FF16×ベルセルク ―生贄の烙印とドミナント― 作:ほろにが
空を裂くように、四色の光が走った。
応戦の最中、クライヴは思わず動きを止め、空を仰ぐ。
それはまるで、自然の摂理を超えた奇跡の如き天光だった。
陰鬱に沈んでいた町の空気が嘘のように澄みわたり、あたたかな息吹が大気そのものを満たしていく。
「……」
恍惚としたまま、剣先がかすかな音を立てて地を突く。
クライヴはしばし、その神秘の輝きに見入って立ち尽くしていた。
(なんだこの光の幕は? 一体何が起きてる──)
「グッ──!」
「ギェェェ」
突如、横合いから響いてくる呻き声。
クライヴは恍惚からハッと我に返り、音の方へと振り向く。
だがそれは、勢いづいた怒号ではなく、死に際の断末魔だった。
「奴らの身体が……!」
見れば、
賊徒たちはこの天から注ぐ光に呑まれた瞬間、影だけを残して溶けるように消え失せていく。
まるで、醜悪な魂が滅却の光で浄化されるかのように。
「これか……? この光の仕業なのか……!」
その推測通り、敵陣は降り注ぐ光に怯え、明らかに取り乱している。
この異様な光景が奴らの力によるものではないことは、もはや明白だった。
しかし同時に、それはクライヴのよく知るエーテルの充溢とも違う。
……だとすると、これは一体?
──そのとき、
トルガルが空を仰いで高く遠吠えを上げた。
その瞳は光の加護を映すように冴え渡り、筋肉が躍動する。
狼は灰を蹴立て、見違えるほどの俊敏さで跳躍し、異形の喉を裂く。
そして直後、すぐさま反転して別の敵の四肢を粉砕した。
前転運動の遠心力を乗せて牙を叩き込むその動きは、まさに氷狼一族の潜在能力を極限まで引き出したかのようだった。
「トルガル……お前!」
その力の昂りは偶然ではない。
明らかに、この光に触れたことで引き出されたものだ。
血と炎が黒煙とともに舞い上がるなか、クライヴは再び空を仰ぐ。
見上げた先には、未だ四色の光が漂い、町を包んでいた。
──そのなかの一つに、
クライヴは突如身に覚えのある浄化の炎を感じ取った。
「これは……!」
肌に響いてきたのは南方から降り注ぐ聖焔。
それはどこか、己の内に宿る祝福の守護火と呼応しているかのような、神聖な暖かさを帯びていた。
これが奴らを焼き尽くす力の一端なのか、クライヴは再三にわたって畏怖と恍惚に囚われていた。
「まるでオーロラだな……」
それは、ヴァリスゼアを覆っていた原初の楔の闇とは正反対の光景。
かつて呪いに沈んだ空が、今は清らかな輝きに満たされている。
「……なんて暖かな光だ……」
クライヴは、空に揺らめく光の一幕に手をかざし、瞼の裏まで染み込むその輝きを見上げ、感嘆の声を漏らす。
「まさか、こんな奇跡を目にする日がくるとはな」
──その頃、
東方の区画ではジルが凍氷の魔を連ね、迫る賊徒を貫いていた。
白銀の軌跡が戦場に散る血を隠し、舞い上がる粉雪は光を受けて淡く揺れる。
空から突如啓示のように降り注がれた四色の光は、その冷たい輝きをなお一層強めていた。
「この光……もしかして、これのおかげかしら。体の流れが、普段よりも研ぎ澄まされてる……」
ジルは剣を振るいながらも、その壮麗な現象に心を奪われた。
一体、誰が、何のために──。
だが、理屈ではなく、感覚が告げていた。
これは、“大自然の慈しみ”そのものだと。
闘気が澄み、血潮の匂いが遠のく。
内から湧き上がる清冽な波が、身体を包むのを感じた。
四つの光のうち、とりわけ西方から流れこむ水の気配──それは滅びを鎮め、崩壊を静める“鎮静の流れ”。
まるで世界そのものが息づき、彼女の内を洗い清めているかのようだった。
ジルは一度剣を下げ、すぐ傍らにいる怯えた少年に目を向ける。
つい先ほどまで姉の名を呼び、声を震わせていた彼も、
今は空に広がる光に目を奪われ、言葉を失っていた。
ジルはそっと少年の手を包み込み、その視線と共に天の光を仰ぐ。
「大丈夫。こわくない。これはきっと、私たちに害を加えるものじゃないわ」
闇を祓い穢れを浄化し、守られた者に希望を与える──
クライヴとジルの瞳には、その光がまさに、”人が人として生きるための祈り”そのものに映る。
幽世の奥深くに眠る偉大な守護天使の光が、二つの宿命の力と共鳴した瞬間だった。