ストーム1、絶望まみれのリョナエ◯ゲの世界で全力の抵抗を試みる模様 作:糸をなんとかしろ!
原作の性質上、猟奇的だったりアレな描写があります。
加えてEDF6とSiNiSistarの致命的なネタバレも平気で入ってます。
これからこの2本を事前情報抜きで遊びたい方。そしてエログロ苦手な方は退却推奨。
我々はやり過ぎたのかもしれない。
共犯者もとい、プロフェッサーという男はあの時そう言った。
我々は度重なるタイムリープを繰り返した。
敵もタイムスリップを繰り返した。
何度も何度も何度も、時間の本来の流れに逆らい続けた。
あるべき流れを捻じ曲げ続けたのだ。
だから、いずれ破綻が起きるのは目に見えていた、と。
全ての発端は地球外から突如現れた
彼らは人間の数倍もある体格を持った侵略生物や怪生物。そして兵器を用いて人類の殲滅を測った。
その暴虐に対し人類はEDF、全地球防衛機構軍がこれに対抗した。
だが連中は切り札を用意していた。
タイムマシンだ。
彼らは大きな損害を被るたびにタイムマシンを用いて『修正』を試みた。
未来を知った者は過去を変える事が出来る。相手の手札を全て知った上でババ抜きをしているようなものだ。
今思えば酷いイカサマだ。
そんなイカサマを重ねていく彼らに対してある男2名はそれに便乗し、タイムマシンを暴走させて自らを過去に送り込む事故を意図的に引き起こし続けた。
起こして、
起こして、
起こして、
少しでも彼らのイカサマを邪魔し続けた。
今に至るまでどれだけの死を、絶望を見てきたかは分からない。
プロフェッサーも、自らが未来の知識を保有していることを理解されず、妻子の無惨な死に様を何度も目の当たりにしてきた。
ストーム1も同じだ。故郷が焼かれ、友の死を何度も目の当たりにしてきた。
人類の生き残りが数百人しかいないまま、地下で怯えて過ごすこともあった。
地上は怪物の巣となり、青空は失われ、グロテスクな機械が不気味な煙を吐き出し続ける。
だからストーム1もプロフェッサーも、手段を選ぶことを捨てた。
ストーム1はこれから起きる死や歴史を腕尽くで食い止め、プロフェッサーはプライマーの誕生のきっかけとなる場所に汚染物質を叩き込んだ。
当然、そのような無茶をすればタイムパラドックスも起きる。
本来プライマーから端を発した事件だ。
プロフェッサーの暴挙はプライマーがいなければ成立しない。
しかしプライマーの種となる場所は汚染物質で汚染されて彼らが生まれる未来が絶たれている。
プライマーのイカサマありきで存在していたストーム1やプロフェッサーも存在が消えかねない。
だから時の天秤は、審判を下した。
プライマーという存在を消し去る事によって全ての辻褄を無理やり合わせようとした。
その結果、天秤の支柱がきっと折れてしまったのだろう。
数年に渡る戦いを何度も何度も何度も何度も繰り返し続けた。その袋小路から抜け出した時はストーム1も全てをやり切った気分だった。
全てが終わったことに対する虚脱感を達成感で抗うように、曇天から地に落ちていく『プライマー』のその蛇のようなシルエットでありながら、街一つ二つを横断するくらいに長く、ビルを軽々と噛み砕くほどの巨体が死んでいくのを見上げながらストーム1は泣くように吼える。
「──────────ッ!」
『時間は人類を選んだ。未来は決まった。プライマーはいない。これからどう歩んでいくのか。人類は未来を知った上で、決めることができる。君がすべてを変えた。言わせてくれ。ありがとう』
『私からも言わせてくれ。感謝する』
『私からも。感謝を』
『本当に、本当に、ありがとう! あなたが……あなたが私を救ってくれた!』
プロフェッサー並びに本部と少佐ら上層部連中、オペレーターの通信を横目に、時の天秤に存在を否定されて霞となって雲散していくプライマーを見届ける。
ようやく、ああ。ようやく終わったのだ。
だが──
「我々はやり過ぎたのかもしれない」
これは地球種の天敵たるプライマーを存在ごと消し去った事に対する事への懺悔などでは決してない。
