何もしてないのに壊れました~異世界漂着物調査課~ 作:包紙くらげ
僕が落ち着くまでだいたい10分かかった、僕の説明はバカの一言で済むなんて……とほほ、これからずっとバカ扱いは消えないんだろうなぁ。
「やっと落ち着いたかそう落ち込むなテト、俺はあんな説明書は気にしてない」
「ゴリウスさん……」
「説明書を見る前からお前はバカとわかっていた」
「表に出ろこの野郎!」
「うふふもう最初から表ですよぉ」
励ましてくれるのかと思ったよちくしょう!
「まあとりあえず服を着ろ、一応お前は漂着物だからなふれあいセンターに連れていく」
「そうですね~センター長に報告はしないとですねぇ、テト君歩けますかあ」
ゴリウスさんから僕の服(海藻付き)を受け取ってとりあえず遭難者スタイルに着替えた。
それにしてもなんともふわふわとしていて甘い声だなあシプルさん……ほんとは歩けるけど動けないっていったらも、もしかして肩とか貸してくれるのかな。
「実はもうへとへとで……あ、歩けません」
「そうなんですかあそれなら仕方ないですねえ、抱っこしてあげましょう~」
抱っこ!?いいの!?でもはずかしいような……でもでもあの豊満な胸に抱きしめて貰えるなら……
「ゴリウスさん、抱っこしてあげてください」
「おう」
「あっなんか急に元気になってきました!早くふれあいセンターとやらに行きましょうか!」
そんなに甘い話はないってことだね……そして僕らは砂浜を離れた、僕もシプルさんたちの後ろを歩いてとりあえずついていくことに。
そういえば聞きたいこと沢山あるんだよね、ここはどこなのかとか色々。僕は歩きながら聞いてみることにした。
「あのここってどこなんですか、日本なんですか?」
「ここはポイス島、二ホンっていうのはしりませんがブリスベル王国から南の方にポツンとある小さな島です」
「ポイス島、ぽいすとう、ぽいすてい……ポイ捨てのポイス島だ覚えやすいだろ」
「僕はポイ捨てされたってことなんでしょうかね」
それにブリスベル王国?僕社会の授業は苦手だったから(全教科苦手なのは内緒)地球にそんな国があったか覚えてない、でも多分無かったと思う。それにシプルさんに生えてる羊のような角とか見たことない風景から察するに多分ここって僕がいた世界じゃないんだろうなぁなんて。
ここが異世界って奴ならシプルさんの種族って何なんだろう、気になる。
そしてほんとにスタイルがいい、胸のサイズって何なんだろう、気になるって僕はバカか。必要なことだけ聞こう。角だ角気になるのは大きい角だ。断じて胸じゃない。
「あのシプルさんって胸が大きいですけど、羊族とかだったりするんですか?」
「胸?」
僕はアホか。
「間違えました!シプルさんって角が大きいですけど、羊族だったりするんですか?」
「ブッブー違いまーす、よく間違われるんですけど私はぁ」
なんだろう天使とかだったりするんだろうか。
「鬼です」
二度とシプルさんの前でふざけたことは言わないようにしよう。
ということはゴリウスさんは?
「俺はゴリオーク族だ、意外だろ?」
「いや全然」
「あ?」
「お?」
「二人とも仲良くなるのが早くて羨ましいです~」
見かけ通りでほんとによかった、これで天使とか妖精言いだしたら泣いてたところだ。
しばらく歩いているとゴリウスさんが切り出した。
「テトはお前は人間なのに頑丈だよな、遭難してるのに傷一つなかったぜ」
「そういえばベーリング海に落ちたのに不思議だ……」
頑丈なのは僕の数少ない取り柄だけども。
「本名タチツテトねえ……なんつーかアホみたいな名前だよな」
「人が気にしてることを!僕の両親に謝れ!上から読んでも下から読んでもタチツテトなんだぞ!」
「いや下から読んだら違うだろ……」
「私は覚えやすくて好きですよぉ」
まあ我ながらバカみたいな名前とは思うけども、よく友達とか先生にいじられたっけ。
「それにしても漂着物がこんなバカな生き物とはなあ……」
「僕みたいな漂着物だとなにかまずいんですか?」
「こっちの話なんですが成果をあげないとそろそろ不味いんですよぉ」
成果?なんのことだろう、気持ち二人の表情が暗いし何か成果を上げないとどうなるんだろう?
