、見物に来る。もはや、高まった不満は爆発寸前だろうが、次々と釈放されている友人や家族が無事であること。そして、彼らに理由を問うても何も教えてくれないことが、何とかバランスの崩壊を防いでいる。
いつもは悪趣味な公開処刑などに見物に来ない民たちも、今回ばかりは気になって見物に来ており、大勢の人間が処刑場の周りに集まっていた。
それを牢の中から見るセリヌンティウスの目に絶望はなく、どこかやり遂げたような顔つきにも見える。
しかし、次の瞬間その目を見張る出来事が起こった。
観衆がどよめき、その声のもとをたどれば、一糸まとわぬ大男、傷だらけだの足で、それでも無理やり体を動かし、歩みを止めることはない。
どこか覚えのあるその動きで、その大男は処刑場の上までたどり着いた。
感動的な再会、友人との最後の思い出になるだろうその瞬間。しかし、セリヌンティウスの目は絶望に染まる。
牢は兵士によって開錠され、セリヌンティウスは3日ぶりに牢から出る。
「遅くなった」と、本当に申し訳なさそうに謝るメロスにセリヌンティウスはもはや怒りがこみあげてくる。
なぜ帰ってきたのか、そもそもどうやって帰ってきたのか。頭の中は理解できない友人の行動によってかき乱される。
ただ、その時ようやく気がついた。
セリヌンティウスがメロスを救った気になっていたことに。
メロスを救う対象としてみてしまったことに。
メロスのその瞳は、決して揺らぐことなくセリヌンティウスを見つめていた。
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時はさかのぼり、3日前のセリヌンティウスがメロスの代わりに牢に入れられた後のことである。
王は怒りを隠せないでいた。
セリヌンティウスの考えていることが唯一の平和な解決への道であるというのはすぐに理解できた。
しかし、セリヌンティウスの覚悟は、あの絶望のないまっすぐな瞳は、王の心を大きく揺さぶった。
セリヌンティウスの瞳にこの事態を招いた、メロスへの恨みが少しでもあれば、どんな危険を冒すことになろうと、メロスを処刑することにためらいはなかった。
だが、あの日。
責務だと、施しだと、どこか見下した気持ちで孤児たちを支えているつもりになっていた自分に、やせ細った手で、ただし力ずよく差し出された安物の小袋に、その瞳にともる赤い炎に、気が付かされたのだ。
人間の美しさ、そして強さを。
セリヌンティウスが王を、主と、そして恩人と尊敬しているように、王もまたセリヌンティウスを、その精神に尊敬を抱くほど認めていた。
王はメロスが気に入らなかった。
それは物語の最後にすべてを台無しにする悪役のようにすら思えた。
しかし、セリヌンティウスの目がそれを否定する。
処刑された賢臣アキレスはその犯罪の数々の証拠を賢く隠していた。
王城内での反逆を起こしたことを理由として処刑を行ったが、それを信じない民が多くいたのだ。
アキレスは【賢臣】と呼ばれるほどに、民に慕われていた。
故に、アキレスの決定的な反逆の証拠がなければ民を納得させることができない。
幸いにも、対立国との密通の燃え残りが、隣国にあるアキレスの屋敷の暖炉から発見されたとの知らせは入ったが、現物が届くまではメロスの投獄から5日かかる予定だったのだ。
王は急ぐ、一刻も早く決定的な証拠を手に入れるために。
隣国で見つかった証拠を待っている余裕はない。何としてでも、間に合わせるために兵を総動員して調査をさせた。
自らも、あの日のように旅人を装って町を駆け回り、状況の把握と事態の収束のため、様々な手を打った。
成果がないままに、1日、2日とすぎる。
そしてついに処刑の日の昼にようやくその証拠が発見された。
口封じで殺害されたとされるアキレスの秘書の遺体の胃の中から対立国の金印が出てきたのだ。
金は胃で溶けることはなく、追手に追われながらも決死の覚悟で最期に飲み込んだのだろう。
この国の民たちは皆、強く、美しい精神を持っている。
王である自分が、組織の末端どもの襲撃を恐れて安全をとることなど、彼らの精神に泥を塗ることなど許されるはずがない。
処刑まで数刻、王は護衛も振り切る程に速く、処刑場へと走った。
友人の代わりに処刑されようとする、愚かな友人を助けるために。
国のために、命を捨てる覚悟のある賢い忠臣を助けるために。
日が沈むまでにセリヌンティウスを解放しなければならない。
もはや証拠は揃ったのだ。
アキレスの反逆罪の明確な証拠を得た今、アキレスの処刑は乱心ではなかったことを伝えなければ。
民が多く連行されているが、彼らに罪があるのではなく、無事に帰ってくることを伝えなければ。
そこで王は目にしたのだ。
あの日のセリヌンティウスを彷彿とさせる赤い炎を。
エタ専なら短編書き上げれば良いじゃない。ってわけで初投稿です()
時系列としては、
王様「ホイホイこれ盗んで良いぞー」善意
セリ「だが断る」
セリ「ホイホイ投げて良いぞー」善意
メロ「だが断る」
気がついたけどよくみたら、王様だけ走ってないかも
まぁ、勢いで書いたけど地雷の人もいるかもしれません。
地雷でもここまで読んでくれた方がいたらほんとに、申し訳ない。
俺のおすすめ14のタグを教えるので、それ読んで元気出してください。
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