ただ推測のみを述べただけ。
独りごちるプロフェッサーの横で、ストーム1はぼんやりと頭を覆っていたヘルメットを外しながらどこか宙を見上げる。
夜空に聳える、山。そして城。
否、これは聖堂だ。世界各地で転戦していた地獄のような記憶がそう訂正する。
喧騒から離れきり、電飾すら見当たらぬ月明かりに照らされた夜空に虫の声と来れば中々オツなものなのだろうが、そんな生優しい空気ではなかった。
冷たい空気が頬を刺す。
ナイフの刀身で頬を撫でられているような。そんな気分だ。
この状況をどう説明すればいいのかは分からない。
ただ確かなのは、つい先程まで自分たちはあの『プライマーそのもの』と戦っていた。そして勝利を収めた。
そう、勝利をしたはずだった。
勝利を確信した時、気付けばそこにいた。
まるでお前の居場所は元からここだったのだと言わんばかりに。
さっきまであったはずの見慣れたビルの姿も、足元から前後に伸び続ける道路の姿もない。
頭が理解を拒む。
ここはどこだ、と。
おれは夢を見ているんじゃないか、と。
頬を引っ張ってみる。
特に何も起こらなかった。ただ、じんと軽い熱が片頬に広がるだけだった。
「人工衛星とのリンクが出来ない。そして端末が圏外となったのは約6時間前だ」
つまりGPSが役に立たない鉄屑と化した訳だ。
プロフェッサーが端末をストーム1に見せる。右上に立つはずのアンテナのアイコンが見事なまでに一つも立っちゃいない。
──どこかに飛ばされたのか?
市街地からこんな日本にあるかどうかすら怪しい聖堂にいるというこの状況をどう説明すればいい。
最終的にプロフェッサーの「我々はやり過ぎたのかもしれない」という言葉に帰結する訳だが。
あんな盛大なタイムパラドックスを起こせばその渦中の人間の身に何が起こるか分かったものでは無い。
「なんだあれ……」
あの聖堂のてっぺんには名状し難いナニカが絡みついていた。プライマーの新種の怪物か。それともまた違うナニカなのか。
あれを凝視すればするほど心の何かがすり減っていくような気分だ。気づいた時には既にそいつから目を背けていた。
それはプロフェッサーも同じだったらしく、聖堂の立つ山の麓にある森と奥にある村のような廃墟に視線を変えていた。
「──あの」
「……?」
知らない女の声だった。
振り向けばストーム1は少しギョッとする。妙に露出の多い衣装と上半分が外気に晒された大きな胸元。
これが修道服のようなものだと理解するのに少しばかりの時間を要した。
口悪く言ってしまえば痴女一歩手前だ。
黒く長い髪を二つに分けて三つ編みにまとめている。
陶器のように白く艶やかな肌、ブラウンの大きな瞳がストーム1とプロフェッサーの間の抜けた顔を映していた。
「差し出がましいようですが、ここから離れた方がいいですよ」
「……どうして?」
シスターは険しい顔持ちでそう言うが、それはこっちの台詞だとストーム1は心の中でぼやく。
そんな露出高い修道服もどきの格好で夜道に出歩くなぞ正気の沙汰ではない。
……なんて言葉に出す程無遠慮でもなく。やっとこさ出た言葉がそんな、「どうして」というたった4文字の問いかけだった。
「ここは廃都、ケッサリア。突如現れた魔物によって滅ぼされたのです」
「……まもの?」
首を傾げるストーム1にシスターは嗤う事はなく、目を覗き込むようにして距離を詰めた。
それにストーム1は半歩後ずさりした。
「ご存知ないのですね。人ではない、ナニカに溢れ徐々にこの世に溢れ出そうとしているのです。だから……」
「プライマーか……?」
これまでの地獄はなんだったのか。大元倒したにも関わらず現れる怪物にストーム1は舌打ちしたい衝動を必死に心の奥で宥めながらその仇敵の名を口にした。だが──
「プライ……何?」
「……?」
「…………?」
「ほら、宇宙人の……」
「う……ちゅー?」
ストーム1もシスターも、お互いを見合わせたまま頭上にクエスチョンマークを浮かべながら首を傾げた。
──あれ……会話通じてない?
