ストーム1、絶望まみれのリョナエ◯ゲの世界で全力の抵抗を試みる模様 作:糸をなんとかしろ!
〇月×日
先日からの予定通り魔物の退治と浄化を行っていた所、教会から指令がやってきた。
指令の内容はケッサリアと呼ばれる廃都に侵入。そこに巣食う魔物を倒し浄化をしろ、という命令だった。
私の管轄からやや外れるけれども、教会が予め話をつけて来たのだという。
ケッサリア。元々教会とのゆかりのある地だったそうで、私がこうして修道女になる前の頃には今のような惨状になったのだという。
今のケッサリアは、魔物が巣食う冒涜的な地と化している。
それをたった一人で制圧、浄化をしてみせろと教会は言う。
そんな大役、私にできるのでしょうか?
出立は明日。支度を急がねばなりません。
◯月A日
廃都ケッサリア。元々山頂に大聖堂があり、麓には村。自然豊かな土地だったものが今や見る影もなく廃墟と化していました。
そう、聞いた話通り凄惨たる有り様でした。
かつてケッサリア管轄の修道女もいたそうですが、今や
その為数年単位で放置されていたものの、流石に魔物の増殖を看過しておく事はできなくなった為、私に白羽の矢が立ったのだというのです。
とある修道女は支援役との2人1組でしたが、私はたった1人での浄化となります。教会は私1人でなんとでもなるはずだ、と言うのですが。
出来ない、なんて言う訳ではないのですが少し心細い。そんな気もします。
こんな弱音を吐いていては修道女はやっていけません。心は強く持たなくては。
教会が所有していた小教会。ここを拠点としますがすごく……埃っぽい。
全てが落ち着いたら帰りがてらお掃除しておきましょう。
◯月@日
今日は振り返ってみれば全くもって変な1日でした。
いよいよ魔物の討伐と浄化の為に死人の森、平和の大樹を抜け、砦の抜け道を通り抜け廃村へ。そして下水道から聖堂へ。
聖堂の大元となる存在を討伐、浄化すれば全てが終わる。手始めの死人の森を抜けるにあたって不思議な男性が2人と出遭いました。
彼らは狩人と名乗り、肩には大砲のようなものを担いでいました。
片方の皆細い方はプロフェッサー、つまり神父を名乗り。もう片方の兜を被り大砲のようなものを担いでいた男性はストームワンと名乗っていました。
極東から来たと彼らは言うものの、どこまで信用していいのか。
ただ、何かしらの力があり狩人であると言う事に嘘はないようです。彼らの足元に屍人の残骸が転がっていたのを見た時それだけは確信ができたのです。
ただ、少し何かに困っているようにも見えましたので少しでも何かの助けになればと小教会の一室を貸す事にしました。
教会ではなく私の独断ですが、この判断は主に仕える者として間違ってはいないと。そう信じたいのです。
それともう一つ。
死人の森の中を抜ける最中、私は屍人と遭遇し討伐しようとしたものの力及ばず、囲まれ言葉にするのも憚られるような嬲られ方をされていたはずでした。
屍人に首元や体の節々を噛みちぎられた際、確かな痛みがあり、意識が遠のくような感覚がありました。
ですが、その後何事もなかったかのように私は森の中に立っていました。
私を取り囲んでいたはずの屍人の姿も消え失せている。あまりにも現実感の伴った夢をこの仕事の途中で見てしまったようなのです。
ただの白昼夢、この大役に対する不安が生み出した幻影だったのでしょう。
そう切り捨てられたらどれだけ良かったか。
その白昼夢を、今日出会ったストームワンなる人物は見ていたようなのでした。
何かがおかしい。きっと小教会に彼らを招いたのもその不安を拭い去りたいが一心でそうしたのかもしれません。
幸い彼らは喜んで行動を共にしてくれましたが、果たして彼らは一体何者なのでしょうか。あの白昼夢の正体は何なのか。疑問は増えるばかりで心地の悪さを禁じ得ません。
考えすぎだと……いいのですが。
◯月U日
ストームワン氏と共に死人の森へ再び赴く事となりました。
的確に屍人を戦闘不能まで追い込み、魔法ともまた違う不思議な灯りで道を照らしながら森の中を掻き分け進みました。
彼には大きな迷惑をお掛けしてしまいました。
あの大砲を捨ててまで魔物の餌食になりかけた私を救い出し、果てはあの大型の魔物でさえ倒してみせました。
教会は彼の出現を見越していたのでしょうか。だから私1人でケッサリアへ送り出したのでしょうか。それを知る術は今はありません。
見捨てると言う選択肢は無い。彼はそう言っていました。見え透いた下手くそな嘘をついてまで。
あの大型の魔物を倒し、彼に手を引かれながら洞窟を抜けた時、彼を。ストームワン氏を疑った自分を恥じた。
やることも言う事も滅茶苦茶だけども、見知らぬ他人の為に自らを犠牲に出来る存在。
私が目指す修道女のイメージに少し近いと感じたのです。
でも。それでも、彼らはどこかで嘘をついているんじゃないか。
そんな疑念は消えないでいる。
特にプロフェッサーという男に気を許してはならないような、そんな気がしてならないのです。
そして、小教会の中で────
◆◆◆◆◆
結局、あの肉塊はゲームで言うステージボスだった。
ラビアンはその後転移魔法の準備を済ませ魔法を発動させるや否や、瞬時にしてあの小教会の前まで戻っていた。俗に言うファストトラベルと言う奴だ。全てを終えたストーム1は手持ちの装備を確認する。
ハンドガン、ナイフ……それだけだ。
ハンドガンの残弾数はまだ予備のマガジンがある為バカスカ撃たなければ、すぐ無くなる事はないだろう。ただナイフについては最早あんな化け物相手では役に立つ事はあまり無いだろう。
