ストーム1、絶望まみれのリョナエ◯ゲの世界で全力の抵抗を試みる模様   作:糸をなんとかしろ!

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 Q:シスターが死すたーってかwwww
 A:某謎生物「しね」


2 introduction2/シスター、死す

 

 森の中は酷くじめっとしていた。

 地面も粘つくような土が、離れる足にまとわり付いているようで足取りは重く。

 シスターの姿はいまだに見つからない。

 

 暗がりをスレイドのフラッシュライトで照らしながら木々を掻き分けるように進む。

 先行するストーム1。その後ろをついていくプロフェッサー。プロフェッサーは丸腰だったので申し訳程度に副兵装(サイドアーム)の拳銃をストーム1から渡されたがあくまで護身用だ。それにこの手の荒事は得意ではないのはストーム1自身が。そして何よりプロフェッサーがよく知っていた。

 

 つまり、今ここで真っ当に戦えるのはストーム1だけだ。

 

「どこからマモノとやらが来てもおかしくはない。油断はするなよ」

 

 プロフェッサーの忠告は尤もだった。

 敵の位置を知らせるレーダーは機能しておらず、自らの目と耳と鼻が敵の位置を割り出すしかない今、この暗がりは脅威だ。

 

 そしてその危惧が杞憂ではなかった事をすぐに思い知ることとなる。

 

 がさり。

 誰かが草木を掻き分ける音がした。

 ストーム1は咄嗟にスレイドの銃口を音のした方に向け、プロフェッサーを背後に移動させる。

 

 フラッシュライトの白い光が照らしたもの。それは──人だった。

 あのシスターではない。見知らぬ男だった。

 

 毛髪は禿げ上がり、顔は痩せこけ、衣服は10年間洗濯も修繕もせず着続けたような汚れ、眼窩に収められたはずの目玉は白目共々黒く濁り切っていた。

 ゆらり、ゆらりと幽鬼のようにこちらに向かって歩を進めるたびにどこか、自分の内臓がひくつくような気がした。

 

 

 ──なんだ、この臭いは

 

 

 男が近寄るたびに内臓の痙攣が酷くなっていく。これは酷い異臭を嗅がされた時の拒否反応じみたものであることに気付いた時には既にストーム1は声を上げていた。

 

「止まれ!」

 

 叫んでも向こうは歩みを止めない。

 この拒否反応の正体をようやく理解した時には既に引き金を引いていた。

 この臭いの正体は──腐臭だ。

 

 ゾンビ。

 ストーム1の脳内でやっとこさリンクしたその単語は形となってストーム1に迫る。威嚇射撃を無視して大口を開ける。

 粘ついた唾液が糸を引き、腐臭がぶわっと獲物たる生者の顔を飲み込む。

 

「このっ……」

 

 スレイドの銃身を盾にしてゾンビの噛みつきを防ぎつつ、蹴り剥がす。

 

「警告はしたぞ!」

 

 距離を取った次の瞬間、引き金を引くとスレイドの弾丸が全てゾンビの身体に、脚に、頭に、全て突き刺さる。

 血は──出なかった。

 どちゃっ、と湿った音がした。うつ伏せで地面とキスしたまま、ぴくん、ぴくん、と小さく動けども体を動かす力は最早残っていないらしい。

 

「これが件のマモノという奴か」

 

 プロフェッサーがゾンビの腐臭もお構い無しに倒れたゾンビに近寄り、その亡骸(とっくに亡骸だったろうが)をひっくり返してから観察する。

 なお、ひっくり返した手はぶんぶんと手を振って汚れを払っていた。

 

 ──触らなきゃいいのに……

 

 ……話を戻そう。対人間の戦闘はこの永い人生の中で無かったわけではない。プライマーに敗北した未来においてヤケになった暴徒やテロリストの鎮圧をやった事がある。とはいえその中でゾンビの始末までやった覚えなどない。

 プライマーもそんな悪趣味な真似はしていなかった──はずだ。

 

「とっくに死んでいる身体を何かが無理やり動かしていると見える」

 

 故にゾンビ。

 死体がこの森を練り歩き、迷い込んだ獲物を喰らいきっと仲間を増やしていくのだろう。

 とんだB級映画だ。

 

「ゾンビ相手なぞゲームでしかやった事ないぞ。……やっぱりプライマーじゃないだろマモノって奴は」

 

