FF16×ベルセルク ―生贄の烙印とドミナント― 作:ほろにが
ドミナントとベアラー──神が人類に与えし罰。
あの光輝と暗転を見て以来、己の内に宿る“力”が強く疼く。
これは俺たちに対する罰なのか。
それとも、俺たちは戦いや災厄とは異なる、
何かとてつもなく大きな“流れ”の中に巻き込まれてしまったのか。
ただ確かなことがひとつある。
これは、アルテマに幾度となく見せられたあの閉ざされた箱庭とは決定的に異なるということ。
風が頬を打つ感触、大地のざらつき、鼻腔を刺す血の匂い──
どれも現実そのものであり、確かな“生”を感じさせる。
何かに導かれ──いや、引きずり込まれたと言うべきか。
世界の果てとしか思えぬ場所に、俺たちは立っていた。
そして、肝心のオスカーの行方は──
クライヴは改めてオスカーの剣に目を落とす。
刀身を伝う太陽光が、その瞳に反射していた。
その輝きは、不意に思い起こさせる。
共に戦いたいと願った、あの時の、あまりにも真っ直ぐな眼差しを。
(オスカー……)
名を心の中で呟いたその瞬間、それに呼応するかのように、
見知らぬ風に乗ったかすかな声が耳元を撫でた。
「───」
息が止まる。
(いまのは…)
自分の名を呼ぶ声。
一瞬だが、確かに聞こえた。
だが、その声はすぐに草木を揺らす風音とともにかき消されてしまった。
幻聴か、空耳か、それとも地の底から湧き出る死者の囁きか分からぬままに。
次の瞬間、クライヴは剣の光を見据え、確信を携えてジルの方へ向いた。
「ジル……」
名を呼ばれ、ジルは即座に振り向く。
だがその眼差しは鋭く、未だ緊張を解いてはいない。
「オスカーだ。……今、確かにあいつの声が聞こえた」
「声……?」
一歩踏み出し、ジルは問い返す。
「ああ。間違いない」
クライヴは右腕を開き、あの空間で感じたものをそのまま言葉にした。
「俺はあの幻惑の狭間で、あいつの気配を掴んだんだ。触れられるほど近くに……だが──」
だが、手が届かなかった。
それでも、あいつはあそこにいた。消え入りそうな微睡みの中で確かに、その片鱗を見せていた。
「きっと……あいつも、俺の存在に気づいていたはずだ」
一瞬の間を置き、クライヴは空を仰ぐ。
「そして──オスカーも、この透き通るような蒼い空を、この大地のどこかで見ている。俺たちと同じ風を感じている……そんな気がするんだ」
夢にまで見た、何処までも広がる美しい青空。
ジルは何も言わず、クライヴの隣に並び立ち、同じように顔を上げてその蒼穹を仰いだ。
ロザリアでも、自治領でも、そして──あの割れた海の底でさえ。
彼女はいつも、クライヴのその“確信”を信じてきた。
それは今も、決して揺るがない。
願わくば、オスカーも今この瞬間に、この空を見上げている──そうであってほしい。
(けれど……)
その視線はゆっくりと空から地面へ。
もし、ここが罪を背負った者を選別し、喰らうための最果てだとしたら。
オスカーは、ただその因果に、巻き込まれただけなのだとしたら。
胸の奥に沈殿する記憶。
初めて召喚獣の力に目覚めた、あの瞬間の罪。
ジルの心には、まだ消えぬ黒い不安が澱のように広がっていた。
──直後
トルガルが鋭く吠え立てた。
近くの異変に気づき、二人に合図を送る。
崖下に目をやると、立ち上る黒煙が風に流れながら空を曇らせている。
耳を澄ませば、かすかに悲鳴と崩落の音が混じって聞こえた。
「あれは!?」
焦げ付く匂い、建物が壊れる音、助けを呼ぶ叫び声は、
確実に二人の感覚を貫いた。
──あれは人の住処だ。
この地で初めて目にする“生”の兆し。
そして、ようやく浮かび上がるひとつの可能性。
「オスカーが巻き込まれているかもしれん。行ってみよう!」
迷いはなかった。
ここがどこであろうと構わない。
幻でも、地獄でも、因果の果てでもいい。
仲間を見つけ出す──それだけが、揺るがぬ現実だ。
ジルも一度迷いを断ち切り、クライヴとトルガルの後を追う。
三人は断崖を駆け下り、
見知らぬ異界の深淵へと、一歩、また一歩と、踏み入っていった。
まるで──見えざる手によって定められていたかのように。