先の作戦で携行していたアサルトライフル・スレイドと手榴弾はロスト。
プロフェッサーのお説教が飛んできそうな勢いでメイン火力を失っている。
さて、プロフェッサーにどう言い訳したものか。思案するよりも先に小教会の玄関前で埃に塗れたプロフェッサーの姿が目に入った。
黒いスラックスが灰色に染まり切っており、メガネもゴミまみれでちゃんと見えているのか疑わしい限りだ。
いくらなんでもあの小教会が汚れていたとはいえこの埃まみれのプロフェッサーは常軌を逸していた。
「……え、何?」
「戻ったか。待ちかねていたぞ。入ってくれ」
恰も小教会の主の如く振る舞うプロフェッサーの図太さにストーム1は苦笑しながら、ラビアンと共に小教会に足を踏み入れる。
会議室も兼ねた広間に入ると、プロフェッサーがあるものに指差した。
その先には机の上に粗雑に置かれた黒光りするガラクタたち。
職業病故かそれが何なのかすぐに理解ができた。
「──なんで教会に銃があるんだよ」
教えはどうなってるんだ、などと言う存在しない教えの話はさておいて。
プロフェッサーの様子と今置かれている状況からして教会で見つかったとしか言いようのない状況にストーム1はラビアンの方を見る。この中で一番小教会に詳しいはずの彼女も酷く混乱している様子で、納得できる返答が来る事は期待できなかった。
「君たちが作戦に出て1人になったところで、シスターには悪いがこの小教会で使えるものが無いか軽く改めさせて貰った。本来は小教会の中を散策する程度で済ませるつもりだったが、これを見つけた以上家探しせずにはいられなかった」
通信時に聞こえた物音は家探ししている真っ最中だったと言う事だ。同時に見つけた面白い物というのもまさにこの事なのだろう。
プロフェッサーの無遠慮っぷりにラビアンは「えぇ……」と完全に振り回され切り置いてけぼりにされた気の毒な人のそれと化していた。
「うちの阿呆がすみません……」
あまりにも不躾かつ無遠慮。謝れるだけ謝るもののEDFの備品がそもそもこんなところに置いてある事自体が異常事態というもの。
余裕で人間に向けようなら上半身が吹き飛びかねないような威力のそれが民間に転がろうなら平時であれば大問題だ。ストーム1は興味半分でその危険物の山を掻き分けるように見ていく。
「イレブン!? 懐かしいなぁ。……それにこれはスラッグショットか」
イレブンと呼ばれたそれはPA-11。アサルトライフルの一種だ。故障などのトラブルの少なさからEDFに正式配備された代物だ。長い
スレイドに比べれば威力も精度も馬糞のようなものだが、無いよりはずっとマシだった。
スラッグショットもその名の通り射程を犠牲にスラッグ弾を叩き込むショットガンだ。経年劣化か一部パーツの破損も見られるが軽くレストアしてやれば実戦投入も出来るはずだ。戦力無い、資材も無い、勝算も無い。無い無い尽くしの戦況なぞ飽きるほどやってきた。この程度屁でもない。
しかしながら──見たところ爆発物の姿はない。
あの聖堂にロケットランチャーのゴリアスかホーネットでもぶち込んで倒壊させてやれば終わるのにと、物騒な事を考えるストーム1を他所にプロフェッサーが口を開いた。
「ここでシスターに聞きたいが、教会にはこのような装備は?」
「無いはずです。ですが、私もこの小教会に訪れたのは昨日の事で……」
前提として。
この世界においてアサルトライフルなどというシャレた物は存在しないはずだった。
あっても精度も射程距離も怪しい脅かし程度の単発の銃だ。
この埃被った小教会に放置されていたということは、年単位でこのような場違いなものがこの世界に存在していたことの証明に他ならない。
今のストーム1からすればありがたい物とはいえ出自を探りたくなるのも人の性だ。
「以前ここにいたシスターが銃ぶっ放す物騒なバイオレンス・シスターだったとか?」
ブラックラグーンかよ、というのはさておいて。
そんなストーム1の問いに「えぇ……そんな話は聞いたことがないです……」と頬を引き攣らせながら返した。
あり得る可能性として──ここにわざわざ銃を持ち込んだ奴がいるということ。それも下手すればEDFにゆかりのある人の可能性が高い訳だ。
「……何であれ、この銃を調べたものの罠らしき痕跡もなかった。少し整備してやればすぐに君の力になるだろう」
プロフェッサーはEDFの兵器の大半に携わっている。武器に関する知識を全て脳に叩き込んで過去に持ち越していた。
全ては妻の仇を討つ為に。執念が生み出した膨大なデータベースは武器の一つや二つのレストアなど造作もない。
「使うが、いいか?」
「え、構いませんが……」
所有権自体はEDFにあるが、そこは形式上という奴だ。
そもそもラビアンが持っていても意味がないものでもある。小教会の主もいなくなって久しい。断る理由も特になかった。
「頼む、プロフェッサー」
「いいだろう。使いたい武器があればピックアップしておいてくれ。共喰い整備になる、全てが使えるとは思わないでくれ」
「あいよ」
ストーム1は錆びた剣でも何でも欲しかった。
必要になりそうな武器をいくつか指差しながらプロフェッサーと話し込む。その傍らラビアンは表情の見えない顔でその様相を見ていた。
ストーム1「なんで小教会に銃があんだよ!教えはどうなってんだ教えは。お前ら禁じられた(そんな事実はない)銃を平気で使ってんじゃねえか!分かってんのか!?」
ラビアン「何それ知らん……怖」
不穏さ増す中ステージ2へ。