「だが、君のスレイドで撃ち抜く事ができる程度の強さだ。何とかなるだろう」

 

 プロフェッサーの言う事はもっともとはいえスレイドで殺せないような奴が馬鹿みたいに居るのなら諦めるまである。

 爆撃機程の殲滅力はないにせよ、プロフェッサー謹製新型アサルトライフルの最高傑作だ。倒せなければ困るというもの。ただ──

 

「弾薬が足りれば、な」

 

 数時間前までプライマーそのものとの戦闘で消耗している手前、それでも余裕がないのが実情だった。弾薬の補給手段が事実上断たれている以上はなおのこと。

 可能であればあれが最後の個体であって欲しいと願えどもどうせそんな上手くは行くまい。世の中嫌な予感ほど当たると言うものだ。

 

「……ぁ…………ぁ」

 

 声が、した。声というよりは呻き声めいている。それも人の──

 プロフェッサーとストーム1は互いを見合わせる。──声の主はお前じゃあるまいな、と無言の確認を済ませて次に足元で転がっているゾンビの亡骸(元から亡骸だろう)を見る。

 こいつでもない。つま先でつついてみる。

 返事はない。ただのしかばねと化したらしい。

 

 なら────

 

 耳を澄ませる。音源はここではないどこか。

 声のした方をストーム1が飛び出すように走り出す。

 足元に絡みつく伸びに伸びまくった植物を勢いよく蹴り飛ばしながら進んだ先にあるもの──それは

 

 

「ぁ……ぁ……」

 

 5体程のゾンビたち。

 その一体に羽交い締めにされた見覚えのある顔──あのシスターだ。

 ひどく黒々とした血に塗れ、顔は蒼白。

 

 あの露出の多い修道服はところどころ破け、その大きな乳房が外気にさらされていた。

 下半身は──即、ストーム1は目を逸らした。

 ゾンビの腰の動きに合わせて、カク、カクとシスターの体が揺れる。

 

 率直に言おう。

 彼女はゾンビたちに犯されていた。首元は噛みちぎられ赤い肉がむきだしとなっており、その虚な目で()()()()()()()()

 

 失敗だった。

 間髪入れずについていくべきだった。

 シスターから離れていた。ゾンビを手始めにスレイドで撃ち抜き無力化。

 

 シスターに組み付いていたゾンビはそのままドロップキックで吹っ飛ばしてから、死に体のシスターを後追いでやってきたプロフェッサーに押し付けてから、念入りに顔面と股間目掛けてスレイドの貫通弾を叩き込んだ。

 

 ──ゾンビの分際でご立派なもの持ちやがって。くたばってもなおもお盛んってか

 

 死後硬直という奴か。……多分違うだろうが。

 ゾンビを殲滅した所で、ストーム1は銃を下ろす。

 そして倒れたシスターの方を向く。

 

 ひどいものだった。

 体の節々が黒ずみ、良くて内出血、悪くて壊死しかけている。

 服装はともかくその記憶にあったあの端正な顔立ちは腫れ上がり歪んでいる。

 下半身に至ってはその穢れに塗れており、最早見るに絶えない。

 

 ゾンビになりかけた女だった肉塊がストーム1を見たその時、へらりと笑い──息絶えた。

 

 ──くそっ

 

 リバーサーをぶち込んでも、救急車両にぶち込んでも最早助かる手立ては無い。そのゾンビに()()()()()()貪られ犯された彼女には、もう──

 

 ──ん? 長きに……? 

 

「妙だ」

 

 真っ先に違和感に声を上げたのはプロフェッサーだった。

 

「彼女が我々の先に森に入ったのは長くても数分程度先だ。なのに何故こうして体の節々が壊死しかけている? それに見てくれ」

 

 シスターの凄惨な死体には意にも介さず、半ば布切れと化した服に染みついた血に指を滑らせた。しかし指先は赤くなく、人肌の色を保っていた。

 

「……乾いている」

 

 ストーム1は自ら発したその言葉が震えている事に気付くと口を噤む。なんとなくあった違和感が形となってストーム1の思考に浮かび上がり、理解したはずなのに理解から遠のくような感覚を覚えた。

 

 だった数分で布に付着した血が乾いている。

 

「何がどうなって……」

 

 理解不能、りかいふのう、リカイフノウ、rikaihunou、incomprehensible。

 ストーム1の脳内が壊れた人工知能の如くエラーを起こす。

 そもそもおかしいのだ。たった数分の差でここまでやられるなんて話があり得るのか。

 

 知人のEDFの隊員の中にはその手のソムリエがいたが、そいつがよく言っていた出会って即以下略という奴か。いやいやそれにしたって速すぎる。

 

 何があった? 時間でもおかしくなっているのか? 夢でも見ているのか? 