そんな疑問を口に出そうとしていたら目の前に大きな建物が見えてきた、あれがポイス島ふれあいセンターか……思ってたより……
「公民館みたいだろ、まあここ田舎の島だしな」
「ようこそポイス島ふれあいセンターへ~」
思ってたよりちょっとぼろい建物『ポイス島ふれあいセンター』に僕らはたどり着いた。
☆
ちょっと軋む扉を開けるとたくさんの人がせわしなく働いていた、なんていうか市役所そっくりだ、パイプ椅子とか会議用の机とか見覚えのあるものもちらほら。なんか変な感じ。
「あらお客さんですか?こんにちわポイス島ふれあいセンターにようこそ!受付のマイア・メイです。」
「ん?」
この人が受付の人か、三つ編みに編んだ髪型と柔らかい笑顔から優しそうな人って感じが伝わってくる。
「こほん、マイアさんこいつはウチの漂着物です。今日も相変わらずお綺麗ですね」
「ゴリウスさんこんにちわ、へぇーこの子が今日の漂着物なんですか?」
ん?ゴリウスさんの様子が変だ、このマイアさんって人の前じゃシャキッとしている、髪もいつの間にか整えてるしもしかして好きなのかも?ひとつ弱みってやつを握ったかもしれない。
「こいつをいまからセンター長のところにつれてかなきゃいけないんでまた後で、その……お綺麗ですね」
ボキャブラリーが少なすぎる。
「センター長にですか、それではお気をつけていってらっしゃい!」
まるで相手にされてないように見えるのは僕だけじゃないはずだ。
「あーやっぱり綺麗だな……マイアさん……テトあの人の前で変なことしたりすんなよ?」
「はいはい」
「絶対だからな……?」
どんな堅物そうなゴリラみたいな先輩にも好きな人っているもんなんだなぁ……僕は応援するからねゴリウス先輩。
「なんか腹立つ顔だがまあいい、軽くここを案内してやる」
「迷子にならないようにしっかりついてきてくださいねぇ~」
シプルさんたちの後を追うようにこの施設の説明をされた
「漂着物調査課だけじゃないんですね、ふれあいセンターにあるのって」
「当たり前だ俺たち調査課はこのセンターの中でも小さい課だ、他の課の方が大忙しで住民に必要とされてんだ」
「ちょっと見てきて良いですか?見学って言うかチラッと、どんな感じかなって気になって」
「良いですよ~邪魔しないように気をつけてくださいねぇ~」
ほえ~住民達に必要にされてるねぇ…どれどれどんな課があるのかな
『広報課』『住民課』『農林水産課』
ふむふむ、確かにどれも必要そうだ……思ってたより真面目な施設なのかも。
「どうだ?どの課も必要だろう?」
『横綱課』『電光石課』『責任転課』
「…」
「どうだ?どの課も必要だろう?」
『半か丁課?』
「いるかぁぁぁー!こんな課!ほぼギャグじゃ無いですか!半か丁かって賽を振ってるだけじゃないですか!」
「大丈夫だ金は賭けてない」
僕が心配してるのはそこじゃない
「まったく……ふざけた課ですねゴリウスさん」
全然大丈夫じゃない……ほんとにふざけた課だこんなのがあるのか異世界の市役所的な場所は
それにしても叫びすぎて喉が乾いた、遭難してからなにも飲んでないしなにか水とか無いのかな
『さあ、張った張った!半か丁か半か丁か!』
『次の景品は飲料水!おいしい水だよ!』
『さあ賭けるものはなんでも構わないよ服でもなんでも!』
「…」
『さあ張った張った!半か丁か!』
「丁ぉぉぉ!」
☆
