FF16×ベルセルク ―生贄の烙印とドミナント― 作:ほろにが
「……」
ファルネーゼから喫緊の事情を聞いた瞬間、ガッツはすべてを察した。
わずかに目を細め、背に負った鉄塊の巨剣の柄に手を掛ける。
その一動作だけで、場の空気が一変した。
ファルネーゼの胸を締め付けていた焦りと恐怖が、わずかに解ける。
あの剣が、あの背中が──確かに“希望”を連れてくる。
緊張の糸が切れ、膝が震えそうになるのを必死に堪えた。
(……あいつが苦戦するほどの相手か)
これまで幾多の賊を葬り、住民を解き放ってきた。
それもようやく一段落ついたと思った矢先だ。
まだこの町に“何か”が潜んでいる──ガッツの眼差しが、獣のように鋭く光る。
ふと、ガッツの視線がファルネーゼの肩越しに止まる。
その先で、キャスカが喧嘩腰の目つきでこちらを睨み上げていた。
「うぎぃー!」
今にも噛みついてきそうな声。
あれ以来、キャスカは依然として自分に心を許していない。
だが、ガッツは彼女の強い視線を浴びながらも、その横顔にはかすかな安堵が浮かんでいた。
(お前も、こいつを放っておけなかったんだな)
かつての彼女──戦場で誰よりも仲間を気にかけていた、あの頃の面影がよぎる。
そこに至るまでの道のりを、自分はいまだ踏み越えられない。
胸の奥で、どうしようもない痛みが鈍く軋みながらも、ガッツは再びファルネーゼの方へ視線を向けた。
「よし、行くぞ。……で、方角はどっちだ?」
問われたファルネーゼは、はっとして慌てふためいた。
「あっ……えーっと……(しまった)」
焦燥のあまり、走ってきた方向さえ曖昧だった。
イシドロが頭を抱え、思わず突っ込みを入れる。
「おいおい、頼むぜファルねーちゃん! 場所がわからなきゃ助けようがねーじゃん!」
「ご、ごめんなさい……! 無我夢中で……。あっ、確か……この先の、富裕層の居住区だったはず!」
指さす先は震えて揺れ、角度も定かではない。
その時──
「……うん、遠いけど確かに感じる。ピコりんと、シールケの気配だ」
パックの声が空気を揺らす。
イシドロがそれを聞いた途端、意欲を取り戻し拳を突き上げた。
「よっしゃ! そうと決まりゃ行くっきゃねぇ!」
だが──ガッツは動かない。
ふいに首の後ろへ手をやり、なぞる。
(……なんだ?)
首筋を這うような、鈍く重い痛み。
烙印の刻まれた場所が熱を帯び、次いで鋭く疼いた。
風の中に混じる血と死の匂い──さっきまでの賊どもとは違う。
もっと深く、もっと重い“何か”。
幽世の亡魂か、あるいは使徒か。
どちらにせよ、“悪意”が近くに忍び寄っているのは確かだった。
町の外でシールケが感じていた、あの嫌悪の正体が今、すぐ近くで息を潜めている。
(……今、鉢合わせたら厄介だ)
──ぐずぐずしている暇はない。
ガッツは低く息を吐き、黒い外套の裾を翻す。
「……行くぞ。走れ。間に合わなくなる前にな」