ストーム1、絶望まみれのリョナエ◯ゲの世界で全力の抵抗を試みる模様   作:糸をなんとかしろ!

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 アシュリー戦。つまりボス戦です。
 某ウルトラマンの怪獣が元ネタの一つだったりするんだとか。なるほどちょっと似てるかも……


6 Forest of the Dead③/上手に焼けました

 

 やっとゴールまでたどり着いたか。

 森を抜けた先には洞窟が待っていた。それも天然のものではない。人の手が加わっているようで出入口は木の板で固く閉じられている。

 試しにドンドン、と叩いてみる。──返事はない。

 

 押してみる──何かが引っかかっているのか動かない。

 引いてみる──引っ張れる所が小さすぎて手が滑る。

 押してみる──何かが引っかかっているのか動かない。

 引いてみる──引っ張れる所が小さすぎて手が滑る。

 

 悪戦苦闘するストーム1をよそにラビアン、固く閉じられた扉にどうしたものかと思案する傍らストーム1は痺れを切らした。

 

「おらぁっ!」

 

 マル暴の刑事がヤクザの事務所にガサ入れでもするかの如く、ストーム1のヤクザキックが炸裂した。

 ガスっ、と音がするや否や奥に向かって倒れてしまった板。轟音を洞窟内に響き渡らせながら土煙を舞い上がらせる。

 押して駄目なら引いてみろ。

 

 引いても駄目なら一撃だ。

 

「よっし開いた」

 

「えぇ……少し乱暴な気もしますが──これで道は開けましたね」

 

 ガッツポーズを決めるストーム1にちょっと引き気味のラビアンの言う通り洞窟の中にこの重苦しい外気が流れ込んでいく。洞窟の中は不思議な事に妙に明るかった。天井から光源がある──それもこの不安定な明かりはランタンだ。

 放置されて久しいはずだろうに、()()()燃料でも補充をしているのか。

 

 とはいえ先ほどスレイドを失ったストーム1からすればありがたい事この上なかった。

 そんな事よりももっと気にするべき問題がある。

 

 ──なんだ、この臭いは

 

 隣のラビアンが酷く眉間にしわを寄せていたことからこの臭気は現実のものだと思い知らされる。

 これまでの戦闘でもゾンビの腐敗臭はキツいものだったし、沼の泥特有の嫌な臭いだの散々苦しめられていたが故にいい加減慣れるべきなのだろうが、この臭いはゾンビの比ではない。

 

「なんだこの腐った肉を熟成させたような臭い……はきそ」

 

 内臓が僅かにけいれんを始めている。体が拒絶しているらしい。

 ストーム1は指で鼻を摘んで抵抗を試みる。……しかし苦しくてやめた。酸欠でくたばるくらいならばまだ内臓を酷使した方がまだマシだった。

 

「それに酷い瘴気です。──何かが、います」

 

「何か……か」

 

 餅は餅屋。敵の気配とかそう言ったマジカルなものは彼女の方が得意なのだろう。

 ならばこちらは暴力だ。ナイフとハンドガンを構え、いつでも近接戦が出来るよう構えを取りながらラビアンの前に出ながら洞窟の中を進む。

 

 腐臭は酷くなる一方だ。

 壁は何者のものなのか分からない血と肉に染まっている。おまけにその肉はぶよぶよと蠢いていた。床を見れば骨が転がっている。動物の骨なのか──否、訂正しよう。

 

「人骨……だな」

 

 無造作に打ち捨てられたそれは一瞥してから眼を背けた。

 好きで見るものではない。「どうしてこのような……」同じくこの手のものに慣れているだろうラビアンも口を覆っていた。

 

 さっさと瘴気の原因の顔面に弾丸叩き込んで通り抜けてやろう。

 ストーム1がラビアンに「行こう」と促した矢先だった。

 

 

 地面が唸った。

 

 ──地震!? 

