異世界の辺境でサキュバスにTS転生した。歪んだ愛を向けてくる姉から貞操と尊厳を守るには、魔王となって世界を統べるしかない。   作:パッタリ

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84話 堕落のゆりかご、あるいは甘き支配の一日

 ルカとの決闘を一週間後に控えた、ある日のこと。

 この日から俺の生活は完全に、お姉さん無しでは成立しない異常なものへと作り変えられていった。

 まずは朝。

 温かい日差しよりも先に、頭を優しく撫でる柔らかい手の感触で俺は目を覚ました。

 

 「んぅ……」

 「おはよう、私の可愛いミア」

 

 甘い声と共に、唇にチュッと、目覚めの軽いキスが落とされる。

 ベッドの上で身を起こす間もなく、お姉さんは俺の体を抱き寄せた。朝食の時間だ。

 だが、食卓に並ぶことはない。お姉さんが自身の口に含み、何度も咀嚼して柔らかくした果実やパンを、そのまま口移しで俺の口内へと流し込んでくるのだ。

 

 「んちゅ……こくっ……ぁ……」

 

 小鳥への給餌のような、究極の依存と服従を強いる食事。

 前世の男としての感覚が異常だと警告を鳴らすのに、サキュバスとしての本能は、お姉さんの唾液と混ざり合ったそれを飲み込むたびに、下腹部にジンジンとした熱を溜め込んでいく。

 

 (やばい、ムラムラしてくる……)

 

 しかし、それを口に出せばあとでどんな恐ろしいお仕置き、もとい快楽責めが待っているかわからない。

 俺は必死に表情を取り繕い、黙って咀嚼物を受け入れ続けた。

 だが、高位のサキュバスであるお姉さんの目を誤魔化せるはずがなかった。

 

 「……ふふ。ミア、なんだか体が熱いわね?」

 「なっ、気のせいだ……んんっ!?」

 

 膨らみのある尻尾の先端が、俺の服の隙間に滑り込み、背中や太ももを撫で回し始めた。

 そして、俺がビクッと大きく肩を跳ねさせた、敏感な脇腹や腰のくぼみを、的確に見つけ出しては重点的に責め立ててくる。

 

 「や、やめ……っ!」

 

 俺が抵抗しようともがくと、お姉さんは俺の体を逃げ場がないほどぎゅっと強く抱きしめた。

 

 「暴れちゃダメよ。……ほら、おとなしくして」

 

 次の瞬間、お姉さんの放った魔力が、目に見えない代わりの手となって俺の体内へと浸透してきた。

 

 「あっ、あぁぁ……!? な、なにこれ……っ、お腹のなか、くすぐられ……っ♡」

 

 物理的な接触ではない。魔力そのものが内臓を直接くすぐり、撫で上げ、脳髄を焼き切るような快楽を与えてくる。

 だが、お姉さんは最も熱を帯びている子宮付近には徹底的に触れようとしない。周囲だけを執拗に焦らし続け、俺は朝から狂おしいほどの欲求不満に悶えさせられた。

 

  ◇◇◇

 

 昼食の時間になっても、俺の堕落は続いた。

 

 「はい、あーん」

 

 今度は口移しではなくフォークだったが、お姉さんが一口サイズに切り分けた肉や野菜を、俺の口へと運んでくれる形だ。

 

 「……あーん、もぐ、もぐ」

 

 俺は一切体を動かすことなく、ただ口を開けてもぐもぐと咀嚼するだけ。

 

 (……楽だ。あまりにも、楽すぎる)

 

 自分でナイフとフォークを持つのすら面倒に感じてしまうほどの、恐ろしいほどの心地よさ。生きるための行動すべてをお姉さんに委ねることに、何の疑問も抱かなくなりつつあった。

 そして昼食後。

 俺はお姉さんにすっぽりと包み込まれるようにして、大きなソファーの上でお昼寝の時間を迎えていた。

 顔のすぐ横には、お姉さんの長く黒い髪がある。そこから漂う、どうしようもなく甘くて良い匂い。

 

 (嗅ぎたい……)

 

 俺が吸い寄せられるように身を起こそうとすると、お姉さんはにっこりと微笑み、自分から俺の鼻先へと髪を近づけて嗅がせてくれた。

 

 「すーっ……はぁ……♡」

 

 肺いっぱいにその香りを吸い込むだけで、じんわりと体の奥底から蕩けるような気持ちよさが広がっていく。完全にフェロモンの中毒者だ。

 次は、そのまま吸い込まれるように、お姉さんの豊満な胸の谷間に顔を埋めた。

 

 「んぅ……」

 

 そこからは、髪よりもさらに甘くて濃密な、サキュバス特有の体臭が香ってきた。嗅ぎ続ければ完全に理性が溶けてしまうとわかっているのに、ずっとこのまま嗅いでいたくなる。

 ふと、俺の胸の奥底で、どろどろとした独占欲が頭をもたげた。

 

 (お姉さんは、俺のものだ……)

 