「…………見たところ貴方達は遠いどこかからやってきた旅の方なのでしょう。……貴方達の旅路に幸多からん事を」
──あ、俺たちのことめんどくさい人だと思ったなこの人。
話を切り上げたあたり気が狂った可哀想な人だと思ったのかもしれない。
神にでも祈るように、いや、実際祈っているのだろう。両手を握り合わせる彼女にストーム1は困惑のあまりつっけんどんな声色で返した。
「あっはい。……で、あんたは?」
「……私が魔物を討伐します」
明らかに魔物とやらと闘いそうな格好をしているのはストーム1の方だ。そんな彼をお構いなしでそれでも大真面目にそのシスターはそう言った。
「私、教会から派遣されたシスターですから」
少し、照れ臭そうに。彼女はそう告げる。嘘を言っている、もしくはストーム1たちをおちょくっている訳でもないらしい。
とはいえ、今のストーム1とプロフェッサーには鬱蒼とした森の中に消えていく彼女を止める言葉を持ち合わせてなどいなかった。
ややあってストーム1は口を開いた。
「……なぁ、プロフェッサーさんよ。
「あったかもしれない。多分、おそらく、きっと」
「…………」
あまりにも不明瞭かつ少し現実逃避気味に呟くプロフェッサーにストーム1は「マジか……」とこぼす。
よく別行動を取る事はあったがその際に一体何を見てきたんだこの男は。
プロフェッサーは一つ深呼吸してから、ストーム1に向き直った。
「……まずは状況を整理しよう。プライマーとの戦闘終了後、気付けば我々は見知らぬ地にいた。他の兵士の姿は無い事から我々だけ飛ばされたと見るべきだろう」
装備はストーム1が携行している
次に背中に背負ったスナイパーライフル、ライサンダーだ。
完全に最終決戦で持ち込んだ装備がそのまま持ち越されている状態と言ってもいい。
プロフェッサーは続ける。
「ここで確認だが、ケッサリアという地名を君は聞いた事はあるか」
「知らん。ガ◯ダムでしか聞いた事がない。サブフライトシステムだろう?」
「…………ガン◯ムは兎も角、類似する名前がインドに存在している。だがあんな聖堂があるなど聞いた事がない」
プロフェッサーの博識ぶりにはストーム1は舌を巻く。
世界の地理やら何やらにそこまで明るくないストーム1でも日本にケッサリアなる地名があるかと言われたら「それはない」と言える。ただでさえ横文字の地名なぞ珍しいのにそんな名前ならどこかで聞いた事があるはずだ。
加えて聖堂は散在しているがこんな大きなものは見た事がない。
「少なくともここは我々の預かり知らぬ土地である事は確かだ。露出の多い修道女がマモノなる怪物を倒すというあまりにもファンタジーじみた話は少なくともあの長い旅路において聞いた事はない。──どちらにせよ、我々の戦いはまだ終わっていないと見るべきだろう」
酷いタイムパラドックスを起こしたのだ。何が起きたっておかしくはない。覚悟はストーム1もプロフェッサーもとうにしている。
絶望はするな。
目を背けたくなるような異形が聖堂のてっぺんに絡みついている。あれがあの女の言うように今起きている歪みの原因ならば。
「あれが
ここで何もせずに手をこまねいているのは愚策。それにストーム1は口には出さないが先んじて森の奥に消えた女が気掛かりだ。
「君ならそう言うだろうと思っていた。では彼女を追うとしよう」
Q&A
Q:結局このストーム1なんなの?
A:想像にお任せします。確かなのはレンジャーであると言うことくらい。
Q:ケッサリアに類似する名前って何?
A:ケサリアのこと。
おまけ
ストーム1を知っているか。
そう問えばEDFの一員ならば誰もが首を縦に振るだろう。絶望的な盤面を悉くひっくり返し、
誰かが言う。ストーム1に倣えと。
誰かが言う。出来るかそんなもん。
誰かが言う。ストーム1についていけば生き残れると。
概念だけならばあの男は希望であり絶望だ。
知らない者は誰一人としていない。
けれども、ストーム1はどんな人?
と、質問した場合は話が別だ。
誰かが言う。模範的
誰かが言う。決断力に欠ける男だと。
誰かが言う。奴は女性で
誰かが言う。高所恐怖症の関西人だと。
誰かが言う。奴は
誰かが言う。彼は
誰かが言う。あいつは多弁で冗談を好むと。
誰かが言う。奴は無口だと。
誰かが言う。とある技術士官の息子だと。
誰も彼もが言う事がバラバラだ。
時に彼の実在を疑うものもいる。あれはEDF本部の出したプロパガンダだと。
だが事実として尋常ならざる戦果を上げた誰かがこの世のどこかに存在している事。ただそれだけは確かなのだ。
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31ページ目「コラム:ストーム1とは何だったのか」より抜粋