FF16×ベルセルク ―生贄の烙印とドミナント― 作:ほろにが
シールケの警告を振り切り、
イシドロとパックは居住区の入り口へ先行していた。
半信半疑だったが──なにやら轟音が次第に耳に刺さる。
……ドン。
……ガンッ。
鈍く、湿った衝撃音。
建物の奥で、何かが叩きつけられるような音が、断続的に響いてくる。
「なんだぁ……? いまの音……」
「ドロピー、これ・・・・・・人の声じゃないか?」
その直後、音に混じって、掠れた声が届く。
悲鳴か、呻きか──判別がつかないが、嫌な予感が背筋を走る。
そして、
入り口の境に足を踏み入れた途端、二人はその光景に愕然とした。
「……なんだよ……こいつら……」
壁の外の静けさに反して、町の中はいまや略奪と混迷の渦だった。
人とも獣ともつかぬ者たちが建物を破砕し、中からは助けを呼ぶ悲痛な声が上がっている。
空気は緊迫し、鋭い叫び声と瓦礫の落ちる音が絶えず響いていた。
しばらくしてファルネーゼとセルピコが後に続いて入ってきた。
少年に続いて彼らも思わず足が止まる。
「こ、これは……野盗の軍勢!?」
「……その割には随分顔色が悪いようですが」
その見通し通り、次の瞬間、醜悪な視線が一行を包み込んだ。
身体は瘤と腐敗に侵され、骨の突起が皮膚を破ってのぞき、
獣のような唸り声を漏らしていた。
もはや言葉も通じない、理性を失った「肉の塊」……。
──ただの野盗じゃない
危機を察したファルネーゼはキャスカの手を握り、守るように自分の後ろにつかせた。
「キャスカさん! こっちへ」
ガッツも素早くシールケの前に出て、武器となる義手に手を掛ける。
「元は人間みたいだが……何かに喰われてやがるな」
「ここまでとは……やはり町へ入る前にもう少し様子を見ておくべきでした」
そのとき、
そのなかの一体が「グオォッ」と咆哮を上げ、逆関節の足を蹴り出しながら、
こちらに走り寄ってきた。
「ちょ、ヤダ! こっちくるわよ」
「げっ 気色わりいな!」
慌てふためくイシドロとイバレラの二人。
「ドロピー、いつものアレだアレ」
パックのせっつきに、イシドロが火薬玉を構える──が、その直後。
化け物は突然喉を掻きむしるような絶叫を上げ、崩れ落ちた。
ガッツの投げた投擲用ナイフが、その狂眼を深々と貫いていたのだ。
続けざま、横に並んだセルピコが、広い通路をふさぐ数体をシルフェの剣で瞬く間に両断した。
「は、速ぇ……さ、さすが…」
──瞬時の出来事。
イシドロは尻餅をつきながら感嘆の吐息を漏らす。
二人の剣士は無言でその隙間を抜け、前線へと滑り出た。
「これで通路は確保できました。さて、どうしましょうか?」
「女どもは後ろに下がらせてろ。広い所へでて、まとめて迎え撃つ」
「待ってくださいガッツさん! お分かりかと思いますが…」
「……わかってる。こいつには頼らねぇ」
狂戦士の甲冑。
この鎧の乱用はいまやガッツもその危うさを身に染みて知っている。
身に纏う者は肉体能力が飛躍的に向上する一方で、精神が徐々に蝕まれ、破壊衝動と狂気に囚われてしまう。
霊樹の森での戦いでは、シールケがガッツの精神の深層に入り込む形で、彼の理性を取り戻させた。その恩義は今も忘れていない。
「ゲッ、まだあんなにいやがったのかよ!」
前方にいるイシドロの狼狽えた声に振り向くと、路地の奥や建物の影から、黒く醜悪なお仲間達がぞろぞろと湧き出してくる。さらに奥にも潜んでいるのか、その面という面は、例外なく狂気に濁った眼を光らせていた。
どうやら──ヴリタニスへの道筋を掴む前に、
まずはこの町を“取り戻す”必要がありそうだ。
「さて………おっぱじめるか」
低く呟くと、ガッツは一歩踏み出した。
義手の金具に指を掛け、
直後、黒鉄の矢が放たれる乾いた音が辺り一帯に響いた。