 俺は無意識のうちに、谷間の柔らかい肌に唇を押し当て、ちゅぅっ……と強く吸いつき、赤いキスマークを刻み込んでいた。自分の所有物だと明確に示すために。

 

 「あら……ふふ、独占欲が強いのね、ミアは」

 

 けれどお姉さんは怒るどころか、嬉しそうに俺の頭を撫でた。

 

 「……もっと、抱きしめて」

 

 俺が素直にお願いすると、お姉さんの温かくて柔らかい肉体が、体をほどよく圧迫するように強く抱きしめ返してくれた。

 子宮を満たすような安心感に包まれ、俺は抗うことなく深い眠りへと落ちていった。

 

  ◇◇◇

 

 次に目を覚ますと、窓の外はすでに夕方に入りかけていた。

 

 「起きた? お寝坊さんね」

 

 俺はお姫様抱っこをされたまま、ソファーから自室のベッドへと運ばれていく。

 ベッドに寝かされると同時に、お姉さんの黒い尻尾が、俺の尻尾にするりと絡みついてくる。

 

 「あ、んっ……」

 

 声にならない喘ぎが漏れる。

 お姉さんは俺の敏感な場所を的確に撫で回し、喘ぎ声が出るか出ないかのギリギリのラインで寸止めしてくるのだ。

 

 「はぁっ、はぁ……っ」

 

 焦らされ続け、下腹部がどうにかなりそうだ。物足りなさに俺が涙目を向けると、お姉さんはそれを見越していたかのように、耳元で悪魔のささやきを落とした。

 

 「……ねえ、ミア。ちょっと危ないけど、もっと、もーっと気持ちよくなれることがあるとしたら……する?」

 (危ない……?)

 

 理性が警鐘を鳴らすが、限界まで焦らされた体は快楽を求めて首を縦に振ってしまっていた。

 俺が頷くと、お姉さんは自らの手のひらに、高密度に圧縮された魔力の塊を浮かび上がらせた。そして、それを手の形に変えると──俺の下腹部へと、文字通り沈み込ませたのだ。

 

 「……っ!?」

 

 物理的な接触はない。一見するとただ抱きしめられているだけ。

 しかし、俺の体内……朝は絶対に触れられなかった子宮を、魔力の手が直接掴み、こねくり回し、直接的な快楽を脳髄へと叩き込んできた。

 

 「あ、ひぃ、あぁぁぁ……っ♡♡」

 

 声にならない絶叫。一瞬で瞳の焦点が溶け落ち、俺の口はだらしなく半開きになる。体中から、むせ返るような甘ったるい発情した匂いが広がる。

 

 「ふふ……完璧に仕上がってきたわね」

 

 朦朧とする視界の中で、お姉さんが妖艶に微笑む。

 そして、半開きになった俺の口に深くキスをし、快楽と共に俺の体内から魔力を一気に吸い上げ始めた。

 

 「んふ……っ」

 (あ、あぁ……魂が、舐められてる……っ)

 

 魔力が奪われるたびに、魂そのものを撫で回されるような未知の快感に全身が震える。お姉さんの腕に身を預けなければ、文字通り倒れて気を失ってしまいそうだった。

 極限の快楽と虚脱感の中、お姉さんの声が、甘い猛毒のように耳を震わせた。

 

 「……ねえ、ミア。強いサキュバスって、男の人のあれを、魔力で生やせるのよ?」

 「え……っ」

 「それでね。もし……私にあれが生えて、それで直接、ミアの子宮をめちゃくちゃにして、気持ちよくさせることができるとしたら……どうする?」

 

 コツッ、コツッ。

 

 言うと同時に、お姉さんの股間が、俺の股間に軽く打ちつけられた。

 

 (……っ!?)

 

 そこにあるはずのない、硬くて熱い存在の気配。

 想像してしまった。もし、それを受け入れたら。きっと、今までの比じゃないくらい、狂うほど気持ちよくて。

 そして、俺の男としての自我は、文字通り完全に終わる。

 もし最凶の副魔王であるお姉さんに貫かれたら、自分はどれだけ壊されてしまうのか。

 恐怖と同時に、サキュバスとしての本能が、激しくドキドキと心臓を打ち鳴らしていた。

 

 「あ……ぅ……」

 

 快楽の沼に顔まで浸かりながら、俺は最後の、本当に最後の一欠片の理性を振り絞った。

 

 「……や、だ……。そ、れは……だめ……っ」

 

 呂律が回らない口で、必死に首を横に振って断る。

 その言葉を聞いたお姉さんは、怒るどころか、この世の何よりも美しい慈愛の笑みを浮かべた。

 

 「……その強情さ。力ずくで粉々に叩き割って、わんわん泣かせたいわ」

 

 お姉さんの指が、俺の涙ぐんだ目尻を優しく拭う。

 

 「でも、我慢してあげる。……私の、大事な魔王様♡」

 

 チュッと額に落とされた優しいキス。

 俺は、お姉さんの底なしの愛情と狂気の檻の中で、完全に逃げ場を失っていることを痛感しながら、再び甘い微睡みへと沈んでいくのだった。

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