 

 この洞窟において地震で崩落でもしてみるがいい。たちまちストーム1とラビアンは落石でぺしゃんこ、お陀仏だ。だが地震にしては小刻みで──少し浅く感じた。

 まるでひどく重いものを転がしているかのような地響きだ。音の原因は──洞窟の奥。

 

 ハンドガンを銃口が向けられた先には──肉があった。

 

 そう、肉だ。

 パッと見、生き物の皮を引っぺがしたような赤い肉の塊だった。そのフォルムは少しばかり()()()()()()()()()()のようにも思えた。それも人間の身長の倍ほどある。侵略性外来生物αぐらいの大きさだ。

 顔のような部分は無い代わりに左右横に並んだ巨大な歯が10本以上並んでいる。口に得物でも運ぶ手のつもりか無造作に触手までもが生えている。

 

 表面には無数の人の顔、目、口のような窪みと、先ほど述べた触手とも違う人の手のようなナニカが無数にかつ無造作に伸びている。

 まさか人間から出来ているのか。この化け物は。

 

「なんて──悍ましい」

 

 ラビアンの震えた声が聞こえてくる。そのコメントが全てだった。

 この世に存在していいものでは決してない。

 

「怪物っていうよりは──バケモン……だな」

 

 スレイドでハチの巣にしてやれれば楽だったろうが、無いものねだりしたって仕方がない。

 そのまま地響きを立てながら迫るそれを真っ先にストーム1はハンドガンで応えた。

 

 放たれた弾丸は2つ。

 1発は巨大な牙に弾かれ、もう1発はその悍ましい体表に刺さった──と思えば。

 

 キンッと何か小さなが金属が地面に落ちるような音がした。あのブヨブヨとした身体は見た目より頑丈らしい。ハンドガンの弾を簡単に弾いてみせた。

 

 ──マジかよ……

 

 同じくラビアンが、虚空から呼び出した弓を使って魔法で精製したのだろう矢を放つ。

 あのような化け物に近接戦(インファイト)を仕掛けるなぞ愚策、命知らずがやる事だ。矢の狙いは正確だった。

 閉じられた大口の中を狙った1発は当然の如く歯の壁が阻む。体表は矢が刺されどもそのまま肉が刺さったはずの矢を押し返して、魔法で練られた矢は光となって消え失せた。

 

「ハンドガンも矢も駄目か……」

 

「ならば──!」

 

 舌打ちするストーム1の前に出たラビアンが弓を捨て、剣を呼び出す。

 確かにゾンビを紙切れの如くスパスパ斬ることができるその得物ならばこの肉塊を斬りふせる方が出来るのはストーム1でもイメージは出来た。だが危険すぎる。あの図体に絡まれようならばタダでは済まない。

 

「待て!」

 

 ストーム1の制止を振り切ってラビアンが地面を蹴り肉塊との距離を詰めた。そして肉塊の体表にその剣の鋒を深々と突き立て、抉り取るようにして剣を走らせる。

 恐ろしい切れ味だ。あのブヨブヨとした肉塊を斬ってしまった。大きく抉り取られた肉塊の体表は痛々しく、それでいて勝ち筋が少しだけ見えた気がした。

 想定以上の成果にストーム1の緊張が解ける。──が

 

 

 その傷口はたちまちのうちに塞がれた。

 

「バカな……」

 

 明らかにラビアンの一閃はクリーンヒットしたはずだ。肉も抉り斬ってはずなのに、今この瞬間綺麗に再生してしまったのだ。

 冗談のような再生能力を見せた肉塊にすぐそばにいたラビアンも動きを止める。

 

「おい! 逃げろ!」

 

 ストーム1の声は聞こえていないのか、完全に棒立ちだ。

 敵が自分に害をなしたと本能で感じた肉塊は、その触手をラビアンの手足に巻きつきそのまま大口を開け、その鋭い牙でラビアンの柔肉を噛みちぎろうと──

 

「させるかァ!」

 

 咄嗟にストーム1はハンドガンの銃口を肉塊ではなくその頭上で吊り下げられたランタンに向けて引き金を引いた。あのランタンを吊り下げているのはロープだ。銃弾で断ち切る事は容易だった。