「まったく……ふざけた課ですねゴリウスさん」
「なんでパンツ一丁で平然と話を続けられるんだ?俺はお前の方が怖いんだが?」
「きゃっ☆またパンツ一丁ですねテトくん、不憫かわいいですぅ」
やれやれ……絶対丁だと思ったんだけどな……とても寒い。
「……お主らワシに用があったんじゃないのかの、なにを騒いどるんじゃ」
僕がパン一になってる間にいつの間にか後ろに偉そうな緑髪のハーフツインテールのロリっ子が来ていた。
「ってな、なんでこやつはぱ、パンツ一丁なんじゃぁぁ!?は、はやく隠さんかぁぁ!」
「あっそれはもう済んだ話ですからおかまいなく」
「ワシには何も済んだ話じゃないわぁぁぁ!かまうわ!それに誰なんじゃこのアホ毛はぁぁ!!」
「おいテト、この方がここのセンター長、エリス・コンセプトさんだ。失礼の無いようにしろ」
「もう既に失礼じゃあ!おかしいじゃろ!ワシの神聖なポイス島ふれあいセンターに異物が流れ込んどるんじゃ!」
そういいながらも僕の腹筋をチラチラと指の隙間から見てくる……この人がセンター長なんだ……子供にセンター長を任せるなんて人手不足なんだろうか。
僕はエリスちゃんに目線をあわせて中腰になった。
「ちっちゃいのに偉いね、ごめんね騒がしくしちゃって」
「ちっちゃいじゃと?ワシをガキ扱いしとるな?こう見えても今年でちょうど300歳じゃ」
「めっちゃババアってことですか!?シプルさんゴリウスさん、早くこの方をベッドへ運びましょう!無理をさせちゃいけない!」
「まだ300歳のピチピチエルフじゃ!老人扱いもやめんか!」
まったく……とプリプリ怒ったエリスセンター長を宥めるのに時間がかかった、パンツ一丁でいることに驚いていたけど僕はもうそれが自然体って感じになってきた。
「で?おぬしら漂着物捜査課は今日こそ何かいいものを拾ってきたんじゃろうな?」
シプルさんもゴリウスさんも一斉に僕に指をさす、ちょっと照れる。
「そのアホ毛パン一がどうしたんじゃ確かにいい腹筋をしとるがま、まさか色気仕掛けか!?ワシにそのいい体の男を捧げるというのか!?そ、そ、それはいかん!けしからんぞ!」
「いえセンター長、色気仕掛けでも捧げものでもなくてただ今日拾ってきたのはそのバカです」
「今日の漂着物は『にんげん』さんのタチツ・テトくんですぅ~」
じゃじゃーんとシプルさんが僕を強調するように手を広げる、僕もとりあえず力こぶを作って笑顔を作って見せた、にこっとね!
「で……そのバカの説明書は?ワシのポイス島ふれあいセンターにてどのような働きをしてくれるんじゃ?」
ゴリウスさんはくしゃくしゃになった僕の説明書を読み上げた。
「タチツ・テト 18歳」
「ほう」
「すごいバカです、以上」
「ほう(笑)」
人の説明を聞いて(笑)はないだろう、失礼な人だ全く。
「ポイス島に特に貢献もできなさそうじゃな?」
「多分」
「すごいバカってだけのいわば浮浪者じゃな?」
「そうなりますかねえ~」
「今日も調査課の収穫はゼロってことじゃな?」
「いやーそうなっちゃうんですかね?」
センター長はニコニコと笑って両手をダブルピースにした、なんだろうイェーイかな、カニのモノマネかな?
のんきにそんなことを考えてるとセンター長はピースのハサミをジョキンと閉じた。
「明日には漂着物調査課は解体じゃ」
「えっ」
解体、カニよろしくセンター長の手のハサミとともに残酷な宣言が僕たちに言い渡された。