ストーム1、絶望まみれのリョナエ◯ゲの世界で全力の抵抗を試みる模様   作:糸をなんとかしろ!

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 適度にリョナりたかったんです……


5 Forest of the Dead②/這い寄るもの

 脚が止まっている。

 ラビアンの脚はその剥き出しのふとももが沼に沈み切る寸前まで来ている。

 ここまで来て足を止める訳にはいかないというのに。

 だが彼女の肩が「あっ……何かが私の中に入っ……」と艶の入った声と共にびくん、と跳ね上がる。

 

「ぁ……ぁ……かはっ……ごばぁっ!」

 

 そしてがばりと大口を開けて、ずぽんとその喉奥から黒濁とした何かを吐き出した。

 

「なん……だと」

 

 それは水と言うには些か塊めいていた。だが塊というには水気も強く。黒く濁ってもいる。俗に言うスライムという奴なのか。

 どこかからラビアンの体内に侵入したそれはそのまま口から繋がったまま、先端はこちらを見ていた。

 

 そうだ。これは吐き出したんじゃない、出てきたんだ。他にも彼女の修道服の隙間からも黒濁としたそれが這い出てて来ている。

 どこから入ってきた。咄嗟に彼女の下半身を見る。

 太ももの内側から黒濁としたものがちらりと見えてから吸い込まれるように修道服の中に隠れた。

 

 ──ああ、そういう事か。

 

「──チッ」

 

 間髪入れずにストーム1はラビアンの手首を掴んでいた。

 次にその透明の先端がストーム1に絡みつこうとしたその時、咄嗟に背負ったスレイドを()()()()、そのスライムを掴んだ。

 

「地球人類……な・め・ん・なぁぁぁぁぁ!」

 

 搾り出す声と共に泥沼を掻き分けるようにして陸地まで進む。脚は泥に、腕は同じように沼に囚われたラビアンに引っ張られ。

 四肢が引きちぎれそうな痛みを堪えながら、引っ張る。

 

 おそらくこいつはスライムという奴だ。

 某RPGじゃ序盤に出て来て主人公にひのきのぼうやこんぼうでタコ殴りにされるような奴と同じジャンルとは思えないような悍ましさだ。

 

「うおおおおおおおおおああああああああああ!」

 

 森の葉を揺さぶるようなストーム1の雄叫びと共にずるずると音を立てて引き摺り出されるスライムに、ラビアンが「げぼっ……がぼっ……」とえづき白目を剥いている。

 とはいえこのままスライムに内臓満たされて溺れ殺されるよりはマシだ。

 

 引き摺り出されたスライムを放り投げ、次に残されたハンドガンを叩き込んでスライムを黙らせる。

 そのまま全身を痙攣させながら白目を剥いたラビアンを引き摺るようにして沼の外へと抜け出した。

 

 スレイドが──沼の底に沈んでいくのを横目にしながら。

 

 

 

 

 

 

 ──貴重な武器を捨てて何をやっているんだ、俺は

 

 向こう岸まで届いたところでラビアンは目を覚ました。うずくまってずっと咳き込み続けているのは内臓が全力でさっきまで入り込んでいたスライムなる異物を拒絶しているのだろう。

 取り敢えず彼女の背中をさする。

 

 これでスレイドはロストした。プロフェッサーに何を言われるやら。

 

「げほっ……不覚を取りました……貴方の武器まで」

 

「スライム見落としてた俺のミスだ。あんたは悪くない」

 

 索敵が甘かった。あのスライムの体色が黒ずんでいたので似た色をした沼に紛れ込んでいたのだろう。

 GPSが死に、元の世界ではセンサーに索敵を頼っていた事を恨みたくなる。

 怪物はよく背後に回ることが多かった。だからこそセンサーを使った立ち回りを要求されていた。だがこれは言い訳だ。

 

「あのまま私を放っておけば……」

 

 それでも俯いたまま己を責め続ける彼女にストーム1は首を横に振った。

 

「ねえよ、そんな選択肢。最初から。それにアレは元からもう()()()()()()んだ。おかげで余計な荷物が減った」

 

 我ながら酷い嘘だった。とはいえここで自分のやった事を否定したくなかった。あれが最善だったと己に言い聞かせるように「軽量化だ、軽量化」と呟く。

 これで手持ち武器はハンドガンとナイフ。そしてとあるものだけとなった。

 こうなるならライサンダーを持って行けば良かったか。持って行っても結局沼の底か。

 

 ラビアンから少し離れ、無線機を起動する。

 当然通信する相手はプロフェッサーだ。声を顰めながら状況を伝える事にした。

 

「すまん。スレイドを無くした。回収は不可能だ」

 

《そうか。よっと……これから……っと、どうするつもりだ?》

 

 プロフェッサーの思ったより淡白な反応にストーム1は首を傾げた。少し取り乱すものだと思っていたのだが。それと同時にガタゴトと雑音が酷い。何かを運んでいるのか動かしているような音だ。

 プロフェッサーが何かをしているのか。小教会で。

 

 ──いったい何を? 

 

 そんな疑問を外に追い出しながらストーム1はプロフェッサーの問いに答える。

 

「状況を見て撤退ラインを見定める。もうあの沼を渡るのは勘弁だ。沼に囚われたままマモノとやらなは襲われてしまえばまた同じ事が起こりかねん」

 

《分かった。所でこの小教会で面白いものを見つけた。戻ったら話そう》

 

「面白いもの?」

 

《何、悪い話ではないさ》

 

 この雑音と多分関係があるのだろう。

 とはいえ、まるで続きはwebで! とかFanboxで! と突きつけられた時のモヤモヤ感がストーム1を襲う。

 プロフェッサーなりの気遣いだろうが。

 

「了解。任務に戻る」

 

 無線を切ると丁度ラビアンがストームのすぐそばまでやって来ていた。

 ──聴かれてないよな? 

 などと要らぬ心配をしながら。誤魔化すように、何かを遮るように口を開く。

 

「進もう。今更戻るにしてもあんな沼を渡るのはごめんだ」

 

 だがこれは本心だ。

 自分もラビアンのように体内にスライムに侵入されてぐちゃぐちゃにされるのはごめんだ。おそらくあの沼にはスライムの仲間がまだウヨウヨいるはずだ。

 

「本当ならあなたには小教会に戻っていただければと思っているのですが……この沼や魔物の数では危険過ぎます。ここの瘴気を出している原因を仕留めれば、魔物の力が弱まり転移魔法も使えるようになりますから、そこまでは……私が貴方を護ります」

 

 ゲームで言うならクリア後はファストトラベルが許されると言う訳だ。ここまで進んだ以上、下手に撤退するよりは安全なのだろう。

 

「好きにやってくれ。俺は俺で自分の身を守っている」

 

 下手に気を使うよりは戦いやすかろう。というのがストーム1の思考にはあった。

 ハンドガンとナイフ。それとアレ。

 この装備では近接格闘術メインになる。プライマーを相手にしていた時は大型故に使えた戦術じゃないがスライムやゾンビ程度ならば何とでもなるはずだ。

 

 とはいえど、ラビアンの表情は晴れる事はなかった。

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