 拘束を失ったランタンは重力に従ってすぐ下の肉塊に向かって落ちる。そして──弾けた。

 

「◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️!!!!」

 

 ランタンに収められていた油と火が肉塊にぶちまけられ、動物の赤子のようにピィ! ピィ! と喚き立てる。

 想定外の一撃に肉塊の拘束も緩みその隙に囚われていたラビアンもその剣で触手を切り裂き肉塊から距離を取った。──条件は整った。

 今、火力不足に悩まされているストーム1に残された最大火力。それはハンドガンでも、ましてやナイフでもない。それは──そう

 

「そこのグロ肉! 親に習わなかったのか? 落ちてるものを食べちゃいけませんって……さぁ!」

 

 戦闘服に仕舞っていたあるものを取り出した。それは──手榴弾(ハンドグレネード)

 安全ピンを引き抜き、その掌に収まったあるものを迷いなく熱に苦しみ大口を開いた肉塊に投げつける。直球ど真ん中ストレート。球速は球児じゃないので知らない。

 

 

 

 もしも。もしも、だ。

 このまま口の中に入らなかったら、そして下手すればここにいる人間皆、自爆でお陀仏だっただろう。

 下手人たるストーム1はアホ、ないしは味方殺しとして歴史にその悪名を轟かせていたことだろう。だが今この瞬間において確実に決められるという謎の確信があった。そしてそれを成し遂げてみせた。

 何か異物を投げられた事に気がついた時にはもう遅い。異物を投げつけられたと思った肉塊が慌てて口を閉じた次の瞬間、濁り切った破裂音が肉塊から漏れ出た。

 まさか口の中に爆弾(ハンドグレネード)を投げつけられるとはあの肉塊も思わなかったに違いない。口から煙を出し気絶したままランタンの油と火によって肉塊は焼かれ続けていた。

 

 

 勝負はついた。

 このまま放っておけばあの肉塊はこんがり焼け死ぬだけだ。そのままこんがり肉にでもなっているがいい。などとストーム1は思いながら無造作にラビアンの腕を掴む。

 

「よし、一旦ずらかるぞ」

 

「えっ」

 

「逃げるぞ!」

 

「えぇっ!? ちょっ……どうしてですかああああああああ!」

 

 なにせ、一酸化炭素中毒が怖かったのだ。

 訳の分からない殺しをしてから爆速で撤退するべく手を引かれたラビアンはひたすら訳がわからず絶叫していた。




 エネミー名鑑

・ゾンビ
 死人の森に現れた、動く死体。
 この世ならざる力でもあったのか死してなおも動く。
 単体での戦闘力は大した事はなくストーム1のアサルトライフル・スレイド1発(急所に限る)、はたまたラビアンの魔法剣・オルタンスでいともたやすく撃破可能。
 厄介なのはこれが複数体で出現した場合。戦いは数だよ兄貴とは誰が言ったか。

 原作ゲームに囲まれた状態で位置取りをしくじると拘束→解放→ヒットバック→別個体に拘束→以下略を繰り返されてハメ殺されることも。
 敗北時ラビアンの身体を貪り喰らい殺すが、それ以外の事はしていない(と思われる)。
 アニメ版においてはそれ以外の事をしてラビアンを嬲った。

・スライム
 ドラクエに出てくるような雑魚と異なり地味に厄介な敵として登場する。
 攻撃手段は絡みつく事と、自身の体の一部を投げつけること。
 ラビアンの体内に侵入(どこから侵入したかは聞くな)し、何かをしようとしていたがストーム1に強引に引きずり出されてハンドガンでパンパンされてフェードアウト。

 原作ゲームにおいては道中にポツンといる奴はともかく、その先の沼にいる個体が非情に厄介。視認性が悪いのでうっかり捕まる危険性が高い。仮に倒しても沈む沼から抜け出せずラビアンが死亡するパターンも。
 アニメにおいては沼の出来事が再現されておらず、それっぽい奴が川に出現。明らかに原作より大きな図体でラビアンに触手みたいなもので以下略。


 次回:Debriefing/ラビアンの日記
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