 

 ──おれは一体何を見せられているんだ? 

 

「あの────」

 

「あ?!?」

 

 完全にドツボにハマり思考の渦に閉じ込められていた所で誰かに呼ばれた気がした。

 今ちょっと取り込み中なんでほっといてくれませんかねぇ! と言わんばかりに半ギレ気味に振り返る。

 

「あれ……?」

 

 振り向くとそこにはあの()()()()がいた。

 傷は一つもない。それはそれとして八つ当たり気味にガンを飛ばされたせいでちょっと怯えているようにも見えた。

 

 ──さっきまで俺は何を見ていた? 

 

 咄嗟にさっきまで見ていたあの凄惨な亡骸の事を脳裏に浮かべながらそちらの方に視線を戻す。

 しかし──そこには何も無かった。

 

 そう、何も。

 撒き散らされた彼女の血も、ゾンビの体液も、そして半ゾンビ化していた彼女の亡骸も。

 そうはならんやろ、と叫ぶ理性となっとるやろがいと吠える理性。

 どっちも理性だ。今の思考の中に本能とかそういうものはどこにも介在していないはずだ。

 理解不能、りかいふのう、リカイフノウ、rikaihunou、incomprehensible、难以理解、unverständlich、nekomprenebla。

 

「……ばかな」

 

 同じものを見たらしく絶句しているプロフェッサーの存在が、己が正気であるという保証となっていた。

 

「怪我はないのか!? 何ともないのか!?」

 

「ひゃっ!?」

 

 ストーム1がシスターに詰め寄り、両肩を掴む。

 完全に細い肩がびくっと跳ね上がり、後ずさるが完全に体格差やら何やらで彼女は逃げることすら叶わなかった。

 ストーム1も彼女を逃す気はさらさら無かった。この異変の渦中にいると言うのならば「納得」がしたいというのも人情というものだ。

 

「怪我って何のことですか?」

 

「あんたさっきまでゾンビにやられて──!」

 

 さっきまで人としての尊厳を失った状態だったはずだ。まるでそれらが無かったことになった、そんな馬鹿な話があるか。

 

「──?」

 

「何も……ないのか?」

 

「はい」

 

 本来ならば喜ぶべきなのだろう。こうして、生きていることを。

 けれどもじゃあ少し前まで見た光景は一体何だったのか。頭がおかしくなりそうだった。

 

 森の前で出会ったシスター。

 ゾンビの餌食にされたシスター。

 そして今いる彼女。

 

 同じ人間なのか

 

 

()()()()()()()()()()どうしてこんな森奥深くまで……迷われてしまったのですね」

 

 なお完全に可哀想な人を見る目だった。ひどい。

 とはいえこれではっきりした。森の前で会った彼女と今いる彼女は=だ。

 じゃあ、消えた奴はなんだ? 

 

「安全な場所までお送りします」

 

 どう見ても戦闘員じゃないだろう者の庇護を受けるのも些かEDFの恥な気もしなくもないがプロフェッサーもこのまま突貫しても仕方ないと思ったのだろう。肘でストーム1の腕を小突いた。

 

「ここは彼女の厚意に預かろう。何より我々には『拠点』が必要だ」




 Q&A
 Q:ゾンビは原作でラビアンにそこまでやってなかったやろ!齧ってただけやんけ!
 A:アニメ版ちょっと参考にしました。でもゾンビ感染とかその辺は盛りました。許せサスケ。

 Q:ストーム1もプロフェッサーも大丈夫?啓蒙溜まってない?
 A:…………

 Q:プロフェッサーがシスターがどうこうって前話で言ってたけどあれ何?
 A:もしかしたらいつかどこかで、数多くの個性的な仲間たちと刺客から四角い地球の平和を守っていたのかもしれません。チーズバーガーをばら撒きながら……




 次回:introduction3/タイトル未定
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