FF16×ベルセルク ―生贄の烙印とドミナント― 作:ほろにが
“光の鷹”が姿を現して以来、
伝説や迷信の中に閉じ込められていた怪物たちが、実体を伴って現れ始めた。
それは人々の精神の底に潜むはずの影──
だが今、その影が現世(うつよ)を這い出し、かすかな足音とともに人の世界を侵食してゆく。
狙われるのは、人の棲み処。
そして、もっとも弱き者たちだ。
当然、辺境に位置するこの小さな村も例外ではなかった。
村の中央で魔物に応戦しているのは、
とんがり帽子をかぶった魔術師の少女シールケ。
そして、彼女の目付け役の小妖精イバレラだった。
「皆さん、何があっても絶対にこの陣の外には出ないでください!」
「そーそー、出たら最後。あんたたち死体まっしぐらよ?」
大地に複雑な陣を描き、村人たちをその内に集めて結界を張る。
それは幽世の邪な者を拒む魔法障壁──闇の領域に潜む忌まわしき存在には、
決して踏み越えられぬ境界線。
無知な一匹の大蜘蛛が甲高い唸り声を上げ、集まった人々へと飛びかかる。
だが、次の瞬間、五芒星の輝きが閃き、頂点から激しく爆ぜると、
黒煙を上げて地面に崩れ落ちた。
結界内部の老若男女の村人たちは、
驚愕と安堵が入り混じった複雑な表情でその光景を見つめるばかり。
二人はいつもの息の合った連携を見せていた。
四人の奮戦により、村を蹂躙していた魔獣の数は確実に減っていった。
だが──最後の一匹を斬り伏せた刹那、ガッツは異変に気づく。
キャスカの姿がない。
「おい! あの二人がいねぇぞ!」
イシドロが真っ先に声を上げた。
彼の指摘通り、気づけば世話役のファルネーゼも姿を消していた。
「ファルネーゼ様!?」
それに気づき、セルピコも目を見開き、焦燥を露わにする。
うかつだった。
戦場の混乱の中で守るべき者が同時に姿を消す──
それは最悪の事態につながる危険な兆候だ。
「……シールケ! 探れるか」
「はい! すぐに」
ガッツの呼びかけに応じ、シールケは両目を閉じて意識を集中し、気(オド)の流れを辿る。
セルピコは固唾を吞んで祈り、イバレラは横で静かに彼らの様子を見守っていた。
ガッツは歯を食いしばり、巨剣の柄を力強く握りしめていた。
あの黒い太陽の下で、すべてを失った。
右目も、左腕も、そして──キャスカの心も。
あの夜が、使徒、そして鷹への復讐の旅の始まりだった。
だからこそ、エルフヘルムで彼女の心を取り戻せると知ったとき、
ガッツの胸に久方ぶりの熱が灯った。
失ってばかりの旅路で、ようやく掴みかけた希望──それを、
また奪われるわけにはいかない。
やがて、シールケの瞳がぱっと見開かれる。
「いました! 北の方角──村外れの風車小屋近くで身を潜めています……ですが──」
その言葉に、ガッツとイシドロはすぐさま状況を察した。
「チッ……囲まれてるか!」
「なんでそんなとこまで行ったんだよ!」
──また大切なものを奪われるのか
過去の喪失と痛みがガッツの胸を抉る。
今にも消え入りそうなかがり火。
一度目は寸前のところで防ぐことができた。
だが二度目は……
苦悩の末、やがて、それは決意へと姿を変えた。
──必ず取り戻す
片眼に宿る執念の光は、闇を裂く刃そのもの。
黒鉄の巨躯は蜘蛛の残骸を振り払い、踏みしめる大地に刻みつけるように再び動き出した。