FF16×ベルセルク ―生贄の烙印とドミナント― 作:ほろにが
ロザリア北西部。
本来なら幾度も歩いたはずの道程。
フェニックスゲート周辺は、クライヴもジルも何度も足を運んだ馴染み深い土地である。
ゲートの遺跡を出た後、黒々とした森と大地を抜け、南へ下ればイーストプールに至る
……はずだった。
だが、眼下に広がる光景は、二人の記憶とまるで噛み合わない。
そこにあるのは、確かに“水”と“平原”のはずなのに、どれひとつとして見覚えがない。
緑生い茂る草地。
鋭く突き出す岩山。
遠くに見える霞みがかった山々。
自然の風景でありながら、どこか人工めいた歪な配置──
まるで馴染みの風景が、何者かに裏返され、塗り替えられてしまったような奇妙さがあった。
頼みの綱であるトルガルでさえ鼻を利かせられず、森の獣も鳥も気配を消している。
まるで、世界そのものが、彼らの記憶から切り取られた別物へと置き換わってしまったかのようだった。
「……大の大人が、二人して道に迷うとはな」
「トルガルも落ち着かないみたい」
オスカーを追って足を踏み入れたはずだが──
はたして自分たちは今、どこを歩いているのか。
疑念は胸の奥で渦巻き、拭えない不安へと変わっていた。
こんな時にガブがいれば──あてもなく彷徨うなか、クライヴは改めて斥候である彼の存在の大きさを思い知らされていた。
その時、ジルの瞳が驚きに大きく開かれる。
「……クライヴ、あれを!」
指差す先に、草地に開かれた街道をひとり歩む老人の姿。
その傍らには、栗毛の奇妙な獣が寄り添っていた。
痩せた筋肉質の体躯、長い首と脚、鞭のようにしなる尾。
見慣れぬ生き物だが、人を乗せて走るのに適した体つきだ。
「どこをどうみてもチョコボではないな。アンテロープ……にも見えるが」
「違うと思う……でも、あの様子を見る限り、人の移動に使われる獣なのは間違いなさそうね」
戸惑いは消えない。
だが、立ち止まっていても答えは得られない。
ならば、この土地の者に聞くしかない。
「とにかく、あの人にこの辺りの事情を聞いてみましょう。ただ、あまり下手なことは口走らない方がいいわね」
「ああ、警戒されては元も子もない。ひとまず迷い人として慎重に振舞うことにしよう。トルガル、お前も大人しくしていろよ」
トルガルは二人の横で見知らぬ土地の匂いを覚えようと奮闘していたが、
主人の声で地面から鼻を上げ、心得たように低く唸り返した。
クライヴとジルは再度短く頷き合い、老人の方へ向かって真っすぐに歩き出す。
荒野を支配する静寂の中、
彼らの足音だけが、現実と自我をかろうじて繋ぎ止め続けていた。